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220:手代木の新能力開眼

 奈良ゲートの研修センターにて昼食をとり、第5ステージの戦闘記録映像を機関の戦術研究部門の職員に渡した後、力堂達は再度試練の門へと挑むことにした。目的は向上したステータスや装備の確認と、第6ステージの様子見である。


 もはや最近ではごく当たり前になってしまったが音声ガイドが第6ステージの大体の様子を事前に教えてくれた。しかもご丁寧なことに今の力堂達のステータスと戦術レベルならば容易に攻略出来るだろうというお墨付きまでもらう程だった。そうして力堂達は第6ステージへと入っていった。


 第6ステージも基本は洞窟という構造で、温度が高く乾燥しており、壁や天井はレンガブロック状になっており、ところどころ地面がレンガブロックではなく完全に砂地になっている箇所があった。


 10分程歩いたところで手代木が注意喚起を呼び掛けた。今の歩行速度で5分後の距離に危険対象物の存在を感知したのだ。ここまではそれまでの手代木とそれほど変わらないのだが、ここからが本領発揮になるのであった。


「こっ!これは!?」(手)

「どうした手代木?」(力)

「ス、ステータスが・・・恐らくHPとMPだと思われるインジケーターが僕には認識出来ます!」

「マジか!まるでゲームだな!」(矢)

「でもそれはとても有益な情報ね」(良)

「でもまだぬか喜びは出来ません、ともかく攻撃してみてどうなるのか確認したいですね」

「よし、このまま近づいて接敵しよう」(力)

「「「了解!」」」


 力堂達はそのまま前進し、危険対象物の存在を遠目に目視出来る所でいったん停止して、攻撃準備を開始した。まずは良野が手代木の指示で氷属性の魔法攻撃を放ち、吉田も新調した3連装ボウガンにて氷属性の矢を一気に3連射した。


 良野と吉田の攻撃は見事に命中し、危険対象物のHPと思われるインジケーターバーがゴッソリと削られて残り2割か1割にまで減った。


「やった!残り1割程度までHPが下がりました!良野さんもう一度お願いします!」

「分かったわ!」


 良野がもう一撃氷属性の魔法攻撃を放つと危険対象物は消滅した。


 今の所他の危険対象物の存在は検知されなかったので、一応慎重に歩を進めて今仕留めた危険対象物へと近づいていった。


 力堂達が危険対象物がいたと思われる場所に到着すると、青紫がかった黒い色のトゲが多く生えている何かの甲羅と太い針が落ちていた。鈴森がいないのでそれらの詳細な情報は分からないが明らかにサソリのような存在だろうということが分かった。とりあえず針の先端に注意しながら吉田がアイテム格納ポケットにしまった。


 力堂達がさらに先を歩くと同じように10分後にまたしても同じような反応を手代木は感知した。今度は2体いた。


 まず1体を同じ攻撃で仕留めたところ、もう1体の方が力堂達の方に向かって進んできた。もう1体も十分良野と吉田の遠距離攻撃で仕留めることは可能であったが、敢えてそれを選択せずそのまま力堂達からも危険対象物に近づいていった。


 危険対象物との距離およそ10メートルというところでまたしても手代木は声をあげた。


「あっ!ステータスが!ステータスが表示されました!砂漠大サソリ!レベル90、HP5百、攻撃力1千、毒針威力2千、防御力3百、素早さ8百です!」

「マジかよ!スゲェな!!」(矢)


「んっ!これは!?氷と水に弱い?・・・頭?目と目の間・・・!!!分かった!弱点は眉間です!」

「オイオイオイ!スゲェな!コイツぁオレにやらせてくれ!」(矢)


 言うが早いか矢吹はすっ飛んでいったが、これまでずっと試練の門を一緒に挑んできた仲間達であるので、何も言わなくても良野は氷属性の補助魔法を矢吹の新たな手甲装備に施し、力堂も続いて走り剣で盾をバンバン叩いて砂漠大サソリに威嚇した。


 矢吹はその名のように矢のように猛ダッシュして砂漠大サソリの眉間に手甲を叩き込んだ。今矢吹が装備している新しい手甲は以前のものと違いカーブした牙ではなく真っ直ぐなトゲが生えているので、ダッシュ力をそのまま拳に乗せて右ストレートを叩き込んだ。


 砂漠大サソリは矢吹の右ストレート一撃で消滅した。


「スゲェーッ!何が凄いってこのブーツとんでもない代物だ!自分の目測が追いつかない程速くてそっちの方にビビっちまったぜ!」

「あぁ全くだ、オレも完全に目測を誤った、そこまで加速するとは思わなかった」

「あと、この手甲もとんでもない性能だ、見た目めっちゃ硬そうなサソリだったのにまるで衝撃がなかったぞ」

「あぁ、そして何より手代木の能力だ、これはとんでもないことになったぞ、これからの戦闘概念が大きく変わる可能性を持っている」


「はい、戦術運用に取り入れれば生存確率が飛躍的に向上します、さらにこの情報を提供して全てのゲートシーカーに公開すれば、ゲートシーカー全員の安全確保に繋がります!」


「一度攻略完了してしまった試練の門にはもう入ることは出来ませんが、それ以外の通常のゲート世界での危険対象物の調査にこの能力を用いれば最初のイノシシなどのステータスも全て明らかになって多くのゲートシーカー達の手引きになります!何か僕の新たな役割が見えた気がします!」


「これはある意味戦闘専用の鑑定スキルといっても良いな」(力)

「ええ、全くそうですねそう思います」


「やっぱ試練の門はスゲェな、全く見つけてくれた冴内様々だぜ」

「全くだ」(力)

「その通りですね」(手)

「「ウンウン」」(良野&吉田)


 当初は軽く様子見をする予定だったのだが、結局その後も力堂達はサクサク進んで行き第6ステージのボス部屋の前でいったん試練の門を出た。ドロップアイテムが良いものであるなら何度も繰り返して、少しでも機関に還元しようという意図である。


 当然力堂達にとっての利益もかなりの額になるのだが、既に十分すぎる程の金額が彼らの口座には入っており、彼ら自身の儲けよりも機関、引いてはゲートシーカー達、薬の素材になるものはさらに一般の人々の役に立つことが彼らの念頭にあった。


 力堂は鈴森に連絡を入れてゲートビレッジの換金所に行って素材を全て預けた。奈良ゲートのアイテム換金所は今や富士山麓ゲートの換金所よりもはるかに大きな施設になっていた。


 その理由は当然試練の門があるからで、試練の門からもたらされるアイテムは質、量、大きさ共に世界のどのゲート世界よりも勝っており、鑑定を行うシーカー達も多く配属されていて、3箇所で鑑定が行われていた。またアイテムの一時保管用の大きな建物も隣接して建てられていた。


 今回第6ステージで力堂達が持ってきたアイテムは砂漠大サソリの毒針と甲羅と巨大ハサミと肉、そして砂漠巨大ワームの牙と胆汁エキスと肉、最後に砂漠大トカゲの甲羅、尻尾、牙、肉があり、どれも高品質で素材のステータスも高性能であり、肉も相当に美味であることは間違いなく、ワームの胆汁エキスは薬の材料として相当有益であり、サソリの毒針は危険対象物の攻撃用にも使えるし、血清を作れば解毒薬としても大いに役立つものであった。


 既に力堂達は換金額についてあまり関心がない境地にまで達していたが、それでも今回の持ち込みで3桁の億に届きそうな程の価値があった。


 まだ夕方までには十分時間があったが、力堂達は奈良ゲート研修センターに戻り、これまでの戦闘記録映像の提出と、後に続くシーカー達のために詳細な戦闘情報や実際に戦闘した際の感想などを戦術研究職員達に報告して攻略情報の作成に協力した。


 戦術研究職員達を最も驚かせたのはやはり手代木の新能力で、危険対象物のステータスが個体差はあれども数値化することが出来たことはおよそ80年に渡るゲート世界の歴史上初めてのことで、この先に与える影響は計り知れないものがあった。


 冴内の突出した活躍だけが目立つ一方で、力堂達のこうした地道な活躍も極めて大きな功績をもたらしていたのであった。

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