23:新スキル開眼
通知が切られるやいなやヴーンという音が聞こえてきた。ヴーンはヴーンでもほぼ轟音に近い音だ。生理的に嫌悪感を覚える嫌な音に背筋がゾワッとして気を失いそうになる。
見ると既に目視出来るほどの大きさで、3匹のハチがこちらに向かって飛んできた。見た目はまるでスズメバチで頭のサイズだけでもバスケットボール程はある。そこから生えている牙がなんともヤバイ。
いや、それよりももっとヤバイのが目に入った。お尻の先端にある針だ。なんだアレ、あんなもので刺されでもしたら身体に大穴があきそうだ。当然毒もあるんだろうなぁと思う。
などと悠長に分析している場合じゃないぞ!くそっ!どうしたらいいんだ!?今度の相手は空を自在に飛ぶからチョップを当てるのが難しいぞ。先ほどの熊との闘いを思い出すと、ハチは凶悪な針を向けてヒットアンドアウェイを繰り返していた。
恐怖でパニックになっている自分がいる一方、こんな風に冷静に考える自分がいて、我ながら自分という人間が良く分からなくなるが、本能的にまずは巨木を背にして背中の死角から襲われないように位置取りした。
いよいよハチの攻撃圏内に入り、3匹のハチは自分に対して3方向に陣取り空中停止した。憎たらしいことにハチは刺すと見せかけて刺さないフェイントを繰り返す。
いや!これどう戦ったらいいんだよ!手を振り上げてチョップを叩き込もうにも手の届かない位置をいったりきたりするハチに対してなす術がない。
向かって右のハチが顔に針を刺してきたので、その尻を叩こうと手を振ったらサッと後ろに飛ぶ。完全に右を向いてしまったので無防備な左側頭部に向けて向かって左手側のハチが針を刺してきた!咄嗟に振り返りつつ左手で追い払おうとしたその瞬間!熱ッ!凶悪なハチの針が前腕をかすめた!
3匹のハチはカチカチカチとアゴを鳴らす。まるで勝利を確信して笑っているかのようだ。
被弾した左前腕をチラ見すると傷は深くはないがみるみる青紫色に変色している。目を大きく見開きギョッとした!心臓の鼓動が一気に高鳴り頭に血が昇り耳の奥がジンジンとうずく。毒だ!ヤバイ!コレはヤバイ!
相変らず目の前のハチはカチカチカチとアゴを鳴らしている。恐らくもうじき獲物は毒が全身を駆け巡り瀕死の状態になるのを待っているのだ。
この野郎・・・このやろう・・・コノヤロウ!
助けて!とか死にたくない!とかお母さーん!とかいう言葉ではなくこみあげてくる言葉はただひたすらコノヤロウだった。
ゆっくりと被弾した左腕を顔の前で折り曲げてタメを作り、カチカチカチと笑っているように見えるハチに向けてカッ!と目を見開き、自分の内にある怒りのマグマが爆発するかのような感じをとらえ、大声でコノヤローッ!と言い放ちながら顔の前で内側に折り曲げた左手を水平に外側に薙ぎ払った。
ゴウッ!という音とともに3匹のハチは一瞬で消え去った。ハチに触れてもいないのに斬撃のみでハチは消え去った。
同時に左手が光り輝いた・・・
恐る恐る前腕の傷口を見ると、青紫に変色していたはずの腕はいつもの肌色に戻っていて、浅い切り傷はどこにもなく流血の痕すらどこにもついていなかった。
そしてステータス画面には以下のように書かれていた。
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冴内 洋
20歳男性
スキル:チョップLv20
★スキル:水平チョップLv1
★スキル:ポイズンチョップLv1
★スキル:チョップヒールLv1
★スキル:チョップキュアLv1
称号:チョップロード
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見たこともない意味不明のスキルが一気に4っつも増えていた・・・