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254:まともな対話

 優がまだ熟睡しているソティラ・ウル・シテルディアを連れてきて椅子に座らせて、彼女に向かって話しかけた。


「これからあなたを夢の中から解放するわ。目が覚めても驚かないで、私達はあなたには危害を加えたりしないわ。でも暴れるようならもう一度眠ってもらって、夢の中での対話になるわよ。そう・・・分かってくれるのね。それじゃあ起こすわね。大丈夫怖がらないで、ゆっくりと優しく起こしてあげる」


「美衣、ハチミツミルクを作ってもらえる?」

「分かった!」


「ミルクが出来るまでに、まず私達を紹介するわね。私の名前は冴内 優、多分私達の無人探査衛星で自己紹介映像を見たから知ってると思うけど、ここにいるのは私達家族と、宇宙連盟の方々よ」


 優はまだ目をつぶっているソティラ・ウル・シテルディアに話しかけを続けた。


「洋、こっちにきて彼女に挨拶して」

「分かった」

 冴内は目をつぶっているソティラの前に行き話しかけた。


「初めましてこんにちは。僕の名前は冴内 洋です。自己紹介映像でも言ったけど、別の宇宙の地球という星の日本という国から来ました。あなたとあなた達の身体の中にあった良くないものは全部取り除いたので、あなたはこれから長生きできますよ」


 ソティラの口がごくわずかに動きかけたように見えた。

 その後もこの場にいる全員が目をつぶっているソティラに対して自己紹介した。


 その後美衣が温かいハチミツミルクを鍋ごと持ってきて、野外の食卓テーブルの上に置き、後に続いて全員分のマグカップを運んできた量産型花子からカップを受け取りハチミツミルクを注いでオリジナル花子が全員に配った。最後にソティラの分のハチミツミルクを注いでソティラの前に立ち、美衣は自己紹介した。


「アタイは冴内 美衣!冴内 洋の娘!勇者だ!」


 するとソティラがゆっくりと目を開け始め、目の前にいる美衣をぼんやりと見つめた。


「これはハチミツミルク!美味しいよ!」

 美衣がマグカップを差し出すとソティラはゆっくりと両手でマグカップを手にしようとした。


「まだ熱いから気を付けてね!」

 ソティラはゆっくりと頷いてマグカップの取っ手に指をかけた。そしてマグカップを持ったまま周りを見渡した。


「フゥーッ、このハチミツミルクは実に美味しいベアーですなぁ!」

「美衣ありがとう、今日もとっても美味しいよ!」

「美衣お姉ちゃんありがとう、おいしいよ」

「えへへどういたしまして!」


 冴内達が美味しそうにハチミツミルクを飲む様子を見て、ソティラも視線をマグカップに移し、ゆっくりと口に近づけてフゥフゥと息で冷ましてから一口飲んだ。

 飲み込んだ後にソティラは目を見開き、マグカップの中にあるハチミツミルクを真剣な目でまざまざと見てもう一度口にした。そして一言も発しないままハチミツミルクを飲み干した。


「プハーッ!うまい!美衣殿!おかわりをいただけるベアか?」

「うん!まだたくさんあるよ!」

「シュルルッ!私もおかわり!」

「私も!」「僕も!」


「お姉ちゃんもおかわり飲む?」

 美衣はソティラに話しかけるとソティラも頷き、マグカップを美衣に渡した。周りにいる皆もその様子を温かく見守った。


 皆美衣が作ってくれたハチミツミルクに十分満足して落ち着くと。静かにソティラが話しかけるのを待った。


「私、名前、ソティラ・ウル・シテルディア、私、星、滅びの星グドゥル、から、来た」


「ソティラさんですね、初めまして。僕は冴内 洋です。僕等はあなたと話しがしたいです」


「夢、見た、サエナイ ヨウ、知っている、話し、分かった」


「ええと、ソティラさんの星の言葉で話してもいいですよ」

「・・・了解した。まずはサエナイ ヨウに聞きたい。お前は私達に何をした?お前はさっき私達の身体の中にある良くないものを全部取り除いたと言った。そして私はこれから長生き出来ると言った。それはどういうことだ?」


「皆さんの身体の中や空気中にあったナノマシンを全て消し去りました。それによって皆さん健康な身体になりました。あなたもこれまでよりも長く生きられます。一応200歳くらいまでは健康でいられるそうです。あなたの星は恐らくそのナノマシンのせいで文明が滅んだそうですが、これについて何か知っていますか?」


「・・・なっ何だと・・・我々の病気のことを知っていて、治療しただと?・・・バカな・・・そんなこと・・・不可能だ・・・有り得ない・・・」


「いや、事実だ。これを見たまえ」

 さいごのひとロボが空間に映像を投影した。そこには採取したナノマシンが映し出されていた。


「これが君等を苦しめ続けてきたナノマシンの正体だ。まるでウィルスのようだがこれは人によって作られた機械だ。バイオマシーン、生物機械と言ってもいいだろう。このナノマシンは空気中に漂い自己増殖し、男性染色体を感知すると即座に男性の体内に入り込んで遺伝子を破壊する恐ろしいキラーマシンだ」


 ソティラは絶句し、目を大きく見開いて、胸のあたりに手を当てて、荒く息をした。相当ショックだったようで、過呼吸気味になりこのままでは危ないと冴内は察知して、手をかざしてチョップヒールと唱えた。唱える必要はないのだが唱えた。


 温かい光がソティラを優しく包み、ソティラは落ち着いた。冴内は美衣に頼んで宇宙ポケットから例の第4の試練から持ってきたサクランボを取り出してもらい、水で5倍くらいに薄めたエキスを作って欲しいと頼んだ。

 すぐに美衣はすっ飛んでいき冴内のオーダー通りのものを作ってコップにいれて持ってきた。

 冴内は軽く美衣を抱き寄せて頭をなでてからコップを受け取り、ソティラに飲むようにすすめた。


「これを飲むととても気分が落ち着くよ」

「これは?」

「サクランボを薄めたジュースで、僕等も良く食べるんだ。頭が冴えて疲れもとれるしとても便利で美味しい食べ物だよ」

「・・・頂こう」


 ちなみにこの会話については、宇宙人達3人には何を言っているのか分からなかったが、空間にマンガのフキダシのようなものが表示され、そこに書かれた文字を見て冴内とソティラの会話を読解した。音声ガイドロボの計らいである。


 ソティラが5倍に薄めたサクランボジュースを飲み干すと、フーッと一息ついて落ち着いた。


「どう?落ち着いた?」

「ああ、不思議な飲み物だ。とても気分がスッキリして頭も冴えた気がする」


「良かった。それじゃ聞きたいんだけど、君達の目的・・・えぇと僕の身柄が欲しいのは知ってるんだけど、なんというかその先の目的というか、最終的には君達を何を欲しているの?」


「我々はこのままでは数百年程で絶滅する。それをなんとか回避したい。かつての文明を取り戻し、皆が満足に飯を食えて、今よりも長生きして、子孫を残せること、それが最終目的だ」


「良かった!それなら協力出来ると思うよ!」

「協力?」


「うん、まずは僕が君の星に行って全てのナノマシンを取り除こうと思う。一度で全部除去出来なくても全部なくなるまで除去作業を続けるよ。後はその・・・僕はもう結婚しているから、他の星々の男の人と仲良く出来るように君達が友好関係を築いていけばいいと思う。えっと、どうでしょうかゴスターグさん」


「そうですな・・・この場で私の一存で了承することは出来ませんが、宇宙連盟の人道支援の一環として評議会に対して前向きな働きかけは出来ると思います。ただそれには幾つかの条約を締結していただく必要があります。全ての武装を解除せよとまでは言いませんが、少なくとも敵対的武力行為を行わないことは確約していただく必要があります」


 冴内達が座る野外の食卓テーブルの上の空間に投影された宇宙連盟司令長官ゴスターグ・バリディエンシェの今のセリフも当然字幕で表示されており、ソティラはゴスターグが何と言っているのか読解することが出来た。


 ソティラは左手の拳を軽く顎に当てて、首を少し傾けて考慮している様子を見せた。その様子はとても蛮族とは思えない程優雅で気高く美しかった。

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