200:しろおとめ団の武器購入
冴内の両親家族が帰宅していった後もしろおとめ団達は自分達の名前を書けるように練習した。
「龍美・・・と、アタシの文字はすごく難しいな、でもそれだけ重厚感があるというか、この複雑な形はすごく気に入った」
「える・・・と、私のはリーダーに比べたら簡単だけど、なんというかシンプルな中にも曲線を描くカーブが気に入った」
「ニア・・・、アタシのは皆の文字と違う感じで個性的にゃ、アタシあまり器用じゃないからこれで良かったニャ」
それぞれが感想を述べながら何度も自分の名前を大切に楽しそうに書いて練習した。ちなみに優、美衣、良子、花子は既にペン字一級レベルの美しい文字をスラスラ書いていた。美衣はもっと漢字を覚えようということで漢字ドリルにいそしんでいた。
今日も研修センターの食堂で夕食をとり、皆でお茶などを飲んでまったりしていた時に、しろおとめ団が試練の門に挑みたいと冴内に許可を求めた。
「あっ試練の門に挑むんだね、頑張っておいでよ!そもそも君等は自由に自分達の人生を楽しんで欲しいし、君達が幸せになる事が僕の、いや僕等の願いでもあるから、思う存分好きなことをやればいいと思うよ、それに僕等もひと段落したから急ぎの用事とかはもうないしね」
「「「有難う御座います!!」」」×11
「試練の門に挑むのなら、装備や道具を整えないとね、明日はそうした物を買える場所を案内するよ」
「ホントですか!・・・そのお言葉に甘えさせていただきます!」
「アタイも行くー!」
「「「私もー!」」」(優、良子、花子)
早速冴内は力堂に連絡して、しろおとめ団が試練の門に挑むことになったことを報告し、難易度「最高に難しい」に相応しい装備や道具についてアドバイスを求めたところ、力堂達ですらその一歩手前の難易度「非常に難しい」にこれから挑戦する程なので、果たしてどういう装備が良いのか正直なところ分からないが、今地球上で最も良い装備を揃えるなら奈良ゲートビレッジだと教えてくれた。
冴内は力堂に礼を述べ、力堂の方からはしろおとめ団達とこれから情報交換をしたいとお願いされたので、しろおとめ団達にその旨を話すと二つ返事で許可してくれたので、冴内はしろおとめ団達にゲートシーカー専用携帯端末の使い方を教えたところ、彼女達はすぐに携帯端末を扱えるようになった。
翌日研修センターの食堂で朝食をとった後、早速冴内達は富士山麓ゲート⇒みんなのほし⇒奈良ゲートの順にゲートを通過していき奈良ゲートへと到着した。
冴内はみんなのほしはその名前の通り皆自由に往来して良いと言っていたので、数十秒で富士山麓ゲートから奈良ゲートへ移動出来る利便性を冴内達以外のゲートシーカー達も大いに活用していた。とはいえさすがにみんなのほし自体への探索活動は例の恐竜もいるということで、腕章を付けたゲート職員以外はまだまだ遠慮がちだった。
ともあれ、約半年ぶりに奈良ゲートに到着した冴内はその変わりようと活気ぶりに驚いていた。
「わぁ大分賑やかになったねぇ!」
「ホントね、私と洋と美衣の3人で森を切り開いていた時とは大違いね!」
冴えない冴内を筆頭に、それ以外はとんでもなく美しい女性達や可愛らしい少女達や地球には存在しない高性能ロボットがやってきたものだから、辺りは騒然となった。その圧というかオーラも一際凄まじいものがあるので、自然と皆道を開けていったり頭をさげていくという状況だった。しろおとめ団達はまたしても全員良い方向に勘違いして、この国の人達の礼儀正しい品位品格に感動し、自分達もその国民になったのだからそれに恥じぬよう大いに学ばなければと思ったのであった。
冴内達はまず武器屋に入っていき、冴内がこの店で一番強力な武器を見せて欲しいと言うと、すぐさま店主が出てきて二つ返事でこちらへどうぞと、別室に案内してもらった。
別室に入るといかにも業物という雰囲気が漂うものがズラリと並んでいたが、店主はそこを素通りしてさらに奥のコーナーへと進んで行き、関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉のカギを開けて中に入っていった。
「ここにある武器はどれも試練の門で発見された物なのですが、あの力堂さん達ですらまだ持つことが出来ない程の武器が保管されています。また、その強さのせいなのか分かりませんが、他のシーカーの方々や店員の気分が悪くなるようなのでこうして厳重に管理しています。鈴森さんの鑑定結果では呪いの類はないようで、純粋に武器が持つ強さのオーラにあてられているようです」
「へぇー!そんなに凄い武器なんですか!」と目を輝かせる冴内であったが、ふと目についた値札がほとんど億単位それも大体3桁だったので絶句して固まった。
「どれもあんまり可愛くない」
「うん、私達は武器はない方が強いかも」
「どの剣も私の剣には全く及ばないわね」
規格外の3人はそこらにあった武器をいとも簡単におもちゃか何かのように軽々と手に持っていた。
「えーと・・・ここには銃とかはないのか?」
「はい、ございません。ゲート世界にいる危険対象物同様、試練の門にいる危険対象物も銃による攻撃はほとんど効果がないのです」
「どうするリーダー、アタシらナイフはともかく剣なんか使ったことないですぜ、じゃない、ですよ」
「アタシは素手で戦うからいらにゃいにゃー!」
「何か射撃や狙撃として使えそうな武器はないだろうか・・・うん?これは・・・確か弓とかいう古代武器か?どうやって使うんだっけか・・・」
「あっ!すごい!その弓を持てた人はあなたが初めてですよ!!」
「そ・・・そうなのか?いや、そうなんですか?」
「おっ冷香、それいいな、オレにもじゃない、アタシにも貸してくれ」
「ああ」
「あっ軽いな!コレなら私でも使えるかも!って使い方分からないけどなケシシシシ!」
「すごい!あなたも持てるんですね!」
「うーん・・・医療用ナイフだと思えば使えないこともないかなぁ・・・」
「あっ!それもこれまで誰も持つことが出来なかったナイフですよ!大丈夫ですか?お気分とか悪くなっていませんか?」
「いや・・・特には・・・普通だが・・・」
「アタシはコレがしっくりくるっぺや!」
「なんとっ!そのバトルグローブは地球最強攻撃力の矢吹さんですら装着することが出来ずに血の涙を流して悔しがっていたグローブですよ!」
しろおとめ団達は思い思いにしっくりくる武器を手にしてまぁこれでいいかと一応納得していた。
一方冴内は一人固まっており、絶望的な思いを抱きながら意味もなく自分のゲートシーカー専用携帯端末を見て残高確認をした。半年どころか8ヶ月以上残高確認などしていなかったが、絶望的な気持ちのままぼんやりと画面を見たところ仰天した。残高の桁が億を通り越して兆の単位だった。
「どうしたの洋?」
「い・・・いや、何でもない、大したことじゃないよハハハ・・・・」
日本の国家予算に匹敵する程の天文学的数字が記載されていたので、なんとかなりそうだと胸をなでおろした冴内であったが、清算を済ませようとしたところで店主はさも当然のように無料提供すると言い出した。世界中の全ての機関からも冴内達にはそのようにすることがとっくのとうに決まっていたのである。知らぬは冴内当人ただ一人ということで、これには非常に驚いた。
「さすが大将!じゃない、洋さん!やっぱりアンタはすげぇお人だ!」
「そうよ!洋はスゴイのよ!」
「お父ちゃんはスゴイぞ!」
「お父さんは凄いんだよ!」
「いやぁ・・・ハハハ・・・」
「そうだ、コレも渡しておこう」
冴内は例の白い消しゴム状の携帯端末を渡した。
「えっ?いいんですか?」
「うん、これがないと地球と別の宇宙との間で連絡出来ないからね、後でもう1個作るからこれは君等との連絡用に持っていて」
「ありがとうございます、大切に使います」
こうして冴内達は行く先々で装備品を無料で提供してもらい、しろおとめ団達は全員フル装備で準備万端整った。
冴内達は試練の門まで見送り、いよいよしろおとめ団達の試練の門、難易度「最高に難しい」の挑戦が始まったのであった。




