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20:初仕事

 いよいよ今日から正式なゲートシーカーとしての探索活動がスタートする。朝早くに通勤通学ラッシュに揉まれながら電車に乗り、途中で新幹線に乗換え、さらに送迎バスにて富士山麓ゲート研修センターに到着した。


 時刻は間もなくお昼になろうとしていた。すぐに研修センターで登録を行い、簡単な持ち物と身体検査を行って、いよいよゲート入場となった。


 ゲートの中では鈴森さんと矢吹さんが出迎えてくれた。木製ロッジの個人部屋に手荷物を置いてから久しぶりの野外食堂へと3人で向かった。


 食堂入り口で何を食べようかと看板を見ようとしたところ、今日は特別に用意されてるからそのまま行きましょうと鈴森さんが言ったので、そのまま注文せずについていく。


 すると8人くらいは座れそうな大き目のテーブルに料理が並べられていて、見覚えのある人を含めて5人のシーカーが座っていた。


「冴内君久しぶりね」と良野さんが一番に声かけしてくれた。

「お久しぶりです」と続いて挨拶したのは植物採取の木下さん。

「ウス」と会釈してくれたのは鍛冶師の梶山君だ。

「こんにちは!」と元気よく挨拶してくれたのは荷物持ちの早乙女さん。


「やぁ君がチョップの冴内君だね、僕は手代木てしろぎといいます。シーカー歴5年目で護衛任務を主に行っています」といって手を差し出してきたので「チョップの冴内です、よろしくお願いします」と言いながら握手をかわした。


「・・・・普通の、柔らかい手なんですね」と手代木さんは少しだけ驚いた風で言った。そして矢吹さんを見て「矢吹さんの拳はいかにも鍛えられたゲンコツですよね」と言うと「まぁオレは元々ボクシングやってたし今でも鍛えてるからな」と矢吹さんは拳を皆に見せながら応えた。すごく強そうな拳だった、何なら自分よりも岩とか破壊できそうだ。


「では皆さん揃ったことですしまずは暖かいうちに食べましょう」と手代木さんが言ったので皆早々に食事を開始した。テーブルの上には各種オードブルの盛り合わせがのっていた。


 一通り食べ終えて一息ついたところで手代木さんが切り出した。「今回ここに集まった皆さんはこの後一緒に仕事をしてもらうメンバーになります。メンバーは二班に分かれて良野さんと木下さん冴内君の班と、自分と鈴森さんと矢吹さん梶山君早乙女さんの二班に分かれます。冴内君には後日自分達のメンバーに合流してもらいます」


「良野さんチームは草原エリアBにて各種薬草採取、自分のチームはD15洞窟で鉱石採取を行います。矢吹さんと冴内君は護衛任務を行ってください。早乙女さんは採取した鉱石の搬送をお願いします。実際の採取は木下さんと梶山君が行います。自分は索敵と護衛指示、鈴森さんは鉱石鑑定を行います」


「今日はこの後それぞれの班で地図と現地における危険対象物の確認、それから行動スケジュールと達成目標を決めてもらいます。冴内君はまず良野さんチームで打ち合わせして下さい」


「期間は良野さんチームは日帰りで2日間、自分のチームは現地でキャンプして4日間を予定しています。冴内君は2日目に早乙女さんがいったん収集した荷物をこちらに運ぶのでその時に合流して一緒に来てください」


「ではいったん解散して午後1時から各々の班で出発前ブリーフィングとしましょう。明日朝6時までに朝食を済ませて食堂前集合になります。朝早くて申し訳ないですがよろしくお願いします」


 そうしていったん食堂を出て、良野さんから「1時になったらまたここで打ち合わせしましょう」と言われ、木下さんも自分も頷き、何か事前にやっておくことがありますかと言ったが「冴内君は身一つで十分よ」と笑顔で応えられた。


 こうなるとやることがなくてどうしたものかと思ったが、プレハブ小屋のおばさんに挨拶しにいこうと思い付いた。プレハブ小屋に入ると相変らずおばさんは愛想よく挨拶してくれた。


「あら冴内君!とうとう正式なゲートシーカーになったのね!」

「はいこれからよろしくお願いします!」

「今日はこの後どうするの?また熊退治?」

「いえ、護衛任務を二つやることになりました。今日明日は日帰りで、その後は現地キャンプで2日後に帰る予定です」

「あら良野ちゃんと手代木君の手伝いかしら?」

「はいそうです」

「あらあら到着早々いきなり大変ねぇ、でも冴内君なら大丈夫よ」

「そうですか?」

「えぇ良野ちゃんに手代木君あと矢吹君もいるなら問題ないわよ」

「そうですね!確かにそう思います、おかげでちょっとホッとしました」


 その後も軽い会話をした後、約束の時間が近づいたので、プレハブ小屋を後にしてもう一度食堂に向かった。


 食堂では4人掛けの小さいテーブルで良野さんと木下さんと打合せを行った。スライムババロアを食べてハーブティーを飲みながらだったので、仕事している感覚があまりなく、キャンプやオリエンテーリングの打ち合わせをしているようだった。


 とりあえず自分はイノシシとか他の生き物が襲ってきたら追い払ってくれと頼まれただけで、後は良野さんと木下さんがひたすら薬草植物に関して話していた。退屈しないように自分は携帯端末で現地の危険対象物について調べたり、マップ機能を使ってここから現地までのルートなどを確認した。木下さんはあらかじめ用意してきた大き目の紙に出力された現地地図に何やらこまかく書き込んでいた。


 良野さんに後は木下さんと薬草について打ち合わせするので、冴内君はもう退出して良いと言われたので退出した。

「明日はよろしくね」

「よろしくお願いします冴内さん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」といって食堂を出た。


 近くに手代木さんチームがいればそちらの打ち合わせに参加しようと思ったがいなかった。やることがないのでさてどうしたものかと思ったが自然と最初の草原に向かって歩いていた。


 草原につくと草むらにしゃがんでいる人がいた。大き目のカゴが地面に置かれていて、薬草を採取しているようだった。近づいて挨拶すると母の実家にいるお婆さんと同じくらいに見える年配の女性が薬草とりをしていた。自分の顔を見るとニッコリ笑って「イノシシがおったら追っ払ってくれるかい?」と言ったので「分かりました!」と応えた。


「あと1、2時間やるからそれまで頼めるかね」と言ったので「はい!大丈夫です!」とちょっと大きめの声で応えたら、お婆さんは目を細めて喜んでくれた。明日からの護衛任務にちょうどいい予行演習だと思い、はりきって辺りを見回したがイノシシは見当たらなくて少しガッカリした。


 1時間程見回りを続けてもイノシシは現れなかったので正直退屈しかけていたところでようやくイノシシが現れた。遠目でも分かるのだがかなり大きい。これまでで一番大きいサイズだ。


「ありゃ、あれまたずいぶん大きいのが出たね。見つかる前に逃げようかね」といったので「大丈夫です、自分が倒してきます」と言うと「アンタ、そんなナリで大丈夫なのかね!?」とお婆さんが言い終わる前に自分は両手を広げて走り出していた。


 その後あっけなくイノシシを倒して戻ると、驚いた表情のお婆さんが「こりゃたまげた」と何度も繰り返した。


 その後、薬草採取に満足した様子のお婆さんは辺り一面に何やら水のようなものを撒き始めた。

「それはなんですか?」と聞くと「シシ除けだ」と教えてくれた。その後お婆さんと一緒に帰った。お婆さんはカゴがいっぱいになるほどの薬草を、自分はリュックを持ってなかったのでイノシシの肉をそのまま両手に抱えて持って帰った。


 もしもこれがゲートの中じゃなくてゲートの外の一般社会での光景だったらさぞや異様な光景に見えたことだろう・・・

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