214:結婚準備
おとめぼしにておとめ観光株式会社が着々と事業開始に向けて進んでいる一方、りゅう君と龍美の結婚式の準備も着々と進んでいた。ついでに神代と誠の結婚式も着々と進んでいた。
龍族の結婚式はかなり厳粛で荘厳なものになるらしく、冴内絡みで龍封じから戻った龍との結婚ということで多くの長老達も出席するということになり日程調整なども含めて3ヶ月後に行うことになった。これでもかなり急いだほうであり、名誉会長やオジサンが各所に働きかけたおかげである。
神代の方もゲート局長という日々多忙な毎日を送る身分であるのと、それに加えて相手はやはり同様にあの冴内がからんでいる宇宙人ということで、身内だけでひっそりと行うという訳には到底いかず、全世界から局長達はおろか名だたるシーカー達にマスコミ軍団などもやってくるため、こちらも3ヶ月後ということになった。こちらもこれでもかなり急いだほうである。
せっかくなので、りゅう君と龍美の結婚披露宴パーティーと神代と誠の結婚披露宴パーティーを合同でやろうと冴内が提案したところりゅう君と龍美と誠は大喜びで賛同してくれたが、神代は神々しい存在である龍族と一般市民である自分が一緒にやるなど身分違いだと言ったが、神代以外の全員が気にするな、それよりも一緒に盛大に祝おうと希望したので神代は恐縮しつつも従うことにした。
りゅう君の披露宴パーティーでは干し柿を用意すると確実に皆大喜びしてくれるだろうから、冴内達は富士山麓ゲートの第3農業地へ行って、大量の干し柿を用意してもらえるよう頼みに行くことにした。
その際、しろおとめ団の良美も一緒に連れて行った。良美は第3農業地でとれた米の味に非常に感動しており、是非ともおとめレストランで寿司などの米料理を提供したいと思っていたのだ。そのため今後おとめ観光株式会社と正式に事業提携のお願いをするために冴内に同行することになった。
冴内達が到着すると第3農業地では村全体が大歓迎のお祭り騒ぎで盛大に冴内達を迎え入れた。
冴内が事情を説明すると、りゅう君と龍美の結婚披露宴パーティーまでに干し柿を大量に仕込むと言ってくれた。またおとめレストランへの米の提供も二つ返事で了承してくれた。
そんなおり、干し柿だけでなく干し芋も自慢の一品なので食べて見れくれと渡されたので、冴内達は全員一口食べてみたところ、衝撃的な美味しさだった。素材が持つ自然の甘さが引き立ち、甘すぎず優しいほのかな味わいと、柔らかくパサつかない絶妙なしっとりした舌ざわりが絶品だった。さすがの美衣も良美もこればかりは調理スキルでなんとかなるものではないので、完全に脱帽だった。
「やっぱりここの皆にはかなわない!」と満面の笑みで干し芋を食べる美衣を見て、第3農業地の村人達は大満足だった。彼らは自分達が作った作物などを心から美味しそうに食べてくれるのを見るのが何よりの喜びだった。
いったん干し芋を多めに持って冴内だけがみんなのほしに戻り、りゅう君に連絡して干し芋っていうのがあるんだけど、りゅう君達の口に合うようなら結婚披露パーティーに出そうと思うと言うと、大興奮して龍美とすぐにやってきた。何故かりゅう君のオジサンと名誉会長までやってきた。
りゅう君達がリングゲートから出てくると、既にリングゲートまで迎えに来ていた冴内の両手一杯に抱えられた干し芋の匂いを嗅ぎつけたらしく、全員ゴクンゴクンと大きな音でツバを飲み込んでいた。
「冴内殿!それが干し芋というものでゴザルか?」
「うん、僕らが食べたらもの凄く美味しくて、皆の口にも合うといいなと思って持ってきたんだ」
「なんと!わざわざ拙者たちのために!かたじけのうゴザル!」
早速りゅう君、龍美、名誉会長、オジサンは干し芋をその大きな口でパクリと食べたところ・・・
【グワァーオーゥゥ!】
【グワァーオーゥゥ!】
【グワァーオーゥゥ!】
【グワァーオーゥゥ!】
冴内は風圧で10数メートル吹き飛ばされた。生身の人間なら大怪我していただろう。
「うまいっ!コレはうまいぃぃぃ!!」(会長)
「美味しいぃぃぃ!!こんなに美味しいものを食べたのは生まれて初めて!!」(龍美)
「拙者もでゴザル!こんなに美味なものは初めてでゴザル!」(りゅう君)
「ついでについてきてよかった!!」(オジサン)
「ハハハ・・・それは良かったです」
「冴内殿!こっ!こんなに素晴らしいものを結婚披露宴パーティーで出すと言うのか!」(会長)
「はい、干し柿と一緒にお出しする予定です」
「素晴らしい!コレは結婚式だけでなく披露宴の方もワシは出席するぞ!」
「会長!有難う御座います!」(りゅう君)
「りゅうよ、オヌシが甥で本当に良かった・・・」
「気に入ったようで良かったです、とりあえず今日のところはコレをお持ち帰りください、結婚披露宴パーティーまでに沢山作ってもらえるように頼んでおきます」
「かたじけない・・・しかし、冴内殿には何から何までお世話になりっぱなしで、我々からは何の恩返しもしておらず、面目ない限りでゴザル」(りゅう)
「左様!このワシを生き返らせてくれた時のお礼も我が種族と友好関係を結んでくれるだけで良いと言って下さったが、さすがに何のお返しもないというのは我らが龍族の名折れでござるな」(会長)
「いやいや、お気になさらず、干し柿や干し芋は僕達庶民でも普通に手に入れて食べることが出来る食べ物ですから」
「そうだ!冴内殿、本来ならば龍族の婚姻の儀は龍族のみ、それも選ばれし者のみしかその場に立ち会うことは許されぬのだが、是非とも冴内殿にもお立合いいただくことは願えないだろうか?」(会長)
「えっ?そんな大事なしきたりの中に部外者なんかが入ってはいけないんじゃないですか?」
「いや天下宇宙の冴内殿とあれば、頑固者の長老たちも頷いてくれるじゃろう、何より初代名誉会長のワシが直々に推薦すれば、誰も反対する者などおらんじゃろう」
「それは良いお考えですな!」(オジサン)
「拙者達も、冴内殿に見届けてもらえるのは望外の喜びでゴザル!」
「冴内様!私からもお願いします!私が本来の姿を取り戻せたのも全て冴内様のおかげです!」(龍美)
「分かりました、では喜んで出席させていただきます、ところで僕の家族はどうでしょう?」
「もちろん全員参加してもらいたいがいかがか?」
「良かった!多分皆喜ぶと思います!」
「では、日取りが決まり次第、こちらから連絡させていただくので、よろしくお願い申しあげる」
「分かりました!楽しみにしています!」
一方神代の妻になる誠は神代からおとめ観光株式会社の事業開始に向けた手配が順調に進んでいるということを報告しにおとめぼしに行き、宿泊所に行ってみたところ恵子は空中庭園都市中央管理センターにいると花子から教えてもらったので、そこに向かおうとしたところ無人自動運転モビリティがやってきたのでそれに乗って移動した。
どうやら拓美が早速修理改良した観光客の移動用モビリティらしく、乗り心地や他に気づいた点があれば教えてくれと移動用モビリティに備え付けられているディスプレイパネルで誠に話しかけた。
3分程度で快適に目的地に着き、誠は恵子に合流すると日本国で観光事業を手掛ける人気の宿などのモデルケース事例をもとに事業内容、サービス内容、観光ツアー内容、価格設定などの資料を提示した。また、日本国で一応株式会社として正式登録をするが、そもそも別の宇宙の別の星で事業を展開するという前代未聞のことなので、富士山麓ゲート機関の事業の一環として神代直轄管理(実質誠が管理)の元に税法上は特別免除ということになり、他にも非合法や非常識なことをしない限り、ほとんど自由に行って良いということになった。
恵子は誠に会計や法律面における面で支援してもらえると助かると言ったところ、それならまだ使っていない試練の門の最終報酬のげんしょのきおくをその分野における知識や技能の習得に使うと言ってくれた。
余談ではあるが、しろおとめ団の中で人族として最も社会的に成功するのは誠である。まだまだ先の後年の話しではあるが、最終的に彼女は宇宙連合法廷における最高位裁判官の7人のうちの一人に選出される。主に会計不正などの経済関連面での司法のエキスパートして活躍することになるのであった。
そこに至るまでには神代のパートナーとして富士山麓ゲートの会計業務を取り仕切ったり、税法上の処理などでおよそ地球人類ではたどり着けない知識と処理能力により大いに神代を補佐し、やがてはその方面での世界ゲート機関のトップにもなるのであった。最終的に神代との間にもうけた子供は8人にもなり、それぞれが経済界や法律方面で活躍する人物になるのであった。