26:洞窟探索開始
早乙女さんと合流し早速D15洞窟に向かうことになった。早乙女さんに「リュック持ちましょうか?」と言われたがさすがに遠慮しておいた。
「では行きましょう!」と巨大なタンスを担いだ早乙女さんは元気に言うとすぐに「走り出した」
驚くのは「走りながら」にすることにした・・・
「今日も天気がいいですね!」
「今日は話し相手がいるから嬉しいです!」
「昨日は一人で3時間も歩いてきたのですごく退屈でした!」
「お歌を歌ったり一人でしりとりしたんですけどやっぱり人と話しながらの方がいいですね!」
と、元気よく早乙女さんは大きな声で嬉しそうに「走りながら」話していた。遠目から見ると自走する巨大なタンスと男性が全力疾走しているような異様な光景だった。
D15洞窟はゲートを起点に北東の方角におよそ60キロの距離にある。荷物が空のときは1時間半程度でつくが荷物が満載のときは3時間かかると言っていた。およそ普通の人間のなせる技ではない。ちなみにリヤカーを使えばもっと沢山の荷物を早く運べるそうだ。
他にも好きな力士の話しや力士になれないので重量挙げの選手になろうとしたとか引越し業者に就職しようとしてたなど、身の上話を聞いたりしているうちに「D15洞窟この先500メートル」と書かれた看板が見えた。「やっぱり人と話しながらだと短く感じますね!」と早乙女さんが言い、そのまま進んで目的地に着いた。
岩山というよりも断層だろうか。今自分が立っている地面から20メートル程の高さの断層が立ちはだかっている。そして高さ5メートル幅10メートルくらいの穴が空いていた。
洞窟入り口前には既にいくつかテントが張られており、小さな小屋と簡易トイレ、そして恐らく簡易シャワー室だと思われる木製の建物があった。
さらに見ると大きな木の浴槽のようなものがあり戸板でフタがされている。早乙女さんによると近くの川から汲んできた水を溜めて生活用水にしているのだそうだ。
早乙女さんは巨大タンスを適当なところに置くとタンス程ではないが大き目のリュックを取り出して背負った。
「冴内さん、そのリュックはあっちのテントに
置いておくといいですよ」と言われたのでその通りにする。
テント内には複数のリュックが置かれていた。恐らくこちらは男性陣のテントなんだろう。寝袋もいくつか敷かれていたがテント内のスペースにはかなり余裕がある。
水筒を肩にかけてテントから出ると「汗拭きタオルとか欲しくなったら言って下さいね!」と早乙女さんが言ってくれた。
洞窟手前には机がありその上にノートが置いてあった。見開きページには洞窟内にいるシーカーの名前がフルネームで書かれていたので自分の名前も書き足した。早乙女さんは一度取り消し線を引いていたので自分の名前の下に再度書き足した。
そうしていよいよ洞窟内に入ることにした。
洞窟内に入って真っ先に驚いたのが「明かり」についてだ。まるで蛍光灯のような明るさで、電気で光るライトかと思って近づいてみると何かの鉱石が光り輝いてた。早乙女さんが言うには日の光に置いておくと光り輝き、朝から夕方まで置いておくと大体3、4日は光り続けるそうだ。
正式には「集光石」というらしいが大抵のシーカーは「ヒカリ石」と言うらしい。衝撃に弱いらしく落とすと割れてしまうので注意が必要だ。そういえば洞窟近くに何やら沢山鉱石が並べられていたような気がするが、あれは光を集めていたんだなと納得する。
早歩きで洞窟内を30分程歩いたところで手代木さん達と合流した。
「ただいまですー!」
「あっ早乙女さん、早かったね」
「おう!来たか!」
「おっ冴内君も来たようですね」
「ウス、お疲れッス」
「皆さんお疲れ様です、今日からよろしくお願いします」
梶山君は手に小型のピッケルのようなものを持っていて、鈴森さんは何かの鉱石を手にしていた。地面にはタオルが敷かれており幾つかの鉱石が並べられていた。手代木さんは地図と鉛筆を持っていた。
「では続けましょうか」と手代木さんが言ったので各自頷く。矢吹さんが「サチ、ヒカリ石を2個くれ」と言ったので早乙女さんは「はい!」と返事し大きなリュックからタオルで巻かれたヒカリ石を2個取り出した。
矢吹さんがヒカリ石を受け取りながら「冴内にも2個渡してやってくれ」と言ったので同様に自分にヒカリ石を渡した。「よし冴内オレについてこい」といったので「はい!」と返事し矢吹さんについていく。
矢吹さんにつづいて暗い洞窟へと進んでいく。いよいよ洞窟探索の始まりだ。




