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159:出港準備

 コッペパンのような見た目の旧式艦をげんしょのひとの知識とマシーンプラネットの機械技術とドムゲルグフ人の工作技術によって、この宇宙で最も新しい高性能艦に改修するとさいごのひとは冴内達に説明した。


「完成までどれくらいかかりそうですか?」

「ひと月はかかるという試算だ」

「僕等に何か手伝えることはありますか?」

「冴内 美衣はドムゲルグフ人と共に工作関連で大いに役立てる技量を持っているし、良子には我々の知識を元に船が完成するまでに操舵技術や宇宙航法を覚えてもらおうと思う」

「わかった!」

「分かりました!」


「冴内 優は・・・うむ、君の料理の腕ならばドムゲルグフ人のモチベーションは大いに高まることだろう」

「分かったわ!」


「冴内 洋、君は今のままでは宇宙空間での戦闘は不可能だ。しかし宇宙イナゴの駆除には君の大宇宙のチョップは必要不可欠だ。そのため君には別途特別訓練を実施してもらおうと考えている」

「分かりました!」


「かなり過酷な訓練になると思うが、君ならば必ず克服出来ると信じているので頑張ってくれ」

「わ・・・分かりました」


「父ちゃん頑張れ!」

「父さん頑張って!」

「頑張って洋!毎日ご馳走作ってあげる!」

「う・・・うん、頑張るよ、ハハハ」


 かくして早速作業は開始された。美衣はドムゲルグフ人についていき工房へと向かっていき、良子はコッペパン船の中に入って船内チェックを開始、優は厨房に行って食材や調理器具の確認をした。


「さて、冴内 洋、早速だが君には宇宙空間で戦えるようになるための訓練をしてもらおうと思う」

「分かった」

「まずは・・・そうだな、いったん外に出ようか」


 冴内は元来た道を辿って外に出た。時間短縮のために空を飛んで移動した。

 外に出るとさいごのひとが立体ホログラムで冴内の前に現れた。


「まずは第一段階の基礎訓練を開始する。とりあえずそのまま垂直に限界まで上昇してみてくれ」

「分かった」


 凄まじい速度で冴内は垂直上昇した。それこそロケットのように垂直上昇し、数分たらずで成層圏を突破した。当たり前だが生身のままの人間では生命活動は不可能な高さまできた。


「ハァッ・・・ハァッ・・・」

「フム・・・君等の単位で言うところの高度70キロ程の中間圏まで来たようだ。さらにここから上昇するには今のままでは不可能だ」

「ハァッ・・・ど・・・どうすれば・・・いい?」

「うむ、とりあえずいったん地上に降りよう」


 冴内はありえない速度で地上まで急降下し、地上激突前に急停止した。


「なるほど、もうほとんど重力制御に近いところまでは出来るようだな。これならば第二段階から始めてもいいだろう」


「君は大闘技場で太陽と闘い、彼からその能力の一部を受け継いでいるのだ、太陽は酸素も何もない宇宙空間で自らを燃やし続けている」

「あっ!研修センターで見ました!確か核融合だったと思うのですが・・・」

「そうだ、莫大にある水素が結合することで核融合を起こしているのだ、そして君達人間もまた体内のほとんどが水分だ、これは実に都合が良いというか相性が良い、早速だが冴内 洋、まずは自分自信が太陽になったイメージを具現化したまえ」

「分かった!」


 冴内は太陽になった。人の形をした太陽のような姿でまさにメラメラと燃えていた。


「よし、そのままの状態で先ほどと同じように限界まで垂直上昇してみるんだ」

「分かった!」


 ゴオォォォォッ!!まさにロケットが打ち上げられたかのような光景となった。あるいは隕石が落下する光景を逆再生したかのような光景でもあった。


 みるみる上昇していく冴内太陽、なんとものの数分で大気圏を突破してしまった。


「いいぞ!素晴らしい練度だ!」

「不思議と全く苦しくないです!以前無意識化で宇宙と一体になった時のようです!」

「なんだと!?君は宇宙と一体になったことがあるのか?」

「はい、あくまでも瞑想中の中での出来事ですが」

「素晴らしい!我々でもそこまで辿り着くことは出来なかったが、やはり君は宇宙から愛されている存在なのだな」

「うーん・・・僕だけでなく、本当は宇宙は等しく皆を愛しているようでしたよ?」

「あぁ・・・そうだ・・・そうなのだ、その通りなのだ。だが我々はその本当の意味を理解し体得することなく自らを改良変化させてしまった・・・」


「・・・おっと、すまない、話しを戻そう。今のその状態を保ったまま徐々に通常の肉体の状態にしていくのが次の段階だ」

「えっと・・・具体的にはどうすれば?」

「うむ、少しづつ今の太陽を徐々に小さくしていって、自分の身体の周りに薄い膜を張っていくようにするのが目標だ、出来れば君達の単位で言うところの3ミリ程度まで薄く出来ればベストだ」

「なるほど・・・やってみます!」


 燃え盛る冴内太陽は徐々にその炎を小さく絞っていった。徐々に炎は薄くなっていき元の冴内が見え始めてきた。


「フゥーッ・・・フゥーッ・・・」

「慌てなくていい、少しづつ少しづつだ。一気に膜を薄くしようとすると失敗して幕が破れて即死するので注意が必要だ。だが君のミラクルミックスジュースと我々の蘇生技術があればすぐに生き返ることは可能なので心配ない」


 心配大アリなので冴内はギョッとしてまた太陽の状態に戻り、落ち着きを取り戻してから少しづつ炎の膜を小さくしていった。

 その後昼休み休憩を挟み日が暮れる前までひたすら訓練をやり続けた結果、膜は皮膚から5センチ程まで薄くすることが出来た。


「初日としては十分な成果だ、目標の薄さになるまで明日以降もこれを続けよう」

「うん、分かった・・・しかしこれ・・・結構疲れるね・・・」

「大丈夫だ、君ならば必ず習得できる」

「ありがとう・・・」


 本来ならば普通の地球人が大気圏を突破しその身体に太陽を内包するということ自体有り得ないことにも関わらず、その莫大なエネルギーを制御して宇宙空間でも生存可能にするなど、例え絵空事でももう少しマシなウソをつくというものだ・・・とは、さすがにさいごのひとも空気を読んでありのままを冴内に伝えるのは差し控えていた。

 それでも初日で見事に制御する元は普通の地球人の冴内に対してさいごのひとは内心で舌をまくほどに感心していた。


「あーお腹が空いた!」

「あたいも!」

「私も!」

「ウフフ!みんなそういうだろうと思った!今日はカレーライスをそれはもうタップリ作ったから沢山食べてね!」


「わっ!かれーらいすだ!キャッホウ!」

「カレーライス久しぶり!いいね!」

「えっ?かれー・・・ライス?」


 対するドムゲルグフ人の反応。


「ぐおおおお!なんだこの食べ物は!この色はまるで・・・しかし見た目に反してこの匂い!なんとも旨そうな匂いだ!」

「確かにこの色・・・そしてこの液体は・・・ぐぬぬぬ・・・だが!だが、確かに食欲を刺激する匂いだ!」


 数分後・・・


「ぐおおおお!ウマイ!なんというウマさだ!」

「バクバク!とまらん!ウマすぎてとまらん!」

「スマヌ優殿!おかわりをいただけるか!」

「ワシも!」

「ワシもだ!」

「いいわよ!沢山作ったからどんどん食べてね!」


 ドムゲルグフ人はカレーライスが大好物になり、以前記載した青紫色の見事な彫刻が彫られた一級品のグラスは日本で工場生産された家庭用のカレールーと物々交換の貿易取引が行われることになる。


 腹一杯になった後は皆で近場にあるという温泉に行くことにした。冴内達が滞在している町は地下洞窟に設けられた町で源泉が近くにあった。


 温泉として利用するだけでなく、地表は夜になるとマイナス気温になるほど冷え込むが、源泉や地熱のおかげで洞窟内は暖かく快適だった。源泉から湧き出る高温の温泉は各建物を循環してセントラルヒーティングとしても利用されていた。


 風呂場はやはり透明な青紫色の鉱石で作られており、湯が出てくるところには地球のライオンのような動物の見事な彫刻が施されていて、その彫刻の口からお湯が流れ出ていた。他にも洗い場の水道蛇口一つとっても見事な彫刻だった。


 湯加減もお湯の成分も実に申し分なく、身体の疲労も全て洗い流されるかのような心地よさだった。大闘技場前のオープン居住スペースからもってきた風呂に負けず劣らずの快適さだが、見た目の優雅さではこちらの温泉に軍配があがった。


 冴内達は豪華な客室をあてがわれたが、あえて辞退し、コッペパン船に慣れるためにコッペパン船内にて寝泊りすることにした。


 冴内達以外は乗船しないので、船内の展望室にオープン居住スペースから持ってきたベッドを設置して家族全員で寝ることにした。

 なお、展望室の真下は操縦室を兼ねたメインコントロールルームである。


 かくして、辺境にある開拓惑星での1日を終えた冴内達であった。果たして出航準備が整うまであと何日かかるだろうか・・・

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