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257:冴内の意外な才能開花

 結局全員妊婦のように腹を膨らませてラーメンをたっぷり心ゆくまで堪能した。


 ラーメン好きの冴内も大満足する程の美味しさだったので宇宙人達3人などは歓喜の表情で、ましてや食べられるだけマシで味を堪能するような食事などとは無縁だったソティラには食事でこんなにも幸せ一杯で満たされた気持ちになるなど思いもよらなかった。ソティラはこの食べ物ならば他の者達も言うことを聞くかも知れないと思った。


 食後、冴内はソティラ達の仲間にも分かってもらえるような紙芝居のようなものを作るのでアイディアを出して欲しいと言ったところ美衣が物凄く興味を示してきた。

 以前美衣が初めてイギリス管轄のゲートに行ったときに「たった いっぽんの けん」という絵本をマリアンヌに読み聞かせてもらった時に大いに感動した時のことを熱く語り「絵本なら小さな子供でも分かるからいいわね!」と優も同意した。


「えほんってなぁに?」と初が美衣に聞くと、美衣は少し思案した後で、以前冴内の両親からプレゼントしてもらった漢字練習帳の後ろの真っ白なページに、同じくプレゼントしてもらった鉛筆と赤鉛筆を使って何枚か絵を描いた。しかし残念ながら美衣の描く絵はまるで写真のようにあまりにも精密精工過ぎて絵本の持つ暖かさや柔らかさを表現出来なかった。


「グヌヌ・・・悔しい、アタイじゃうまく描けない。父ちゃん描いておくれ」

 凄まじく上手すぎる絵を描いておきながらうまく描けないという美衣に鉛筆を手渡され、絵など描いたのは高校生の美術の授業以来だった冴内は大いに困惑したが、なんとか期待に応えるべく美衣と初が仲良くチョップで恐竜をやっつけて他の動物達からありがとうとお礼を言われている・・・と、冴内だけが想像した姿の絵を描いた。


 意外なことに冴内はそこそこ絵心があった。もちろん素人絵だし、デッサンもパースもあちこちおかしくて細かいところはいい加減な絵なのだが、結構味のある温かい絵だった。


「わっ!父ちゃん上手だ!すごい!これアタイと初だ!大きいのをやっつけて小さいの達からお礼を言われてる絵だ!」


「ほんとだ!ぼくと美衣お姉ちゃんだ!お父ちゃんあの時この場所にいなかったのに、どうしてこの絵をかけるの?すごいちょうのうりょくだ!」


「わぁ!私も見たい!」(良)

「私も!」(優)

「私も見たいです!」(花)

「「「私達も是非!」」」(宇宙人達)

「えっ・・・いや、恥ずかしいな・・・」


 一通り回覧して見て、最後にソティラもその絵を見たところ「確かに分かりやすいが・・・そこのチビ達がこの大きい獰猛な生き物を倒したとは信じられん」と真顔で言った。


 ともあれ、まったくの異文化文明人であるソティラにも理解可能だとお墨付きをもらったので、早速ソティラの仲間達と平和的な交流を築くための説明資料として紙芝居の製作に取り掛かることにした。


 明日の朝には航宙艦で眠っている者達は全員目を覚ましてしまうので、まずはその人達に向けた状況説明用の紙芝居を作ることにした。さいごのひとのアドバイスでまずは船員達に向けて試してみて反応や効果を分析し、それからより洗練したものにしていけばより多くの人達に向けて良い説得資料になるだろうという提案を受けた。


 限られた時間内で冴内一人で全てを描くのは不可能なので、冴内が幾つか色んなサンプルの絵を描き、それらの絵をAIにインプットして冴内が描く絵の特徴を学習させて後はオートメーションでシナリオに合わせた絵を当てはめていくことになった。


 さいごのひとロボにナノマシンの拡大画像を見せてもらいそれをもとに擬人化したバイキンヒューマンという日本の子供向け絵本でアニメも大人気の作品モロパクリのような絵を描いたところ美衣、良子、初、花子には大ウケでソティラもこれは分かりやすいと言ってくれた。


 まずは航宙艦の中で眠っている人達に向けて、今彼女達がどういう状況に置かれて、これから彼女達はどうなるのかを分かりやすく安心してもらえるようなストーリーを考えることにした。


 まずは冴内達の自己紹介を簡単に行って、次に皆が悪い病気にかかっていて、その原因は悪いナノマシンだということを丁寧に分かりやすく解説し、次にその病気を治すために全員寝てもらったということにして、今は治療してすっかり元気になったよワーイ!という絵を描こうということになった。

 そして宇宙にはもっと沢山の人達がいて、戦いや争いをやめれば皆仲良くしてくれるよということを分かってもらえるようなストーリー構成にした。


 冴内が簡単な絵コンテを描き、AIが自動生成で冴内の画風の絵を作成し、皆であれこれ議論し合いながら冴内が手修正したりAIに補正してもらったり、マンガやアニメの技法を取り入れて大事なところで集中線を入れたり効果音を入れたりした。


 声のアフレコには美衣がノリノリで身を乗り出す程に積極参加したのだが、実に名演技でソティラ達の言語をスラスラと話していた。それを見ていた良子も私もやりたい!といって参加してとても賑やかになった。


 ちなみに美衣が冴内の役をやったのだが、ここについては実際の冴内と大きく異なるキャラになってしまった。


「僕の名前は冴内 洋!僕は全宇宙の愛の戦士!みんなを助けに来たぞ!」(美)

「グヘヘヘ!なんだ貴様!男だな!男は全員やっつけてやる!」(良)

 ※全員ぶっ殺してやるという表現は変えました。

「負けないぞ!僕の虹色の愛のチョップでお前も良い子に変えてやる!」(美)

 ※お前などぶっ殺してやるという表現は変えました。


 後半で宇宙には沢山の宇宙人達がいて皆と仲良くしたいと思っているというシーンを描くことになり、せっかくなので宇宙連盟先遣隊の宇宙人達3人の絵も描き、それぞれにアフレコをしてもらうことにした。最初は若干遠慮がちに演技などしたことがないから美衣達のようにうまく出来るか自信がないとかあれこれ言っていたが、いざ収録が始まるとさすが宇宙のエリートなだけあって、実にノリノリで見事な演技だった。


「うわー!皆と仲良くしたいのに!やめて欲しいベアー!」

「シュルルゥーーーッ!僕達は皆と仲良くしたいんでシュルルゥーーーッ!」

「皆さんが良い子にしてくれれば僕達は皆さんと仲良しになれるんだよーっ!」


 ちなみに宇宙人達3人はソティラの星の言葉をしゃべれないので字幕をつけることにした。


 冴内は内心でさすがにこれはバカにし過ぎじゃないかと思わないでもなかったが、ソティラにそれとなく伺ってみると残念ながらこれくらいじゃないと分からない連中が多いのだと返された。


 さいごのひとロボもこれくらい極端なものを試すことでかえって良い試金石になると言い、このままこの方針を貫くことにした。


 物語のシメとしては皆が良い子で仲良くすると、美味しいものが食べれて、長生きすることが出来て、家族を作ることが出来て、とても幸せな人生を送ることが出来るというシーンで締めくくった。もちろん最後のシーンは冴内家族たちが仲良くご飯を食べている絵で、ソティラや宇宙人達3人の強い要望でラーメンを食べている姿が描かれていた。


 こうして冴内の意外な絵の才能を活かしたアニメ絵本のようなものが完成した。


 早速このアニメ絵本はソティラ達が乗ってきた外宇宙開拓移民用航宙艦に送信され、さいごのひとロボと良子によって作られた特殊な装置により、航宙艦の中で眠っている全船員達の脳内に投影された。


 果たして彼女達の反応はどういうものになるのだろうか・・・

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