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227:漂流生活

 その後冴内達は家づくりを再開した。初は興味深くそれを見守りながら大人しくしていた。


 昨日のうちに家としては大体出来上がっていたので、昨日間に合わなかった窓や開閉ドアの取り付けやトイレを設置していった。一応水洗ではあるが、地中に分解バクテリアにより良質なたい肥を作成する分解浄化装置を設置していた。


 家が完成するとさらに他の食材を食べてみたいということで、昨日は魚だったから今日は肉を食べたいということになり美衣は恐るべき嗅覚でうまそうな動物を探そうとしたところ、初が美衣の袖を引っ張ってどこかの方角を指し示すように指を指した。


「あっちにウマイのがいるのか!?」と、美衣が初に聞くと、初はコクリと頷いた。

「分かった!とってくる!」美衣は勢いよく猛烈な速さで初が指し示した方角にすっ飛んでいった。


 残ったメンバーのうち良子は光演算装置の製作を続け、冴内もそれを手伝うということで演算装置を設置する建物を作成した。こちらの建物は木製ではなく隕石から生成された白いブロックを用いることにした。冴内は美衣のような万能チョップは持っていないのでさいごのひとにアドバイスを受けながらブロックを積み上げていった。


 優はこの星に長期に滞在する可能性を考えて、米を得るために田んぼの作成にとりかかった。久しぶりのライトサーベルを一閃し、湖から灌漑用水路を作り上げた。たったの一振りで一直線の美しく見事な用水路が出来上がった。その後レイピアをくるくる回しながらゆっくり歩いていくと地面はみるみる耕されていき、最後にまたライトサーベルを軽く一閃して用水路から水を引くと見事な田んぼが出来上がった。


 初はそんな冴内達を興味深く見ていた。花子はそんな初を見守っていた。


 美衣が初の指し示す方角に飛び立ってから数分程が過ぎた頃、大きな生き物同士が戦っている姿が美衣の目に飛び込んできた。


 どちらも大きさは20メートル近い巨体で、一方は4つ足で頭は小さく背中側は硬そうな鱗に覆われていて、もう一方の方は太く逞しい2本足で立ち前脚はとても小さく脚というよりは腕のようで、頭がとても大きく口を開けると恐ろしい牙がビッシリと生えていた。要するにどちらも恐竜だった。


 4つ足の方は背中とお腹の境目あたりから出血しており目から涙を流していて、かなり弱っているように見えた。


 美衣はすかさず速度をあげてマッハ6近い速度にまで加速し両腕を頭の前に出してそのままミサイルのように2本足の背中に向かって激突した・・・というよりもそのまま貫通した。


 2本足の恐竜は目の前に自分の頭よりもはるかに小さい虫けらのような生き物を目にしてまぶたをパチパチとまばたきした後で、前腕で胸の辺りをさすってみたところ妙に風通しが良いことに気が付いたが巨大過ぎる頭では自分の胸を目で確認することも出来ずなんとなく???という表情をし、若干間の抜けた鳴き声をしてそのまま地面に倒れて絶命した。なんとなく「なにコレ?」と言っていたような雰囲気だった。


 美衣は4本足の方に向かっていき、出血している箇所に手を当てて「チョップヒール!」と特に声に出さなくてもいいのだが、大きな声で元気よく詠唱すると傷口はふさがり出血も止まった。


 そうして4本足の顔の方に行ってやさしく美衣の身体全体で抱き着いて4本足の顔をさすってあげると4本足は心地よさそうに目をつぶった。その後美衣は宇宙ポケットの中から例のヤバイ桃を取り出したがこれはあぶないんだったと言ってサクランボに取り替えて4本足の口の中に放り込んだ。4本足がサクランボを飲み込むとほんの少し全身が光り輝いた。


 すると4本足は一気に元気になったようで、首を伸ばして頭を天に向けて元気よくアオーンと吠えた。


「元気になったか!良かったね!アタイは美衣!冴内 美衣だよ!冴内 洋の娘!最近この近くに引っ越してきたの!」


 いや、引っ越しじゃなくてある意味遭難してきたんだと思うのですが・・・


「アオーン!アオーン!」

「うふふ!くすぐったい!可愛いね!」

「おっとお肉がいたまないうちにしまわなきゃ!」


 美衣は万能チョップで見事に巨大肉食獣を解体して宇宙ポケットの中にしまい込んだ。解体途中でいつものように端っこの方を切り落とした肉を口にして味を確かめてみたところ、大変ジューシーで美味であり、またしてもその場で10回転程空中回転して喜びを表現した。


 全ての肉をしまい終わると、森の奥の方から4本足の子供と思われる小さな4本足が3頭程現れてきて、恐らく母親だと思われる4本足になついて身体をすり寄せていた。小さな4本足といえども軽自動車程もある大きさだったが、鳴き声は可愛いものだった。


 美衣は「お母ちゃんが無事で良かったね、それじゃアタイはお家に帰るね!」と言って、4本足の親子に向かって手を振ってゆっくりと飛行していった。4本足の親子は美衣に向かってアオーンアオーンと礼を言っているかのような鳴き声をあげていた。


 美衣は新しい家に到着するやいなやすぐにキッチンに向かって行き料理を作り始めた。花子も初と一緒に入ってきて手伝い始めた。初は大人しく二人の様子をひたすら観察していたが、時折美衣が味見をする際に初にも一口食べさせると初はニッコリ微笑んだので美衣はたまらず初を抱いてほっぺとほっぺをくっつけて喜んだ。


 お昼は肉食恐竜の肉でカツを揚げて、花子が作ったパンにはさんでカツサンドを作った。


 やがてお腹をグゥグゥ鳴らした冴内と優と良子がダイニングに入ってきたので、花子と美衣は料理を運んでいった。


「うわ!このカツサンド凄く美味しいね!」

「ホントね!とても美味しいわよ美衣!」

「うん!これとっても美味しい!おかわり!」


「トンカツとは違う感じだけど凄いねこの肉、肉汁がとってもジューシーでほんのり甘さがあって、なんかとても上品な高級お肉のようだよ、これ一体何の肉だったの?」

「恐竜のお肉だよ!みんなのほしにいた奴よりも大きくて強いのがいた!」


「へぇー!恐竜がいるんだ!」

「うん、大人しい恐竜がいじめられてたからやっつけたんだ、いじめられてた恐竜はケガをしていたから治してあげたんだよ。そしたらその後子供達もやってきてありがとうって言ってくれたよ!」

「そうなんだ、よかったね」

「うん!」


 初は美衣の話しをじっと聞いていて、美衣と目が合うとニッコリ微笑んだので、またしても美衣はたまらず初を抱きしめた。


 午後も各自作業を再開し、美衣はさいごのひとに頼まれて宇宙望遠鏡の製作を手伝うことになった。まずは反射鏡の元になるベリリウムが大量に必要だということで、火山地帯にある岩石を採取することになった。


 さいしょのほしに着陸するまえにあらかじめコッペパン号で星を周回して各地のデータはインプットされているので火山地帯のある方角と距離については把握していた。


 早速美衣は飛んでいこうとしたところ初が美衣の袖をつかんで抱き着いてきた。


「初も行きたいの?」

 初は美衣の目を真っ直ぐ見て、コクリと頷いたので初を抱いてゆっくりと浮上して少しづつ速度をあげていった。初がまた美衣の顔をじっと見ると、美衣が「もっと速く飛んでも大丈夫ってこと?」と初に向かって話すとやはりコクリと頷いたので、美衣は飛ばすことにした、何度か初を見ては大丈夫というアイコンタクトを返してきたので、最終的にマッハ10近い速度で飛んでいった。

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