213:ボーナスの使いどころ
おとめ観光株式会社としてやるべき仕事を恵子は皆と相談しながら考えることにした。
まずは観光客を呼び込む前に色々と準備がいるということで、まずは生まれ変わったこの星のことについて良く知らないといけないだろうということになった。
観光客にとって危険な場所には行かせるわけにはいかないし、それよりも観光名所の景勝地を沢山調べて観光案内しなければならないのだ。他にもこの星ならではの美味しい食材の調達先も見つけて確保しなければならない。宿泊施設は花子と配下のロボット達がやってくれるので、そちらはまかせるとして他にもやるべきことは沢山あった。
まずは惑星調査ということで、しろおとめ号に乗り込み危険区域と観光名所になりそうな場所と食材調達場所を探索するということで、拓美、元子、良美、冷香、るき、ニアが探索活動を開始した。
恵子と温子が残り、空中庭園都市中央管理センターにて指示出しや状況分析などを行った。良子から中央管理システムの管理者代行権限を受け取った恵子がシステムにアクセスすると、驚くべきことに一夜にして大変革を遂げたおとめぼしの地形や気候風土や植生に生物情報などが全て新しく登録されており、すぐにデータをしろおとめ号に転送し、これにより探索活動が大幅に短縮されることになった。
しろおとめ号は途中で浮遊戦車を降ろし、操縦が出来る拓美と食材探しとして良美、護衛としてニアの3人を割り当てた。
残ったメンバー達で恵子から送られてきたデータと指示をもとに危険区域と観光名所になりそうな場所の実地調査を行うことにしたが、おとめぼしは冴内のリクエストを見事なまでに完全に果たしたようで、危険区域になりそうな場所はほとんどなく、至るどころが見どころ満載の壮大な景勝地ばかりだった。
「どこもかしこも良いトコばかりで決めらねぇっぺや!」
「全くだ、どの場所も実に美しい・・・」(冷香)
「季節ごとや、日によって観光周回コースを変えるのはどうですか?」(るき)
「それは妙案だ、コースを定期的に変えれば観光客を飽きさせることもないだろう」(冷香)
「良いアイディアだっぺ!冴えてるっぺよるき!」
「ありがとう!」(るき)
「では幾つかコース設定しておこう、っと、こういうのは恵子が得意なんだよな・・・恵子、そっちで出来るか?」(冷香)
「ケシシシ!そう言うだろうと思って既に今コースの設定を考えてるぜ、お前さん方はそのままもっと沢山良さげな場所を見回ってくれ」(恵子)
「さすがだな」(冷香)
「ガハハハ!さすが恵子だっぺ!」
こうして、しろおとめ団達はそれぞれの役割を果たしおとめぼし観光の事業開始準備を着々とこなしていった。
一通りの食材を調達した浮遊戦車を回収し、しろおとめ号が戻ってくると、食材の確認もかねて良美はとれたての食材で食事を作り始めた。ここはゲート内世界やみんなのほしのような都合の良い場所ではないので、生き物の肉を得るには解体や血抜きなどの作業が必要になるし、野菜や果物などもきちんと処理をしなければならなかったが、良美はそれらの作業を難なく見事に手際よくこなした。
「いや、すげぇもんだな」(恵子)
「まったくだ、匠の技だ」(拓美)
「いや、それはそうなんだが、オレが、いや、アタシが言ったのは、例の試練の門でもらった最後のお宝のことだ」
「えーと・・・げんしょのきおくだっけ?」(温子)
「ああ、あれをうまく使えばオレ、アタシ達の能力も飛躍的に向上する。アタシらは良美と違って自分にとってこれだ!って思えるものがなかったけど、洋さんからまかされたこの仕事に役立つ能力を向上させるというのはどうだろうか?」(恵子)
「なるほど!それはいい考えだ!」(拓美)
「やっぱりオメェは頭がいいっぺよ!」
「なるほど妙案だ」(冷香)
「それはいいとして、どんな能力を向上させればいいんだ?」(温子)
「そうだな・・・まずはアタシはここのシステムをもっと使いこなして状況分析能力、いや、総合的な情報処理能力を向上させようと思う」
「そしたら恵子姉ちゃん今よりもっと頭が良くにゃるニャ!凄いニャ!」
「そうだニア!お前、もっと動物達と仲良くなりたくないか?」(恵子)
「にゃりたいニャ!洋さん達みたいにもっと動物達とおしゃべり出来るようになりたいニャ!」
「ケシシシ!ニアが動物達とうまくやりとりしてくれれば観光客相手に動物ふれあい体験とか出来て癒しを求める客がワンサカやってくるぜ!」
「相変らずそういうことには聡いわね」(温子)
「温子!お前は医学方面の能力を向上させるんだ」
「えっ?幸運上昇じゃなくていいのか?」
「まぁそれも確かに商売繁盛になりそうだからいいんだが、観光だけでなくスゴ腕の名医もいて、しかも怪我や病気や美容に良く効く最高の温泉があるとくりゃあ高級療養施設とか作って金持ちからガッポリ稼げるぜ!ケシシシシ!」
「いよいよもって女言葉どころか地がモロに出てるぞ恵子・・・だが、まぁ・・・いいな、さすがだ、実に良いアイディアだ。分かった私は医学向上にボーナスを使うわ!」
「拓美には機械工作に関する能力を向上させてもらいたい、船だけでなく様々な機械のメンテナンスや製造をしてもらいたい、中央管理システムでざっと見たところ結構あちこち老朽化して痛んでる機械設備があるから、修理したり新しいものを作って交換して欲しい」
「分かった!まかせてくれ!機械いじりはアタシの得意分野だからな!」
「アタシは何が良いっぺよ!」
「元子はもちろん操船技術だ、出来れば船だけでなく色んなものを操縦出来る技術を身に着けてくれ、全てがオートのしろおとめ号ではなく、観光用の遊覧船とか使えないか考えているんだ」
「分かったっぺ!それなら喜んでやるっぺよ!」
「恵子、私は?」(冷香)
「冷香はこれまでの特技を活かしてハンター技術を磨いて欲しい、良美に最高の素材を届けて欲しいんだ。温泉と観光名所に名医のいる療養所に加えて、抜群にウマイ食事で観光客達を虜にしたい」
「なるほど、客達の胃袋を掴むんだな、了解だ」
「恵子姉さん私は?」(るき)
「るきにはその明るさと愛嬌で観光客へのガイドをやってもらいたい、だからお前には言語だ、様々な宇宙人達の言葉をげんしょのきおくからゲットして多くの宇宙人達と話が出来るようにするんだ」
「分かりました!私に向いてそうです!」
「やっぱり、お前に任せて正解だったな恵子、オレじゃないアタシ達の特技や向いてる方面を活かしつつ、これからの大仕事に適した分野を見事に見抜いている」(拓美)
「ケシシシシ!まだまだ、まだ始まってすらいないんだ、これからだ・・・これからオレじゃない、アタシらでこの星を宇宙で一番の観光名所にしてガッポリ稼ごうぜ!いや稼ぐわよ皆!」
「「「おおーーーッ!!」」」
しろおとめ団達は恵子の指示通り、試練の門第10ステージの報酬のげんしょのきおくを使い、それぞれの分野の技能を取得した。
まず真っ先に恵子が良子に匹敵する程の凄まじい情報処理能力を取得し、コンソールパネルなどを操作しなくとも直接脳内でシステムにアクセスして様々なデータ処理を実行することが出来るようになった。思考速度も桁違いに向上し並列思考すら出来るようになった。
温子はあまりにも膨大な医療医学の情報が脳に入り込み、鼻血を出して知恵熱を出してぶっ倒れたが元子と冷香に採取してきて欲しい薬草を指示したところ、元子が浮遊戦車をまるで手足の様にマニュアル操縦で操り、極めて採取困難かつ判別の難しい稀少な植物を冷香が見極めて見つけ出し採取して帰ってきたところ、温子自ら処方して薬を作り自ら服用してすぐに元気に回復した。
ニアは冴内のカラス達とすぐに話しが通じ合い仲良くなり、あちこち連れて行ってもらって様々な動物達とコミュニケーションをとっていった。
るきは恵子に中央管理システムを駆使してもらって、様々な宇宙人達の宇宙ニュースを空間投影してもらい、彼らが何を言っているのか同時通訳して説明してみせた。
拓美は空中庭園都市内部にある工作室をさらに改良し、コッペパン号の作業室にあるベルトコンベヤ型作業機械に近い工作機械システムを作り上げた。工作機械の制御システムについては、拓美の指示と提案をもとに恵子が中央管理システムの思考AIを駆使してプログラミングした。
こうしておとめ観光株式会社はグランドオープンに向けて着々と進んで行ったのであった。