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169:オアシスオオクロトカゲモドキ退治

 翌朝になり、朝食を食べ終えて食後に皆で飲み物を飲んでいるときに冴内は昨夜の出来事を皆に伝えた。


「さすがね!洋」

「やっぱりお父ちゃんはすごいな!」

「凄い!お父さん!」

「いや~たまたま夜中にトイレに行きたくなっただけの偶然なんだけどね」

「それでもそこからゲームをやろうって閃いたところが凄いわよ!」

「そうだよお父さん!」

「さすがだ!お父ちゃん!」

「いや~・・・えへへへ」


 これまでほとんど人から褒められるようなことがなかった冴えない人生街道を歩んできた冴内だけにこうして美しく可愛らしい家族に囲まれてベタ褒めされてそれこそ夢心地気分だった。


 ともあれ幻のオアシスは夜に現れるのと、討伐クエストのオアシスオオクロトカゲモドキも夜行性で夜に活動することが分かったので、冴内達は今日はタップリ昼寝して夜にオアシスオオクロトカゲモドキ退治をすることにした。


 いつも夜はタップリ寝ているので昼にグッスリ睡眠出来るだろうかという心配については、さいごのひとに導眠効果のある音を鳴らしてもらえばよく、夜になれば空腹で全員起きだすだろうということで家族会議は終了した。


 早速冴内達は朝食後しばらく食休みをした後にまたしても眠り始めた。考えようによってはさいごのひとの導眠効果音はかなり危険なものなのだが、冴内達はそんなことは1ミリも考えなかった。こういうことについては極めて無防備というか無頓着なやはり冴えない冴内なのであった。


 そうして朝寝の二度寝をガッツリタップリとった冴内達は案の定夜になって盛大に腹時計が鳴って起きだした。まだ千倍重力下での生活なので、寝ているだけでもいつもよりもかなり多くカロリーを消費しているのだ。


「ゲームにでてくるおにくとかもげんじつに食べられたらいいのになぁ・・・モグモグ」

「確かに、砂漠ワームの肉とか美味しいもんね」

「私ヌタヌタウナギトカゲのお肉でかば焼きを作って食べてみたい」

「そうね、あの肉でかば焼きを作ったら美味しそうね」


 正直それらが生きているときの姿をイメージすると生理的にキツイものがあるが、やはり冴内達のメンタルはかなりタフでサバイバル能力はレンジャー隊員並みに高そうだった。


 食休みを十分とり冴内達はゲームを再開した。冴内が昨日もらったアイテムのオアシスの涙がオアシスの場所を照らし出したのですぐにオアシスを発見することが出来た。昨晩冴内はオアシスの座標を携帯端末にメモしていたのだが、オアシスは移動していたのでその位置にオアシスはなく、オアシスの涙があったおかげで迷うことなくたどり着けた。


 昨日と違って今日は家族全員いるので心強い冴内であったが、それでも昨日の光景が目に焼き付いていた冴内は全員に十分注意するように言ってオアシスへと近づいていった。


 オアシスから距離をとったところで着陸し、少しづつ警戒しながら水辺へと近づいていくと、可愛らしいウサギのような動物が水を飲んでいた。しかしそのウサギの背後から頭が二つある大きな蛇が近づいていた。


 美衣は一目散に双頭の蛇に対してすっ飛んでいった。しかし残念ながらその速度はいつものマッハ級のスピードではなく、オリンピックの100メートル走のゴールドメダリスト程でもなく、社会人陸上とか高校総体で優勝者レベル程の速度だった。


「たべちゃだめ!」と、美衣はかろうじて巨大な双頭の蛇の尻尾を掴むことに成功し、双頭の蛇はビターンと頭を地面にぶつけ、かろうじてウサギが双頭の蛇に食べられるのを防いだ。


 ウサギもビクゥッ!と後ろを振り返り慌ててその場から逃げようとしたところ、オアシスの水面が盛り上がり突如ザバァッ!と真っ黒い大きな口が飛び出てきた。それは一瞬の出来事でウサギはもちろん双頭の蛇の頭もバクッっと一口で消えた。


 美衣は双頭の蛇の尻尾を掴んで離さず、まるで綱引きか地引網のように懸命に踏ん張っていた。大慌てで冴内達は美衣の応援に駆け付けて、双頭の蛇の尻尾を掴んで引っ張り始めた。どう考えても少女2人を含む冴内達と数十メートルもある巨大な生物の綱引きなど勝敗は明らか過ぎるのだが、その見てくれと重量差など全くお構いなしに冴内達はズルズルと巨大な怪物を引き上げていった。


 巨大な怪物、オアシスオオクロトカゲモドキはなす術なく水から打ち上げられ、その全容を砂漠の上にさらけだした。全長は20メートル程はありそうで全身は黒く何かの粘液で覆われており頭が極端に肥大化しているため非常にグロテスクな見た目となっていた。


「あんまりおいしそうじゃない・・・」

「うん・・・そうだね」

「どうする?洋」

「とりあえず全員全力で攻撃しようか」

「「「りょーかーい!」」」


 良子を含めてだと初めての家族全員の全力総攻撃をぶっ放したところ、オアシスオオクロトカゲモドキは一発でいとも簡単に跡形もなく消滅した。後には定番というかお約束の巨大な肉の塊が落ちていたので、せっかくなので一応インベントリに格納しておくことにした。


♪パララララーン♪

『おめでとうございます!クエスト完了です!見事オアシスオオクロトカゲモドキを退治しました!クエスト完了ボーナスは水陸両用ビークルです!』


 冴内達の目の前に小型の潜水艇のようなものが出現した。底は平べったいが流線形でアイロンの角を丸めて上から押しつぶしたようなデザインの乗り物で、大きさは小さなマイクロバス程度の大きさで全長約10メートル、幅約5メートル、高さ約3メートル程度といったサイズだった。


「えっ?この乗り物がボーナスなの?」

『そうです!これは第44調査船団が使用していた水陸両用小型探査船なのです!運悪くオアシスオオクロトカゲモドキに飲み込まれて、喉の奥に引っかかったままでいたのです!隊員達はなんとか脱出に成功しましたが、小型探査船は諦めて乗り捨てていったのです!』


「・・・そうなんだ」

「ずっとのどにひっかかってたのか!さかなのほねがひっかかったときはごはんをいっぱい食べてのみこめばとれるよ!」


 またしてもお前はどこのおばあちゃんだとツッコミを入れたくなるような知恵袋のセリフを発した美衣だった。


『さぁ皆さん!早速この小型探査船に乗って、オアシスの中に潜って冒険をしましょう!』

「えっ!?この船に乗るの?そしてオアシスの中を潜るってホント?」

『そうです!地下水脈を冒険して、古代の文明人が残したと思われる地底湖に眠る古代遺跡を探すのです!』

「わっ!それは良い!凄く冒険っぽいね!」

「おもしろそうだ!」

「でも、この船誰が操縦するの?」

「多分私操縦できると思うよ!」

「さすが良子!よし皆!早速乗船してオアシスを潜って地下水脈を冒険しよう!」

「「「りょうかーい!」」」


 こうして冴内達は小型探査船に乗り込み、次なる冒険へと進んで行った。時系列的には巨大衛星要塞4基を含む大規模宇宙連合艦隊がブラックホール発生装置の前衛に到着し、全部隊を展開させて第一級戦闘配置を整えている頃であり、さらにこの2ヶ月後に大規模戦闘が開始されるという状況である。


 宇宙イナゴ討伐のため前線に布陣した大規模宇宙連合艦隊が緊張の極致にある中、冴内達はのんきに大冒険VRゲームを楽しんでいるという極めて対極的なムードで時は動いていたのだった・・・

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