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 翌日朝食を食べ終えお茶を飲んでまったりしている時にさいごのひとが第44調査惑星とのデータリンクが完了して、現在の様子を見ることが出来るようになったと言ったので、冴内達は大喜びで早速映像をリクエストした。最初にどこの映像を見たいかとさいごのひとが尋ねたところ全員一致で空中庭園都市を見たいと即答した。


 食卓の上に空間投影された映像は冴内達が期待していた映像とはかなりかけ離れていた。


 緑豊かだった庭園には植物が一切なく、水路の水も干上がっていた。建物自体は今でもヒビ割れてたりどこかしら傷んでいるようなことはなかったのだがところどころ砂が堆積していた。


 美衣がレストランを見せてとリクエストしたのでレストラン内部の映像に切り替えたが、客席のある部屋にはうっすらと砂が積もっており、厨房にカメラを切り替えるとそこはそれほど変わっていなかった。


 次に良子が空中庭園都市中央管理センター内部のセンターポールを見たいとリクエストしたので、センターホール中央部にある1階から5階までの吹き抜けに設置されている金属の塔のような大型演算装置が映し出された。良子がセンターポールと言った大型演算装置周辺には砂は積もっていなかったが壁の隅々にはうっすらと砂が積もっていた。


 良子が空中庭園都市中央管理システムは生きているのかと問い合わせると、微弱なパルス信号は検出されているが実際にシステムを起動させてみないと分からないとのことだった。そしてシステム起動には実際に現地に行ってシステム起動に必要なエネルギーを供給しなければならないと付け加えられた。


 やはり数百万年も経過するとこうなるのも仕方がないのかと冴内が乾燥しきった空中庭園都市について感想を漏らしたところ、さいごのひとがこれも宇宙イナゴがもたらした結果だと説明した。


 第44調査惑星は44という番号が示す通り、げんしょのひと達が宇宙進出を開始し始めた頃の惑星であり、それは遥か昔の時代の入植惑星であった。それから1千万年近く時が流れ、げんしょのひとも様々に変化変容し、第44調査惑星自体も忘れ去られたというよりはほぼ未知の星に近い認識になっていた。


 そんな第44調査惑星から当時発足して間もない宇宙連合本部へ突然緊急メッセージが届いた。その内容は今から百数十年後に宇宙イナゴの襲来を受けるので、我々はこの星を放棄し別の惑星へと入植移動を開始するとのことだった。彼らはリングゲートを持たなかったため移動には大型宇宙船を使用するしかなかった。そして大部分の人はその地に留まり寿命を全うすることを選んだ。


 宇宙イナゴは予測通り現れ第44調査惑星に存在するありとあらゆる植物は食い尽くされ、後には不毛の乾燥大地だけが残った。ほとんどの人は既に寿命を全うしており、来るべき時に備えて出産計画も正しくコントロールされていたので、人的被害は全くなかったが、動物、魚、昆虫、その他原始的な原生生物などの生き物についてはほぼ絶滅した。


 宇宙連合本部は宇宙イナゴが第44調査惑星から完全にいなくなった後に一応植物再生ミサイルを10発程打ち込んだ。それから数十万年の年月がながれて第44調査惑星の状況がどうなっているのか探索しに行ったことが今回冴内達がVRでゲーム体験している第44調査船団全滅の危機のベースになっていた。


「そうだったんだ・・・確かに花子から宇宙イナゴが来るから人々がいなくなったということまでは聞いたんだけど、その後のことは花子は活動停止したから分からなかったんだね・・・ところで他の場所はどうなっているの?どこかに植物がある場所はないの?」


「あるとも、当時よりも大分回復しているようだ。空中庭園都市ははるか高度上空にあるのと環境活動システムが停止しているため、このような状況になったままだが、地表に置いてはかなり植物が復活している」

「そうなんだ、それは良かった!」


「しかし一度ほとんどの生物が死滅した後で、異種の微生物やアミノ酸を含んだ隕石が何度か落下したために、生息する生物は当時のものとは全く異なったものになっているようだ」

「えっ!そうなの!?」

「ヌタヌタとかカラスはいなくなったのか!?」


「それらの生物は宇宙イナゴ襲来後数十万年後に調査隊が訪れたときに発見した生物達なので、元々存在していた生物達が絶滅した後の新種生物なのだが今の状況ではそれらの映像は確認されていない。今でもどこかで生息しているかもしれないが、あれから370万年程も経っているので絶滅していたり別の新種に進化している可能性も大いにある」


「そうなんだ・・・それはすごく気になるなぁ」

「アタイもすごくきになる!」

「私も凄く知りたい!」

「そうね、カラス達がどうなってるのかも興味があるわ」

「はやくうちゅうイナゴをやっつけて、くうちゅうていえんとしのしょくどうにいきたい!」

「そうだね、僕は早く花子を探しに行きたいな」

「でもまだあと3ヶ月近くかかるのね・・・」

「うーん・・・もっと早くならないものかなぁ」


「一つ提案があるのだが良いだろうか?」


「えっ!なに?何かアイディアがあるの!?」

「うむ、先日君等が宇宙空間でかくれんぼ鬼ごっことやらをやっていたときに気が付いたのだが、私が指し示すルート上にある隕石を打ち砕いていけばかなり時間が短縮出来ると思うのだ」

「そうなの!?」


「うむ、コッペパン号には武装がないので常に最も安全に進める航路をとって進んでいるため、かなり時間がかかっているのだが、これを目標地点までの最短ルートに変更し、その途上にある巨大隕石を君達が粉砕してくれればおおよその理論値ではひと月もかからず宇宙断層帯を横断出来ると思う」


「やった!それはいい!」

「凄い!そんなに短縮出来るのね!」

「アタイいんせきいっぱいぶっこわすよ!」

「私も沢山破壊する!」


 今にして思えばそんな都合の良いアイディアがあるのなら最初から提案しろよと思わなくもないが、亜光速で巡行する最新鋭航宙艦よりも先行して巨大隕石を片っ端から粉砕して進んで行くというバカげた提案が極めて理論的なさいごのひとから出るわけがなかった。


 ともあれ冴内達はすぐに実行に移すことにした。千倍重力下でのしばりプレイVRゲームと違って無重力下で遠慮なく冴内達が持つ全てのあらゆるバカげた異能能力をフルに発揮出来るので、それはもうこれまでの鬱憤を晴らすかの如く凄まじいまでの破壊マシーンと化した。ある意味で宇宙イナゴなどを遥かに凌駕する程の激震宇宙災害と化した。


『なんという凄まじい破壊活動でしょうか・・・生身の身体で亜光速で航行するこの最新鋭航宙艦よりも速い速度で、あのような巨大隕石をいとも簡単に粉砕していくとは・・・』

「うーむ・・・このひと月以上で彼らはさらにパワーアップしたようだ、今や彼ら一人一人が大規模宇宙連合艦隊に匹敵しているような気がする」


 冴内達は食事と排泄と入浴と睡眠以外はひたすら宇宙空間で亜光速で移動しながら巨大隕石を粉砕していった。ここまでくるとこの最新鋭航宙艦コッペパン号の存在意義は彼らが休憩するための移動休憩所といった感じになってしまった。


 さすがにさいごのひとも冴内達がここまでやってのけるとは思わなかったので、さいごのひとが当初見積もったひと月よりもさらに短い2週間ちょっとで宇宙断層帯を横断完了してしまった。


 さいごのひとも間違う程に冴内達は桁外れたスペックに達していたのであった・・・

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