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24:初めての報酬

 ハチが消滅したと思われる地面を見てみると、毒針3っつとハチミツが落ちていた。毒針は触るのがためらわれたが先端を持たないようにしてタオルに包んでリュックの一番下に入れた。ハチミツは表面が透明な膜で覆われており、なんというか水枕のような感じだった。もちろん色は透明な琥珀色だ。


 リュックに入れ終わる所で携帯が震えて通知に出ると、良野さんが「ご苦労様、もうこの辺りには危険はないから戻ってきて」と言ってやはりすぐに通話は切れた。


 戻りしなふと良野さんって案外スパルタなんだろうかと思い、木下さん大丈夫だろうかと少し心配になった。


 その後二人のいる場所に合流し「冴内君はくつろいでいて」と言われたが10分もすると飽きたので、二人に教わって薬草を採取しつつ時間をつぶした。木下さんと良野さんは草原を散策し何やら植物を手にしては地図に何か書き込んでいた。


 お昼になったので3人で昼食をとることにした。ハチミツを拾ったというと二人とも目を輝かしていたので差し上げることにした。二人とも後でこのお返しは必ずするといいながら良野さんが自分の水筒の中の水を空にして、木下さんが良野さんに小さなナイフを渡す。良野さんはナイフをハチミツの膜に向けて突き刺すとプツッという音がして膜は破れ、そのまま水筒にトクトクとハチミツを流し込んでいった。最後までしっかりと膜を絞り一滴も残さないぞオーラを出した良野さん。それを熱いまなざしで見つめる木下さん。


 一通りハチミツを水筒に流し終えると二人ともリュックからパンを取り出し、ナイフで掬い取ったハチミツをパンに塗って二人ともかじりついた。二人とも満面の笑みでウンマーイ!と言った。この一連のやりとりの流れを目の当たりにして、しっかり師弟関係が出来上がっているんだなぁと感心した。


 自分はいつもの日替わり弁当で煮物の根菜を頬張り、わっせわっせと白米をかきこんだ。心の中でウンマーイ!と自分も言った。木下さんからハチミツが塗られたパンをひとかけらもらい、頬張ってみると今度は心の中ではなく声に出してウンマーイ!と言ってしまった。


 食後木下さんが水筒を取り出すとまだ熱々のハーブティーが入っており、3人とも同じ水筒を持っているのでその外フタ兼コップに注いでいった。次に良野さんが先ほど木下さんから借りたナイフで自分の水筒に入れたハチミツを掬い取り、それぞれのカップにハチミツを入れてナイフでかき混ぜた。


 二人に目くばせした後3人一緒にハチミツ入りハーブティーを飲んでホーッと一息つくと、3人同時にウンマーイ!と声に出して笑いあった。


 さっきまでの死をかけた壮絶な激闘とあまりにもかけはなれた平和な光景がそこに展開されていた。おかげでトラウマになることはなかった。


 ハチミツ入りハーブティーが身体に染みわたったのか心も身体もリフレッシュして疲れなど吹き飛んだ気がした。


 その後良野さんと木下さんは3時間程作業を続け、その間一匹だけイノシシが5キロ圏内に現れたので撃退しその日の作業は終了した。


 帰りは終始「早歩き」で雑談しながら帰り、ゲート付近には午後5時前には到着した。


 まずいったん解散して午後7時に野外食堂前に集合するよう良野さんに言われた。


 まずは換金所に行こうと歩いていると換金所に並んでる人が10人ほどいたので先にプレハブ小屋にいくことにした。


 プレハブ小屋に行くと誰も並んでいなかった。そのことをおばさんに聞くと普通はそんなにすぐにはレベルアップしないものなので大体はこんなもんだと言っていた。


 ただ初心者シーカーは割とすぐにレベルアップするし、何日かかけて遠征してきたシーカーも帰還後はレベルアップ登録をしにくるそうだ。


 そんな話をしつつ左手をかざすと慣れた手つきで

おばさんがピッとスキャンする。そしてステータス画面を確認すると目を丸くした。


「えっ!?なんかいっぱい増えてる!えっ!?えっ!?」慌てふためいたおばさんがどこかしらキュートに感じた。


 おばさんが落ち着くのを待ってから事情をしっかり丁寧に説明しプレハブ小屋を出ると、換金所が落ち着いていたので換金することにした。結果は以下の通り。


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シシ肉6千円、シシ牙(大)3千円、薬草千円

熊肉1万5千円、熊爪(大)1万円

ハチの毒針1万円×3個

合計6万5千円(非課税)

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 ホクホク顔で換金所を後にし、いったんリュックを個室部屋に置いてから、身一つで野外食堂へと向かった。


 さすがにさっき熊肉を換金したばかりだからまだ熊肉料理は出されないようだ。後ろから声をかけられたので振り向くと良野さんと木下さんが一緒に近づいてきた。各々料理を注文し、やはり料理は暖かいうちにいただきましょうということで、皆黙々と食事を食べた。食後はそれぞれお茶やコーヒーを飲みながら軽い報告会を行った。


 今日の探索で当初の目的の7割近い探索が出来たので、明日は午前中に切り上げられそうだとのこと。恐らく昼前にはここに到着できそうだ。


 明日も同じ時間に集合し、同じ手順で行うので早めに就寝するようにと指示された。


 解散する前に本日の報酬を受け取るので携帯端末を出すように言われて携帯端末を取り出した。良野さんの画面を見ながら同じように自分の携帯端末を操作する。そうすると下記のように書かれた画面が表示された。


--------------------

探索NO:69847560

草原エリアB 植生調査 1日目

状態:完了

【報酬受け取り】

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 そこで【報酬受け取り】と書かれたボタンアイコンをタップするよう言われたのでタップすると、


--------------------

報酬を受け取りますか?

【はい】

【いいえ】

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 と確認画面が表示されたので【はい】をタップするとキラリーンという効果音がして画面を見ると、


--------------------

探索NO:69847560

草原エリアB 植生調査 1日目

報酬5万円がチャージされました

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 と表示されたのを確認した。


 あらかじめ研修センターのガイダンスで説明を受けていたが今日の仕事内容から思っていた以上に報酬をもらえたので驚いた。


 ふと報酬金額はやっぱりそれぞれ違うんだろうかと思ったが口には出さずに黙っていた。


 ともあれ換金額と合わせて初日で10万超の金額が入ったのでかなりホクホクな気分で思わずニンマリと顔に出てしまった。


 良野さんがそんな自分を見て「その顔!」といって笑うと木下さんも楽しそうに笑いだしたので自分も笑ってしまった。


 その後解散し、自分はいつも通り共同風呂に行って汗を流しついでに今日の下着も洗濯して個室に戻り下着をハンガーにかけてすぐ寝た。

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