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168:幻のオアシス

 昼食&食休み後、冴内達は幻のオアシスを見つけるべくゴサハラビ大砂漠の上空をワタリタビシロオオガラスの背に乗って移動した。


 いったん家族全員でゴサハラビ大砂漠の中心地点まで行き、そこから東西南北にエリアを4っつに分けて冴内は東、優は西、美衣は南、良子は北へと別れて幻のオアシスを探し始めた。


 冴内は正直自分以外の皆のスペックならばすぐにでも幻のオアシスを見つけてしまうだろうと思っていた。例えば美衣ならば恐るべき程の嗅覚で砂漠の中に漂う水辺の匂いを嗅ぎ取りそうな気がするし、優ははるか高度上空から偵察衛星のように観察力と直観力と判断力ですぐに見つけてしまいそうだし、良子に至ってはげんしょのひとの英知が詰まっているのと思考体の助力も得てあっという間に見つけてしまいそうだ。


 そんな皆に対して冴内はといえば、大宇宙のチョップでビッグバンを引き起こしたり太陽になることは出来ても、ホークアイやイーグルアイのようなもの凄い視力があるわけでもないし、高い洞察力や観察力があるわけでもなく、ごくたまに直観が冴え渡るだけで、普段は冴えないごく普通の一般人であることを認識していたので、他の皆のようにすぐに見つけ出すことは出来ないだろうなと思っていた。


 ところがそんな予想に反して誰からもオアシス発見の合図は発せられず、毎度お馴染み腹時計がグゥと鳴ったのでゲームを中断することにした。マップを見ると真っ先に美衣が中断したことを確認した。


 全員がゲームを中断したので冴内達は昼食を作って食べ、食後のお茶を飲みながら皆で状況を話し合ったところ、冴内以外の全員は既に各自の担当箇所の砂漠地帯をくまなく調べ尽したとのことだった。


 残ったのは冴内のエリアだけなので、恐らくそこにあるだろうということで、午後は皆で冴内のエリアを探索することになったのだが、冴内は内心で若干情けない気持ちと申し訳ないという気持ちでシュンとなりかけていた。


 冴内達は家族全員で冴内の担当エリアを探索したのだが、冴内以外の3人の凄まじい探索能力をもってしてもオアシスは見つからなかった。仕方がないので冗長になるのを承知で他の3人のエリアも再度家族全員で真剣に調べたのだが、やはりオアシスは見つからなかった。


 夕方になり全員の腹時計がグゥグゥ鳴り始めるまで何度も丁寧に探索したのだが見つからず、仕方がないのでその日のゲームは中断して夕食を食べることにした。


「うーん・・・さすが幻というだけあって、一筋縄じゃいかないなぁ・・・」

「みずのにおいもまったくしなかった」

「高高度からの熱源探知もやってみたけど水源と思われる熱源はなかったわね」

「光学偽装が施されて不可視状態になっている形跡もなかったよ」

「・・・」冴内は3人がとても人間とは思えない感度センサーをもっていることに閉口した。


「そういえば昔国語の授業か何かで移動する湖の伝記小説を読んだ記憶があったような・・・」

「えっ!みずうみがうごくのか?」

「うーん・・・なんか砂漠に沁み込んでどうのこうのだったような・・・」

「お父さん、それって地下水脈のこと?」

「いや~そこまで覚えてないなぁ」

「でもそれらしい熱源はなかったわよ」

「うん、においもしなかった」

「そうか、じゃあ違うのかなぁ・・・まぁ急いでいるわけでもないし、明日もまた探そう」

「「「りょうかーい」」」


 そうして冴内達は風呂に入っていつも通り家族全員仲良く川の字になって寝て、翌日も朝から幻のオアシスを探し求めたのだが一向にオアシスは見つからず、昼食の時間になって全員食卓を囲んでいた。


「うーん・・・昨日と同じで全く見つからないね」

「みずのけはいがないみたいだ!」

「そうね、水の存在を察知出来ないわ」

「みんなが地下断層をサーチして地下水脈を探そうかって言ってくれたけど、自分達で答えを見つけないとゲームにならないからいらないって断っておいたけど・・・」


「まさか、1年に1回しか出現しないとかいうのだったら困るなぁ・・・」

「なるほど!さすがお父さん!少しづつ水脈の水が溜まっていってある水量を超えたら出現するっていう可能性ね!」

「他にも少しづつ地下水脈が流砂や水流によって変化して定期的に出現するとかもありそうね!」

「さすが父ちゃん!ものしりだ!」


「う・・・うん」


 当然冴内はそこまでの科学的考証など全く考えておらず、なんとなくそうだったらヤだなぁ程度にしか考えていない上での何気ない一言だった。


「でも毎日ずっといつ現れるか分からないオアシスを見張り続けるのって疲れるわね」

「たいくつでおもしろくない!」

「そうだよねぇ・・・いっそのことこのクエストは放っておいて次の冒険を進めちゃおうか・・・」

「なんかそれもちょっとくやしいきがする」

「うん、何か悔しいかも・・・」

「そうだね・・・じゃあもう少し続けようか」

「「「りょうかーい」」」


 そうして冴内達は幻のオアシスを探し続けた。来る日も来る日も探し続けた。そんな日が1週間程続いたのだが一向にオアシスは見つからなかった。その日も結局丸一日探し続けたのだが、オアシスの気配すら感じられずに徒労に終わり、皆のモチベーションも大分下がってきていた。


 それはそんな夜遅くのことだった。珍しく夜遅くに尿意を感じて起きた冴内はトイレで用を足してひと時の充足と安息を感じていたところ、またしてもここでなんとなく直観が閃いてしまい、一人でVRゲームを再開してみた。


 ただ一人砂漠の夜空にワタリタビシロオオガラスのヨウカの背中に乗って何気なくのんびりと漂っていると、なんとなくキラキラと光っているような場所を見つけた。一気に冴内の頭脳は冴え渡った。


 皆を起こそうかどうしようか迷ったが、スヤスヤと幸せそうに眠る皆の顔が思い浮かんでしまい、冴内は皆を起こさずただ一人キラキラと光る場所へとヨウカと共に進んで行った。


 キラキラ光る場所へと近づくと、それは紛れもなく砂漠のオアシス、小さな水源地帯だった。マップの座標を確認すると美衣の担当する南のエリアの南南東の位置にあり、冴内は座標を携帯端末にメモしておいた。


 オアシスに降り立とうと思ったところ、何やら水源で生き物同士が激しく戦っているらしい様子が伺い知れたので地上に降りるのはやめて上空旋回して状況を詳しく観察することにした。


 それはこれまで見たこともない生き物で、一つは地球上にいるサソリのようなもので、もう一方は全身トゲだらけのトカゲのような生き物だった。どちらもかなり巨大で5メートル以上はありそうだった。

「どっちにも近づきたくないなぁ・・・」と、しばらく冴内は上空旋回し続けて、行く末を見守り続けた。


 ところが、そこへさらに冴内の予想外の出来事が起こった。


 突如オアシスの水面から超巨大な何かが出現し、大サソリも大トゲトカゲも両方とも丸ごと食べられてしまったのだ。その何かは真っ黒で赤いラインのような模様が背びれについていた。それが何なのかは暗くて良く分からなかった。


♪パララララーン♪

『おめでとうございます!クエスト完了です!見事幻のオアシスを発見した冴内様にはクエスト完了ボーナスとしてオアシスの涙とオアシス水筒が与えられます!』


 冴内の首にオアシスの涙と言われる涙の粒のような形の宝石がついたネックレスが出現し、手にはオアシスの水筒と言われる革袋のような水筒が出現した。


『オアシスの涙はオアシスのありかを指し示してくれます、また水中でも呼吸が出来るというスペシャルアイテムです!そしてオアシスの水筒にオアシスの水を汲み入れると、飲んでも飲んでも水筒の水がなくならないという砂漠ではとても重宝するアイテムです!』


「それはいいね!美衣の宇宙ポケットから取り出した養殖泉の水を飲んでもゲーム世界では何の効果もなかったからこのアイテムは助かるよ!」


♪ピコーン!♪ピコーン!

『新クエストをお知らせします!幻のオアシスに生息するオアシスオオクロトカゲモドキを退治して下さい!』


「えっ!?オアシスオオクロトカゲモドキって、さっきの真っ黒い気味の悪いすごく大きいオオサンショウウオみたいなやつのこと?」


『そうです!幻のオアシスにオアシスオオクロトカゲモドキが住み着いて以来、オアシスの水を飲みに来る生き物達がどんどん食べられてしまったり、怖くて近づけなくて水不足で死んでしまったりしていて、このままでは砂漠の生態系が崩れて死の砂漠になってしまうのです!是非ともオアシスオオクロトカゲモドキを退治して、砂漠に平穏を取り戻してください!』


「なるほど分かった。さすがにこのまま一人でアレと闘うのはそれこそアレだから、明日また家族全員でやっつけることにするね!」


『分かりました!健闘をお祈りします!それではお疲れ様でした!』


 冴内はゲームを中断してまた眠りについた。

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