211:おとめぼし
その夜、久しぶりに冴内は夢を見た。
『ホレ、アンタはん、起きなはれ・・・ホレ』
「う・・・う~ん・・・ムニャムニャ・・・、えぇと・・・お婆さんこんばんは・・・」
『おおすまんのう、眠ってたとこ起こしてもうて』
「いえ、ところでお婆さんはどちら様ですか?」
『わしか?わしはのう、これから婆さんから可憐な乙女になる星の者じゃ、何やら皆から第44調査惑星などというツマラン名前で呼ばれとった星じゃ』
「第44・・・惑・・・星・・・えぇぇぇぇ!!」
「どうした父ちゃん」
「どうしたの洋」
「どうしたのお父さん」
「洋様いかがなされました?」
とうとう普通に冴内家族一同全員が冴内だけの夢の中にまで現れてきた。トンデモ能力の優、美衣、良子まではなんとか理解出来ないこともないが、花子まで普通に現れた。
「どうしたのだ?冴内 洋」
少し遅れてさいごのひとまで現れた。
「うわっ!皆よくここに来れたね」
「うん、父ちゃんのいる所ならどこへだって行けるぞ!」
「そうよ!」
「そうだよ!」
「どこにでもお供します!」
「私も可能な限りついてくとしよう」
冴内はそういう意味で言ったのではないが、一応嬉しい事を言ってくれていることには変わりないので、素直に受け入れることにした。
『お前さん、冴内はんにはようけえぇ名前をつけていただいたさかいにのう、ひとことお礼ば言いたくてのう、こうして見すぼらしいおばばの姿を見せたっちゅうわけですわ、はい』
「あら、また名前を付けたの洋?」
「う・・・うん、しろおとめ団の人達に第44調査惑星の探索をお願いしたんだけど、その時に第44調査惑星って名前じゃなくて、もっとちゃんとした名前を付けようってことになったんだ」
「おばあちゃんはお星さまだったのか!」
「おお、そうじゃよ、可愛いお嬢ちゃん」
「えへへ、アタイは冴内 美衣!冴内 洋の娘!」
「私は良子です!」
「私は花子です!」
「おお、おお、みんなめんこいのう」
「「「えへへへ」」」
『さて、冴内はんや、お前はんは、この星にはどういう星になって欲しいんや?わしにできる限りのことはするつもりや』
「アタイ美味しいものがいっぱいある星がいい!」
「私は沢山の人をおもてなししたいから、人が沢山集まる星がいいです!」
「私はカラスちゃんや他の大人しい動物達が居心地よく住める星がいいです!」
♪ピコーン!
「分かった!それなら自然豊かな観光名所の星になればいいんだ!」
「さすがね洋!」
「それだ!さすがお父ちゃん!」
「観光目的で来る人が増えますね!」
「自然保護という大義を付ければ開拓による自然破壊も抑えられるわけか、さすがだ冴内 洋」
「すごいお父さん!カラスちゃん達も安心して暮らせるね!」
『なるほどのう・・・さすがは冴内はんや、おとめぼしの名にふさわしい、自然豊かで温かく優しく誰からも愛される、人だけでなくそこに住む大人しい動物達からも愛される星やな、それはいい、とてもいい・・・わかった、そうなるよう努力する』
『ほな、おばばはもう行きますさかい・・・』
「うん!こっちこそ有難う!すぐにまた遊びに行くよ!」
「おばあちゃんアタイも遊びに行くよ!」
「私も綺麗に掃除しに行きますね!」
「私も行くわね!」
「私も行きます!」
「私もお供しよう」
『有難うな、ほなさいなら・・・』
「「「「「さようならー!」」」」」
こうして、旧姓第44調査惑星は改名しておとめぼしとなるのであった。
果たしてどのような星になるのであろうか、そしてその星にある空中庭園都市の宿泊所にて何も知らずのんきに平和にグゥグゥ寝ているしろおとめ団達は一体どうなってしまうのだろうか・・・
明けて翌日。
「ファ~ア・・・ア・・・あっ・・・」
「・・・」
「あぁぁぁーーーーーッッッ!!オイ!起きろ!!お前ら起きろ!!」
「うっ・・・うるせぇなぁ・・・」
「うーんムニャムニャ・・・ニャンにゃぁ?」
「グゥグゥ・・・」
「スゥスゥ・・・洋さんなら、いいよ・・・ケシシシ・・・」
「バカ野郎!変な夢見てんじゃねぇ!わよ!」
ドグッ!
「グエッ!何しやがんだテメェ!人がせっかく良い夢を・・・っておわぁ!!」
「何だ何だ・・・お前ら朝から・・・うひゃあ!」
宿泊所の大きな窓の外はとても緑豊かで様々な美しい花々が咲き乱れ、蝶々や小鳥達もいた。
慌てて下着姿のまま外に出たしろおとめ団達はさらに周りの景色を見て驚愕した。
広大な砂漠は跡形もなく消え去り、実に若々しい緑豊かな大森林や、巨大な湖や滝なども至るどころにあり、水平線のかなたには海と思われるものも見て取れた。
「もしもし!洋さん温子です!すいません朝早く、えっ?もう起きてた?いつも朝早いですね洋さん。・・・ってそうだ!大変なんです!おとめぼしがとんでもないことになってます!朝起きたら何もかもが変わってたんです!砂漠がなくなって緑と水が豊かな美しい星になってます!えっ?分かりました!はい!待ってます!」
「洋さん来るのかい?」
「ああすぐ来るって!」
恵子はそのまま下着姿で出迎えようかケシシシ!と言ったが、温子から優さんに殺されるぞと言われたので、全員速攻でいつものスーツを着た。
「みんなお待たせ!」
「カァーーーッ!」
「わっ!ヨウカ!おはよう!今日はいつもより元気で嬉しそうだね!」
「えっ?イヤな生き物達がいなくなって、美味しい果物がいっぱいで嬉しいって?」
「うわっ!ホントだ!大変なことになってる!」
「「「洋さん!」」」
「あっ!おはよう皆!」
「「「おはようございます!」」」
「朝起きたら御覧の通りの有様です、一体この星に何があったんでしょうか?」(恵子)
「えぇと・・・昨日の晩、実はおとめぼしが夢に現れて、話しをしたんだ・・・」
「へっ?・・・星と・・・話?」(恵子)
「う・・・うん、信じられないかもしれないけど、僕はこれまで何度か星と話をしたことがあるんだ」
「アタイもお話ししたよ!美味しいものがたくさんあるお星さまにしてってお願いした!」
「えっ・・・美衣ちゃんも会ったんですか?」
「私も会ってお話ししたよ!」(良子)
「私もしました!」(花子)
「私もしたわよ」(優)
「私もだ」(さいごのひと)
「そ・・・そうですか・・・で、一体何の話をしたんですか」(恵子)
「うん、名前を付けてくれて有難うっていうお礼をしにきたのと、どういう星になって欲しいかと聞かれたので、自然豊かな観光名所の星になるといいなって言ったんだ・・・」
「そ・・・それで一夜にしてこうなったっていうんですか?」(恵子)
「うん、実はみんなのほしもそうだったんだ」
「「「・・・」」」(しろおとめ団)
「すいません、洋さんの凄さをまだオレた・・・私達は理解不足でした。さすが洋さん、大宇宙の愛の使者は伊達じゃないですね・・・」(恵子)
「父ちゃんは凄いぞ!」
「そうよ!洋は凄いのよ!」
「お父さんは凄いんだよ!」
「洋様は素晴らしいです!」
「その通りだ。冴内 洋の力は私にも計り知れないものがある」
「な・・・なるほど・・・そうですね」(恵子)
「洋様!私ちょっと宿泊所を見て回ってもいいですか!」
「うん?もちろんいいけど、どうしたの花子」
「はい、何か宿泊所が・・・特に大浴場が気になるんです!」
「えっ!大浴場が?」
「はい!」
「分かった!行ってみよう!」
花子に続いて、冴内達全員が宿泊所の大浴場へと向かって行くと、途中から建物の構造や雰囲気が大分変わっており、これまでの小ざっぱりした綺麗な感じから、とても風情や趣のある心和むものへと変容していた。そして何やら漂ってくる匂いが冴内の良く知る匂いに変わっていた。
冴内達が大浴場に到着すると、そこは見事な巨大な温泉大浴場へと変わっていた。




