193:再開
『皆様、あと6時間で第44調査惑星へと到着します』
「ようし!皆やるわよ!っていってもオートだからアタシらにはやることほとんどないんだけどね!」
「「「ハハハハ!」」」
「観測結果はどう?」
「酸素濃度正常、気圧正常、重力ほぼ1G、着陸予定地点の天候良好、風力微風、生物反応は・・・まだ詳細には分からないか・・・」
「銃火器チェック状態はどう?」
「パワードスーツ問題なし!」
「浮遊戦車問題なし!」
「バイタルチェックはどう?」
「皆健康そのもの!異常なし!月のものも該当者なし!皆はどう?」
「「「問題なぁ~し!」」」
「大将!こちらしろおとめ!オールチェック完了!全員いつでもヤれるわよ!」
「えっ?ヤれる?いや、僕等は戦わないよ、直接空中庭園都市に行くから」
「「「なんだってぇーーーーッ!!!」」」
「うん、コッペパン号と良子がもう空中庭園都市の座標を特定して発見済みなんだ、今から座標をそっちに送るって言ってる・・・」
「・・・あっ!座標来ました!」
「ケシシシ!こっちじゃその座標には何もないっていう観測結果が出ているよ大将!」
「うん、なんだか凄い技術でとても巧妙に隠されてるんだって、レーダーでも人が目で見ても分からないそうだよ」
「そっちでは分かるんですか?大将」
「こっちにも何も見えないんだけど・・・あっ!なんか来た!あの線みたいのは何?良子・・・ガイド・・・ビーコンを・・・可視化?フ・・・フーン」
当然良く分かってない冴内。
「ガイドビーコンを可視化だって?んなこと出来るのか?聞いたことねぇぞ、じゃない、わよ」
「とにかくしろおとめ号はコッペパン号の真後ろについてきてだって、牽引ビームネットで引っ張るからその後はしろおとめ号のメインエンジンを停止して欲しいって言ってるよ、そうしないと恐らく空中庭園都市が入れてくれないって良子が言ってる」
「了解しました!しろおとめ号、ただちに指示通り行動開始します!」
コッペパン号の真後ろに隠れるようにしろおとめ号はコッペパン号の牽引ビームネットによって引っ張られながらついていった。良子の指示通りメインエンジンは停止し、念のため全員宇宙服やパワードスーツを着込んでいた。
『間もなく目標の座標に到達します、目標到達まであと5分』
「まだなんにもみえないぞ」
「そうだね、何も見えないね」
それから4分30秒が経過すると、カウントダウンが開始された。
『・・・5、4、3、2、1・・・到達しました』
「「「うわぁーーーー!!」」」×15
そこはまさしく空中庭園都市だった。
何か空気の膜のようなものを通過した途端、冴内達の目の前にはVRシミュレーションで見た空中庭園都市そのものが目の前に広がっていた。だがしかし残念ながらやはり緑豊かな姿ではなく明るいグレー一色の乾燥した風景しかなかった。
コッペパン号としろおとめ号は空中庭園都市の広場に着陸した、しろおとめ号はメインエンジンを停止していたので優と良子と美衣が外に出て3人の重力制御でそっと着陸させた。ちなみにランディングギアはしろおとめ団が手動で出した。マニュアル操作トレーニングを完璧に訓練していた賜物である。
良子はそのまま真っ先に空中庭園都市中央管理センターへとすっ飛んでいった。VRゲームの時と違って千倍重力もなければ難易度も鬼レベルのしばりプレイじゃないので、良子はそれこそマッハ級の速度で重力制御を使ってすっ飛んでいった。
「す・・・すげぇ・・・あれが冴内ファミリーの真の姿か・・・」
しろおとめ団は手動で搭乗ハッチをあけて出てきた。空中庭園都市が生身でも問題なく過ごせることを確認すると、彼女達は宇宙服やパワードスーツを脱いだ。
冴内と優は花子と出会った場所を探し、美衣はレストランがあった場所に向かった。しろおとめ団達もVRシミュレーションで何度もこの場所に訪れていたので、冴内達も知らなかった各種設備を確認しにいった。
程なくして空中庭園都市が一瞬震えた感じがしたかと思うと、空中庭園都市のあちこちが稼働し始めた。エスカレーターやエレベーター、空間投影電光掲示板、各種明かりがつきはじめ、水路から水が流れ出てきた。そして冴内達の前に良子が空間投影された。
「みんな!空中庭園都市中央管理システムを起動したよ!しろおとめ団の人は市民登録するからしろおとめ号に戻ってメインエンジンをつけてしろおとめ号のメインルームで待機して!」
「「「了解!!」」」×11
「えーと・・・この辺りだったかな・・・花子ー!花子ー!・・・じゃない、アイスクリーム食べたいなー!アイス食べたいなー!」
「アイスクリームじゃなくてソフトクリームじゃなかったかしら?」
「あっ、そうだった・・・」
すると、突然冴内の近くにある床がスライドして開き、中から冴内の胸の高さまでありそうな円筒形の物体が出現した。見覚えのある白地に淡いピンク色の模様が描かれており先端は丸くなっていて顔の部分が液晶パネルのようになっていて、その液晶パネルにはニッコリと微笑んでいるかのような顔が表示されていた。
「わぁ花子だ!花子に間違いない!やっと会えた!ごめんね待たせて!」
『クピポピピ・・・ハ・ナ・コ?』
「そうよ!あなたは花子よ!私達の家族よ!」
「そうだよ花子!君は冴内 花子!僕達の大切な家族だ!」
『ハナコ・・・・ハナコ・・・、サエナイ ハナコ・・・ッ!!!クピポピピ・・・パピポピポピピプパピポパププ!プーーーーン!!』
『ダウンロード中・・・ダウンロード中・・・』
バシュウゥゥゥーーーッ!
円筒形の物体は光輝き、何やらあちこちのダクトみたいないな場所から煙が排出され、それらがおさまって落ち着くとそこにはとても可愛らしい少女に擬人化されたロボットが出現した。
「皆さん!おかえりなさい!本当に迎えに来てくれたんですね!とっても嬉しいです!」
「「花子!ただいま!会いたかったよ!」」
「私もです!」
こうして冴内は元・空中庭園都市のガーデンフロアの案内ロボットの花子、本物の花子と再開したのであった。
一方美衣は本物のレストランに辿り着き、躊躇なく迷うことなく真っ先に厨房に入り、各種調理設備を確認した。コンロもグリルもオーブンも全て問題なく稼働し、あちこちの棚を開けて鍋やフライパンや調理用ナイフなどを確認し、ナイフはアタイのチョップがあるからいいんだったと独り言ち、それらとは別に最も大事なモノがないかキョロキョロと探していたところ、何やら神聖な感じが漂う場所に美衣の目は釘付けになった。
それはまるで日本の一部家屋にある神棚のようなもので、日当たりの良い壁の高いところに設けられていた。美衣は重力制御で浮遊して棚に近づき、その棚に何やら一枚の透明パネルが大事そうに置かれているのを見た。そしてそれを大事そうに手に取って床に静かに着地すると、そのパネルを額に当ててこう言った。
「アタイは美衣、冴内 美衣、すばらしいりょうりをアタイにおしえてください」
するとそのパネルは息を吹き返したかのように突然光り輝き、ナイフとフォークの絵が表示された。美衣はパネルを指でページをめくるようにスライドすると、最初の目次のような文字情報の後に続いてお目当ての料理の映像の数々と調理の課程が表示された。
「キャァーーーーッ!!!」と、美衣はその場で30回転宙返りをして身体中で大喜びを表した。
しろおとめ号のメインルームではどこから照射しているのか分からない何か緑色の光線が出てきて、その光の枠がしろおとめ団全員の身体をスキャンし終わると、良子が全員の市民登録が完了したから自由にあちこち行き来できるようになったと告げた。また、しろおとめ号も船体登録完了したからこちらについてもこれからは普通に行き来出来るし、他の存在からは一切検知することが出来ない空中庭園都市を可視化して検知することが出来るようになったと説明した。
こうして冴内達はとうとう本物の第44調査惑星との再会を果たしたのであった。