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153:不穏な気配

「ところでクリスタルさん、僕に何か用事があるのですか?」


「はい、先日【ミギャミャーガミャアミャア】姫様から冴内様の【みんなのほし】にリングゲートを開通して会食をしたとお聞きいたしまして、是非とも我が星とも友好条約を結んでいただければと思いましたの」


「あっ!それは大歓迎です!是非クリスタルさんも遊びに来てください!」

「まぁ!さすが冴内様!なんと寛大で寛容なのでしょう!」

「えっと、今、実家から僕の両親家族が遊びに来ているので、そうですね・・・3日後以降にお会いするので良いですか?」

「かまいませんわ!ご両親ご家族との貴重な時間をお邪魔するわけにはいきませんものね、私どもはリングゲートを設置させていただきますので、3日後にお会いいたしましょう」


「はい、すいませんがそうしていただけると助かります!じゃぁえーと・・・ミャアちゃん達のリングゲートの近くがいいですかね?」

「はい!おまかせいたしますわ!」

「じゃあちょっと移動しますのでお待ちください」


 冴内はひとっ飛びでミャアちゃんゲートのところまで行き、50メートル程離れた場所でクリスタル婦人はリングゲートの座標位置を固定した。その後もいくつか会話をして3日後の再開を約束して通話を終了した。ちなみにクリスタル星人の好物はなにかと聞いたところ、色々なミネラルを含んだ水を好むと言っていたので、冴内は富士山麓の名水とか吉野熊野あたりで名水を探しておこうと思った。


 丁度良い時間になったので冴内は恐竜の肉をたんまり持って富士山ゲート研修センターの食堂に戻っていった。


 恐竜の肉を食べた冴内両親家族はそれはもう大興奮で、こんなステーキを食べてしまったら、もう金輪際外食でステーキを食べることが出来なくなってしまう!と喜びながら悲しんでいた。たっぷりもってきたからお土産に持って帰るといいよと冴内は言うと、またしても家族全員から、今回の良子の件といい、肉といい、お前はなんという果報者なんだとガッシリと両手で握手されて感謝された。ちなみに恐竜の肉は数トン近く持ってきているので、食堂にもたんまりおすそ分けしたので、料理人や職員達からも大感謝された。


 それから2日間、良子のお披露目会というか冴内の両親家族への家族サービスは終了し、両親家族達は帰路についていった。今回も魂の抜け殻となった状態で新幹線に乗っていることだろう・・・


 3日目の朝、あらかじめ神代と道明寺に名水の場所を聞いていた冴内達は手分けしてたっぷりと水を汲んできてみんなのほしに戻ってきた。遠くを見渡すとミャアちゃんゲートの隣に新たなゲートが出来ていた。


 大量に水を持ってきたのはいいが、クリスタル星人が果たしてどうやって水を飲むのだろうかと思案していると、良子がみんなのほしのデータベースにアクセスして画像を空間投影したところ、洗面器のような入れ物に身体を半分浸けた様子が出てきたので、富士山麓ゲート研修センターに行って大浴場の洗面器をたくさん借りてきて、それに様々な名水を入れていった。


 そうこうしているうちにクリスタルゲートから一人と10個程度の鉱石が宙に浮かびながら出現してきた。先頭の一人は先日名前をつけてしまったクリスタル鉱石の貴婦人だった。ちなみに彼女はクリスタル星の女王だった。亡き夫はクリスタル星の石版石碑として君臨しているらしい。


「冴内 洋様、優様、美衣様、お久しぶりでございます。そして良子様、お初にお目にかかります。わたくしはクリスタル星の女王、クリスタルでございます」


「えっ!クリスタルさんは女王だったんですか!」

「あら?以前会った時とはすこし変わったわね」


 いや優先生、大分変ったと思うのですが・・・


「はい、洋様になまえを付けていただきました、それに伴い我らの星の名も【◇△ー▽◇ー□□】星から【クリスタル】星に改名させていただきました」


「ふーん・・・そうなの・・・良い名前ね」


 初めてなんとなく少しだけ優先生の嫉妬心がチクチクと胸に突き刺さる冴内であった。


「ま・・・まぁその、皆さんお集りのようですし、お口に会うか分かりませんが、僕等の星の名水を汲んできましたので、よかったら皆さんどうぞお召し上がりください」


 と、名水を入れた大浴場から持ってきた洗面器を机の上に並べていった。もちろんクリスタル婦人、もといクリスタル女王にはグラスに注いでお渡しした。


 宙に浮かんでいた様々な鉱石達は洗面器の中に身体を浸していくと、洗面器の水がごくわずかに減っていった。すると・・・


「うまい!これはなんといううまさだ!」

「まことに!これは我が星にはないうまさだ!」

「ガブガブ!こんなうまい水は初めてだ!ガブ!」


「コクコク・・・まぁ!なんという芳醇な味わい!冴内様!わたくし生まれてこのかた、かように美味しいお水をいただいたことはありませんわ!」


「ゴクリ・・・アタイも・・・のむ!」と、洗面器の水を一息に飲み干す美衣。


「うーん・・・これもおいしいけど、いずみのおみずの方がおいしいかも・・・」美衣はそういうと宇宙ポケットの中に洗面器をいれてザブリと第四の試練からもってきた養殖泉の水を汲み上げて、机の上に置いた。クリスタル女王の水も含めてゲスト全員の水のおかわりを養殖泉の水に入れ替えた。


 養殖泉の水を飲ませたところ、大変なことになってしまった。それまで人の姿形をしていたのはクリスタル女王ただ一人だったのに、他の鉱石達も全員人の姿になってしまったのだ。


 クリスタル女王以外は皆男性で、しかも立派なヒゲをたずさえた中年から壮年男性ばかりだった。しかしどういうわけかクリスタル女王とは違い中世ヨーロッパ時代の頃のような礼服を着た姿で彫刻されていた。ものすごく何か作為的なものを感じる。


「素晴らしい!なんという水だ!」

「まさに!これぞまさに奇跡の水だ!」

「ガブガブ!これは生命の水だ!ガブガブ!」


「まぁ!家臣の者達まで!これはなんということでしょう!」


「うわ!すいません!何かとんでもないものをお出ししてしまったようで!」


「いえ!とんでもありません!こちらの方こそ、このような素晴らしい恵の水を与えて下さって!感謝の念にたえませんわ!」


「えーと・・・気に入っていただけたのなら・・・その、良かったです」


「このような素晴らしいお恵みと歓待を受けて、わたくしどもからは果たして何をもって冴内様にお返しすれば良いのでしょうか・・・」


「ずっとなかよくしてくれればいいんだよ!」

「そうです!ずっと仲良くしてくれるのが一番のお返しです!僕らはそれをもらうのが一番嬉しいんです!」


「あぁ・・・冴内様・・・やはりあなた様というお人は・・・」


 やはりなんとなくほんの少しちょっぴりだけ優からのジト目の視線がチクチクと突き刺さる冴内であったが、とりあえずこれで3っつ目の星と同盟関係を締結することが出来たのであった。またしても地球側の諸外国の了解など一切とらずに冴内達が勝手に一方的に地球との宇宙同盟を結んだのであった。


 ちなみに例の消しゴム状の装置はまだ富士山麓ゲート研修センター大会議室に置きっぱなしにしており、未だに様々な討議が行われていた。機関の局長だけでなく世界中の科学者や政治家、哲学・思想家などあらゆる分野の精鋭達がさいごのひとと並列で質問や議論を交わしていた。さいごのひともすごく楽しそうに語っていた。


 そんな中さいごのひとが「たった今、冴内 洋がクリスタル星と同盟を締結した、あの星は君等の言うところのレアメタルの宝庫でしかも彼らの、コホン・・・排泄物でもあるので、ほぼ無尽蔵にしかも彼らからすると大喜びで無償で提供してくれるだろう」と語ったところ、各所で「ブラボー!」という声が上がった。


「ところで冴内様、ごく最近の話しなのですが、ここ50年程前からどうにも外縁宇宙で宇宙イナゴが発生したというウワサを耳に致しましたわ」


 クリスタル星人からすると50年はごく最近のことらしい。まぁ元が鉱石なだけにかなりの長命で時間間隔も我々とは違うのだろう・・・


「あっ!それしってる!おおむかしにうちゅうれんごうかんたいが負けそうになって、げんしょのひとがたすけにきたっていうやつだ!」


「さすが美衣様、博識でいらっしゃいますね、そうです、太古の昔げんしょのひとの船団がきてわずか半日で殲滅したと言われております」


「今では数十万年に一度程度発生する自然災害のようなものですが、古代文献によりますと数百万年に一度の割合で宇宙に大被害をもたらすものになるそうなのですわ」


「大被害ですか・・・」


「えぇ、我々の様にミネラルを含む水が栄養源の存在ならばそれほど脅威にはならないのですが、冴内様達のように有機物を栄養源として摂取する方達にとっては大変な脅威となる存在ですわ」


「それって作物を食い荒らすとかいうことですか」


「さすが冴内様、おっしゃる通りですわ。これが大量発生した場合は惑星上に存在するありとあらゆる植物を食べ尽していくので、食物連鎖と生態系が破壊され、残された動物達はやがて餓死していくのですわ」


「げぇ・・・」久しぶりに冴内のげぇが出た。


「このみんなのほしとはちょうど真逆の方向の外縁にある星の話しなので、恐らく全く影響はないと思います。ですが前回の32万年前の時とは少し様子が異なっているようで宇宙連合の方でも警戒しているようなのですわ」


「そういえば以前りゅう君のオジサンがそのうち仕事を頼むかもしれないって言ってたわね、確か美衣を紹介したときだったと思うけど・・・」

「ほしがきがほしいって言ってたときだ!」

「あっ、そういえば確かにそう言ってたね、それってもしかして宇宙イナゴのことなのかな?」


「もしかしたらそうかも知れませんわ、【グワァーオーゥゥ】様達は植物、とりわけ果物が大好物ですから、とても危険な存在なのです、しかも宇宙イナゴと【グワァーオーゥゥ】様達はとても相性が悪いのです」


「そうなんですか?一兆度のブレスがあればいっぺんに焼き払えるような気がするんですが・・・」


「えぇ・・・宇宙イナゴはその点したたかで、身体が小さいので様々なスキマから侵入して身をひそめてしまうのです、そしてまたすぐに大量繁殖して植物を食い散らかしていくのですわ」


「げぇ・・・」


「【グワァーオーゥゥ】様達は殺虫剤を酷くお嫌いになりますの、理由は果物やその他の食用植物がすごくまずくなるかららしいのです」


「なるほど・・・なんかとても良く分かるお話しです・・・」


「それから【ミギャミャーガミャアミャア】女王様の星も太古の昔にとても危険な状態にまでなったそうですわ、あちらの星は宇宙イナゴの大好物の植物が沢山あるのでとても危険なのです」


「ミャアちゃんのお星さまがあぶないの!?助けなきゃ!」


「美衣様、なんとお優しいお方でしょう・・・しかし安心下さいませ、まだまだ遠い遠い外縁宇宙のお話しですし、まだ大いなる脅威なのかどうかも分からない状況ですわ」


「なるほど・・・情報、有難う御座います。自分も【グワァーオーゥゥ】さんに連絡して、何か手伝えることがあるなら手伝おうと思います」


「まぁ!冴内様!あなた様はなんと素晴らしいお方なのでしょうか、わたくし・・・わたくし・・・」


 ジト目の優。


「そ・・・尊敬いたしますわ!心から尊敬いたします!もしも私どもでお役に立てそうなことがありましたら何なりと申しつけ下さいませ!」


「冴内 洋、少しいいだろうか?」

「あっさいごのひとさん、どうしたんですか?」


「うむ、今君の星の人達と様々な話を交わしているところなのだが、幾つかのレアメタルを是非ともクリスタル星人から譲り受けたいと言っているのだ」


「レアメタル・・・ですか、僕には分からないのでさいごのひとさん、クリスタルさんとお話ししてもらえますか?」

「了解した」


 さいごのひとはクリスタル女王にあなたたちの排泄物を是非とも譲り受けたいと話し、クリスタル女王は透き通ったとても美しい彫刻の身体全身が美しいピンク色に光り輝いた。臣下と思われる恰幅の良い彫刻がさいごのひとに歩み寄り小声で承諾の返事をした。


 そうしたひと幕もあったが、クリスタル星人達との会合は無事終了し、クリスタル女王達は自分達の星へと帰っていった。


「宇宙イナゴかぁ・・・明日【グワァーオーゥゥ】さんに連絡して色々と聞いてみよう」

「ミャアちゃんたちのしょくぶつが食べられるまえにやっつけたい!」

「そうだね」

「お父さん、私みんなに宇宙イナゴのこと聞いておくね!」

「ありがとう良子!そうしてくれると助かるよ」

「うん!」


「ところで、今日はどっちで寝泊まりする?」

「アタイ、ひさしぶりにたべものばこにあるお肉かお魚食べたい」

「確かに、ここの魚や恐竜の肉もとても美味しいんだけど、食べ物箱の中の肉とか養殖泉の魚の方が美味しいんだよね」

「果物も野菜もとっても美味しいから大好き!」

「じゃあ今日はここで食事して泊まろう」

「お父さん、ホールケーキセンターの中にちょうどいいスペースがあるよ!」

「さすが良子、じゃあ案内して!」

「うん!」


 既にホールケーキセンターという名称が定着した建物の最上階には大きなスペースがあり、エントランスからは直通エレベータですぐに到着した。良子が念じると大きな窓が出現し、とても眺めの良い景色だった。冴内達は早速キッチンと食料格納箱とベッドとお風呂を取り出して設置して料理にとりかかった。ちなみにトイレは元から備え付けてあったものを利用した。安心して下さい、間仕切壁はついていますよ。


 やはり第四の試練から持ってきた食材はどれも最高に美味しく、これまで試練の門の音声ガイドにけちんぼけちんぼと言い続けてきた報酬内容であったが、この食材だけは冴内達にとって何よりのご褒美だった。


 そうしてみんなのほしで美味しいものを沢山食べて、みんなでお風呂に入って、みんなで川の字になって寝た。とても幸せなひとときだった・・・

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