198:全員ゲートシーカーだった
冴内達は早速全員大会議室へと向かうことになった。半年近くも音沙汰なしの上、いきなりのアポなし訪問を謝罪しようとしたが、神代は全てさいごのひとから事前に教えてもらっていたので全く問題ないと言った。いつもながらさいごのひと様々だと冴内は心の中で深く感謝した。
そういう状況だったので、大会議室の正面大型スクリーンには世界各国のゲート局長達が既におり、その中には奈良ゲートの道明寺もいた。
もしも冴内だけで司会進行を行おうものなら、アジェンダやレジュメを用意していないので話しが前後したり重複したりかなりお粗末なものになっていたであろうが、木下が言っていた通り皆冴内の行動内容については大体把握しており、冴内が司会進行せずとも神代がこれまでの流れを完璧に見事な資料や図にまとめて全部取り仕切ってくれた。
それに加えてさらにさいごのひとも全く言葉選びを間違えることなく的確に正確に説明しているので冴内はところどころ追加補足として、実際に現場で起きたことや感じたことを言うだけで済んだ。また当事者証言として、優、美衣、良子、花子、しろおとめ団達も発言した。他の面々はともかく美衣にとっては退屈じゃないだろうかと冴内は若干心配したが、意外に美衣は自分も発言出来るということでノリノリだった。
冴内には宇宙イナゴ討伐や様々な別宇宙の宇宙人達との交流の懸け橋になったことや大闘技大会優勝など様々な論功行賞があり、既に惑星を保有する程裕福な者に地球から渡せる報奨金などあまりにも微々たるものなので世界各国の政治家達は頭を悩ませているとのことだった。とりあえず日本政府からは数日中に国民栄誉賞が授けられるだろうと言われ、英国からはサーの称号が授けられますぞと、英国ストーンヘンジ・ゲート局長サー・アーサー・ウィリアム3世が力強く発言した。
その後昼休み休憩ということで、久しぶりに研修センターの食堂でランチを食べ、優と美衣は食堂に残って厨房に入って行くと料理人達は大喜びで、美衣が第44調査惑星にあったレシピを披露すると料理人達は真剣な眼差しで美衣から料理を学んでいた。
冴内と良子と花子としろおとめ団はまた大会議室に戻り活動報告とヒアリングを継続した。
まったく嫌がることなく積極的に花子は自ら自分自身の詳細スペックを地球の大規模データサーバにアップロードして自ら解説した。これは今後の地球におけるロボット技術とAI方面に相当な技術革新をもたらすことは確実だった。
次にしろおとめ団の紹介に入ったのだが、ここで神代は驚くべきことを口にした。なんと昨晩遅くにしろおとめ団全員がゲートシーカーとして新規登録されたというのだ。全世界で同時に突然自然発生的にしろおとめ団11人全員のデータが顔写真付きで全世界のゲート機関のシステムに登録され、一時大混乱に陥ったとのことだった。さいごのひとから明日には冴内が本人達を連れてくるだろうという説明をもらったのでひとまず事態は沈静化したとのことだった。
何か思い当たるところはありませんか?と問われて冴内はまさに名探偵に罪を暴かれて崖っぷちに追い込まれたショッパイ犯罪者のような気分を味わいつつも、正直にしろおとめ団11人全員の名前を考える時にゲートシーカー専用携帯端末のメモ帳アプリを使ってデータセーブしましたとゲロした。
冴内が何かに名前を付けることで生じる変化については当人以上にそれが持つ意味をこの場にいる局長達は十分理解していた。宗教や権力、それどころか自然の摂理すら崩しかけない程に極めて危険なことでもあるのだ。内心で幾人かの局長達はこれから生まれてくる可愛い孫に冴内に名前を付けてもらおうかという悪魔の誘惑にかられた者もいた程だったのだ。
ちなみにしろおとめ団達全員が日本語を理解し、実に流暢にスラスラと話すことが出来た。読み書きに関しては小学校低学年レベルだった。
ともあれ、やってしまったものは仕方がなく、しろおとめ団11人は全員正式なゲートシーカーとして登録済であり、しかも名前も国籍も全員日本とバッチリ登録されてしまっている上に、全員冴内に命を救われたので絶対的な忠誠心を誓っていると、さいごのひとも太鼓判を押してくれたので、ただちに彼女達には日本国籍を授与すると日本政府も決定したとのことだった。
しろおとめ団は全員これまで身元不明国籍不明、宇宙のならず者だったのだが、しっかりした平和な法治国家から我が国の国民であるという権利を獲得したことに大きな喜びを感じ、冴内様と国家に忠誠を誓い粉骨砕身する所存だと宣言すると、このネット会議に参加していた日本政府代表高官は立ち上がって万歳三唱していた。
前述してきた通りこれまでの冴内の活動活躍記録は地球側でも受信することが出来たので、冴内達の報告会とヒアリングはその日1日で済んだ。
その後しろおとめ団全員にゲートシーカー専用携帯端末が渡され、戸籍登録も富士山麓ゲート研修センターで仮登録されて、正式に日本国民及びゲートシーカーになった。
しろおとめ団11人全員、神代に感謝したがとんでもないレベルの美人達に囲まれて普段の冷静沈着な神代もこの日ばかりは顔が真っ赤だった。ちなみに元・副機関長のしろおとめ・誠は神代の誠実そうな人柄を気に入っていた。
その後全員研修センターの食堂にて夕食をとることにしたのだが、冴内達が到着すると食堂はパーティー会場になっており、祝!宇宙イナゴ討伐とか、ようこそ!しろおとめ団の皆様!などの横断幕が掲げられていた。
しろおとめ団11人は全員このような温かい歓迎を受けたことは誰一人としておらず、しかも日本人ならではのおもてなしと優しく誠実そうなゲート職員達を見て全員感激の涙を流し、私達を受け入れてくれた皆さんのためにこの身を尽くすと宣言した。
食堂には力堂を筆頭にいつものシーカー仲間が全員来ており大分お腹が大きくなった旧姓早乙女や、とうとう観念して結婚した矢吹と、同じく結婚した手代木が妻を同伴させてきていた。矢吹の結婚相手は失礼ながらおよそ矢吹には不釣り合いな程に清楚で誠実で真面目そうな美人女性だった。
力堂達も全員例外なく冴内達の活躍については良く知っており、しろおとめ団11人についてもゲートシーカー専用携帯端末に突然いきなり11人の美人女性が新規登録されたので驚きながらも確認して既に知っていたとのことで話しはスムーズに進んだ。
力堂達はこの半年の間に試練の門の難易度「難しい」をクリアしていた。実は100階層のボス戦で矢吹は死亡したのだがクリアボーナスで生き返ったという驚くべき事実が語られた。そして全員とうとう各ステータスが千の位になり名実ともに冴内達を除いて地球人類最強のメンバーになったそうだ。他にも素材アイテムや食材や薬剤など、お金に換算出来ない程の宝を豊富にゲットしたとのことだった。最後に力堂達は次の難易度「非常に難しい」に挑むべく現在着々と準備進行中であると説明した。
そんな力堂達に続けと、今や奈良ゲートは世界中からやってきたゲートシーカー達で連日大賑わいだとのことだが、矢吹の死亡例を良い意味で有効利用して、十分危険があることを周知徹底したので、今の所重傷者なしで安全に活用されているとのことだった。
そんなやりとりを聞いていたしろおとめ団11人はその試練の門とやらに挑めば強くなったりお宝をゲットしたり出来るのかと非常に興味津々でグイグイ力堂達に聞いてきた。力堂はあなた達のステータスならば我々がこれから挑もうとしている難易度でも問題なく挑めると思うと言った。しろおとめ団は全員力堂達の倍近いレベルやステータスで、中でもニア(ニャア子)の戦闘能力はズバ抜けて高く攻撃力は冴内達を除いて現在世界トップの矢吹のゆうに5倍は強かった。ちなみに冴内達は当然計測不能である。
しろおとめ団達全員は目をキラキラと輝かせて冴内の方を見たので、さすがの冴内もこれは察することが出来たので自由に楽しんでおいでよと言った。優も積極的に試練の門をお勧めしていた。
早速しろおとめ団は明日から試練の門に挑むと意気込んだのであったが、冴内が明日自分の両親がこっちに来ると言ったので、しろおとめ団は冴内達の両親への挨拶を何よりも最優先すると言った。