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247:幸せな朝食からの・・・

 宇宙人達3人は冴内家の朝食に大満足していた。納豆ご飯は肌の色が薄く青い白人のような容姿のロベル・テディル以外の2人には口に合わなかったが、見た目がトカゲのドルム・デ・グァルムァルにTKGを薦めてみたところ、これがどハマリした。


「シュルルッ!このティーケージーなる卵かけゴハンは素晴らしい!我らはイネ科の穀物は普段あまり食べないのですが、これはとてもイイ!まるで飲み物の様にシュルシュルいくらでも食べられる!米がこんなにも美味いものだったとは!いや、このソース・・・ショーユと言ったか・・・この味も含めて全てが調和された完成度を誇っているようだ!シュルルッ!」


「クマさん、じゃなかった、ぽろっくおじちゃん、ハチミツミルクを作ってみたよ、飲んでみて」

「おお美衣殿!有難う御座います!」


フーッ、フーッ、ズズズ・・・ゴクンッ・・・


「・・・グワァーオ!ウマイ!・・・っと、つい吠えてしまった、申し訳ない!しかしウマイ!コレは実にウマイ!このハチミツの芳醇で濃厚な味わい、そしてミルクもまた実に濃厚だ・・・ハチミツバタートーストにハチミツミルク・・・まさに夢の競演のような組み合わせだベアー!しかし美衣殿、それにしてもよく私がハチミツが好物だということが分かりましたな」


「うん、クマさんはハチミツが大好きなんだよ」

「クマさん?」

「うん!クマさんはおじさんに似てるんだ!」

「そうでしたベアーか!そちらの宇宙にも私に似た種族がいるんだベアーね」


 さすがに美衣は続けて「うんそうだよ!クマの肉はとっても美味しいよ!」とは言わなかった。美衣はこれで結構気を使っている優しい子なのだ。


 こうして和やかに、それでいて結局朝もタップリとお腹いっぱい宇宙人達3人は食べたのであった。


 昨日は楽しい歓迎会ですっかり浮かれ気分で過ごした宇宙人達3人であったが、食後にようやく彼らがここに来る直前に攻撃を受けた蛮族についての報告をすることになった。


 ここに来るまでに収録した記録を見て欲しいということで、彼らの緊急脱出ポッドの映像記録を見せようとしたが、さいごのひとロボが記録データをこちらで収集しても良いかと言ったので、宇宙人達3人は驚きつつも了承すると、全く何もしていない様子なのに数秒で完了したと言われさらに驚いた。


 すぐに空間にその時の状況が投影された。宇宙人達3人が見た映像よりもさらに鮮明な映像になっていて理由を尋ねたところ、光学映像以外の様々な観測情報を解析して画像補正を行ったとのことだった。彼等が見た映像もそのように画像補正されていたのだが、それを遥かに上回る情報解析能力によってより洗練された映像になっていた。しかも驚くべきことにその間の蛮族達の音声通信データまでもが解析されて文字情報として字幕表示されていた。


 その映像からはより一層蛮族にふさわしいと思わざるを得ない程にちぐはぐでつぎはぎでぶさいくな醜い航宙艦が複数登場した。それらの航宙艦から射出される捕獲用アンカーワイヤーも船体外部に剥き出しに無理矢理取り付けられたと見て取れる射出装置から発射されていた。


 非常にお粗末なものであったが、数撃てば当たる方式でめったやたらにでたらめにアンカーワイヤーによる飽和攻撃を仕掛けてきた。よく見るとワイヤーがちぎれて捕獲の意味をなしてないものまであったが、宇宙連盟先遣隊の航宙艦は迎撃用魚雷を打ち尽くしてしまったため、やむなく自爆を選択せざるを得なくなった。


 その間の字幕は以下の様に表示されていた。


「×××!アイツら自爆しやがった!」

「クソッ!クソの××の×××!め」

「この×××が!」

「いや待て!コイツは×××な罠だ!」

「そうだぜ!コイツは自爆に見せかけて逃げやがったんだ!×××な×××め!」


「父ちゃん、この×××はなんて言ってるんだ?」

「多分言っちゃいけない汚い言葉だと思うよ」

「沢山言っとるな・・・しろおとめお姉ちゃん達の方がまだじょうひんだったんだな・・・」


「この人達は宇宙海賊なんでしょうか?」

「おお!サエナイ殿もそうお考えベアーか!」

「シュルルッ!こちらのAIの見解では127万年程前に大規模討伐作戦をしたときに逃した者達の末裔ではないかという説も出ました」


「うむ、しかしこの映像による状況証拠としてはそれとは別の可能性・・・何らかの要因によって高度文明が滅んでしまい、僅かな生き残りの人類達によるものだとも考えられる」


「その通りです、さいごのひと殿のおっしゃられたその可能性もこちらのAIから示唆されています」


「恐らくそれで間違いないだろう、それを裏付けるデータが先ほど解析完了した」

「えっ!そうなの?」


「うむ、最初に蛮族達と接触した無人探査衛星ナンバー92号機から最後に送られたデータの解析が先ほど完了したのだ。残念ながら無人探査衛星ナンバー92号機は【彼女達】によって既に解体されてしまったようだが、その際に採取した【彼女達】の手指の皮膚の角質やツバによる唾液と毛髪を解析した結果、【彼女達】の染色体に異常が検出された」


「染色体に異常!?」(洋)

「うむ、恐らく遥か昔に存在した【ナノマシン】技術による影響だろう」


「ナノ・・・マシン?極小・・・機械、なんと!極小機械技術ベアーか!!」

「シュルルッ!極小機械!扱いが厳重に制限されている技術でシュルルッ!」

「まさか・・・かつての軍事利用の・・・うっ、口に出すだけでもおぞましい!」


「恐らくその可能性が極めて高い、冴内を見て、いや、男性を見たときの【彼女達】の反応は極めて異質で違和感を感じたのだが、染色体の調査結果で全てが繋がった」

「まさか・・・それは・・・」(青い顔)


「男性を死滅させるナノマシンによって【彼女達】のいる星の文明は滅んだのだ」


「そんな・・・」(洋)


「そこにいた人類自らの手によるものなのか、或いは他の何かの要因なのか、それは分からないが少なくとも自然現象で崩壊したのではないのは確かだ」


「そのナノマシンは今でも・・・ゴクリ、有効に活動しているベアーだろうか・・・」

「うむ、今でも動作している。君達が接触を避けたのは賢明な判断だった」

「シュルルッ!なんと恐ろしい・・・」

「今件はすぐにでも宇宙連盟司令部に伝えなければなりませんね!」(青)


「うむ、現在進行形でそちらの宇宙連盟の司令長官ゴスターグ・バリディエンシェ殿に私の思念体AIが説明しているところだ。程なくして私の2号機と音声ガイドロボ2号機も到着するようだ」

「なんという手際の良さ!感謝します!」(青)


「その様子ってライブ中継出来たりするの?」(洋)

「それだと傍受される可能性があるな、今は私だけが捉えられることのできる思念波、いわゆるプロトコルで感知しているが、君達にも理解出来る映像や音声データの双方向通信となると、蛮族にもキャッチされる可能性がある」


「えぇと・・・蛮族でもそういうことが出来るのかな?」

「相当文明レベルでは退化しているはずだが、航宙艦の操舵が出来て原始的とはいえ宇宙戦闘を行えるだけの知識はあるようだから、用心にこしたことはないと考える」

「なるほど・・・」


「とはいえ、恐らく遅かれ早かれこの場所か宇宙連盟の艦隊位置は補足される可能性がある。そもそも我々の無人探査衛星や宇宙連盟の航宙艦がやってきた線を結んで計算すればおよその場所は特定出来るし、何より無人探査衛星ナンバー92号機が鹵獲されてしまったので、かなりの確率で具体的な距離がそろそろ把握されていることだろう」


「まさかその・・・こっちに向かって来てたりなんてことはあったりする?」


「・・・残念なお知らせだ。今宇宙望遠鏡と電波望遠鏡で大型の航宙艦、恐らく移民開拓用航宙艦の出航と思しき情報をキャッチした、長距離ワープ準備をしている時に放出される宇宙粒子も観測した」


「えぇと・・・それって、どっちの方角?」


「この星で間違いない」


「うん、お父ちゃん、ぼくのほしに来るみたい」


「えっと・・・それって、いつ?」


「たぶんあしたのあさ」


「・・・」


 楽しく幸せいっぱいだった朝食の時間は一転してお通夜のような状況になったのであった・・・

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