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182:次なる冒険

 宇宙連合艦隊は各々の駐留基地へと帰っていったが、その間艦内ではお祭り騒ぎが3日間程続き、冴内達のいる巨大衛星要塞はリングゲートが設置されている惑星付近で一時停止してくれたので、冴内達は要塞クルー達の盛大な見送りを背にリングゲートのある惑星へと生身の身体で向かっていった。


 あらかじめさいごのひとから事情を聞いていたので、冴内が保有する例の白い消しゴム状の携帯端末装置は要塞にいた情報参謀の人に渡しておいた。


 冴内は宇宙イナゴの生態調査と宇宙イナゴを作り上げたとされる何者かの調査については、専門家達に全て任せることにした。確かに宇宙イナゴと実際にやり合ったのは冴内達ではあるが、最後のクイーンイナゴとの会話は全て記録されているし、冴内自身もそこで感じた以上のことは全く分からないのである。一応冴内達はそれぞれ全員が思ったこと感じたことを率直に全て語ったので、後は専門家に任せることにした。当然何か事態が進展し、冴内達の協力が必要になった際はいつでも呼んでくれと言い加えておいた。


 そうして冴内達はコッペパン号が係留されている惑星までまたしても2千箇所にも及ぶリングゲート移動を開始したのだが、冴内達だけが近づくのでは効率が悪いということで良子が瞬時に計算してコッペパン号を遠隔起動し、コッペパン号からも冴内達を目指して移動させることでリングゲート移動を2千箇所から千2百箇所にまで減らすことが出来た。


 しかしながら帰りのリングゲート移動は行きの時と違ってあちこちでそれはもう凄まじく手厚い歓迎でもてはやされてしまい、なかなか思うように移動することは出来なかった。そこでやはり冴内はさいごのひとにお願いすると、さいごのひとはさらに宇宙連合の上層部から協力を得ることに成功して、冴内達が大事なもう一人の家族の救出に向かわなければならないと緊急発信すると、まるで潮が引いたかのようにすぐに人々は道を開けてくれた。


 冴内は内心で申し訳ない気持ちでいっぱいになりペコペコと冴えない様子で頭を下げながらリングゲートを通過していった。沿道で見守っていた宇宙人達は宇宙最強の力を持つ程の存在なのになんと礼儀正しく気を使う人物なのだろうと、ますます尊敬していったが、続いて美衣と良子と優が笑顔で手を振るとやはり地球外の宇宙人達にとってもその美しさは規格外のもののようで、あまりの美しさや可愛らしさで冴内のことなど一瞬で忘れ去って、いつまでも見とれて余韻に浸っているのであった。


 行きの時と同じく大体3日に1回のペースで大きな仮設テントが用意されたので、その中で温かいご当地料理に舌鼓を打ち、風呂に入って汗を流してグッスリ眠って、また翌日から移動を続けていった。


 そうしたリングゲート移動を2週間程続けた結果、コッペパン号とのランデブーポイントに到着した。


 冴内達は最寄りの惑星の宇宙シャトル打ち上げ発着場にまたしても生身の身体のまま現れると、遠巻きに数十万人以上にもおよぶその星の住人達からの見送りを受け、冴内は見送りに来てくれた人達のためのサービスとして太陽になりながら美しくも温かい虹の粒子を降り注いで派手に飛翔していった。


「これ、凄くお腹が空いて疲れるんだよね・・・」

「コッペパン号に着いたらたくさんご馳走作ってあげるわね!」とは、自分で飛ばずに冴内に抱き着いたまま一緒に飛翔していた優のセリフ。


「ごちそうと言えばそろそろだいさんのうぎょうちにいるおっちゃんたちからもらった米がすくなくなってきたぞ母ちゃん」

「そういえばそうね、小麦粉は沢山あるからパンには困らないけど、お米はあとひと月くらいでなくなっちゃうかもしれないわね」


「えっ?そうなの!こりゃ花子の救出は急がないとね、僕も1日に1度はお米を食べたいからさ」

「1日1回だったら2ヶ月はぎりぎりもつかもしれないよ、お父さん」

「あっそうなんだ、有難う良子」

「あっ!コッペパン号だ!コッペパン号が見えてきたぞ父ちゃん!」


 冴内達は生身の身体のまま単独で大気圏を突破し宇宙空間に漂っていたコッペパン号へと近づいていった。コッペパン号の後部からはガイドビーコンが空間に点滅表示されており、冴内達はさらに近づくと搭乗ハッチが開いて冴内達を中に迎え入れた。


 冴内達が全員無事コッペパン号の中に入ると重厚な搭乗ハッチが2重のロックでしっかりと閉まり、続いて細菌チェックなどを行い、ランプがオールグリーンに変わると与圧し始めて空気が注入されて徐々に1G重力になっていった。やがて貨物室への扉もロック解除されて開いたので冴内達は千倍重力でVRゲームをやっていた馴染みの貨物室へと辿り着いた。


『皆さんお帰りなさい!』

「あっ!ぶいあーるげーむのガイドのひとだ!ただいま!」

「ガイドさん、ただいま」

「ただいまー!」×2


『皆さんが宇宙イナゴ討伐のお仕事をなされている間に、私はコッペパン号の思考AIと融合いたしましたので、これからはコッペパン号と皆さんの意思疎通は直接私を介して行えるようになりました!』

「えっそうなの?それは便利だね!」

『有難う御座います!これからよろしくお願いします!』

「よろしく~!」×3


『冴内様、早速ですが次の目的地は第44調査惑星でよろしいんですよね?』

「うん!その通りだよ!ここからだとどれくらいかかりそう?」

『連続ワープを繰り返して安全ルートを行けば3ヶ月程で到着可能です』


「最短ルートだとどれくらい?」

『最短ルートだと1ヶ月かからないくらいでたどり着けますが、途中で隕石群や宇宙海賊が多発する危険区域を行かねばなりません、当艦は非武装なのでそちらのルートはあまりお勧めできませんが・・・』


「いんせきもうちゅうかいぞくもアタイ達がぶっこわせばだいじょうぶだ!」


 百歩譲って隕石を破壊するのは目をつぶるとしても、いくら宇宙の悪党宇宙海賊とはいえ問答無用にぶっ壊すというのはいかがなものでしょうか・・・


『冴内様達のお手を煩わせることになりますが、それでもよろしいのでしょうか?』

「うん、全然かまわないよ!それよりもお米がなくなりそうだから出来る限り急ぎたいんだよね」

『あっ!そうなんですね!それは大変重要な懸案事項です!そんな大事なことに気づけずに申し訳ありません!』

「いや、全然気にしないで!」

『寛大なお心、有難う御座います、それでは最短のルートで進むといたします、道中で冴内様達のお力添えを頂きたい場合はさいごのひとと連携してお知らせします』

「うん、よろしく頼むね!」


「そうだ、冴内 洋、少しいいだろうか?」と、美衣が持つ白い消しゴム状の携帯端末からさいごのひとが語りかけた。

「うん?どうしたの?」

「うむ、携帯端末を増やしてはどうだろうか、以前コッペパン号のアンテナを作ったときに集めた資源材料の余りと作業室の装置を使えば3人分の携帯端末を追加製造することが可能だ」


「あっそれは便利だね!分かった早速作業室へ行こ・・・グゥ~~~~~ッ!!」

「アハハハ!お父ちゃんのお腹虫すごく鳴った!」

「大変!洋はすごくお腹ペコペコだったんだ!私はすぐに料理の支度をするわね!」

「あっお母さん私も手伝う!」


 美衣の宇宙ポケットからキッチンと食料格納箱を取り出して優と良子は調理を開始し、冴内と美衣は作業室へと向かって行き、コッペパン号は第44調査惑星へ向けて最大船速で向かって行った。さすが最新鋭艦なだけあって、凄まじい加速Gや衝撃などは全て制御されて船内は全く平穏なままだった。

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