192:乙女のガッツ
「さて、船の名前とアタシ達の軍団の名前が決まったところで、今後のアタシ達の活動内容をどうするかなんだが・・・」
元・女宇宙海賊改め、しろおとめ団一同全員が真剣な顔で冴内を見つめた。
若い女性達にガン見されることなど、冴内の冴えない人生においては皆無なことだっただけに、冴内はかなり戸惑った。しかし冴内は第4の試練を乗り越えておよそ通常人類では辿り着けない程にまで精神力を鍛えられたのでなんとかしどろもどろの情けない状態にならずに済んだ。
「えーと・・・今僕達は第44調査惑星という星に向かっていて、そこで僕等の家族になる花子っていうロボットを探しに行くんだ」
「可愛いカラスもさがすんだよ!あとすごいりょうりのざいりょうも!」
「なるほど!分かりました!アタシらも一緒に行って手伝います!」
『横から失礼します。お言葉ですが、あなた方では冴内様達の邪魔にしかなりません、恐らく全員すぐに全滅して死亡することでしょう』
「なんだって!そんなにヤバイ場所なのか!!」
「ケシシシ!そりゃそうだろうぜ、なんたって天下の冴内さん達が出張って来る程の場所だぜ?ヤベェところ以外の何物でもないってもんだろケシシ!」
「美衣お姉ちゃん達そんなおっかないところに行くの?」
「うーん・・・おっかなくはないぞ、おもしろいところだぞ」
♪ピコーン!
「そうだ!閃いた!ガイドさん、せっかくだから皆にVRゲームで体験させてみたらどう?」
『なるほど!さすが冴内様!名案です!実際に仮想体験させてみれば彼女達も身をもって身の程を知ることが出来るでしょう』
「えーと・・・出来るだけ、優しい難易度にしてあげてよ・・・」
『はい、承知しております。せめて死なない程度には難易度を下げて体験させようと思います』
「う・・・うん、お手柔らかにね・・・」
「えーと・・・大将、一体何の話しだい?アタシらに何かさせようってのかい?アタシら大将の命令ならなんだってやるぜ、いや、やるわよ」
「うん、君達にはこれから僕らが向かう第44調査惑星のリアルシミュレーション体験をしてもらおうと思うんだ。この船にはそういう設備がついてて色んな冒険の体験が出来るんだよ」
「へぇ!そりゃ面白いじゃないか!みんな!やろうぜ!じゃない、やるわよ!」
「「「おー!じゃない、はーい!」」」
『それではVRシミュレーションを開始いたします。難易度は一番優しいモードに設定します。痛覚感知設定も一番控えめに設定します』
「なんだよ!アタシらだって一応これまで宇宙海賊で命張ってきたんだぜ!そこいらの奴等なんかよりは強いぞ!」
『何を言ってるんですか、私は既にあなた達の能力数値は全て把握しています。とてもじゃないですが最も優しいモードにしても、手痛い目にあうのは確実です』
「チェッ!まぁいいや、とりあえずやってやろうじゃないか!アタシらのガッツを見せてやる!」
「ケシシシ!アタシら舐めんなよケシシシ!」
「そうだっぺ!アタシらだって強いっぺよ!」
「「「そうよ!そうよ!」」」
『分かりました、それではVRシミュレーション、第44調査船団全滅の危機を開始します』
「えっ?今なんつっ・・・」
開始から5分後・・・
「イダダダダダ!痛いッ!痛いッ!やめてくれ!」
「ギャァァァ!死ぬッぺ!死ぬッぺ!」
「おいヤブ医者!こっちだ!早く助けてくれ!」
「ダメだ!医者はもう死んでる!即死で多分グチャグチャだ!なんかモザイクかかってるからよく分からんけど・・」
「キャァァァ!ヌタヌタ来ないで!こっちに来ないで!ヒィィィィィ!」
「フーーーーッ!姉ちゃん達をイジメるなぁぁぁぁ・・・フゥーーーーッ!ガオーーーッ!!!」
「うわっ!ニャア子!お前ニャア子か?」
「オォォーーーッ!?ニャア子強ェ!一体どうしちまったんだ?」
「ケシシシ!ようやく分かったぜ!パワードスーツの起動と使い方がよ!おいコック!アタシはこういうのうまくねぇからお前が、じゃない、あなたがやってくれ!」
「分かった!まかせとき!」
「アタシもやる!」
「おっ!機関室見習いか!そういやお前じゃないアナタもこういうの得意だったな!ケシシシ!」
「はい!やります!」
ベコオォォン!
「うわぁ!パワードスーツの装甲が!装甲が!」
「動けなくなるぞ!パージだ!パージしろ!」
「おい見習い!コックの後退を援護だ!ヌタヌタのビンタを絶対食らうなよ!」
「はい!やってみます!」
「おいコック!パーツ交換だ!ビームガトリングを見つけた!こいつに代えてぶっ放せ!」
「分かった!」
「お前らどけろ!コックの射線に入るなよ!」
「皆どけろ!どけろ!ぶっ放すぞ!」
ヴワァァァァァーーー!!
「いいぞコック!効いてる!効いてるぞ!」
「ガトリングまだありますか!?」
「いや!ない!・・・あっ!待て!こりゃ・・・火炎放射だ!火炎放射ユニットがある!よし!いったん戻ってこい!姐さん!じゃない、リーダー!まだ生きてるか!?」
「おう!まだ生きてるぞ!左腕はなくなっちまったけどな!」
「なんだって!?ちくしょう!」
『結構・・・思った以上にやりますね』
「うむ、精神的な強さと判断、適応能力が高い」
開始から30分後・・・
「あぁーーー!また全滅した!」
「ちくしょう!あともう少しだったのに!」
「今度こそうまくやるっぺよ!」
「ケシシシ!クリアできてもよ、少なくとも半分は生き残らねぇと次ですぐ死んじまうぜケシシ!」
「もう1回!もう1回やるぞ!じゃないやるわよ!」
「「「おう!じゃない、はい!」」」
「・・・うへぇ、まだやるのかよ・・・」
「ほらヤブ医者!お前もじゃない、アナタも行くのよ!」
「すごい・・・皆ガッツあるなぁ」
「アタイもいきたい!いきたいけどがまんする!」
「ニャア子ちゃん頑張って!」
「がんばれニャア子!」
「うん!頑張るにゃあ!ガオォー!」
『彼女、頭一つ抜けましたね』
「うむ、獣戦士の首飾りを見事体得し始めている」
さらに2時間後・・・
「やった!今度は全員無事でクリア出来たぞ!」
「ヘボ医者にしてはよくやったっぺ!」
「うるせぇ!じゃない、うるさいわよ!」
「このパワードスーツすごいですね!」
「ケシシ!リーダーを含めて5体全部を動かせたのが大きいなケシシ!」
「あぁ・・・あとニャア子が今、しろおとめ団のナンバーワンエースだな」
「がおぉぉーーー!がおぉぉーーーー!!」
「ニャア子すごいっぺよ!アタシよりも遥かに強くなったっぺ!アタシももっと強くなるっぺよ!総舵手の仕事がほとんどなくなった分鍛えるっぺよ!」
「ケシシ!アタシもこれからは航路オペレーターじゃなくて戦術分析に鞍替えするぜ・・・するわ」
「機関長、提案があるんですが、私達はアレの操縦を訓練しませんか?」
「フフフ副機関長、私も同じことを考えていたぞ、じゃない、いたわよ」
「ならアタシも!」
「おぉ!砲撃手!アナタもいればかなりの火力強化になるわね!」
そして1週間が過ぎた頃、彼女達はとうとう空中庭園都市へと辿り着いた。
彼女達が最も苦戦して時間がかかったのは古代遺跡の迷宮で、冴内達は良い子だと認識されたおかげでノートラップでただ通過しただけだったが、しろおとめ団は残念ながら良い子と認識されず、トラップと迷路に見事にハマりまくり何度も全滅したが、それでも挫折せずにひたすら挑んでは全員で反省会を開いて何度も挑戦した。
「古代遺跡の迷宮通路ってこんなに大変だったんだね・・・」
「アタイこっちのほうがおもしろそうでよかったかも」
「よし!明日から難易度をあげて挑戦よ!」
「「「了解ッ!」」」
『正直、ここまで彼女達がやるとは思いませんでした』
「うむ、見上げた精神力だ・・・根性、いやガッツだったか、そう彼女達にはガッツがある」
そうしてさらにまた1週間、彼女達は何度も何度も難易度を高めながら挑み続けていった。さすがに冴内達の難易度には程遠いが、第44調査船団が当時挑んだ実際の現場よりもかなり難しい難易度で攻略することが出来るレベルまで達していた。
ちょうどその頃冴内達はいよいよ本物の第44調査惑星へと辿り着こうとしていたのであった・・・