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234:感激のラーメン

 夕方近くになり、今度はラーメンの鳥ガラスープの匂いが全員の胃を直撃し、お腹虫の大合唱が響き渡り始めた。


 ダイニングに集合すると全員分のラーメンどんぶりが置かれていた。どんぶりのフチ部分には四角形の螺旋のような模様が描かれていた。さすが地球と宇宙を代表する名シェフ美衣、包丁は万能チョップがあるから不要だが様々な料理を盛り付ける皿などの容器については大量に宇宙ポケットの中に格納しているのである。


 大体の食器や鍋やフライパンなどの調理器具は、例の第4の試練の大闘技場前にあったオープン居住スペースから勝手に持ってきたキッチンにも格納されていたが、それ以外にも地球独自の、というより日本独自のキッチン用品や食器などは美衣の宇宙ポケットの中に豊富にしまい込まれていた。


 試練の門の報酬アイテムは実は段違いに他の難易度の報酬よりも価値が高かったのである。報酬ではなく勝手に拝借してきたものも多数あるが・・・


 ともあれ、程なくして皆の目の前に、とりわけ冴内にとっては念願のラーメンが湯気を立てて置かれていた。鳥ガラスープの白湯麺といった感じで、スープは塩味の黄金色で美しく、チャーシューと煮卵はなかったが、蒸し鶏とモヤシのような野菜が麺の上にドッサリとのっていた。もうその見た目と湯気と漂う匂いだけで口内は唾で充満し、お腹虫も絶叫に近い程に泣きっぱなしだった。


「アハハハ!洋のお腹虫さん随分食いしん坊さんだね!」

「うん、ラーメン結構好きだったんだけど、随分長いこと食べてなかったから、嬉しくて嬉しくて」


「「おまちどうさまー!」」美衣と花子は鳥のから揚げやその他の料理を運んできて、一応一通り料理が揃ったことを告げた。


「それじゃあ食べようか!」

「「「いただきまぁーす!」」」


 いつになく冴内はズルズルと勢いよくラーメンをかきこんだ。いつもは美衣のセリフの「ウマイウマイ」を繰り返し言いながらモリモリ食べた。


「洋様、おかわりも沢山ありますから沢山食べて下さいね!」

「うん!おかわり!」

「まぁ!ウフフフフ!」

 いつになく他の誰よりも早く冴内は替え玉とモヤシのおかわりを花子にお願いした。


 替え玉がくるまでの間に鳥のから揚げを頬張ったところ、パリッとした表面の中には柔らかい肉があり、さらに噛んでいくとジュワァ~と旨味成分タップリの肉汁が口の中いっぱいに広がった。揚げに使った油は初が獲ってきた巨大ナマズからベルトコンベヤー式工作機械によって精製抽出された油を使っており、この油が持つ絶妙な香りがベストマッチして非常に美味でいくらでも食べれそうだった。


 冴内は自分が神のチョップを持つ者だとか言われているが自分にとっての神はこんなに美味しい料理を作ってくれる美衣と家族達こそが神様だとしみじみ痛感して感謝した。


「どう?初、ラーメン美味しい?」(美)

「うん!おいしい!らーめんすごくおいしい!らーめん大好き!」

「キャーッ!」さすがに熱々のラーメンを食べている最中なので美衣は空中10回転もほっぺたタッチも控えてただ喜びの声を上げて喜んだ。


「もう美衣には料理の腕も超えられちゃったわね」

「うん、美衣ちゃんが一番料理上手だね」

「えへへへ!おとめぼしの昔のシェフ達の秘伝のレシピのおかげだよ!それでアタイはそれまでよりもひとまわりうまくなれたと思う!」


「あぁ~最高のごちそう、最高のお祝いだよ、美衣ありがとう」

「あっそうか、今日は洋がゲートに入って1周年の日だったね!」

「そうだった、父ちゃんおめでとう!」

「おめでとうお父さん!」

「おめでとうございます洋様!」

「父ちゃん、おめでとう」


「ありがとう皆、まぁ僕がゲートに入った事自体はそれほど大したことじゃないんだけど、でもそのおかげでこうして今皆と過ごすことが出来たわけだから、その点についてはすごく感謝してる」


「うむ・・・冴内 洋がギフトとやらを与えられたこと、そして君達地球人が言うゲート世界に入ってきたこと、それは果たして偶然なのか必然なのか、現時点では全く立証不可能ではあるが興味はある」


「まぁ、理由は分からないけど、それでもこうして今日という日にこんな美味しいご馳走を大好きな皆と一緒に食べることが出来て本当に嬉しいよ、有難う皆」


 結局冴内は珍しく3杯もラーメンをおかわりしてお腹いっぱい幸せいっぱいな気分で食事を終えた。


 食後、冴内は今日も日課の作業、さいごのひとからの依頼の製作作業に取り掛かった。今日はフレームの作成その2である。今日はただ単にさいごのひとの指示した素材原料をベルトコンベヤー式工作機械に乗せるだけの作業ではなく、冴内自ら手を動かして行う作業である。


 冴内は実に楽しそうに様々な形状の部品を組み立てていった。その作業はまるでプラモデルを作っているかのようだった。日本発の大人気シリーズロボットアニメ「機構戦士ガンダル」のプラモデルは大抵の男の子ならば一度は通るという程の知名度で、冴内も御多分に漏れずそのうちの一人である。


 機構戦士ガンダルのプラモデルはバンザイというメーカーが技術の粋を駆使して作り上げた至高のプラモデルで、そのクォリティ、ディティールは世界一級品のマスプロダクツであった。そしてそれにも関わらず接着剤を使わなくても、色を塗らなくても誰もが組立説明書通りに作れば非常に出来の良い、劇中に登場するロボットそっくりのものを作り上げることが出来た。


 今冴内が作っている物もまさにそんな当時の記憶を想起させる程のもので、金属溶接をしてくっつけるとか複雑な配線を結合させるなどの高難度工作技術は不要で特別な工具も必要なく、ただカチッカチッと組み立てていくだけで良かった。


 組立説明書は空間に立体投影されており、分かりずらいところを尋ねると、ポイントを拡大表示したり動画で分かりやすくこういう風に組み立てると、こういう風に出来上がって、こういう風に動作するということを非常に分かりやすく説明してくれたので、組立ミスをすることは全くなかった。


 冴内が最後に機構戦士ガンダルのプラモデルを作った時は高校卒業後から専門学校に入学するまでの休みの期間で、その時は上級グレードのキットに挑戦したのだが、何度も内部骨格フレームの組立で左右間違えたり、前後逆に組み立てて作り直すのに相当苦労した経験があった。


「冴内 洋、君は冴内 美衣程ではないが、実に器用なのだな。ここまで全く組立ミスもなく、しかも事前に難しい所を確認して作業するところには何かしらの経験者のような雰囲気を感じる、以前何かこうした作業に従事したことがあるのか?」


 冴内は先に記述した内容のことをさいごのひとに話ながら残りのパーツを組み立てていき、さいごのひとはこの作業が終了し、無事に地球の日本に帰還することが出来たら、自分も是非ともその機構戦士ガンダルのプラモデルというものを作ってみたいと冴内に言った。冴内も久しぶりに自分も作ってみたくなったから一緒に作ろうとさいごのひとに言い、その日が楽しみだとさいごのひとは言った。そうしてフレームの作成その2の作業を完了した。


 冴内がコッペパン号の作業室から出ると、他の皆もコッペパン号にいた。理由を尋ねたところ、初が人類の歴史文明を色々知りたいということで、コッペパン号のVRシステムを使って様々な星々の人々の営みの歴史を見て楽しんでいたとのことだった。


 明日以降も冴内の作業の間はVRシステムに接続して色んな星々の文明を見るとのことだったが、冴内が生まれ育った地球と日本の文化文明、そして直近の冴内の活動記録についてはとっておきで、最後にじっくり見るのだと言っていた。


 冴内は内心で、やっぱりあの「げぇっ!」も初に見られることになるのかなぁとほんの少しだけ心配したのであった・・・

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