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18:ワールド・ゲート・オーガニゼーション

 ゲートに関する国際機関、その正式名称はワールド・ゲート・オーガニゼーション「世界ゲート機関」略してWGOと呼ばれており、設立からおよそ80年近く存続する世界最大規模の機関である。その日本支部は2か所あり富士山麓と奈良県に存在している。


 ゲートから持ち出される資源には莫大な価値を有するものもあり、組織の年間運営費を上回る収益をもたらしている。


 会食から一夜明けて冴内は実家へと帰宅した。研修センターの玄関ホールにて見送ってくれた力堂と鈴森に必ず正式なゲートシーカーになって戻ると宣言し、近いうちの再会を約束して別れた。


 その後すぐに力堂と鈴森は大会議室へと向かっていった。大会議室には神代がいて、他にも冴内のゲート内での活動報告をヒアリングした機関職員や白衣を着た研究職員、そしてゲート内プレハブ小屋のおばさんや他にも数名のゲートシーカーもいた。さらには正面の巨大スクリーンにネット通話で外国人も含めて50名近い機関職員が参加していた。


「既に皆さまにおかれましては事前にお渡しした資料を御覧になられたことと思いますが、まずは率直な感想を皆さまからお聞かせ願いたいと思います」


「ミスター、カミシロ、正直言って我々もどう対処すればいいのか分かりかねているところだ」


「何らかの機器の不具合とか、或いは彼の何らかの能力で鑑定がジャミングされているという線は本当にないのかね?」


「それに関しては絶対にないとは言い切れませんが世界最高位の鑑定スキルマスターのミスター、スズモリや当研究職員による測定機器の検証においてもある種の欺瞞的要素の存在は感知検出されませんでした」


「それにだ、初日でワイルドボア(イノシシ)、さらには3日目にソロでしかも素手でベアハントをやったという結果が報告されているが本当かね?とても信じられない報告だが・・・」


「ワイルドボアについては私とミスター、リクドウ、さらにミス、ヨシノの目の前で倒しているので本当です。ベアハントについては第三者の目撃証言はありませんが、彼が熊の肉を持ち帰りリュックから取り出したのを多くのシーカーが目撃しており、実際にその後その肉を食しております、私も食べました。また、彼は武器という武器を全て、持つことはおろか、触れることすらできなかったので素手であることは間違いありません。ただ、魔法攻撃の可能性は否定は出来ませんが・・・」


「ミセス、サイバラ、あなたはほぼ毎日彼のステータスをスキャンしていたし、3日目は彼と2時間近く会話をしていたそうだが実際その時の彼の印象はどうだったかね?」


「一言で言うと彼は至って普通の青年でした。とても自然体で素直で、発言や仕草からは一切の演技を感じませんでした。野外食堂にて飲食をともにしましたが、その際彼は軽くアルコールを摂取しておりその時の言動も全く普通でした。あまり良い表現ではありませんが平凡な青年です。もちろん私は彼を好意的にとらえております」


「それにしてもこのステータス・・・まさに前代未聞だな・・・80年の歴史資料の全てをもってしても前例がない・・・」


「生命力や攻撃力などの数値がまるで分からない以上、一体彼がどれほどの能力者なのか、適した職業は何なのか判断しかねる」


「チョップとしか書かれてない以上、レベルが記載されてもこれじゃまるで分からん。ましてや称号に黒帯とかマスターとか書かれても、その強さをいったいどう判断すればよいのか皆目見当もつかん」


「とりあえずチョップとあることから戦闘系だとは分かるが、攻撃力や防御力数値が分からない以上、どのエリアのどのレベルまで探索可能なのか分からんというのは実に危険だな」


「諸君・・・彼は・・・【英雄】だと思うかね」

「・・・」

「・・・」

「・・・」


「残念ながらそうではないと思います・・・根拠は資料に記載した通りです。そこに書いた通り私の目の前で彼は一切の武器を触ることが出来なかったからです。【英雄剣】の鑑定結果では生まれながらに英雄のスキルを持つもののみが扱うことができると記載されていますが、彼にはその英雄のスキルがなく、あるのはただチョップだけです」


「確かに・・・いや、あまりにも前代未聞のステータスなので、あるいは・・・と思ったのだが確かにミスター、スズモリの言う通りだ」


 その後も会議は続き、冴内の話題以外にも昨今の世界各地のゲート内外における情勢についての情報交換や意見交換を行い、朝から始まった会議は途中昼食や小休止を挟み夕方近くになってようやく終了した。


 冴内については今後の動向を見守り続け、彼に関する情報はいち早く更新して世界各国に公開することとなった。


「議長が英雄を持ち出した気持ちも分かりますね。あまりにも彼のステータスは異例過ぎる。私は元情報局員だったのでこれまでの80年に渡る能力の情報はほぼ調査しましたし彼、冴内君が現れたときは古巣に戻って私自身も加わって改めて過去の情報を調査しましたが、HPや攻撃力などの記載がなくただチョップしかないなんてことはなかったです。類似した事例ですらこの80年ただの1件もなかったです」


「神代さん、今後の彼の処遇についてはどう考えますか?」


「そうですね、力堂さんや鈴森さんは今それぞれで活動していただいていることは非常に重要です。なので冴内君につきっきりで見てもらうことは有益ではありません。これは彼が正式なゲートシーカーになるまでの私の宿題ということで預かりますが、お二方にはオブザーバーとしてこれからも意見していただけますか?」


「分かりました、喜んで参加します」

「了解した、現場作業中は参加できないが、端末はマメにチェックするようにする」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」


 こうして冴内の全く預かり知らないところで、物事は世界規模で進行していたのであった。

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