表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/460

155:厄災

「こちら第3衛星天文台、フェウリガ星域方面、距離およそ千3百万テリードにある8番惑星に極めて大きい影を観測。惑星全体を覆う程の影、引き続き観測を続行します」


「千3百万テリードというと、我々の最新航宙船で何年ほどかかる距離かね?」


「10年かかるかかからないかといったところでしょうか・・・」


「フム・・・結構近いのだな。とりあえず優先順位をあげて観測を続けることにしよう」


「了解しました」


『次のニュースです、今年は各地で農作物の生育が良く豊作で、味も大変良いとのことです。専門家によりますと・・・』


「アンタのところは今年はどうだね?」


「今年は大分いいね、しっかり実ってる、しかも沢山なってる、アンタんとこはどうだい?」


「あぁオレんとこも大分いい、今年は豊作だ」


「今年の夏がうんと暑かったのが良かった」


「その後雨がタップリ降ったのも良かったな」


「そうだ、あとどういうわけか、今年は虫食いがほとんどないな」


「オレんとこもだ、今年は虫食いが全然ない」


「毎年こうだと、ラクでいいんだがなぁ」


「まぁたまにはこういう年もあるっていうくらいに考えておくのがいいな」


「そうだな、お天道様がくれた有難いお恵みだな」


「そう考えるのがいい、有難いお恵みだ」


 地球によく似たその惑星は7年後に宇宙イナゴの襲来に会い、その星に生息するほぼ全ての植物が宇宙イナゴによって食べ尽された。木やコケなども含めて植物という植物が全て食い荒らされて消滅した。


 当然その惑星に住む人々はその星の総力をあげて駆除作業を行ったが、惑星全土を覆いつくす程の信じられない数、そして驚異的な繁殖力により、駆除によって減らすことが出来たのは全体の3割にもみたなかった。


 密閉型の植物生産施設内にもエアダクトや通信ケーブル通路などの隙間から入り込み、そこで爆発繁殖をして食い荒らされた。


 あらゆる場所が宇宙イナゴで埋め尽くされ、重力制御技術をもたないこの星では空中飛行するあらゆるものが利用不能になった。陸路や海上輸送においても大量の宇宙イナゴにより、視界は閉ざされほとんど利用不可能になった。


 その星の人類は肉や魚で食いつないでいたがすぐに限界がやってきた。家畜飼料の元となる植物がなくなり、山や森からは木々や植物が一切なくなったため、川を経て海に運ばれる様々な栄養源がなくなり、魚のえさとなるプランクトンがいなくなり魚は激減した。


 人工培養研究も行われたが、当然この星の住人をまかなう量には程遠かった。


 食料事情はますます悪化し、さらに生活インフラも大打撃を受け、エネルギー供給施設の稼働率も大幅に低下した。人々の生産活動も消費活動も激減したことで経済活動も崩壊した。


 宇宙イナゴの襲撃は3年にも及び、ようやく宇宙イナゴが別の惑星に向けて飛び去った時、その惑星の住人は総人口を千分の1にまで減らした。




 その惑星はそれから50年程で死の惑星になった。




「外縁宇宙の不可侵宙域にて宇宙イナゴの大量発生を確認!およそ50年以上前に既に災害級になっていたものと思われます!」


「規模は?」


「現時点では32万年前のときよりも多いということしか分かりません!」


「不可侵宙域に最も近い場所にあるリングゲートの封鎖作業を開始!先行して無人観測船と対宇宙イナゴ攻撃艦を配置せよ!全て宇宙イナゴ対応マニュアルの被害レベル高に従って行動するように!」


「「「「了解!」」」」


「続いてただちに宇宙連合本部に通達!」


 外縁宇宙監視の任についていた全身メタリックな機械の身体をした宇宙人達は直ちに宇宙連合本部に連絡をした。ちなみにこの宇宙人達の見た目はかつて日本で放映された特撮ヒーロー番組「宇宙刑事」シリーズに登場した姿に似ていた。


 ただちにこの一報は宇宙連合本部に届き、特別緊急会議が開催された。


 ちなみに時系列的にはこの数時間後にクリスタル女王はみんなのほしで歓迎を受けた。そのためこの時点でクリスタル女王の耳に届いていたのはまだうわさレベルだったのだ。


 宇宙連合本部内に話しを戻す。


「報告によるとおよそ50年以上前に外縁宇宙の不可侵宙域にて宇宙イナゴが発生したとのこと、規模は現在調査継続中であるが、前回32万年前のときよりも大きいと推定されるとのことです」


「宇宙イナゴとはまた、久しぶりだのう」

「前回を経験した者はこの中にどれほどいる?」


「・・・さすがに1割にも満たないか・・・」


「【グワァーオーゥゥ】の方々と、えーと・・・最近改名した・・・【クリスタル】の方々は長命ですからよくご存じだと思うのですが」


「うむ、確かにわしは過去に2度程経験しておる」

「わたくしも同じでございます」


「ただ、わしらは宇宙イナゴとはすこぶる相性が悪くて、あまり活躍は出来なかった」


「わたくし達もこのような身体であるのと、我々にとって宇宙イナゴはそれほどの脅威ではないのであまりお力添えが出来ませんでした。水から豊富なミネラル分がなくなるのはいささか残念でしたが」


「これまでの過去データではブラックホールで吸い込むのが最も効果的とあります。方法としてはブラックホール発生装置で作り出すか、宇宙イナゴの近くにブラックホールがある場合は、植物プラントコロニーでそちらに誘導する方法があります」


「ふむ・・・今回の外縁宇宙の不可侵宙域付近にはブラックホールはあるかね?」


「あるにはあるのですが、残念ながら宇宙イナゴの進行方向とはかなりかけ離れているので、植物プラントでおびき寄せることは非現実的だという回答がかえってきております」


「ならばブラックホール発生装置で進路上にブラックホールを生み出すしかないのか・・・」

「そうなります・・・」


「止むを得えまい、ところで不可侵宙域に存在していた知的生命体はどうなったかね」


「残念ながら・・・全ての惑星において、原始生命体を除いて全滅したとの報告です・・・」


「なっ!なんということだ!!」


「宇宙連合憲章にのっとり、彼らの進化を尊重してきたことが仇となってしまった・・・」


「はい・・・ですが、彼ら自らの力で文明を進化発展させて、彼らの方から我々にコンタクトをとる日までは、こちらからは一切の接触をしないという連合憲章の意義もまた、正しいと思います」


「その通りだ、我ら外的要素で彼らの成長を歪ませることはあってはならん、まさしくそれは正しい。だがしかし、それであの宙域の知的生命体が全滅というのは、それが宇宙の意思だとしてもあまりにも大きな損失だと思うのだ」


「そろそろ連合憲章にも超法規的特別例外として、緊急救援措置法の拡大解釈を検討しても良いのかもしれんな・・・」


「「「「「・・・ウム」」」」」


「ともあれ、まずは喫緊の課題だ。ただちにブラックホール発生装置の準備と、宇宙連合艦隊の派遣準備に取り掛かろう」


「「「「「異議なし!」」」」」


「艦隊規模は?」


「まずは先遣隊を派遣し、前衛基地からの状況連絡次第で規模を決定する」


「了解!」


 ブラックホール発生装置の設営までおよそ10日、そこからブラックホールを発生させるのには規模にもよるが数ヶ月~数年はかかる。その間その後衛には宇宙連合艦隊の先遣隊が控えた。


 そしてそれからおよそひと月が経った。


 前衛基地から届いた続報は、事態が極めて深刻であることを告げていた。


 前回32万年前の規模をはるかに上回る数の宇宙イナゴが大発生しており、200万年前の大災害の時に宇宙連合艦隊が壊滅的状況に陥ったときの5倍以上の予測数値が群体の影の大きさから計測された。


 ブラックホールまでの到達予想時間は早ければ今から3ヶ月以内ということで、その期間で生成されるブラックホールでは今回の宇宙イナゴの全てを吸収することは出来ないことは明白だった。


 宇宙連合本部では特一級の警戒態勢に引き上げ、宇宙全体で一致協力してこれにあたらないと宇宙文明崩壊の危機になりかねないと警鐘を鳴らした。


 とりあえず派遣艦隊の増援として、宇宙連合艦隊のほぼ全総力を投入することを決定。それには現在運用可能な巨大衛星要塞4基も含めることにし、宇宙史上かつてない規模の大艦隊で挑むことになった。


 ブラックホール発生装置の前衛に大規模宇宙艦隊を前進させ、出来るだけ多くの宇宙イナゴを駆除することに全力を注ぎ、ブラックホール発生装置はそのまま破棄する覚悟でぎりぎりまでブラックホールを生成する。


 大規模宇宙艦隊は阻止限界点を突破されたタイミングで全速前進して宇宙イナゴを突っ切り、宇宙イナゴの後背を突破したところで反転攻勢に転じ、宇宙イナゴをブラックホールに押し込む戦術を用いることが決定された。


 ただちに軍事作戦は状況開始されたが、平行して討議されていた防災対策会議においても大規模宇宙疎開が閣議決定され、早速その準備が開始された。


 とりわけ宇宙イナゴの想定進路上に存在する植物が豊富な惑星がピックアップされ、知的生命体が存在している星に対しては早急にリングゲートの増設準備が開始された。もちろん疎開終了後はリングゲートは回収するが回収が間に合わない場合は破壊もやむなしという結論に至った。


 この時、宇宙連合に願ってもない吉報が届いた。それは冴内ファミリー達が戦闘支援としてこちらに向かってきているというもので、それを聞いた宇宙連合の各国代表達と宇宙連合艦隊の提督達は美衣から伝承された万歳三唱をあげて大喜びした。


 しかしリングゲートを多用して移動しても宇宙の端から端までの距離をやってくるので、どんなに早くやってきても半年はかかるということで、それまでなんとか耐え忍ばねばならない状況だった。


 それでも大闘技場でのあの戦力をまざまざと見せつけられた宇宙人達にとっては、冴内達がやってくるときまで耐えきれれば勝利は確実だという絶大な安心感を得て、確かな希望を胸に宇宙連合艦隊は前線へと進軍していった。


 巨大衛星要塞4基を含む大規模宇宙連合艦隊はおよそひと月程かけてブラックホール発生装置の前衛に全部隊を展開させ、第一級戦闘配置を整えた。


 それからさらに2ヶ月が経過し、いよいよ宇宙イナゴと本格的な大規模戦闘が開始された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ