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246:盆踊り

 昼に続いて夜もタップリ食べてしまい、宇宙人達3人の腹はパンパンに膨れ上がっていたが、ふと冴内達の方を見るとそれ以上に樽か妊婦のように腹が膨れ上がっていた。それを互いに見合って全員大笑いした。


「こんなにも素晴らしい会食をしたのは初めてだベアー!」

「シュルルッ!まさに!夜のロースト肉といいシチューといい間違いなく我が種族が宇宙に誇る肉料理をはるかに超越している美味しさだった!シュルルッ!」

「ええ、まさに今日いただいた料理は私の生涯で一番の御馳走の思い出になることでしょう」


「えへへ!おそまつさまでした!」


 食後のフルーツとお茶でまったりくつろいでいると、良子、美衣、花子と量産型花子や音声ガイドロボが何やら簡易的な監視塔のような骨組みを組み立て始めた。


「皆さん一体何を組み立てているベアか?」

「あれは盆踊りの準備をしているんですよ」

「シュルルッ!ボンオドリシュルルッ!」

「えぇ、僕がいる国で夏から秋にかけて行われるお祭りです、全国各地の小さな町でも行われる素朴なお祭りです」

「なるほど!我々の種族でも昔から行われている祭り事はありますよ!」


「お腹が一杯のままだと苦しくて眠れなくなりますから、歌に合わせて楽しく踊って食べ物を消化しましょう」

「なるほど!それは良いベアーですな!」

「シュルルッ!しかしうまく踊れるかどうか・・・シュルルッ!」

「大丈夫ですよ、歌に合わせて適当に手を挙げてグルグル回るだけでいいんです、僕等も正直正しい動作とか分からなくて適当に好きなように踊ってるだけですから」

「あっ、分かります、私の故郷でも大体そんな風でした」


 簡単なやぐらが出来上がり最上段には花子が立っていて、口からまるでスピーカーのように日本のあちこちで昔から使われてきた古めかしい音楽が流れてきた。素朴でシンプルなメロディ、何度も同じフレーズが流れるので数回聴けばすぐに覚えられる程の簡単な曲調だがどことなく懐かしい郷愁を感じる曲が流れていた。

 それに合わせて冴内達が踊りだす。その踊りも実に簡単なものですぐに見よう見まねで踊りだせた。

 宇宙人達3人も冴内達の後に続いてやぐらの周りをグルグルと踊り始めた。

 実際に踊ってみると確かに簡単で単純なものなのだがこの曲に合わせて踊っていると妙にハマって何故か和やかな気持ちになった。冴内達家族がニコニコ笑いながら楽しそうに踊っている姿を見ると宇宙人達3人の目には愛する家族が重なって見えてとても穏やかで愛おしい姿が目に浮かんできた。


 そのうち美衣と良子がお手製の太鼓を叩き始めて盛り上がり、初も初めて二人に教わりながら楽しそうに太鼓を叩き、続いて宇宙人達3人も代わる代わる太鼓を叩いた。それぞれ即興でビートを変えてどことなくそれぞれの種族に合ってる感じのするビートが打ち鳴らされて、それに合わせて踊りも即興で各自思い思いに踊って楽しんだ。

 途中飲み物を飲んで喉を潤しつつ、皆飽きることなく踊りを楽しんだ。


「いや実に楽しいベアーですな、ボンオドリというものは」

「シュルルッ!いやまさしくその通り、シンプルで素朴な踊りなのに実に愉快な気持ちになりますなシュルルッ!」

「私の妻の故郷の古い踊りを思い出しました。とても懐かしく温かい気持ちになりました」


「気に入ってもらえて嬉しいです。意外にこの踊りって実際に踊ってみると結構楽しいんですよね」

「おかげでお腹いっぱいで苦しかったのも納まりました。今日は良く眠れそうです」

「それは良かったです、皆さん宇宙旅でお疲れの所お付き合いいただきありがとうございました、今日は疲れを癒してゆっくり寝て下さい」

「お気遣い感謝するベアー」

「シュルルッ!ご配慮感謝シュルッ!」

「ではお言葉に甘えて休ませていただきます」


 量産型花子の付き添いで宇宙人達3人はゲスト用ログハウスへと入っていった。それぞれの部屋にあるシャワー室で汗を流すことにした。量産型花子からは着ている服は洗濯しますと言われたので皆宇宙連盟ユニフォームのツナギと下着をシャワー室の前にあったカゴに入れておいた。驚いたことにそれぞれの体型にあった下着が既に用意されており、量産型花子からユカタと聞かされていた簡素な服も置かれていた。

 宇宙人達3人は久しぶりに汗を流してサッパリした爽快な気分になった。見た目熊の宇宙人は更衣室の壁から空気が勢いよく噴出して体毛を乾かしてくれたことに大いに感激した。

 各自今日の出来事を音声メモに記録して、あらかじめオリジナル花子から説明を受けていた小さな冷蔵庫から飲み物を取り出して飲んで落ち着いてから就寝した。目を閉じると先ほどまでの盆踊りの様子が目に浮かび、今回の任務が終了したら家族を連れて田舎に戻って村の祭りに行こうと思いつつ心地よい眠りに落ちていった。


 翌朝、さすがにこれまでの航宙任務の疲れで宇宙人達3人はゆっくり眠っていたかと思いきや、眠気も吹き飛ぶほどの美味しそうな香りで身体の方が先に反応して彼らは自分達の腹時計アラームで起こされることになった。


 洗顔後部屋の扉を開けると床下にカゴが置かれており、彼らのツナギのユニフォームが洗濯されて綺麗に折りたたまれていたが、彼らはそのまま浴衣姿で外に出た。


「あっ皆さんお早う御座います、昨日はよく眠れましたか?」


「お早う御座います冴内達、おかげさまでとても良く眠れたベアーです」

「シュルルッ!久しぶりの大地で眠れて実に心地よかったでシュルッ!」

「皆さんお早いですね」

「ええ、いつもお腹が空いて目が覚めるんですよ」

「ワハハ、実は我々もそれで目が覚めたベアーよ」

「「「 アハハハ 」」」


「おまちどうさまー!」


 今日も野外テーブルを囲っての朝食となった。ハチミツバタートーストに搾りたてミルクにスクランブルエッグに軽く焼き目をつけた厚切りハムに新鮮サラダ、美衣と冴内と初はご飯に納豆に味噌汁と焼き魚と浅漬けを用意した。


「「「いただきまぁーす!」」」


「おおウマイ!このハチミツバタートーストは実にウマイベアーッ!」

「シュルルッ!このハムの芳醇な旨み!なんという完成度!焼き目を付けたことでさらに香ばしさが増している!シュルルッ!」

「冴内殿は、一体何を食べられているのですか?その・・・何とも独特な香りが漂ってきますが、発酵食品でしょうか?」


「これは僕の国の食べ物で納豆といいます、豆の発酵食品・・・ですかね、とても古くからある食べ物ですが外国の人にはちょっと苦手かもしれません」

「フゥム・・・」

「試してみますか?」

「はい、是非とも味わわせて下さい」


 宇宙人達3人の中で肌の色が薄く青い白人のような容姿のロベル・テディルが納豆ご飯をスプーンで食べた。一瞬隣に座る見た目はトカゲのドルム・デ・グァルムァルがほんの少しだけ頭をそらした。ロベル・テディルは納豆を口にしてますます顔が青くなったということもなく、パクパクモグモグと食べてウンウンと頷いた。


「一緒に味噌汁も飲むと良く合いますよ」


 言われる通りにロベル・テディルは味噌汁も飲むと、目を閉じて鼻から息をゆっくりと吸い込み、フゥーと口から息を吐いた。皆がロベル・テディルに注目した。


「・・・コレは実に美味しいですね!私はとても気に入りました!」

「わっ、気に入ってくれましたか!」

「はい、私の故郷でも発酵食品は盛んですが、ほとんどが乳製品を発行させてものです、しかしこの食べ物・・・ナットウは豆を発酵させていて、恐らくナットウにかけられたソースといい、ミソシルというスープについても何かを発酵させたものをベースにしていますね!?」

「そうです!醤油と味噌といいます!」

「素晴らしい!なんという食文化でしょうか!私はこの食べ物を深く知りたくなりました!」


 こうして別の宇宙においても、盆踊りや納豆ご飯といった日本文化が宇宙進出していたのであった。

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