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19:正式ダンジョンシーカー

 自宅に戻った冴内はその後ゲート内で起きた様々なことを両親とネット通話で参加した2人の姉に向かって熱く語った。


 家族全員こんなに熱く語る彼を見たのは初めてのことだった。彼の話しを聞いているうちにその興奮が全員に伝播し、ネット通話の後方で聞いていた姉の夫やその家族ですら身を乗り出して彼の話しを聞いていた。


 そうして彼は正式にゲートキーパーになることを家族全員に宣言した。反対意見はなく、手続きがスムーズに進めば2週間後には富士山ゲートに向かうことになると言うと、せっかくだから姉家族全員含めて送別会を開こうということになった。


 そこで冴内はアイディアがひらめき、自分のチョップを実際に皆の前で披露するから、河川敷のキャンプ場でバーベキューにしないかと提案すると、それはいい!と満場一致で賛成された。


 翌日冴内は一般社会で使用する個人用スマホを利用して富士山麓研修センターに連絡し、機関職員から近くの役所に向かうよう指示されて指示通り役所に向かって到着すると、移動中に既に役所の担当者にその旨伝えられていたようで手続きはすぐに終了した。


 以前研修センターで聞いていた通り、正式なダンジョンシーカー登録には2週間程度かかるので翌月の最初の月曜日に富士山麓ゲート研修センターに行くことに決めた。ゲート外の一般社会からゲート内には電波が届かず通信出来ないため、鈴森さん、力堂さん、矢吹さんにも翌月最初の月曜日にゲートに行くよう伝えて下さいと、富士山麓ゲート職員の方に頼んでおいた。


 家に帰ると母が、必要な物をリストアップしていて一緒に見てくれと言ってきたが、リストに記載されていた物はほぼ全て必要なく、最低限の衣類だけで良いというとかなり驚き、それを説得するのにかなり時間がかかってしまった。


 実際ゲート内に持ち込めるものはかなり制限されていて、例えば母のリストには一人用炊飯ジャーとか電子レンジとか記載されていたが、ゲート内に持ち込めないどころかそもそも必要がない。自分は基本的にはゲート内で生活するつもりだ


 あらかじめ研修センター内の個室部屋の利用申請をすれば無期限に利用することは可能だが、長期間部屋に戻らず空き部屋状態が続いた場合は持ち物は別途保管庫に移動されて利用解除される。


 歯ブラシなどの生活雑貨はゲート内の売店にもあるし衣類については富士山麓ゲートからバスで移動して近くの大型ショッピングモールで買えばよい。


 食事は基本野外食堂を利用するつもりだし、遠い場所に探索する日がきたら自分でキャンプ飯ってのも作ってみたい。


 洗濯は以前共同風呂で手洗いしたが、別の場所にコインランドリーもあるようだ。混んでいたら研修センターのものを使ってもいい。


 そんなことを延々と母に説明していたら夕方になってしまった。


 正式ゲートシーカーとして富士山麓ゲートに行くまでの間、携帯端末をパソコンのモニターに接続してモニターの広い画面を利用して色んな資料を閲覧したり情報収集して過ごした。ゲート内とは通信出来ないが、富士山麓ゲート研修センターの情報管理サーバーにはアクセス出来るので、そこから情報を得たのだ。この辺りは専門学校でコンピューター関連の各種スキルを習得していたのが役に立った。


 そして出発2日前の土曜日、河川敷のキャンプ場で姉家族を含めた親類一同で自分の送別会バーベキューが開かれることになった。


 とりあえず男性陣はテントやバーベキューコンロなどの設営作業を行い、女性陣は調理作業に取り掛かる。姉の子供たちは大はしゃぎであちこち走り回るので危なくないよう自分が見守ることにする。


「洋ちゃんイシ割れるの?」と聞かれたので、そこらの小さな石を手に持って割って見せたらワーワーいって喜ばれた。「マネしちゃダメよ!おててイタイイタイするよ!」と姉も遠くで微笑みながら言っている。


 他にも平べったい小さい石を川面に水平に投げてどれくらい跳ねるか競争したりして、子供たちは一通り遊んだ後、いい感じでお腹が空いたタイミングで肉が焼き上がったので皆で楽しく飲食した。


 以前話したゲート内での出来事を生で身振り手振りでもう一度語ったところ皆大興奮で、興奮が最高潮に盛り上がったところで、自分の腰ぐらいまである岩をいとも簡単に割ってみたところ、家族一同大騒ぎどころかキャンプに来ていた他の人も驚愕していた。


 もう一度!もう一度!とせがまれたので、もう少し大きい岩を割ったが当然その場にいた人達全員に動画を撮られてしまった。ホントはもっと大きな岩も割れるけどキャンプ場管理者の方に怒られそうなのでやめておいた。


 あぁやっぱり能力者なんだなぁと皆口々に言っていた。


 これが筋骨隆々の大男でいかにも空手などの武道の達人風の見た目の人がものすごい力と速さで叩き割るのなら納得するかもしれないが、普通のどこにでもいる若干細身の青年が何の予備動作もなく何気なく放ったチョップで簡単に岩が割れたもんだからまるで手品のような、それこそ特別な能力だから出来るんだろうと納得してしまうのだ。


 実際色んなシーカーの驚異的身体能力が、それこそ80年もの間、新聞、ラジオ、テレビ、ネットと時代の変革と共に様々な媒体を通して世界に広く見聞されてきたので、今となってはことさら大きく取沙汰されることはない。


 そうしたちょっとした騒ぎもありつつ、送別会は無事終了し、次の日曜日は出発準備作業に明け暮れた。その夜は寿司を出前でとって両親と一緒に飲食した。この日は珍しく母もお酒を飲んで夜遅くまで語り合った。

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