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184:宇宙海賊

 一夜明けて今日は隕石破壊船外活動と夫婦のスキンシップハッスル活動はお休みということで、のんびりまったり朝食をとっていた冴内であったが、コッペパン号の音声ガイドから昨日冴内達の船外活動が何者かの無人偵察ポッドにより監視されていたようだと伝えてきて、盛大にお茶を吹き出しそうになったのをこらえて強制的にゴクリと飲み込んだものだから喉が痛くなり若干涙目になった。


「父ちゃんだいじょうぶか」

「う・・・うん、だいじょうぶ」

「ごめんなさいお父さん、私全然気付けなかった」

「私も全然分からなかったわ」

「アタイもわかんなかった」


『無理もありません、隕石密集宙域なために指向性レーダー干渉を検知することは極めて難しい状況でした。コッペパン号の思考AIが微弱なレーダー波を感知出来たのは皆さんが就寝なされている時になってようやく発見出来た程ですから』


「え・・・えーと・・・その・・・どの程度のことまで偵察されたんだろうか・・・」


『かなりの遠距離で、隕石も密集した宙域のことですから、隕石を破壊しているらしいとしか分かっていないと思います。隕石破壊時の衝撃と宙域に飛散した鉱物資源の粒子濃度や微弱な電流などの数値を分析していると思われます。映像は相当粗いものになっているはずですので、個体識別はほぼ不可能だと思われます』


「コホン・・・えーと・・・その、僕と優が隕石の破片が沢山漂ってる中で休憩していた時の状況とかって分析されたりしたんだろうか・・・」


『それについては全く何も分析されていないと断言出来ます。あれだけの隕石破片群の中でしたから、例え高性能無人偵察ポッドだったとしても、コッペパン号ですらようやく探知出来た程の遠距離からでは冴内様と優様の休憩中の間の出来事は全く何一つ分析されていません、安心して下さい』


「う・・・うん、有難う。安心したよ」

「きゅうけいちゅうにこうげきされたらあぶないから良かった!」

「う・・・うん、そうだね、ハハハ・・・」


「ところでその、僕達を偵察していたのって以前言っていた宇宙海賊とかなんだろうか?」

『はい、その可能性が極めて高いと思います。宇宙連合所属の偵察ポッドならば特殊な作戦実行時以外は識別信号を必ず出していますが、今回の偵察ポッドからは識別信号が検知されず、しかも索敵レーザーもイリーガルな波長でしたから、間違いなく宇宙海賊と思われます』


「ということは、近くに宇宙海賊がいるってことだよね・・・」

『はい、明日はこの辺りの宙域を取り仕切る一大勢力が潜伏していると思われる領域に入りますので、その可能性は極めて高いと言わざるを得ません』


「ところで宇宙海賊って宇宙連合とかが討伐したりしないの?」

『はい、宇宙連合は宇宙海賊を討伐しません。討伐するとしたら宇宙警察の管轄になりますが、それでも余程凶悪で手に余る事態にならない限りは積極的に討伐行動を行いません』


「それはどうして?」

『一つには宇宙海賊を討伐するにはあまりにも宇宙は広大過ぎるという点があります。宇宙海賊達は巧みに根城を変えていきます。それも大体今回のような隕石密集宙域や、ブラックホール付近や、未開拓未調査に近い銀河などなどを点々と移動し続けており、彼らを捉えるのはとても困難です。また捉えたとしても彼らはたえず小規模の集団で散らばって行動しているため、全てを一網打尽に捉えることは出来ないのです』


「したたかというか、なんというか・・・」

『宇宙海賊の歴史はとても長く、げんしょのひとがまだ再初期段階の頃、本格的な宇宙進出を開始した時から出現しております。まだ宇宙連合が発足する前には何度も大規模討伐が実施され、かなり数を減らして沈静化した時期もあったようです』


「今はどうなの?」

『現在は最も勢力を拡大していた時に比べると数百分の1程度にまで減らしていると言われていますが、正確な数字ではないので実際のところは不明です。また、宇宙海賊の中には未開拓宙域などで略奪行為を行わず該当宙域の警備や探索支援や揉め事の仲裁などのようなことを行っている集団もいて、そういった集団に対してはほぼ容認している状況です』


「僕等を偵察していた海賊達はどっちだろうか」

『今の段階ではどちらとも言えないですが、一夜明けても何の信号も送られてこない事実からあまり友好的ではない可能性が示唆されます』


「そうなんだ・・・これまでイノシシとかクマとかイナゴとかなら退治してきたけど、同じ宇宙人相手の生身の人をやっつけるのってなんかやりづらい気持ちがあるなぁ」

「父ちゃん、だいよんのしれんにいたやつとか、だいとうぎたいかいでたたかった相手にもそういう気持ちだったのか?」

「いや、あの時はそんな気持ちはなかったよ。第4の試練にいたのは確かに人型のもいたしブラックな自分もいたけど、なんというか僕等と同じ人間って感じがしなかったし、大闘技大会で闘った時は悪い相手を討伐するとか退治するとかじゃなくて、純粋に試合という形だったからやりづらいという気持ちはなかったよ」


「父ちゃんがにがてなあいてなら、アタイ達でぜんぶやっつけてやるからあんしんして!」

「そうよ!私達にまかせて洋!」

「うん!私達で全部やっつけるよ!」

「有難うみんな、でもなるべくならあまり傷つけたくないかなぁ・・・」

「父ちゃんは優しいな!大好き!」

「私も大好き!」

「私もー!」


 有り得ない程この世の者とは思えない程に美しい妻や可愛らしい娘達に抱き着かれて、羨まし過ぎて殺意が芽生えて発狂しそうになる程幸せそうな光景であった。


 一方そんな幸福一杯なコッペパン号とは対照的にこの宙域一帯を取り仕切る悪名高い宇宙海賊軍団達はこの宙域からの一時離脱作業で大忙しだった。


 丸1夜かけて無人偵察ポッドから送られてきた全てのデータの解析作業が完了しそこから導き出された結果、今自分達に近付いてきているのがあの冴内ファミリーだということが判明したのだ。


 いくら荒くれ集団の宇宙海賊とはいえ、宇宙全土にその名を轟かせる冴内達を知らないわけがなく、宇宙連合上層部からの発信により冴内達は自分達を討伐しに来たのではなく、何やら家族の救出に向かっているということも知っていたが、それでも触らぬ神に祟りなしということで一時的にこの宙域から離脱することにしたのである。


 だがどこの世界のどこの集団にも必ずといっていい程跳ねっかえりというかイレギュラーな輩という者は存在するもので、ましてやゴロツキ集団の海賊とあってはそんな存在がいても仕方がなく、御多分に漏れずやはり一部命知らずの愚か者達がいた。


 とはいえその愚か者達は、冴内達に挑んでやろうと考える本物の馬鹿だったのではなく、好奇心が旺盛過ぎてこの目で本物を見てみたいという純粋な欲求と衝動が抑えきれなかったのだった。ある意味自由奔放な宇宙海賊の精神に忠実に従ったのである。


「ホントに行くのかい姐さん?」

「二度も言わせんじゃないよ!行くっつったら行くんだよ!」

「ケシシシシシ!こうなった姐さんを止められるヤツなんかいねぇよ!ケシシシシシ!」

「そうだっぺ、お前も覚悟するっぺや」

「いやオレもはなっから覚悟してるけどよ、一応確認したまでよ。なんたってこれは大お頭の命令違反だからよ」

「んなもん構やしねぇよ!あんなジジィ共の言う事なんか知ったことかよ!俺達は自由がウリの宇宙海賊だぜ!この宇宙でとびっきり強ェヤツを見てみたいってのが海賊ってもんだろ!」

「ケシシシシ!お前いつも威勢だけはいいな!」

「ガハハハ!そうだっぺ!そうだっぺ!お前おしゃべりだけは威勢がいいっぺ!」

「な!なんだよ!お前らだってそう思うだろ?ところがジジイ共ときたらスタコラ逃げ出すってんだからよ!宇宙海賊ならうまいこと取り入ってアイツらと盃を交わしてやるぐらいのこととか言ってみせろってんだ!なぁ?姐さん!」

「ハハハ!まぁ盃はともかく実際にこの目で見てみたいのは確かだな!」


 この好奇心旺盛な若い宇宙海賊達は他の宇宙海賊達が四方八方に離脱していく中、ダミーの海賊船を放って自分達も離脱していることを偽装し、こっそりとひっそりと隕石に隠れて冴内達が近づいてくるのを待ち受けた。


 ちなみにその若い宇宙海賊達は全員女性だった。

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