152:良子のお披露目会
リングゲートの設置も無事完了し、各々の星の代表者とも会談が終了したので、宇宙人達は各々の星へと帰っていった。
いつでも好きなときに往来して良いという実に気前がいいというか、検疫などの安全保障もへったくれもない程の自由往来許可を勝手に結んだ冴内であった。まぁこの星は一応冴内のものなので冴内が決めても誰も文句は言えないのだが・・・
ともあれ、無事会談は終了しほっと一息ついたホスト役の冴内であったが、まだ何かとても大事なことを忘れているような気がしていた。
「どうしたの洋?」
「う~ん・・・何か・・・何か大事なことを忘れているような気がするんだ・・・」
「どうした父ちゃん?」
「どうしたのお父さん?」
「・・・」と、冴内は良子の顔をじーっと見た。
ポッと頬を赤らめる良子。ものすごく可愛い。
「あっ!思い出した!」
「何?」
「なんだ父ちゃん?」
「父さん?」
「良子を僕の家族に紹介しなきゃ!」
「あっ!そうね!それは大事よ!あと、ついでに良子の下着とか服も買わないと!」
「えっと・・・お母さん、この服も下着もげんしょのひとのすごい技術で作られてるから、汚れは分子レベルで分解して除去するし、自己修復機能もついてるから大丈夫だよ?」
何それ、作者も欲しいんですけど・・・
「そうなの?それはいいわね!でも、色んな服とかあった方が楽しいわよ!」
「うん!いろんな可愛いおようふくがあるとうれしいきもちになるよ!お姉ちゃん!」
「そうなの?やったぁ!」
「すまない・・・力堂、私は・・・」と、吉田。
「うむ、分かった」と、苦笑する力堂。言うまでもなく良子の色んな可愛い姿を見たいのである。
「せっかくだから・・・自分も結婚準備を進めようかな・・・」と、手代木。
「うーん・・・おれっちも、さすがにもうこれ以上待たせるわけにゃいかねぇかなぁ・・・」(矢吹)
手代木と矢吹から結婚という言葉が出たところで相変わらず口元をひくつかせていた良野であった。
「また一人にするようでごめんね、良子を僕の両親家族に紹介したいから、しばらくの間ここを離れると思う」
「いや、全く気にする必要はない冴内 洋・・・そうだ、よかったらこれを持って行ってくれないだろうか」と、机の上に真っ白い消しゴムのようなものが出現した。
「これを持っていってくれれば、私のホログラムを映し出すことが出来るし、良子の目や思念を通すよりもハッキリと直接的に君等の様子を見聞きすることが出来るのだ」
「へー!それは便利ですね!分かりました!これは・・・カメラとかマイクはどこにあるんですか?」
「いや、そんなものはなくとも感知可能だ、邪魔にならないように君の服のポケットに入れておいてくれるだけでも私には視聴覚可能だ」
「すごいなぁ!さすがげんしょのひとですね」
「これをもっていれば、おっちゃんはさみしくないのか?」
「私には淋しいという感情は・・・いや、昨日は少しそんな感情があったかもしれないが・・・うむ、そうだ、それがあれば私は君等と一緒にいることが出来るので淋しいことはない」
「わかった!アタイがもっててあげる!いっしょにいてあげる!」
「冴内 美衣・・・君は・・・有難う・・・君はとても温かい存在だな」
「えへへ!どういたしました!」
「それじゃ久しぶりに富士山麓ゲートに戻ろうか!父さん母さん、姉さん達を呼ぶならこっちの研修センターの方が近くていいからね!」
「わっ!じいじとばあばにあうのひさしぶり!たのしみ!」
「き・・・緊張します・・・私、大丈夫かしら、ちゃんと挨拶出来るかしら・・・」
「だいじょうぶだ!じいじもばあばもお父ちゃんのお姉ちゃんたちもみんなすごく優しいよ!アタイみんな大好き!」
「うん、心配しないで良子、普通に挨拶してくれればいいんだよ」
「そうね、なんたって洋の家族ですもの、皆とても優しい良い人達よ!」
「うん!分かった!」
「その・・・力堂、私は・・・」と、吉田。
「分かってる、我々も富士山麓ゲートに戻ろう」
こうして冴内達は良子と、消しゴム状のさいごのひとも一緒に久しぶりに富士山麓ゲートの研修センターに戻ることにした。
富士山麓ゲート研修センターに戻ってくるなり、大喜びですっ飛んでやってきた人物がいた。
日本を代表する二人の局長のうちの一人、富士山麓ゲート局長、神代である。
ここしばらくずっと冴内達は奈良ゲートとその先の外宇宙に行っていたので、内心酷く寂しかったのだ。それが恐らくまたしばらくこちらに滞在してくれるだろうということで喜び勇んでエントランスまで出迎えに来たのであった。
「あっ神代さん、ただ今戻りました。すいません、また色々とご迷惑をおかけします・・・」
「いえ!そんなご迷惑だなんてことは全く1ミリもございません!それどころか地球人類にとって素晴らしい恩恵をもたらしてくれました!」
「あっ!こちらの御方は!!」
「はい!紹介します!僕等の新しい大事な家族、冴内 良子です!」
「初めまして、冴内 良子です、よろしくお願いします」
「なんと!こちらの御方がかのげんしょのひとであられますか!なんという僥倖!私めは神代と申します!こちらのゲートの管理責任者をしております!以後お見知りおきをお願いいたします!」
「はい!神代さん!よろしくお願いします!」
「あぁなんと耳目麗しいお姿・・・優様や美衣様とは違い、我々日本人と同じその艶やかな黒髪、貴女様も実にお美しい・・・」
「えへへ・・・」
「ところで神代さん、良子を僕の両親家族に紹介したいので、また前回美衣を紹介したときのようにお世話になりたいのですが・・・」
「かしこまりました!早速全て手配いたしますので仔細全てこの神代にお任せください!」
「ありがとう!かみしろのおっちゃん!大好き!」
きた!美衣の必殺中年ゴロシ文句!
「ありがとう神代さん!」そして良子の追い打ちダブルパンチ!
「ぐはぁっ!不肖神代!有難き幸せ!」最初の頃のキャラから随分遠い彼方へと来てしまった気がするが、本人が幸せなら良しとしよう。
その後、両親家族に電話すると、事の詳細を説明しようと思っていたのに即座に電話は切られてしまった。1分1秒でも早くこちらに駆け付けるため、電話なんかで話している時間がもったいないとのことだった。母はいいとして父は仕事の都合とかいいのだろうか。
久しぶりの富士山麓ゲート研修センターで夕食をとり、大浴場でお風呂に入り、美衣と良子は今日の宇宙会食パーティで疲れたのか早くに寝た。
その後異例の早さで冴内の両親家族が到着し、到着早々美衣と良子のスヤスヤと眠る姿を見て顔面崩壊してスライムのように溶けだした。口元からはよだれが垂れていた。美衣はともかく良子が寝ているときでよかったとつくづく冴内は思った。
次の日は完全フルアーマー状態の3人を連れてお馴染みのアパレルチェーン店に行き、良子の下着や服を買った。
相変らず平日の午前中なので人も少なく、セルフレジのおかげで店員などに3人の姿がバレることもなく済んだが、さすがに冴内家族とその両親家族に加えてちゃっかりついてきている吉田と良野という大所帯での入店に加え、何故かその中で3人だけ大きなサングラスと大きなマスクで、さらに優と美衣は大きな帽子で髪の毛も隠しているため、多くの人からチラ見されていた。それでも多分外国人旅行客のドカ買いだろうと思ってくれたので大騒動にならなかった。
ともあれ、無事に良子の衣服と美衣と優の衣服をたっぷり買い込むことには成功した。研修センター上層階の冴内達用の大きな特別宿泊部屋にて、良子や美衣のファッションショーが開かれると、さらに装備が充実した最高級一眼レフカメラや、プロ仕様の最高峰の8Kビデオカメラで激写されまくった。吉田と良野は冴内の父親や姉達に私達が差し出せるものは何でも差し出すのでどうか画像データをコピーさせて欲しいと懇願した。っていうか冴内一族専用ルームにまでちゃっかり入り込んでる二人だった。
その日の夜は食堂にて、美衣と良子が冴内達の両親にお寿司を握って食べさせたのだが、あまりの美味しさと嬉しさで号泣し、もう金輪際美衣と良子の握るお寿司以外食べない!とまで言う始末だった。
前回の時と同様、その日の夜も美衣と良子の隣に寝る順番待ちで冴内の両親と姉は一睡もせずに至福の時間を味わった。
翌日は冴内だけ別行動で大会議室に向かった。冴内は例の消しゴムみたいな装置をポケットに入れて大会議室に入室すると、既に神代他大画面スクリーンに全世界の局長達が勢揃いしていた。冴内が完璧な英語で簡単な挨拶を済ませたところで、さいごのひとのホログラムが出現し、やはり完璧な英語で話し始めた。
一方冴内女性陣達は研修センター内を歩き回る度に、以前よりも凄まじい装備のカメラ機器を持った職員達に激写されまくった。
最初は恥ずかしがってた良子だったが、そのうち手をふったり笑顔をふるまったので職員達の大半がとろけだしていた。お前らちゃんと仕事しろよなどと無粋なことを言う者は皆無だった。
いや、大会議室でとても重要な会議をやってるんだが、本当にお前らそんなことしてていいのか?
もちろんここでも吉田と良野はすごい装備のカメラを持っている職員に、幾らでも報酬は出すから、何なら無料でどんな依頼でもこなしてみせるから画像をコピーさせろ、コピーさせてくれなければ金輪際依頼は受けないぞという脅しをかける程画像を要求した。
大会議室ではさいごのひとと消しゴムみたいな装置が大活躍で、様々な立体画像を空間に投影して分かりやすく簡潔に様々なことを説明していった。冴内は自分が説明しなくても完璧な説明をしてくれるのですごく有難かった。
一通りの説明が終了した後は、それはもう洪水のような質問攻めにあったが、一人一人直列的に聞いていたのでは時間効率が悪いということで、さいごのひとのホログラムが複数現れて並列同時進行で質問に答えていった。しかも消しゴムみたいな装置が実に優秀で、空間に質問とその答えを即座に空間投影していくので、聞き逃したことや自分以外の質問とその答えもすぐに確認出来て、局長達からは喝采をうけた。
途中で昼食休憩を挟んだが局長達の熱意はまったく冷めやらぬ気配だったので、消しゴム状の装置を置いて後はさいごのひとに任せて冴内は退出した。
夕食までにはまだ時間があったので、冴内は富士山麓ゲートに入って、そのすぐ隣のみんなのほしゲートに入って、夕食の食材を調達しに行った。
「えーと・・・昨日はお寿司だったから、今日はお肉の方がいいかな・・・そういえば美衣のとってきた恐竜の肉は美味しかったな、黒帯カエルのお肉と同じくらい美味しかった。えーと・・・確か美衣はあっちの方角から持ってきたような・・・あっ!いたいた!多分あれだ!」
そうして体長30メートル程の肉食恐竜と思しき恐竜を数頭倒して巨大な肉の塊を軽々と持ち上げてゲート入り口まで戻ってきた。恐竜の肉の塊はゲートを通過させるには巨大過ぎるのでチョップで適当な大きさにカットしていたところ、置きっぱなしにしていたオープン居住スペースから持ってきた机の通信装置から音声が聞こえてきた。
「冴内様、冴内様はいらっしゃいますか?わたくしは大闘技場でお会いしたものですわ、冴内様・・・冴内様・・・」
「はい!もしもし!冴内です!」
「まぁ冴内様!おられましたのですね!よかった!お忙しい所大変申し訳ありません!」
「あっあなたはクリスタルさん!」
「えっ?クリスタル?それは?」
「えっと、すいません、あなたが僕達の星にあるとても美しくて透明な鉱石に似ているものですからつい・・・」
「まぁ!それは私の【なまえ】ですの?」
「えっ?なまえ?・・・えーと・・・その・・・僕等が生まれ育った星にある鉱石の名前ではあるのですが・・・」
「なまえですのね!それがわたくしのなまえですのね!あぁ・・・なんと素晴らしい・・・クリスタル・・・なんと美しい響きの言葉・・・冴内様がわたくしにつけてくれたなまえ・・・あぁ・・・」
突如立体ホログラムで映し出されたクリスタルに似た鉱石星人の貴婦人が輝きだした。まばゆい光に包まれて直視できない程に輝いたが、その輝きが収まった後に出てきたのは、透明なクリスタルという点はそのままだったが、この上なく美しい姿形の女性の彫像が出現した。当然全裸なのだがR15指定なので安心してください、そういったアレな部分は省略されていますよ。
さすがの冴内も今回ばかりは頭の中でやっちまった感でいっぱいだった・・・