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195:お約束の大浴場

 夕日も沈み夜になったのでそれぞれの航宙艦に戻って風呂に入って寝ようかと思っていたのだが、美味しい食事をしてまったりしたので航宙艦に戻るのが面倒臭くなったのと、空中庭園都市内は暑くも寒くもないとても快適な気温湿度だったので、どこかで眠れそうな場所がないかと冴内は花子に尋ねたところ、近くにかつて宿泊所だった場所があると教えてくれたので全員でそちらに向かうことにした。


 歩いて数分たらずの場所にその宿泊所はあった。元はどの建物も白に近い明るいグレーだったが、良子が空中庭園都市中央管理システムを起動したことで住環境管理システムも働き、地球で言うところのプロジェクションマッピングを遥かに発展させたような機能により、落ち着いたベージュ色でところどころ木目調のテクスチャーが貼られており、漆喰壁のような場所もあった。地球よりも遥かに進んだ文明であったので見た目だけでなく、表面の手触りまで木のぬくもりや漆喰の吸湿性を感じることが出来る程だった。


「パワードスーツを着込んで狩りをしたから結構汗をかいちまったよ、じゃない、かいたわ」

「汗を洗い流せる施設はねぇのかよ、おっと、ないのかしら?」

「大浴場がありますよ!」嬉しそうに答える花子。

「それはいい!早速皆で行こうぜ!じゃない行きましょう!」


「えーと・・・花子・・・大浴場はちゃんと男性と女性で別れてるんだよね・・・」

「はい!大丈夫です!男女で別れてますよ!」

「だよね、良かった」


 花子は宿泊所の案内図を空間投影させて、皆に大浴場の場所を説明した。さらに大浴場までのルートを示す矢印マークも通路に空間投影された。


「私は皆さんが入浴している間に他の給仕ロボを起動させて部屋の支度をしてきますね!」

「「「よろしく~」」」×15

 花子はとても嬉しそうにまるで人間のようにウキウキしながら反対方向へと進んで行った。鼻歌まで歌い始めていた。


 冴内達は程なく大浴場の前に到着し、当然冴内は誰が見ても一目で男性だと分かる方のアイコンが描かれた方へと入って行ったのだが、優も美衣も良子も全く一瞬も止まることも考えることもなく冴内の後をついていき、同じく全く躊躇せずにしろおとめ団も全員冴内の後についていった。


「いやいやいや!ウチの家族はともかく、何で皆まで男性風呂に入ってくるの!」

「まぁまぁ大将、せっかく仲間になったんだ!ここは一つ裸の付き合いといこうじゃないか!」

「そうだっぺ!アタシら以外誰もいねぇから何も問題ないっぺ!」

「ケシシシ!アタシら結構いいもん持ってるから大将も喜んでくれると思うぜ!いや、思うわ!」

「オ、オレは別に、じゃない、アタシは大将が女風呂に行けといったら女風呂でもいいかな・・・」

「ヒッヒッヒ、ヤブ医者はあっちの方もヤブだからな・・・」

「うるせぇ!バカ野郎!じゃなくてえーと・・・」


『こちらは男性専用の浴場となっております、女性の方は隣の女性専用の浴場にお入りください』と、何台かの給仕ロボットが入ってきて説明した。他にもタオルやボディソープやシャンプーだと思われる入浴用品を持ってきて配置し始めた。給仕ロボットは花子程ではないがシンプルなデザインの人型ロボットだった。


「ほらほら皆、給仕ロボの言うことを聞いてちゃんと浴場のルールを守らないとダメだよ!」

「そうよ!ルールは守らないとダメよ!女は全員女風呂に入りましょう!ホラ!たまには女同士だけで入るのもいいわよ!」いつもよりかなり饒舌な優。

「わかった!るーるはだいじだ!アタイ達はおんなだからおんなぶろに行く!父ちゃんまたあとで!」

「お父さんまた後でね!」


「仕方ねぇな・・・じゃない、仕方ないわね」

「チェッ」

「チッ」

「・・・ホッ」

「まぁ女同士で背中を流し合うっぺよ!」


 そうしてちゃんと男女別れて入浴した。小説なので詳しい内容は割愛するが、もしも何かの手違いで小説以外の作品になった場合はなかなかのサービス回であることは間違いない。


 お湯の成分などは例の大闘技場の近くにあったオープン居住スペースから持ってきた風呂場には劣るが、こちらの浴場は壁や天井に様々な美しい風景が投影されたり鳥達の鳴き声や滝が流れる音なども出力されたのでとても良い居心地で心も体も十分に癒されてリラックスすることが出来た。


 入浴後、給仕ロボットが冷たい飲み物やアイスクリームなどを持って来てくれてとても至れり尽くせりだった。


♪ピコーン!

「あっ!今ならカラス達の卵を温めるのに丁度いいんじゃないだろうか?」

「お風呂でほてった身体で卵を温めるのね!」

「あっ!そうか!さすがお父さん!」

「さすがだ!父ちゃん!まってて今たまごをとりだす」


 美衣が4個の卵を取り出すと冴内達は全員腹に卵を抱いてタオルでグルグル巻きにした。


「大将、それってあの大カラスの卵ですかい?」

「うんそうだよ」

「えっ!それ・・・どうするんですか?」

「自分達で卵からかえすんだよ、VRゲームでは生まれてきたカラスに名前を付けてあげたらとっても利口で優しい性格の白い綺麗なカラスに生まれ変わったんだ」

「いやしかし、それってVRシミュレーションのことですよね・・・いや・・・大将達のやることだからそれも有り得るのか・・・」

「まぁ確かに現実世界でもそうなるかは分からないけど、これまでも結構名前を付けたことで色々やらかしちゃったから今度も恐らくそうなると思う」

「えっ・・・名前・・・名前ですか・・・うーむ」

「名前がどうかした?」

「いっいえ、何でも・・・何でもないです、さて!アタシらの寝床はどこかな~!!」


 花子が気を利かせて部屋の振り分けをし、冴内達は4人部屋へ、他の海賊達は好きなように割り振ってそれぞれの部屋へと入っていった。


 冴内達はいつも早寝早起きが体に染みついているので、寝室に入った途端すぐに眠り始めた。


 しろおとめ団もこれまでの彼女達ならば夜は大抵酒盛りをしていたのだが食材採取で疲れたのと、心も身体も安らぐ入浴をしたので酒は程々にして皆すぐに寝た。ちなみに数人程が冴内の部屋に忍び込んで何かしらの既成事実を作ろうかと企んでいたのだが、さいごのひとが気を利かせて導眠効果のある音をささやかに鳴らしたので事なきを得た。


 次の日の朝、しろおとめ団がチラホラと冴内達に遅れて起きて部屋を出てくると、冴内達の姿が見当たらず、何やら外の方で音がするので向かってみたところ、地球でいうところの軽自動車くらいの大きさの白く美しいカラスが4羽いて冴内達に頭をこすりつけて甘えていたのを見た。


 冴内達はカラスと普通に会話をしているように見えたが、ニャア子にもカラス達の言ってることがカタコトではあるがなんとなく分かるとのことで、冴内から聞いていた通り温和でかなり賢いカラスだそうだ。


 全員集まったのでまたしてもレストランに行って自炊して朝食を作り朝から盛大に全員で朝ごはんを食べた。食後お茶などを飲みながらくつろいでいるところで、冴内は今後の方針を皆に話しかけた。


 話の内容として、まずはこの地とみんなのほしの間に良子に小さなゲートを作ってもらうというものだった。大きなリングゲートではなく小さなゲートにすることで大規模開発が加速度的に進むことを避けたのである。コッペパン号は基本的にこの星に駐機させることにした。しろおとめ号をどうするかはしろおとめ団が自由に決めてくれと言ったが、当面はコッペパン号と同じくこの場に駐機させるとしろおとめ団全会一致で決まった。


 次に冴内は半年近く地球から離れてしまったのでいったん地球に帰ってこれまでのことを報告すると言ったところ、これまたしろおとめ団全会一致で私達も一緒に連れて行って欲しいと懇願されたので、一緒に連れて行くことになった。


 こうしてまた新たに家族が増え、しかも新たな仲間まで増えた冴内は久しぶりに地球に帰ることにしたのであった。

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