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263:宇宙一のお人好し

 300人分のお昼ご飯を作るまでにはまだ1時間程度の余裕があったので冴内達は休憩していた。


「このおフネを可愛くしたいんだけど、今は皆のお昼ご飯も作らないといけない。ムムム・・・」

「お昼ごはんは何を作るの?」

「チャーハンをたくさん作る!」

「あっ、ひょっとして昨日チャーハンだったのは今日の予行演習だったとか?」

「うんそう!初が一番デッカイのを倒した時に、デッカイのにやられた恐竜たちの肉が一杯とれたからそのお肉をチャーハンの具に使うととても美味しく食べれるのを確認したんだ!」

「お米の方は大丈夫なの?」

「それも初と一緒に沢山とってきたから大丈夫!でも第3農業の人達からもらったお米には敵わないからチャーハンにすることにしたの!」

「昨日食べたチャーハンも初ととってきたお米?」

「そうだよ!」

「昨日のお米でもすごく美味しかったよ」

「うーん・・・昨日は皆すごくお腹が空いてたからなぁ・・・」

「確かに腹ペコだったど、それでも凄く美味しかったよ。間違いなく皆喜んでくれるよ」

「うん分かった!アタイ頑張って美味しいチャーハンを作るよ!」


「冴内 美衣、よければ私と汎用作業支援小型ロボ達でこの航宙艦の改修作業を行いたいのだが、良いだろうか?」

「うんいいよ!でも出来ればアタイの手で可愛くしたかったなぁ・・・」

「じゃあ美衣がデザインしてみればどう?実際の作業はさいごのひとさんや支援ロボ達にまかせて、美衣はこの船の外観を美衣の好きなように描けばいいと思うんだけど」

「そうか!さすが父ちゃん!それだ!」

「さいごのひとさん、このおフネの姿をうつして!」

「了解・・・これでどうだ?」

「ありがとう!」


 美衣は宇宙ポケットの中から漢字練習帳ノートを取り出してノート後半の無地の自由ページにさいごのひとロボが空間に投影してくれたあちこちツギハギだらけのボロイ航宙艦を美衣が望む可愛い姿に描き直していった。

 しかしどう見ても元の原型とかけ離れ過ぎたデザインになっており、もはや改修というよりも全く別の船を描いているのではないかという代物だった。


「えーと・・・大分元の船と違うけど、これってこんな風に改修出来るものなの?」

「うむ、問題ないだろう。冴内 美衣自身が作業するよりも時間はかかるが我々だけでも十分可能だ」

「どうだろう、冴内 美衣、私達に作業を任せてもらえるだろうか?」

「うんいいよ!アタイもなるべく手伝うよ!」


 まぁいざとなれば第4の試練から持ってきた色んなヤバイ成分の入った各種フルーツドーピングで、疲れや眠気を強制的に癒すことも出来るし、何より桁違いのタフネス宇宙超人なので数日くらい不眠不休で働いても何ら支障はないだろう。


 そうこう話していると、艦内放送でソティラの姿があちこちのモニターに映し出された。


「全員そのまま聞け!先日アタシはサエナイと直接会って話しをした!皆も夢で見たと思うがサエナイはアタシらの身体の中にいた悪い病気を治した!その悪い病気というのはナノマシンという名前の悪い病気だ!それが私達の星を滅びへと導いたのだ!」


「「「 ・・・ザワザワ 」」」


「・・・そして、サエナイはこれからアタシ達の星へと行き、その悪い病気を全て退治すると宣言してくれた!夢で見たような誰もが今よりも長生き出来て、さっき食べたラーメンのような美味しい食事を皆が食べることが出来て、いずれは皆が子孫を残せるような、そんな夢のような世界を現実にするために協力するとアタシに話してくれた!」


「「「 ザワザワザワ!」」」


「さらにアタシは別の宇宙人達と会った!そこには大勢のオトコ達がいた!その宇宙人達はアタシらが争いをやめて何でも力づくで奪って手に入れることをやめれば力を貸してくれると言った!アタシ達と仲良くしても良いと言ったのだ!」


「「「 !!!ザワザワザワ!!! 」」」


「このままではこの先数百年でアタシらは全員滅亡するしかない!だからアタシはサエナイの言う話に賭けてみることにした!他に道はない!皆この最後で最大のチャンスに賭けようではないか!」


「「「 オォーーーッ!!! 」」」


「なんだか大分盛り上がってるね」

「皆がアタイ達を信じて好きになってくれるように美味しいものをもっと沢山作らないと!」

「そうだね!頑張ろうか!」

「「「 オォーッ! 」」」


 早速冴内達は300人分プラスおかわりの分のチャーハン作りの準備をし始めた。さらに昨晩のうちから仕込んでいた一品として、初が倒した超巨大草食恐竜に踏みつぶされて死んだ肉食恐竜達の肉をふんだんに使った角煮も大量に用意された。

 ひとまず冴内達は試食がてら早めの昼食をとることにしてこの角煮を食べて見た。


「凄く美味しいよ美衣!コレは皆も腰を抜かすと思うよ!」

「すごいね美衣お姉ちゃん、あのデッカイのにふまれて死んでた恐竜たちのお肉がこんなに美味しくなるなんて、さすがお姉ちゃんだ!さすがえいゆうゆうしゃちょうりにんだ!・・・ぼくあとで漢字のれんしゅうしなきゃ・・・」

「キャァーッ!」

 もちろんいつも通り美衣は大喜びで初のほっぺたと自分のほっぺたをくっつけた。それに乗じてちゃっかり良子もほっぺたをくっつけた。


 冴内達は食事を終えるとチャーハン作りを開始した。冴内と量産型花子達で米を研ぎまくり、優、良子、オリジナル花子達でチャーハンの具材を揃え、美衣がとんでもなく巨大な中華鍋でチャーハンを炒め始めた。


「みんな!今日のお昼はチャーハンだよ!美味しいお肉の角煮もあるよ!おかわりはチャーハンも角煮も一人2回まではあるよ!とっても美味しいよ!」


 さいごのひとロボの絶妙なタイミングの粋な計らいでその様子は艦内全体に空間投影された。そして続けてさいごのひとロボからのお知らせが放映された。


「これからこの航宙艦をより良い船へと改修する作業を開始する。なるべく皆の行動の邪魔にならないように作業するので協力をお願いする。まずは外壁及び老朽箇所の改修から行うのでその周辺にいる者には別の場所に移動してもらいたい。まず最初のエリアとしてはこことここのエリアだ」


 空間に航宙艦の全体像が表示され、修繕工事個所が拡大されて分かりやすく赤い光で点滅して対象エリアを示した。


「ボス!ヤツら勝手にアタシらのフネをいじる気ですぜ!」

「ああ構わん、好きにやらせておけ」

「しっ、しかし!いいんですかいそれで?」

「ああ、このオンボロをタダで直してくれるってんだからいいだろう?」

「それはそうですが・・・今だって、良く分からないヤツがアタシらのフネを操縦してるし・・・このままヤツらのやりたいようにやらせておいて大丈夫なんでしょうか・・・」

「言ったろ、アタシはコイツらに賭けたって、だからコイツらのやりたいようにやらせてやるさ。とはいえそうだな・・・機械のことが分かる奴等に作業を見張らせろ。不審なことをしているようならこっちに連絡させるんだ!」

「分かりましたボス!しっかり見張らせます!」


 こうして機械のことが分かる人員が選抜された。機械整備全般、機関室専門、システム専門、武装関連専門、センサー関連専門の各リーダーが招集され、改修作業をしっかり見張り何か不審なことをしているようなら直ちに報告するように命令した。


 さいごのひとロボの陣頭指揮の元、かなりの数の汎用作業支援小型ロボが航宙艦内を移動し始めた。中には昨日まではいなかった大型のロボもいて大きな部品を運搬していた。


 見張り役を任された各リーダー達も部下を引き連れてロボ達の後を付けていった。その際ソティラからさいごのひとロボに作業の邪魔はしないから、その方面の技術者に見学させてくれと通達しており、さいごのひとロボからは了承を得ていた。


 こうして冴内達は自分達以外の者達のために大忙しのタダ働きをしていった。まさに宇宙一のお人好しだった。

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