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178:作戦開始前

 冴内達を乗せた高速航宙艦は2日程で最前線へと到着した。そして今回の宇宙イナゴ討伐作戦の宇宙連合艦隊の本丸となる4っつの巨大衛星要塞のうち最も最新の衛星要塞内部へと入港した。


 冴内達が高速航宙艦から姿を現すと要塞内は熱狂的な大歓声に包まれ、まだ戦ってすらいないというのに既にもう大勝利祝賀会のような状況だった。


 早速上級将校に案内されて要塞内前線指令本部へと向かったのだが、巨大衛星要塞は地球の月程もある大きさなので、その移動には高速リニアシャトルを使って移動しようとしたが、飛んでいった方が早いと美衣が言うが早いか冴内達は各自上級将校を一人ずつ抱いて要塞内前線指令本部のある中心地点に向かってすっ飛んでいった。上級将校は悲鳴一つあげずに鬼加速に耐えながら目的の場所を指し示し続けた。さすが宇宙連合艦隊の上級将校、見上げた根性である。


 そんな冴内達だったので、紛れもなく冴内達本人であることは誰一人として疑いようもなかったので検問やボディーチェックなど完全にノーチェックのフリーパスで宇宙連合艦隊本丸のまさに心臓部ともいえる要塞内前線指令本部へ10分もかからずに到着した。


 要塞内前線指令本部へ到着すると作戦総責任者の最上級将校自らが冴内達へ歩み寄って帽子を脱ぎ深々を頭を下げた後で熱烈な握手を交わした。その様子を見たその場の全員が喜びと感動で涙を流す程だった。


 さいごのひとも立体ホログラムで現れ、早速現状説明を聞かせてもらったところ、宇宙イナゴとの直接対決予想時間よりも2週間も早く冴内達が到達したとのことで、まだ一切の人的被害が出ていないことに冴内達は安堵した。実のところ激烈な実戦想定演習で若干のけが人は出ていたのだが・・・


 次に作戦総参謀本部の将校達を集め、さいごのひととげんしょのひとの思考データと良子の意見を元に新たな戦術プランが策定された。


 当初の戦術プランはブラックホール発生装置の前衛に大規模宇宙艦隊を前進させ、出来るだけ多くの宇宙イナゴを駆除することに全力を注ぎ、ブラックホール発生装置はそのまま破棄する覚悟でぎりぎりまでブラックホールを生成し続け、宇宙イナゴに阻止限界点を突破されたタイミングで全艦全速前進して宇宙イナゴをそのまま突っ切り、宇宙イナゴの後背を突破したところで反転攻勢して宇宙イナゴをブラックホールに押し込むというものだった。


 新たな戦術プランでは冴内達がこれから休息をとった後直ちに宇宙イナゴに向けて全速前進し全力総攻撃を加えることになった。これまでの冴内達の戦闘データから恐らくそれで宇宙イナゴはほとんど壊滅するであろうが宇宙イナゴもしたたかであり、そのとんでもない数自体が最大の強さなので、撃ち漏らした少数の群体が出てくるはずなので、大規模宇宙艦隊はそれらの群体を早期発見各個撃破するという戦術方針に変更され、さらにそれすら突破してきた最後の少数群体もブラックホールによって吸い込まれるように各宇宙艦隊は宇宙イナゴを誘導するような布陣で展開することとなった。ダメ押しでそれでも漏れが出ないように無人有人含めて偵察ポッドや偵察機などを通常作戦時の10倍に増やして宇宙イナゴを一匹たりとも逃さないように徹底的に見張ることにした。


 げんしょのひとの思考データによってはじき出された作戦の勝率は99.357パーセントだとさいごのひとが言うと、何故100パーセントじゃないのかと上級将校達がさいごのひとに問い合わせたところ、冴内達も人間なのでミスをすることもあり、手違いで宇宙を崩壊させる可能性を考慮したとのことだった。


 手違いなどで全宇宙を崩壊されたらたまったものじゃないが、冴内達は全員単独でそれ程の力を持っていることはこの場にいる全員良く知っているので妙に納得した様子だった。ともあれ1パーセント以下という数値なのでその点については皆考えないようにした。考えたところでどうにもならないからである。


 新たな戦術プランが全艦隊の一兵士に至るまで全て完全に通達されると、ただちに陣形を変更するための艦隊行動がとられ、各個撃破の遊撃隊と宇宙イナゴを一匹たりとも見逃さないための大規模偵察部隊が再編成され、各艦隊要員はフル稼働で各自の能力を発揮して全力でこれにあたった。


 さらに冴内は休息をとる前にブラックホール発生装置のところまでまたしても生身の身体で命綱も付けずに宇宙空間を飛んでいった。その際冴内は冴内太陽となって移動した。その理由は衝突防止として冴内の居場所を皆にアピールするためと太陽フレアを放出して飛翔するためであったが、それらの効果に加えて絶大な士気向上にもなった。


 冴内が冴内太陽となって真空の漆黒の宇宙空間を飛翔する様は当然高性能カメラで捉えられており、その姿は宇宙艦隊のあらゆるスクリーン上に投影されて艦隊クルー達の目にするところとなり、それを見たクルー達は今まさにリアルタイムで衝撃的な神々しいその姿をこれでもかという程見せつけられたのだ。太陽そのものというこれほどまでに説得力のある存在にクルー達は言葉も出ずただただ息を飲んで見守るだけであった。


 そして冴内がブラックホール発生装置の至近距離にまで近づくと、外部からでは分からないが冴内はブラック冴内に変身し、両腕からブラックホールを発生させて、ブラックホール発生装置の支援を行った。みるみるうちにブラックホールはより一層巨大になっていき、ものの数時間程で本来ならば数年はかかる程の大きさにまで達した。


 ブラックホール観測班が大声を張り上げて理想の倍以上の大きさになったと通達するとさらに司令部内では歓喜の渦に包まれた。


 冴内はここまでのことをしたことでかなり腹が減り盛大に腹時計をサイレンのようにグーグー鳴らしながら巨大衛星要塞へと帰投した。あらかじめ例の消しゴム状の携帯端末で美衣が持つ同じ携帯端末に向かって疲れてはないけどもの凄くお腹が空いてたまらないと言い伝えておいたので、優、美衣、良子の3人は着艦デッキの第二隔壁内部に宇宙ポケットからキッチンを取り出して設置し、大量に料理を作っていた。


 冴内が着艦デッキに辿り着くとガス欠で動けず、そのまま慣性飛行をし続けると、着艦ネットが用意されてそのまま冴内はネットに包まれ停止し、最新鋭宇宙服を着込んだ艦内クルーやサイボーグ型宇宙人クルー達に介抱されて、空気があり与圧された第二隔壁へと運ばれた。


 冴内が着艦デッキの第二隔壁へと運び込まれるやいなや、優がすっ飛んできて冴内にキスをして例の薄めた桃ジュースをひとくち飲ませた。


 動けるようになった冴内は目の前にある大量の食事を美衣にも匹敵する程の凄まじい食欲でガツガツと食べていった。みるみるうちに山のようにあった料理がなくなっていった。冴内の食欲にあてられて美衣と良子もちゃっかりガツガツ食べていたからであった。


 優雅なレストランなどではない味も素っ気も色気も飾り気も何もない鋼鉄と機械に囲まれた着艦デッキの第二隔壁内で凄まじい勢いで食事を取り続ける冴内達の姿を見て艦内クルー達は圧倒されっぱなしだった。だがそのような姿を見て、より一層クルー達は冴内ファミリー全員に絶大な信頼を寄せたのであった。


 腹一杯食べて人心地ついた冴内は、風呂とベッドを設置するのに丁度良い場所はないかと近くにいた士官に尋ねたところ、電光石火の速さで上官に伝令が届き、その場に最も近い展望デッキを完全封鎖して冴内ファミリー専用個室部屋にした。風呂を設営する場所はカメラが映らないように簡易的な間仕切壁が設けられた。


 冴内達はゆっくりと風呂に浸かり、風呂上りに入念に身体をほぐした後でベッドに横になった。さいごのひとに頼んで深い眠りに入れるように導眠効果のある音を出してもらって、すぐにグッスリと深い眠りについていった。


 起床後はいよいよ宇宙イナゴ掃討作戦開始という段階に突入したのであった。

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