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215:おとめぼし観光体験

 神代から提供された各地の人気観光宿の事例と誠の参加協力により、おとめ観光株式会社の事業計画が徐々に定まっていき、その感触を得るためにまずはモニタリング調査をするということで、力堂達に宿泊してもらい意見を聞くことになった。


 メンバーは力堂達に加え、鈴森、宮夫婦、木下、力堂の妻の10人となった。矢吹と手代木の妻はゲートシーカーではない一般人のため不参加である。


 実際に観光業を開始した際は最初は最大20人までの少人数を手厚くもてなす予定である。かなり攻めた価格設定でしろおとめ団と花子率いる接客ロボット達で質の高いサービスを提供する。


 今後従業員を増やすことも計画にはあるが、そこで多くの観光客を入れてしまうと、ゴミ問題やマナー問題など、今の素晴らしい自然環境への悪影響リスクがあるので、当面は少人数の団体客を付加価値の高いサービスで満足させる方針である。


 力堂達がみんなのほし経由のゲートを通過して宿泊所に到着するとそれぞれの部屋の案内を花子が大喜びで完璧にこなし、いったん荷物を預けた後は移動用モビリティに乗ってしろおとめ号へと向かって行った。


 しろおとめ号に着くと、るきが観光ツアーガイド役ということで、これからしろおとめ号に乗って絶景を楽しめる場所を巡り、後半では大人しく可愛い動物達とのふれあい体験もあると説明した。


 力堂達はしろおとめ号の前方上部にある展望デッキへと案内された。前方及び上面はまるで透明ガラスのように外界が非常に鮮明に映し出されていた。


 しかしながらこれはあくまでも投影された映像に過ぎないので、今後は安全面を十分に確保した上で別の遊覧船を用意するとのことだった。その遊覧船は窓がフルオープン出来るようにして、風、音、匂いなどの自然をそのまま感じ取ることが出来るものにするとも説明された。


 全自動操縦ではあるが、操縦責任者である元子の細かい指示通りにしろおとめ号は進み、見事な絶景ポイントを次々と通過していった。


 およそ地球では見ることが出来ない色彩と自然の創造物に力堂達を息を飲み、映像情報とはいえその素晴らい美しさと臨場感と迫力に圧倒されっぱなしでグゥの音も出なかった。


 やがてしろおとめ号は綺麗な湖近くの草原地帯に着陸し、力堂達は外に出ることになった。そこではニアと沢山の動物達がいて、どれもフワフワモフモフで誰が見ても温和で癒される可愛い見た目の大人しそうな動物達であった。


 ニアからこの子達は大人しいので触っても大丈夫だと説明され、仲良くなりたい場合は好物のおやつをあげると良いニャと言われそれぞれの好物も用意していた。


 良野と吉田はそんな動物達も良いがニアを触りたくてウズウズしていたが、なんとか我慢していた。

 旧姓早乙女はものすごく喜んでフワフワモフモフに抱き着いてとても癒されていた。

 力堂夫妻は早くも良くなついてくる大きな動物の背中に乗ってゆっくりと辺りを歩き回っていた。

 他の面々も様々な動物達にふれあい、とても癒された様子だった。

 最後にワタリタビシロオオガラスの背中に乗って湖上空を飛ぶ体験も楽しんだ。ワタリタビシロオオガラスは冴内達が育てた4羽以外に冴内達が育てた4羽が引き連れてきた仲間達もいた。


 一通り絶景を眺め動物達とのふれあいを楽しんだ後は食を楽しむということで、力堂達一行はおとめレストランに向かった。


 おとめレストランで出てきた料理は、当時のナンバーワン人気のオアシス大クラゲのソテー、お肉ロックンロール、そして新たな名物看板料理になるよう良美が創作したおとめ寿司が出された。食後にはおとめぼしで自然採取された果物と、地球のヤギに似た貴重種の動物からとれたミルクを元に作ったアイスクリームが出された。


 どの料理も地球人である力堂達にもちゃんと口に合い、しかも衝撃的な美味しさだった。とりわけ名物看板料理を目指して良美が創作したおとめ寿司が日本人である力堂達をも唸らせる程の完成度で、見た目、味、舌ざわり、どれも一級品で、地球には存在しない新鮮な魚介とそれを見事な包丁さばきでその素材の最も美味しいところを引き出す目利きと技量は恐らく何かしらのコンクールに出場すれば優勝間違いなしのレベルだった。正直なところもっと大きな舞台で活躍すべきではないかとすら思える程の腕前だった。


 食を楽しんだ後はおとめ観光宿泊所最大の魅力アピールポイントである大温泉浴場へと向かった。


 日本人である力堂達にはまさに馴染みのある高級温泉宿といった感じで、温泉特有の匂いと木の香りのする廊下を歩いて行き、広々とした休憩所に清潔な脱衣所を通過して、大浴場へと入るとまさに大温泉パラダイスといった風景が広がっていた。


 大風呂の他に様々な色の小さな温泉風呂や露天風呂もあり、露天風呂の方は遠く水平線のかなたに沈みゆく太陽が一望出来て最高の眺めを楽しみながら入浴出来た。朝日を拝む朝風呂や、夜はとても近くに感じる満天の星を見ながらの入浴を楽しむのも最高だと感じた。


 こうしておとめぼし観光宿泊体験を存分に楽しんだ力堂達は翌日恵子達しろおとめ団を前に感想を述べることにした。


 力堂達は文句のつけようがない程に、地球上でここまでのレベルの観光宿泊施設はそうそうないトップランクのものだと述べた。


 鈴森は今や鑑定スキルがレベル50を超えており、間もなく60に到達する程なので、今や彼の鑑定結果は世界的に最も信頼度の高い格付けとなっている。


 その鈴森が昨日1日体験して観光業という観点で鑑定してみた結果、景色の見事さ、食事などのサービス内容、施設の充実度などどれをとっても間違いなくトリプルAランクだと断言した。


 敢えて唯一挙げるとすれば、これだけの質のサービスを彼女達少人数で提供するには、観光客の人数制限があるということぐらいだが、そもそも少人数の客をもてなす方針意義をしっかりと最初に設定しているので何ら欠点にはならないと述べた。


 これならば例え価格が高くてもそのお金を払ってでもまた来たいと思うこと間違いなしで、一度来た客は確実にリピーター客になるだろう、もちろんそれには自分達も含まれると力堂は言った。


 恵子達はそんな力堂達の予想以上に上出来過ぎる感想を聞いて大喜びした。


 残る課題は価格設定をどうするかだが、そもそもしろおとめ団達は辺境に近いアステロイドベルト宙域で宇宙海賊稼業をやっていた身なので金銭感覚に疎く、ましてや地球の日本の貨幣価値など知る由もないので一体幾らにすればいいのか見当もつかなかった。


 しかもここまで費用は一切かかっていないのだ。食材も現地調達、しろおとめ号の燃料費も移動モビリティの改修費用も、温泉大浴場の改修費用も、花子を筆頭にした給仕ロボット達の人件費も全て無料であり、しろおとめ団達の労働時間くらいしかかかっていないのである。


 そのため価格設定を幾らにすればいいのか全く分からなかった。しかも貨幣はどの宇宙のどの星のどの国のものにすればいいのかも分からなかった。鈴森の感覚的には日本円で一人当たり一泊二日で20万円という強気の価格設定でも支払う客はいるだろうと言ったが、やはりしろおとめ団達にはピンと来なかった。


 この件に関しては誠に全部任せることにして、様々な宇宙人達が来ても対応出来るように各種設備の充実、そして新たな遊覧船の建造、観光ルートも複数バリエーションを検討することにした。


 ここでさらに課題が浮上した。一つにはどう宣伝するか、どこまで宣伝するかである。しろおとめ団達は実の所お金には全く困っておらず、それどころか誠から教わってようやく最近知ったこととして、自分達が地球上では有り得ない程の大金持ちになっている事を知ったので、正直なところ儲けようという気概がなくなってしまったのである。


 そこで、彼女達は自分達の心と身体を救ってくれた冴内と、彼の出身地である地球という星の日本という国に対しての恩返しとして無償で日本人達をもてなすことを考えたのだが、ここまでやってこれるのは自分達や力堂達のようなゲートシーカーと呼ばれる人達だけで、それはほんの一握りの選ばれた人間達だと知り、その多くは経済的にも健康的にも恵まれた人達であるとも教えられたので、より多くの普通の日本人達へのサービスの提供は出来ないことを知って少し残念な気持であった。


 事業の根幹ともなりえる熱意と精神の面で少しだけモヤモヤするものを感じたので、しろおとめ団達は冴内や誠経由で神代に相談することにした。

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