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170:地下水脈探検

 冴内達は目の前にあるアイロンの角を丸めて少し押しつぶしたような形の小型探査船に乗り込んだ。


「以外に中は広いんだね」

「イスがいちにぃさんしぃ・・・じゅうある!」

「窓がないのね」

「多分動かしたら外が見えるようになると思う!」


 良子は一番目の操縦席に行って座り、スイッチやボタンの類がほとんど何もない正面の平面な板に手をかざした。すると良子の手の形に光が輝き始め、良子の頭から下へと何かスキャニングしているような光の境界線が進んで行った。足元までスキャンの境界線の光が到達すると、♪ポーンという音が聞こえて「スキャン完了、正式操舵手登録が完了しました」という音声が聞こえてきた。


「システム起動、メインエンジン起動」と良子が言うとブーンという小さな低音が響いた後、船内は明るくなった。そしてそれまでただの壁や天井だったところがまるでオープンカーのように外の景色が投影された。


「わぁ!すごい!おそとがまる見えだ!」

「凄い!探査船っていうよりもまるで遊覧船だ!」

「これなら楽しい冒険になりそうね!」

「お父さん、早速オアシスに潜水開始する?」

「いこう父ちゃん!アタイまだねむくない!」

「そうだね!早速行こう!」

「アイアイサー!」


 オアシスの涙で幻のオアシスをすぐに発見し、オアシスオオクロトカゲモドキ討伐も冴内達の全力総攻撃で一瞬で終了したので、夜のゲーム開始からここまで10分も経っていない程だったので、冴内達はまだまだ眼が冴えていた。冴内なのに冴えていた。


「それじゃあ皆、一応座席に座ってシートベルトを着けてくださーい!」

「「「はーい!」」」


 冴内達は頑丈そうなシートに座り6点式のシートベルトを装着した。ちなみに美衣が良子の隣の席に座り、コンソールパネルと良子の手をガン見して何かを学習しようとしていた。学習というよりは全てを盗み取ろうとしているかのような凄まじい集中力だった。座席は横2列で操縦席と助手席、その後ろに8席あった。また最後尾後ろには若干のスペースがあり、さらにその後ろに扉があった。扉の先は小さなスペースになっており殺菌消毒や必要に応じて減圧や酸素吸入等を行う部屋になっており、その先に二重ロックの搭乗ハッチがついていた。


「それじゃあ出発進行!潜水開始!」

「よぉーう、そろぉー!」と・・・いつそんな言葉を覚えたんでしょうか美衣先生。


 冴内達を乗せたアイロン号は(またそんな名を)幻のオアシスの中を潜水していった。


「うわー!凄い凄い!」

「わっ!おっきなさかながたくさんおる!かいしゅうかいし!」美衣がコンソールパネルに手をかざして指示したところ、なんとネットが射出されて魚を捉えて本当に格納されてしまった。いつの間にか美衣も正式な総舵手になっていたようだった。


『スキャン完了、オアシスオオクロナマズとオアシスオオクロマスノスケと判明、どちらも毒性成分ナシ、食用保存しますか?』

「いますぐ食べる!」

『了解しました、調理はどういたしますか?』

「まかせる!おいしくしてくれ!」相変らずこういうことに関しては一切の迷いもなく即答する美衣先生であった。さすがです、そこに心底憧れます。


やがて♪ポーンという音と共に最後部座席の後ろにあるスペースの床のハッチが開き、座席に座った高さに合う丁度良い高さの四角い台車のようなものが現れ、その上には2つの大きな魚の切り身のソテーが置かれていた。揺れに備えて透明なフタがしてあった。


 台車が冴内達のいる座席に近付いてくると、冴内達の座席に小さなテーブルが出現した。旅客機の前席にある折り畳み式の小型テーブルのようなものだった。そして台車が近づくとフタが自動的に開き、何もしなくても自動的に台車から小さなアームが出てきて魚の切り身を切り分けて皿に乗せて冴内のテーブルの上に配膳してくれた。ナイフとフォークも用意されており小さなパンも2つ添えられていた。


「うわ!コレ美味しい!」

「ホントね!ナマズにはクリームソースが良く合ってるし、マスの方は塩コショウと何かの香草・・・バジルかな?が良く合ってて美味しいわ!」

「アタイにはもっとたくさんおくれ!」

「私もたくさんちょうだい!」

 残りは美衣と良子で山分けして食べたわけだが、この小型探査船、アイロン号は小型ながら実に高性能な船だと皆感心しきりだった。


 仮想空間上で腹を満たして満足した冴内達はオアシスの奥深くに潜っていき、冴内達をグルリと取り囲むアラウンドビューモニターで地下水脈の景色を色々と楽しんだ。自ら発光するクラゲのようなものや魚達が色とりどりの色彩を放っており、とても美しく幻想的だった。


 1時間程下へ下へと潜航していったが、やがて大きな地下水脈トンネルに合流し、水平潜航へと移っていった。


「うわ~!凄く大きな水脈のトンネルだね!」

「直径30メートルぐらいはあるみたいだよ!」

「わっ!すっごく大きなやつがおる!」

「えーと・・・サバクオオツノクジラモドキ・・・って書いてあるよ。全長は・・・すごい!40メートルもあるんだって!大きいなぁ!」

「エサはサバクオキアミ・・・小さなエビみたいなものを沢山食べるって書いてあるわよ!」

「あんなに大きいのにちいさなエビでまんぷくになるのか!すごいな!」

「たくさんたくさん食べるんだと思うよ!サバクオキアミはものすごく沢山いるから・・・あっ!ホラ見て!あの真っ白く濁っているところが全部サバクオキアミだよ!」

「わっ!ホントだぎゅうにゅうみたいにまっしろくなってる!あれがぜんぶサバクオキアミなのか!」

「そうだよ!クジラさんがあれを食べてくれるおかげで、地下水脈の水が綺麗なままなんだよ!」

「大砂漠の下にこんな水の世界があったなんて信じられないね!」

「ホントね!」


 その後も様々な巨大地下水脈トンネル内の生態系を見ながら進んで行った。そんな潜水航行が2時間程続いたところで、徐々に周りの景色が変化していった。


「なんかまわりがごつごつしてきた」

「そうだね、岩が目立つようになってきたし天井には鍾乳石のツララみたいなものがあるね」


 小型探査船アイロン号は徐々に斜め上方に浮上し始めて行き、そのまま1時間程進んで行ったところで水面に浮上した。


「うわ!すごい!地底湖だ!ここは地底湖に繋がっていたんだ!」


 冴内達の目の前にはまさに広大な地底湖の風景が広がっていた。それは巨大なドーム状空間でまるで夜空の星々に囲まれているかのような光景であったが、それらの光はヒカリゴケやヒカリイシによるものだと、アラウンドビューモニターに映し出された説明文によって知ることが出来た。そしてアラウンドビューモニターの前方方向には陸地までの距離約3キロという表示とメモリゲージのようなガイドも表示された。近づくにつれ距離を表す数字は小さくなっていった。


「陸だ!陸地があるんだ!これってズーム機能とかってあるのかな?・・・ってうわっ凄い!言うだけでズームしてくれた!」

「あっ!父ちゃんなんかある!いせきだ!いせきだきっと!」

「ホントね!柱とか何かの彫像もあるわ!」

「うん!きっとこれが古代文明遺跡なんだよ!」


 10分程で陸地に接岸した小型探査船アイロン号はそのまま陸上を浮遊して進み始めた。ホバーによる浮遊ではなく重力制御による浮遊だったため、風で砂やホコリが盛大に舞い上がることはなかった。


 そのまま進み何やら神殿の入り口のようなところに到着したところで、小型探査船アイロン号を停止させ、冴内達は船外に出た。当然事前に空気や気圧などの外部環境に問題ないという調査結果がアラウンドビューモニターに表示され、2重ロックの搭乗ハッチ前のライトも安全を示すグリーンのランプが光っていた。


 船外に出た冴内達はワクワクした冒険心でいっぱいであったが、はやる心を押さえていったんゲームを中断し、軽く食事をとった後で仮眠をとることにした。

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