210:それぞれの道
明けて翌日、しろおとめ団達は力堂達や試練の門専属の機関職員達に礼を言い、龍美が残したアイテム格納ポケットと重力制御マントと復活のエキスを力堂に贈呈すると言ったところ、力堂達からは大感謝されたがお返しするに相応しい物も金額もないと言って断ろうとしたので、何の見返りもなく全てを親切丁寧に教えてくれたことこそが私達にとって何よりの温かく嬉しいギフトだったと応え、力堂は大いに感銘して有難く受け取ることにした。
また、良美が一夜にして食堂の誰もが遠く及ばない程に料理の腕と知識が向上したことで、これ以上ここで教えることはなく、今の君の腕ならば美衣ちゃんや優さんにすら匹敵すると太鼓判を押されたため、良美は早くも食堂を卒業することになった。
誠はこれからは神代の元で過ごすということになり、ほとんど私物のない彼女専用の個室部屋を退出することになった。
温子がからかい半分で子供は何人作るんだと聞いたら作れるだけ作ると顔を真っ赤にして言われたので、聞いた本人も耳までゆでだこのように真っ赤になり、恵子にさんざんからかわれた。
「これからどうすっぺか・・・」
「私は優さんに魔法とやらを教わった時に、私の様な容姿の人間が住む星があると聞いた。そこでは皆が魔法とやらをうまく使っているそうだ。その星に行って学んでみようと思う」
「おいおい、える、サブリーダーのお前がいなくなったらしろおとめ団はどうするんだよ」
「すまん温子、だが龍美姉さんはともかく、私はしろおとめ団を抜けるわけじゃない。定期的に戻ってくるし、一通り学び終えたらまた皆の所に帰ってくるよ」
「ケシシシ!いいんじゃねぇか?洋さんも言っていたが、アタシらが幸せに楽しく生きることが何よりの恩返しだって言ってたわけだしよ、皆それぞれの道を歩んでいいと思うぜ、いや、思うわよ」
「でも、しろおとめ団は・・・」
「心配すんな、ちゃんとオレ、じゃないアタシ達は繋がってるっぺよ!心で繋がってるっぺ!」
「ケシシシシ!温子はヘタレだからな、寂しいんだよ」
「ああそうだよ!だって、これまでずっと皆一緒に生きてきた仲間だろ!ボロ着て少ないマズイ飯を分け与え合ってよ・・・ウッグ・・・グス・・・」
「うにゃぁ・・・アタシも寂しいにゃぁ・・・」
「でもよ・・・でも、元子が言った通りアタシらはちゃんと心で繋がってる。そして恵子と洋さんが言った通りアタシらはそれぞれが幸せに楽しく暮らすためにこれからは生きていくんだ」
元機関長の拓美はこれから結婚する元副機関長の誠を気遣いつつ発言し、誠も同じ機関室内で過ごしてきた拓美の内心が分かって感謝していた。
「拓美の言う通りだ、これからは皆それぞれの幸せを追い求めて行っていいんだ、楽しく生きてる姿を洋さんや私達皆に見せるのが何よりの恩返しだ」(える)
「ケシシシ!皆が悔しがって羨ましがるほどに面白おかしく楽しく幸せに生きてる姿を見せつけてやるぜ!わよ!」
「その意気だっぺ!それこそがアタシ達らしいってもんだっぺ!」
しろおとめ団達は皆新しいそれぞれの道を歩むことを決意した。しかし彼女達はどこにいようとも何をしていようとも心は強く繋がっていると分かっていた。
とはいえ、既に道が決まっているメンバーはともかく、他の者達は急に自分の道を探すといっても急に見つかるわけもないので、とりあえず冴内達のいる場所に向かった。やはりしろおとめ団達は自分達仲間以外では冴内ファミリーが大好きなのである。
「美衣さん!お願いがあります!アタシに料理を教えてください!」
「わかった!今日から一緒に食事を作ろう!」
「ありがとうございます!」
「優さん、前に話してくれた私によく似た人達がいる星について教えてくれませんか?そこに行って色々学んで来ようと思うんです」
「いいわよ!確かリングゲートで2つ目だからすぐに着くわよ!一緒に行きましょう」
「ありがとうございます!」
「えっと・・・洋さん、残ったアタシらは何かやることないかな?」
「うーん・・・♪ピコーン!そうだ!お願いがあるんだ」
「おっ!洋さんがお願いなんて珍しいですね!洋さんのお願いならアタシら何だってやりますよ!」
「うん、実は第44調査惑星の探索と開拓をして欲しいんだ。今ではもう皆立派なゲートシーカーになったから、探索者として適任だと思うんだよね、何より今地球にいる探索者の誰よりも皆は強くて優秀で綺麗で可愛いんだからさ」
いつになく大分饒舌に語る冴内だった。特に最後のセリフあたりが。
「ケシシシ!そんな洋さん・・・綺麗で可愛いだなんて、当たり前の事実を何言ってんですかい、アタシ達ならいつでもオーケーですぜ、じゃない、ですわよ」
「よ・・・洋さんなら、いいッスよ・・・」(温子)
「いやいや、そういう意味じゃないってば!とにかくさ、僕や機関職員の人達は今みんなのほしの調査でも手一杯だから、せっかく見つけた第44調査惑星の調査をやってもらいたいんだよね」
「「「了解しました!」」」
「そうだ!お父さん!しろおとめ団の皆さんに調査してもらうのなら、私の管理者権限の代理権限を移譲しようと思う!」
「あっ、それはいいね、そうしてくれるかい?」
「うん!えっと・・・私は恵子さんがいいかなって思うんだけど」
「ア、アタシですかい?」
「そうですね、ウチらの中で一番恵子が頭が良いのと、これまでもずっと悪だくみ、じゃない作戦とかは恵子が考えてきたので適任だと思います」(拓美)
「「「賛成、賛成」」」
「それじゃ恵子さん、今から代理権限を付与しますね!」
「えっ?今ここで出来るんですかい?」
「はい!出来ますよ!」
良子が恵子の前に手をかざすと、緑色の光の枠線が恵子の身体を上から下にスキャンし、代理権限付与終了という電子音声が聞こえた。
「ところで洋さん、前からなんとなく思っていたんだけど、なんだか第44調査惑星って名前は味気ないっていうかちゃんとした名前があればいいなって思うんですが」
「あっ!それはいい考えだね!」
「ケシシシ!温子にしては良い事言うじゃないか」
「うるせぇな!じゃない、うるさいわよ!」
「そうだなぁ・・・♪ピコーン!そうだ!良い名前があるよ!」
「おっ!閃きましたかい!」
「・・・おとめぼし、ってのはどう?」
「「「・・・・・・」」」
「おとめぼし!いいんじゃないですか?」(温子)
「ケシシシ!アタシら乙女がいるおとめぼし!」
「ああ!これはいいっぺ!」
「アタシも良いと思うニャーーー!」
「いいですね!おとめぼし!」(拓美)
「うん、私も良いと思う」(冷香)
「賛成です!」(るき)
「それじゃあ皆にはおとめぼしの調査をお願いするよ!」
「「「りょうかーーーい!!」」」
こうしてしろおとめ団達は通常の小さいゲートを利用して、みんなのほしからおとめぼしへと移動していった。
「さて、サブリーダーのえるも留学に行っちまったことだし、これからは恵子、お前の分析能力を活かしてオレた・・・アタシらを指示してくれ」(拓美)
「他の皆はそれでいいのか?」
「まぁ、少し癪にさわるがお前が適任だ」(温子)
「これまでも恵子の判断は間違いなかったっぺ!」
「ああ、お前が最適だ」(冷香)
「恵子姉ちゃんでいいにゃぁー!」
「私も賛成です!」
「分かった、最善を尽くすが・・・アタシも間違えることはあるからな」
「そん時は皆でサポートする!」(拓美)
「ようし!そんじゃ早速何をやるっぺよ!」
「そうだなまずは・・・」
こうして、しろおとめ団の残りのメンバー達は第44調査惑星改め、おとめぼしの調査活動を開始するのであった。翌日大規模惑星改変が起きることも知らずに・・・