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161:4ヶ月間宇宙の旅とVRゲーム

 ドムゲルグフ人とのひと月に渡る交流ですっかり溶け込み仲良くなった冴内達は、宇宙イナゴ駆除が片付いたあかつきにはみんなのほしとのリングゲート設置と友好条約締結を口約束して大勢のドムゲルグフ人に見送られながら宇宙へと旅立っていった。


 星と星という規模の友好条約をただの口約束で済ませてしまうのもどうかと思うが・・・


 ともあれコッペパン号は飛び立った。小型とはいえそれでも宇宙船なので最初の加速こそ冴内達の本気の加速には及ばないが、徐々に加速し続けていくと亜光速の速度にまで達していった。さらにそこからワープで距離を短縮した。さすがの冴内達でもここまでのことは出来ないと思われる。多分・・・


「ここから4ヶ月もかかるのかぁ・・・」

「4ヶ月もこの中で過ごすのか!たいくつだ!」

「そうね、外は真っ暗でたまに遠くに小さな星雲が見えるだけだものね」

「何か娯楽になるようなものがないか皆に聞いてみるね」


 いやいや皆さん方、これからヤベェ宇宙イナゴと対峙するのにそれどころじゃないでしょう。宇宙イナゴの生態を調べるとか対処法を考えるとか色々やるべきことがあると思うのですが・・・


「VRゲームはどうだろうか?」と、さいごの人が提案した。

「ぶいあーるげーむ・・・あっ!それしってる!お父ちゃんの記憶でみた!ほんものみたいにぼうけんするやつだ!」

「面白そうね!」

「みんながこれまで探索してきた色んな宇宙の冒険から色々選べるみたいだよ!」

「ほんと!?僕等の居た地球ではまだまだこれから進化していく技術のゲームだったからすごくやってみたい!」

「やろうやろう!」


「えーと・・・じゃあチュートリアル、最初にどうやって遊ぶのか練習の冒険から開始するね!」

「あれ?良子、ゴーグルとかヘルメットとかはないのかい?」

「えーと・・・数百万年前にはあったみたいだけど今はないみたいです、直接脳に投影するみたい!」

「の・・・脳に直接なんだ・・・」

「うん!視覚、聴覚、嗅覚、味覚、肌感覚とかの感覚設定もナシから本物同様にまで設定出来るよ!」


 さらりと凄まじく恐ろしいことを言ってのける良子だった。要するに再現度マックスにしたら状況によっては死ぬということだった。


「わっ!おもしろい!いちばんすごいやつでやりたい!しれんのもんのこのよのじごくみたいにすごいのがいい!」


 全然懲りてない美衣先生、さすがです!その生き様こそがあなた様です!そこにシヴィれる、あこがれるゥ!


「美衣ちゃんが一番凄いのをやりたいんだって!一番凄いのを出してくれる?」

「一番凄いのというと、第6次暗黒星雲戦争か、第44調査船団全滅の危機あたりがいいかもしれない」

「いや・・・どっちもダメだと思うけど・・・」

「いっぱいぼうけんしていっぱいウマイものが出てくる方がいい!」

「ならば第44調査船団全滅の危機だろうか、最も過酷な未開拓の星に降り立ち、想像を絶する程の自然と、そこに存在する強力な原始生命体との闘いにきっと冴内 美衣の心も踊るはずだ」

「それだ!それがいい!」

「了解した、だがその前にとりあえずVRに慣れるための練習の冒険から始めよう」

「わかった!」


 ちなみにそろそろコッペパン号はアステロイドベルトに突入する。小さな隕石群、といっても小は数メートルから大は数キロ程の隕石がゴロゴロ密集する宙域である。とてもじゃないがVRゲームだなどとうつつを抜かしているような状況ではないのだが、先に書いた通り、コッペパン号は最新鋭の英知が結集した高性能航宙艦なので、完全自立思考で最適コースを自ら選定して100パーセント完全に安全に進むことが出来るのであった。


 冴内達はVRゲームのチュートリアルを開始した。開始早々冴内達はコッペパン号の貨物室のような空間に出現した。すると2重の防護扉がロックを解除して開き、目の前には鬱蒼としたジャングル地帯が目に飛び込んできた。


「うわ!凄い湿気だね!あとなんというか・・・凄く空気が濃い!むせるようだ!」

「ほんとだ!ムンムンする!」

「凄いわね!本当に本物の世界にいるみたいね!」

「うん!再現度を最高に設定してもらったから本物と同じだと思う!」


『ようこそ!アドベンチャーワールドへ!今から皆さんはドキドキの連続を実際に体験することが出来るのです!それでは皆さんの自己紹介をお願いしてもらえますか?』


「アタイは美衣!冴内 美衣だよ!」

「私は冴内 優!冴内 洋の妻よ!」

「私は冴内 良子!」

「えーと・・・冴内 洋です、僕が父で、美衣と良子は僕の娘です・・・」


『わっ!皆さんご家族での参加なんですね!素晴らしい!それでは皆様、まずは簡単な説明と操作の練習をいたします!』


『まずいったん皆さんが見ている映像を終了して、現実世界に戻します』

「あっ、コッペパンの中にもどった」

『それでは皆さんベッドのある部屋に行ってベッドに横たわってください』


 冴内達は展望デッキに設置したベッドまで行き、全員川の字になって横になった。


『よろしいですか?それではまた仮想世界に映像を切り替えますね!』

「あっ!またさっきのばしょにもどった!ムンムンする!」

『それでは皆さんこの場所からあまり離れずに自由に動き回ってください』


 冴内達はそれぞれ自由に動き回ったが、それぞれ宙に浮かんだり意味もなくチョップで地面を掘削したり、本当に好き勝手に自由に動き回った。


『えーと・・・皆さん、本当に人間ですか?』と、かなり引き気味の音声ガイドだった。

「アタイ達はさいきょうかぞくだぞ!だいとうぎたいかいゆうしょうしゃだぞ!」

『えっ?大闘技大会優勝者ですって!?』

「私は違うけど・・・皆本当に大闘技大会の勝利者よ!お父さんはスーパー太陽を倒して優勝したんだよ!」

『えぇぇぇーーーっ!!そんな凄い人達だったんですね!それならば、これまで数百万年誰一人として攻略出来なかった隠し難易度でもクリア出来ちゃうかもしれませんね!』


「そんなのがあるのか!!それやりたい!やい!それにしろ!」どうも美衣先生は挑まれると口調がアレになる特徴をお持ちのようです。


『分かりました!大闘技大会優勝者の皆さんならばそうそう死ぬこともないでしょう!ところで念のために確認しますが、そちらに蘇生装置はついておりますか?』


「うむ、問題なく設置している」

「わっ!さいごのひとだ!しかもほろぐらむじゃない!すけてないし、さわれるぞ!」

『おや?あなたは我々と同族のようなものを感じますね?』

「わたしはさいごのひとだ、げんしょのひとの最後の生き残りだった者だが、今は冴内 良子がげんしょのひとの後を継ぐ者になっている」

『なんと!そうだったんですね!私もげんしょのひとのコピー思念体が元になっているので、それで親近感を抱いたんですね!』

「君は負の感情の分離後の存在か?」

『はい!そうです!その通りです、そしてさらにポジティブな部分をより強調した性格付けがされています!』

「なるほど、音声ガイドとして最適化されたというわけだな」


『その通りです!さて、それでは皆さんの力量が大体分かりましたので、幾つかの説明は省略して早速冒険してみましょう!その都度必要な説明をしていきますね!』

『まずは矢印を映しますからそれに従って進んでみてください』


 空中に黄色い矢印が出現したので、冴内達は矢印に従って歩いていくと背の低い木に近づいていき、その木には赤い実がなっていて矢印はその赤い実を指し示して点滅した。


『ではこの赤い実をとって食べてみて下さい!』

 言うが早いか美衣はすぐにもぎとって一口食べてみた。

「ちょっとすっぱいけどおいしい!あっ!元気になった気がする!」

『はい、こちらは体力回復の実です!これを食べると怪我や疲れがある程度回復されます。こうしたアイテムが出現した場合は矢印が表示されるので覚えておいて下さい、ただ成分が不明なものは?と表示されます、この場合むやみに食べたりすると毒だった場合もありますから注意して下さいね!』


『それともう一つ大事なことですが、あくまでも味覚と満腹中枢を刺激して再現しているだけですので現実世界に戻ってちゃんと食事をして下さいね!私の方で定期的にゲームを中断いたしますので、そのときは食事をお願いします。あと大事なのが排泄です。ちゃんとゲームを中断してトイレに行ってくださいね!もし心配ならおしめを着用しておくことをお勧めします。睡眠はこちらでなさっても大丈夫です!』


 色々とヤバイ説明が続くVRゲームだった。現実世界に生きる我々のVRゲームもこの先の未来どこまで進化するのだろうか・・・

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