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233:大空中戦と戦果

 美衣の声に気付いた巨鳥は上を仰ぎ見るとすかさず状況を理解し迎撃態勢をとった。この辺りはさすが野生動物といったところで、頭の理解というよりは身体が即応したかのようだった。


 翼竜は気付かれないように近づいていたつもりだったのだが、どこからか迷惑な邪魔が入って当てが外れてしまい逆に虚を突かれる形となった。


 巨鳥の方が翼竜よりも一回り以上大きく、飛行能力でも上回っているのがすぐに分かった。翼竜はその形状から旋回能力は低そうで、空中機動性重視というよりも高速で滑空するのを得意としていた。


 巨鳥は太く逞しい脚のカギ爪で翼竜の薄い羽の被膜を傷つけ、翼竜は悲鳴をあげた。


「いいぞ!」美衣は巨鳥の攻撃を褒めたところ、ふと巨鳥の巣の方を見るともう一羽の翼竜が卵を狙って降下しているのを見た。


「ダメーーーッ!」美衣の絶叫を耳にした巨鳥は振り向き、自分の大事な卵がもう一羽の翼竜に狙われているのを理解し「ケェーーーッ!!」と悲鳴を上げた。


 すかさず美衣はまるでライフルの銃口から発射される弾丸のように、一瞬で0から100パーセントの速度で弾け飛ぶように加速し、そのままほぼ垂直降下している翼竜の背中から腹を貫通して突き抜けた。


 そのままだと卵に激突するので、美衣は降下する翼竜の尻尾をむんずと掴んで落下をとめた。


 巨鳥が一瞬目を離したすきに、もう一羽の翼竜は降下速度を利用して巨鳥から距離を取って離脱をはかっていたが、美衣は今捕まえた翼竜をグルグルとハンマー投げのように回して勢いよく投擲した。


 ゴォッ!という凄まじい音と共に大きな翼竜は凄まじい速度で飛んでいき、見事に逃走をはかっていた翼竜に激突。すぐに追いついた美衣の脳天チョップによりもう一羽の翼竜も即死絶命した。そして器用に両方の手で翼竜を尻尾を掴んでぶら下げて空中停止した。


 巨鳥は美衣の周りをグルグルと旋回し、警戒しながら目を大きく見開いて美衣をずっと凝視し続けていた。すると美衣は巨鳥の巣の方で何かが変化しているのが気が付いた。


「あっ!卵が!」美衣が言うと、巨鳥も巣の方を振り返った。


 すると卵が大きく揺れていて、真ん中あたりからひびが入っていた。やがてそのひびはさらに大きくなり、中から殻を破ろうとするクチバシが見えてきた。


「赤ちゃんが生まれるぞ!早くいってあげて!」

「ケェーッ!」


 美衣に即されたかのように巨鳥は一声上げて自分の巣にすっ飛んでいった。巨鳥が到着すると同時に卵の中からフワフワの羽毛に覆われた黄色い大きな巨鳥のヒナが卵から孵った。


「キャァーッ!キャァーッ!」と美衣ではなく、ヒナは大きく鳴いた。

 巨鳥は目を細めてクチバシで優しくヒナを撫でてから、最初に捕まえていた4つ足の動物の肉を小さく引き裂いてヒナに与え始めた。


 ヒナは夢中で巨鳥から与えられた4つ足の肉を食べて、もっともっと!という感じで親鳥に催促した。


 美衣は捕獲した二羽の翼竜を宇宙ポケットにしまってからゆっくり静かに少しづつ巣に近づいて巨鳥の前に出てから「赤ちゃんが無事で良かったね!」と言うと、巨鳥はしばらくじっと美衣の目を見続けてから「ケェーッ!」と一声嘶いた。すると巨鳥のヒナも「キャァーッ!」と鳴いた。


「それじゃ元気でね!」美衣は巨鳥に背を向けて冴内ログハウスに帰投することにした。


「鶏肉・・・まぁ一応鶏肉は手に入れたけど、鳥の卵食べたかったなぁ」


 10分程度で家に到着すると花子の後を大人しくついていく地球のニワトリによく似た鳥が数羽いた。


「花子姉ちゃんそのニワトリによく似た鳥さんはどうしたの!?」

「あっ、美衣ちゃんおかえり!この鳥さんは私が森でお野菜をとっている時に、キツネによく似た大きな動物に襲われているところを助けたんだよ、そしたら皆私についてくるようになったの」

「そうなんだ!その鳥さん・・・食べるの?」

「皆が食べたいならお肉にしてもいいけど、多分皆卵を分けてくれるよ」

「やった!卵食べたいと思ってたんだ!鶏肉はアタイが今日獲ってきたからその鳥さん達は食べないで卵を分けてもらうことにしよう!」

「うん!それがいいと思う!」


「美衣、花子お帰り、ってうわっ!大きなニワトリだね!1メートルくらいはありそうだ!」

「ただいまお父さん!この鳥さん飼ってもいい?多分毎日卵を分けてくれるよ!」

「へぇ!やったね!もちろん飼ってもいいよ!そしたら鳥さんの家を作ってあげないとね」

「アタイが作るよ!」

「私も手伝います!」

「「「コケーッコ!」」」

「鳥さんも喜んでるみたいだ!」

「うふふ!そうみたいですね!」


 美衣が獲ってきた獲物を取り出したところ、ニワトリ達は恐怖で走り回ったが、死んでいることが分かってさらに美衣が万能チョップで手際よく解体していったのでやがて落ち着きを取り戻した。


「すごいのがいたんだね」

「うん、おっきなワシみたいな鳥の巣にある卵を食べようとしていたからやっつけたんだ、危ないところだったけど無事にヒナが孵って親鳥も安心してヒナにエサをあげてお礼を言ってくれたよ」

「そうなんだ、それは良かったね!」

「うん!」


 その後冴内達の昼食は巨大なヤキトリを食べることになった。純粋な鳥類ではなく翼竜ではあったが味の方は意外なことに結構鶏肉の味に近かった。


 まだ完全に熟成していないが美衣が作りかけのしょうゆに似た調味料をベースに他の材料も付け足してあまじょっぱい焼き鳥のたれを作り、タレ味の焼き鳥と塩味の焼き鳥の二種類を作った。さらに花子がとってきた野菜やキノコを間に挟んで巨大な串に突き刺した。串は近くの森からとってきた枝木を万能チョップでいい感じに割って作った。冴内も手伝ってそこそこ器用にいい感じの串を作った。


 やがて、焼き鳥のタレのすこしコゲついた匂いにつられるように良子と初がやってきた。二人とも盛大にお腹虫の合唱を鳴らしながらやってきた。


 焼き鳥というよりは欧米のバーベキューなどで見られる大きな串焼きといった感じのボリューミーな焼き鳥であったが、味の方はバツグンで肉の旨みと肉の間に挟まれた野菜やキノコを交互に食べることで味と食感の変化も楽しめて全員無言でムシャムシャと病み付きのようにモリモリ食べた。結局昼食だけで一羽分の翼竜を丸ごと食べきってしまった。


「夜はもう一羽の鳥も使って鳥ガラスープを作ってラーメンを作ろうと思う!」

「やった!!ラーメン久しぶりだよ!」

「ラーメン私も大好き!」(優)

「私も!」(良)

「らぁ・・・めん?」(初)

「ラーメンは麺料理で美味しいよ!」(美)

「わかった!」(初)

 ニッコリ微笑む初を見てやはり美衣は抱きしめてほっぺたをくっつけた。


 花子は採取してきた小麦に似た植物からまたしても手ですりつぶして小麦粉を作ろうとしたが、コッペパン号の作業室にあるベルトコンベヤー式工作機械が空いているよということで、それを使って採取した小麦に似た植物から良質の小麦粉を精製した。


 美衣はその間今食べた翼竜の骨ともう一羽を解体して取り出した肉付きの骨を使って鳥ガラスープを作り始めた。一緒に様々な野菜や果物も入れて煮込んだ。


 花子が大量の小麦粉を鼻歌交じりでキッチンに運んできたので、そこで美衣と交代して、花子は火加減の監視をし、美衣は小麦から麺を作り始めた。


 以前溶岩石を採取した時に、ベルトコンベヤー式工作機械にて分解再精製された様々な物質材料の中に炭酸水素ナトリウムの粉末を固めたブロックもあったので、それを水で溶かしてアルカリ塩水溶液、いわゆる「かん水」を作って小麦粉に混ぜてこねあげて万能チョップで叩いて伸ばしていったり、等間隔で細くカットした後で揉んだりしてなかなか良い感じで麺が出来上がったので時間を置いて生地を寝かすことにした。


 麺が良い感じに仕上がるまで美衣は花子が連れてきた大ニワトリ達の小屋と簡単な柵を作った。夕方前にはまたキッチンに戻って蒸し鶏や鳥から揚げの下味をつけたりした。


 冴内達が別の宇宙に来て1週間、そしてこのさいしょのほしに到着してから4日目のことだったが、彼ら以外に誰もいない星なので、彼らはひたすら作業をするか食事をするかという日々だった。娯楽らしいことはほとんどしていない日々であったが、こうして生きることが彼らにとって最高の娯楽だった。

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