219:力堂達のステータス
これまでの戦闘により、巨大スライムは最初に登場した時に比べ明らかに半分以下にまで小さくなっていたが、力堂達の攻撃方法は変わらず常に淡々と着実にダメージを与えていた。
途中何度か小型分離スライムの射出攻撃が繰り返されたが、その時手代木は小さな分離スライムに対して実験を行っていた。
水属性を纏わせたナイフでの攻撃は逆効果でスライムが若干大きくなり、風属性ナイフで離れた位置から斬撃を放ったがある程度は切り裂いても結局元に戻って無効で、最後に帯電したナイフを使ってみると伝導率が高いため一撃でスライムの中央部にある核を破壊して消滅した。当然その際の様子はハーネスに取り付けられたアクションカメラで撮影記録されている。
「電流が効きます!核まで届きます!良野さん!」
「分かったわ!」
良野が補助魔法で力堂の剣と矢吹の手甲に雷属性を用いて帯電させ、自身も雷雲をスライムの上空に発生させるべく集中し始め、吉田は自分と手代木の分のボウガンの弓を自慢の怪力で引き、手代木は帯電した矢をゴム手袋をはめて慎重に取り出した。
良野と手代木が共に「準備完了!」と言い放ったところで炎属性から雷属性に変えた攻撃を行った。属性を変えただけで戦闘方法自体はこれまでと何ら変わらずやはり淡々と着実に行った。これこそまさにプロフェッショナルが行う現代戦闘だった。
これは後に続くゲートシーカー達にとって大いに役立つものになるだろう。冴内達やしろおとめ団達のように規格外過ぎる戦闘スタイルは地球人のゲートシーカー達には正直なところまったく参考にならないのである。宇宙のチョップとか、口からドラゴンブレスとか吐かれたところで、誰もそんなことは出来ないし、加えてHPやMPや防御力や耐久力などの身体スペックが天文学的に馬鹿げた数値なのでまるで参考にならなかった。
その点、力堂達の戦闘映像は極めて後進に続く者達にとって有益だった。とはいえそれでもその力堂達ですら現在地球人類史上最強のチームなので、彼らが淡々と簡単に行っているように見えることを実際にやってみることが出来るゲートシーカーはまだ存在していなかったが・・・
淡々と雷属性攻撃を繰り返した力堂達は5度目の攻撃にて巨大スライムを撃破消滅させた。
最後に巨大スライムがグニュウと後ろに伸びてゴムのように力を溜めた後で一気に物理攻撃を仕掛けてきた際に、円錐状に形を変えて先端を鋭利に硬質化してきた時はかなりの恐怖を味わったが、力堂の持つ美衣の卵の殻の強さはそんなものでは傷一つつけることすら出来ず、力堂はヒットの瞬間に盾を斜めにして攻撃を逸らしたので完全ノーダメージだった。
戦闘開始から1時間もかからず力堂達は試練の門、難易度「最高に難しい」第5ステージのボス部屋を攻略完了した。
報酬アイテムとして各自の目の前に宝箱が出現して中身は以下の通りであった。
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力堂
ブーツ:防御力増大、しっかり踏ん張れば後ずさりしない
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矢吹
ブーツ:防御力増大、俊敏さ増大
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良野
ブーツ:防御力増大、空中移動可能
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吉田&手代木
ブーツ:防御力増大、壁や木などに張り付き垂直にも天井で逆さでも歩くことが出来るが、装備車の脚力次第であり、残念ながら荷物などは重力の影響を受ける
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ステータスボーナスによって力堂達のステータスは以下の通りになった。
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力堂 拓馬
38歳男性
HP(生命力):2千
MP(魔法力):0
攻撃力:2千
防御力:3千
魔法能力:0
素早さ:5百
異常耐性:1千
魅力:1千
幸運度:5百
スキル:堅牢Lv7百、統制Lv2百
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吉田 香
30歳女性
HP(生命力):2千5百
MP(魔法力):0
攻撃力:6百
防御力:8百
魔法能力:0
素早さ:1千
異常耐性:5百
魅力:4百
幸運度:3百
スキル:管理運搬Lv1千
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矢吹 丈太郎
29歳男性
HP(生命力):1千
MP(魔法力):0
攻撃力:5千
防御力:1千
魔法能力:0
素早さ:3千
異常耐性:2百
魅力:2百
幸運度:3百
スキル:格闘Lv1千
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良野 沙良
28歳女性
HP(生命力):4百
MP(魔法力):2千
攻撃力:2百
防御力:4百
魔法能力:2千5百
素早さ:2百
異常耐性:2百
魅力:8百
幸運度:7百
スキル:マルチマジックLv1千
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手代木 三木雄
26歳男性
HP(生命力):5百
MP(魔法力):0
攻撃力:3百
防御力:3百
魔法能力:0
素早さ:1千
異常耐性:2百
魅力:3百
幸運度:2百
スキル:状況分析Lv1千
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ちなみにしろおとめ団の中でも紙装甲と恵子に言われ笑われた温子の初期スペックは以下の通り。
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しろおとめ・温子
17歳女性
HP(生命力):1千
MP(魔法力):3千
攻撃力:1千
防御力:1千
魔法能力:3千
素早さ:1千
異常耐性:4千
魅力:4千
幸運度:1万
スキル:治療幸運Lv2千
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「やった!格闘レベルが千になった!今日は帰りに憧れのバトルグローブにチャレンジするぜ!」
「私も千になったわ!優さんに新しい魔法を教えてもらおう!」
「あれ?僕は・・・!!!こっ!これは凄いことになってるかもしれません!」
「どうした手代木?」
普段滅多に興奮しない手代木であったが、この時は珍しく興奮した様子だった。もちろん良い意味での興奮であろうと全員分かっていた。
「もしかしたら、敵の・・・危険対象物のステータスが分かるようになっているかもしれません!」
「「なんだと!!」」(力堂&矢吹)
「なぁ大将、まだ昼前だしよ、いったん戻って昼飯食ったら軽くでいいから6階に挑んでみねぇか?」
「僕も是非そうしたいです」
「私もいいわよ」
「アタシもいいよ」
「うむ・・・そうだな、手代木の言うことが事実ならばこれはこの先計り知れない恩恵があるし、手に入れたブーツの効果も試したいところだ、では昼食後はそれらを確認しに行くとしようか」
「「「「賛成!!」」」」
力堂達はいったん奈良ゲート研修センターに戻って昼食をとることにしたが、途中で武器屋に寄って矢吹がこれまであこがれだったバトルグローブを装備出来るかどうか試してみた。このバトルグローブは当初元子が装備して使用したものである。
果たして矢吹は装備することは出来るのかと、力堂達も興味津々で見守ったところ見事に装備することが出来たので全員の目が輝いたが、残念ながら矢吹が出来たのは装備するところまでが精一杯で、今の矢吹のレベルでは重すぎて素早いパンチを放つことなど不可能であった。しかし、その一つ下のレベルの手甲については装備することが出来たので、そちらを購入することにした。
力堂達が今居るのは武器屋の中でも関係者以外立ち入り禁止の最上級アイテムだけが陳列されている特別室で、矢吹が手にした手甲は一つ下のレベルとはいえ数十億円もする超高額アイテムである。それでも今の力堂達にとっては十分支払えるだけの財力があり、今現在使用している手甲を買い取ってもらえば差額は数億円で済んだ。
力堂もこれを機に剣を買い替えて一段階グレードをあげた。手代木と吉田もボウガンを3連装のものに変更し、良野は新たに魔力向上指輪を購入した。
全員思慮分別のある大人達ではあるが、ステータスが向上した上に新たに能力向上アイテムを装備したものだから、腕試しをしたくなる気持ちには抗えなかったのであった。