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224:寂しくないよ!

 全宇宙に冴内のげぇっ!が知れ渡り大ブームになっていることなど1ミリも知らない冴内は、コッペパン号の中でのんきに朝ごはんの納豆ご飯をかきこんでいた。おかずは焼き魚と沢庵である。


『宇宙連合憲章では、辺境の未開拓惑星で文明レベルが低い星には一切関与してはならないというのがあります』

「モグモグ・・・ゴクン、となると宇宙人を見つけても会っちゃいけないんだね」


「うーむ・・・確かに宇宙連合憲章ではそうあるようだが、それは高度文明を持つ惑星単位での接触が前提となっているから、わずか5名の家族単位での接触ではその規定範囲には入らないとも解釈出来るのではないか?ましてや今は緊急事態でもあるし、さらに言えばこの別宇宙で我々の宇宙の連合憲章を持ち出しても仕方がないと私は考える」

『確かにそれもそうですね』


「アタイはこの宇宙の人とも仲良しになりたい!」

「うん!私もそう思う!」

「私もそう思います!」

「そうね」


「でもその前にそもそもこの宇宙にも宇宙人っているのかな?」

「アタイはいっぱいいると思う!」

「うん!私も沢山いると思う!」

「そうなんだ・・・じゃあまずはこの宇宙に住んでる宇宙人を探すとしようか」

「「「「さんせーい!」」」」


 冴内はやはりどんな時でも冴えない冴内のままであり、このまま元いた宇宙、ひいては故郷の日本に帰れないのではないかという不安や恐れに全く気付いていなかった。


 冴内が正式ゲートシーカーになってからあともう少しで1年になろうとしているのだが、わずか1年という期間で起きた様々な出来事があまりにも現実離れし過ぎている上に絶え間なく物凄い速度で展開してきたので冴えない冴内じゃなくとも現実的な感覚がどこかおかしくなるのも仕方がない話である。


 そして家族を含めて彼自身も尋常ならざる能力を保有し、さらに試練の門の第4の試練で鍛えた精神力により恐れや不安といった精神的不安はまるでなくいつも通りの平常運転なのであった。


 ひとまずの目的が出来たのでまずは近隣宙域で生命反応のある惑星を探すことにしたところ、ワープを使わない亜光速巡行でここから3日程の距離に大気と水と生命反応のある惑星が見つかったので早速その星に向かうことにした。


 この宇宙の安全な宇宙航路図がない以上、いくらコッペパン号の高性能アンテナをもってしても安全確認不可能な超長距離宙域へのワープは極めて危険なため、亜光速による通常巡行しか出来ないのだった。


 冴内達はそれまでの3日間で家族会議を開き、もしもこのまま元の宇宙に帰れなかったらどうする?と普通は空気を読んで皆を不安にさせるようなことは敢えて口にしないところをやはり冴えない冴内は単刀直入にズバッと聞いてみた。


「父ちゃん母ちゃん良子姉ちゃん花子姉ちゃんさいごのひと音声ガイドがいれば全然大丈夫だ、全く寂しくない、それよりもどんな冒険が待っているのか凄く楽しみだ!」

「私もよ、洋がいて皆がいれば私はそれだけで幸せでどこにいようが問題ないわ!」

「うん、私も同じ。100万年ひとりぼっちで眠っていたからそれに比べれば全然なんでもないよ!」

「私も370万年ひとりぼっちだったから、問題ありません!沢山の人をおもてなし出来なくても皆さんのお世話を出来るだけで私は幸せです!」

「うむ、実を言うと別の宇宙を探索出来るという興味の方が勝っている・・・すまない」

『私も不謹慎ではありますが、また皆さんと宇宙の旅が出来るということで嬉しく思っています・・・すいません』


 冴内はつくづくこの家族仲間に感謝した。考えてみれば冴内以外全員宇宙人なので、純粋な地球の日本人ではないから日本への強い郷愁はないのかもしれない。加えてここにいるのは全員およそ普通とはかけ離れた超強力異能集団なので、どこにいようがどんな状況にあろうが愛する者さえいれば常にポジティブな発想しか浮かばないのであった。


 彼女らには最低限で必要最小限で最大限に絶対的価値のある冴内さえいれば他には何もいらなかったのだ。


 別の宇宙でも冴内達の超強力異能能力は発揮されるのか、冴内の大宇宙の愛は果たしてこの宇宙でも発揮されるのか、今後の別宇宙サバイバルを生き抜くためにも知っておく必要があるということで、さいごのひとと音声ガイドに尋ねてみたところ、宇宙空間の組成成分は変わらないようだという答えが返ってきたので、冴内達はいきなり前準備も下準備も心の準備もないまま、優に短距離ワープでコッペパン号の前方に出るように依頼した。


 冴内達は全員優に捕まり、普段着の恰好のまま死への旅立ちとも言える宇宙の真空空間へとワープした。ワープが出来た時点で既に冴内達は安心しきっており、少女を含む普段着姿の若い家族が宇宙空間に突如出現するという異様過ぎる光景が描かれた。


「うん、別の宇宙でも特に問題ないみたいだね、そういえば花子も宇宙空間でも問題ないの?」

「はい!大丈夫です!以前は海水が苦手でしたけど今はどこでも大丈夫です!」

「冴内 洋、幾つか近くにある隕石を砕いてサンプルを持ち帰ってくれないだろうか」

「うん、分かった」

「アタイがやるー!」

「私もー!」(良)

「私もお手伝いします!」(花)

「洋、私達はいったんコッペパン号に戻ろう!」

「えっ?・・・う・・・うん、分かった」


 優は別の宇宙に飛ばされた不安感というよりも、別の宇宙だろうがどこだろうが冴内をいつもと同じように強く感じ取りたくなり、この機会を逃さなかった。


 別の宇宙でも変わらぬ愛を存分に確かめてひとしきり大満足した優は、大喜びで食事の支度をし始めた。一方若干お疲れ気味の冴内はサクランボを一粒食べた。


 美衣達がコッペパン号の進行方向のかなり先の宙域まで隕石を破壊し尽くしたので、コッペパン号は最大加速で進むことが出来たため、明後日には最初の惑星に到着することが可能になった。


 例の作業室にあるベルトコンベヤーに美衣達が持ち帰った隕石を乗せて調べてみたところ、これまでいた宇宙と全く変わらぬ組成成分であり、反物質などのヤバイものは検出されなかった。


 またしても貴重で豊富な採掘資源を沢山取得できたので、万が一コッペパン号が損耗したり壊れてももう一隻作れるくらいの資材が確保出来た。


 その後皆でお昼ご飯を食べている時に、船の資材は豊富に確保出来たが、美衣にとっての肝心の資材であるところの米と納豆の確保が若干心配になり、今のペースで盛大に米と納豆を消費し続けた場合どれくらいでなくなるか試算してもらったところ、半年程度だという答えが返ってきたので、次の惑星に着いたら米と納豆をなんとかして作り出せないか研究することにすると美衣は力強く宣言した。


 冴内も次の星に到着したらそこの状況次第ではあるが、定住が可能そうであればまずはそこを拠点としていったん落ち着くことを考えた。さいごのひともこれに賛成して、出来ればそこで宇宙望遠鏡の建造にも取り掛かりたいと提案した。


 良子はそれに加えてコッペパン号搭載の演算装置を遥かに凌ぐ超高性能光演算装置の建造に取り掛かると言った。


 各々次々とやりたいことが出てきて、互いに話したり考えたりしているうちに全員とてもワクワクして期待に胸を躍らせた。まさしくこれこそが冒険だという感じで早く次の星に着かないかという気持ちでいっぱいになった。


 彼らの心には不安や恐れなどという感情は微塵もなかった。

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