150:リングゲート
冴内達は恐竜のステーキとお寿司をたらふく食べて満足した後、優がとってきた様々なフルーツを食べてまったりとしていた。
すると例のオープン居住スペースから持ってきた通信機能付き机の方から声がしてきた。
「冴内殿、冴内殿はおられるか?わしは【グワァーオーゥゥ】でござる、冴内殿、冴内殿」
「あっ、【グワァーオーゥゥ】さんだ。もしもし【グワァーオーゥゥ】さん、僕です冴内です」
「おっ、冴内殿!おられたか。おや、会食中でござったか、これは申し訳ない」
「いえ、ちょうど終わってまったりしていたところです」
「そうでしたか、いや、先日はわしを復活させていただき誠にもって有難う御座いました。ところで冴内殿はいまどちらにおられますのか?こちらの端末では知らない座標位置になっておりますが、ひょっとして冴内殿のおられる宇宙の星、ちきゅうとやらでしょうか?」
「いえ、僕らは今、げんしょのひとが一番最後に暮らしていた星にいます、昨日【みんなのほし】という名前をつけました」
「なんと!なんと!!ということは冴内殿はげんしょのひとに会うことが出来たのですか!?」
「はい、今もここにいます、一人はうちの娘で、もう一人はさいごのひとと言う、げんしょのひとの一番最後の人です」
「む!むすめ!そして一番最後の人!!、ムッ!ムフーーーッ!」と、龍っぽく興奮して鼻息を荒くした名誉会長。
「これは・・・いや、これはもう電話で語るだけでは足りぬ!是非ともわしもそちらへ伺いたいのですが良いだろうか!?」
「大歓迎です!是非来てください!なんたってこの星は【みんなのほし】ですから!!」
「感謝する!冴内殿!いやしかしさすが冴内殿!なんと寛大で寛容なお心!わしは感服敬服いたしますぞ!」
「とろこで【グワァーオーゥゥ】さんはどうやってこちらに来るんですか?そのまま飛んでくるんですか?」
「うむ、それだと時間がかかり過ぎるし、最新鋭の宇宙船で長距離ワープを多用しても数百年はかかるから、冴内殿さえよければリングゲートの設置を許可していただけないだろうか」
「???・・・いいですよ!どうぞ!」
今回も色々とツッコミどころ満載の会話しているので書かずにいられなくなったので書くと、まずそもそもりゅう君達はそのまま生身の身体で宇宙を移動出来るということが驚きである、大気圏突入時にすさまじい大気摩擦でどれほどの高温にさらされるか冴内は分かっているのだろうか。
分かっているのかという点でさらにツッコミを入れると、リングゲートについて明らかにまるで分かっていないにも関わらず、いいですよ!どうぞ!などと即答肯定していいのかお前。仮にもお前がこの星の責任者だぞ・・・と書かずにいられなかった作者なのであった。
「おお!リングゲートの設置を許可していただけるか!では、今から座標をインプットするので少々お手間をとらせていただいてもよいだろうか?」
「いいですよ、どうぞ」
「では、今冴内殿が話しておられる通信装置をどこか我々が行き来してもよい場所に移動させてもらえるだろうか?なにせ我らは身体が大きいゆえ、十分なスペースが必要なのじゃ」
「あっ、たしかにそうですね!分かりました今から移動します!」
冴内は机をもって垂直上昇し、辺りを見回して豆腐ハウスが立ち並ぶ一番端の方に移動した、巨大ホールケーキタワーのエントランスの方角に、真っ直ぐ伸びる道路の終点の先に設置した。
「ここなら大丈夫です!」
「おお、センタータワーに近くて便利ですな!」
「それではこれからリングゲートを設置させていただきます。明日には設置完了致しますので、仔細はそちらにてお話しさせていただきまする」
「分かりました!明日はあけておきます!」
「そうしていただけるか!忙しいところ申し訳ないが、よろしくお願い申し上げる!」
「はい!それでは明日!お待ちしています!」
「では明日お会いしましょうぞ!」
冴内が力堂達のところに戻ると、美衣が良子に教わりながら重力制御の練習をしていた。良野はその横で必死にメモをとっていた。まだまだおぼつかない様子で良子に手を繋いでもらってユラユラと漂っていた。
「うわ、なんだかすごいことやってるね!」
「あっ!父ちゃん!」と、油断した美衣は良子の手を離し、グルグルと凄まじい回転をし始めた。まるでドラム式洗濯機の中にある衣類のようだった。
「ミャアちゃんにお電話してもいい?」と、グルグル回りながらも平然と冴内に話しかける美衣。
「うん、いいよ!」と冴内が答えるとチョップで回転をとめて机に向かって語りかけた。
「えーっと・・・ミャアちゃん・・・ミャアちゃん・・・あっ!分かった!多分あっちだ!」と、何故どうしてどうやって分かったのか、何がどう分かったのかさっぱり作者は置いてけぼりなのだが、そんなことなど意にかえさず美衣は語りかけた。
「もしもし!ミャアちゃん!ミャアちゃん!アタイは美衣だよ!ミャアちゃんいますか!?ミャアちゃん!」
「・・・ィ・ャ・?・・・ミィ・ャン?・・・ミィちゃん?美衣ちゃん!?」
「あっ!ミャアちゃん!ミャアちゃんだ!アハハ!ミャアちゃん!アタイは美衣だよ!」
通話が開始され、とてもとても可愛いケモミミ獣人少女が投影された。
一目見るやいなや吉田は飛び上がって喜び、写メを激写しまくりメロメロになった。良野も同様にまなじりを下げてメロメロだった。
「美衣ちゃん今どこにいるの?」
「うん!アタイ達は今げんしょのひとのお星さまにいるんだよ!父ちゃんが【みんなのほし】って名前をつけたんだよ!」
「えっ!!げんしょのひとのお星様ですって!!」
「姫様!今なんと!」
「姫様!」
「姫様!」
「姫様!」
「後ろのすごいおヒゲのおっちゃん達だあれ?」
「あっ、この人たちは臣下の人達よ、私を手伝ってくれる頭が良くてとても優しい人達よ」
「アタイ優しい人大好き!おっちゃん達!アタイは美衣だよ!よろしくね!」
「おお!美衣殿!にゃんと有難きお言葉!我らにょ大英雄【ギャオウギャウウギャミィー】様を見事打ち倒した試合は誠に見事でした!拝謁できて大変嬉しく申し上げまする!」と、後ろの方で可愛いおヒゲの臣下の者達がニャアニャア嬉し泣きしていた。
「すごいな、ミャアちゃんってお姫様だったんだ」
「あっ美衣ちゃんのお父さん!こんにちは!ミャアです!会えてとっても嬉しいです!」
「あのね、ミャアちゃん、こんどこっちに遊びおいでよ!えーと・・・りんぐげーとを作ってこっちにあそびにきて!!」
「えっ!リングゲート!?」
「にゃんと!リングゲートですと!本当にそちらにリングゲートを設置させていただいてもよろしいのでしょうか!おっとこれは大変失礼いたしました!私は臣下の【ギャブルギャブルウェイギャウ】と申します!」
「はい!この星はみんなのほしだから、色んな宇宙人さん達に来て欲しいです、大歓迎です!」
「にゃんという僥倖!姫様!あなた様はにゃんという方々と知己を得たのか!初代王にも匹敵、いや、それすら超える程にょ偉業ですぞこれは!」
「えーと・・・ミャアちゃん達は【グワァーオーゥゥ】さん達みたいに大きくないからここに設置してもいいのかな?」
「にゃんと!【グワァーオーゥゥ】様達もリングゲートを設置にゃされるにょですか!?」
「はい、ちょっとここから離れた広い場所に設置する予定です」
「にゃれば、我々は【グワァーオーゥゥ】様達の後ろで構いません!【グワァーオーゥゥ】様達よりも近い場所にゃど恐れ多く申し訳にゃい気持ちでいっぱいです!それにリングゲートは結構大きいのでそれにゃりのスペースがあった方が良いにょです」
「えっそうなんですか?・・・うーん・・・それなら・・・そうだ【グワァーオーゥゥ】さん達の反対方向にするのはどうですか?」
「はい!私どもには異論はございません!」
「じゃあ今から移動しますね!」
「あっ!アタイがやりたい!」
「分かった、じゃあ美衣よろしくね」
美衣は何度も勢い余ってあさっての方向に飛びながらも徐々に上達していきながら豆腐ハウスの端に辿り着いて、しばらくしてから戻ってきた。帰りは真っ直ぐきれいに飛んで戻ってきた。
「ミャアちゃんも明日あそびにきてくれるって!」
「あっほんと?良かったね!」
「うん!」
「すまん力堂、明日は休みにさせてくれ」と、吉田は力強く拳を握って頼み込んだ。当然生のミャアちゃんを見たいからである。
「私も休みたい!」と良野。当然目当ては一緒だ。
「わ・・・分かった、明日は皆自由行動にしよう」と力堂は苦笑して答えた。
「あっ!明日【グワァーオーゥゥ】さん達が来るなら干し柿があると喜ぶかな!ちょっと富士山麓ゲートに行って干し柿があるか聞いてくる・・・っと、良子一緒に来てくれるかい?」
「うん!行く!」
「明日は大勢の宇宙人が来そうね、沢山食べ物をとってきた方がいいかも、美衣手伝ってくれる?」
「うん!いっぱいとる!」
「確か【グワァーオーゥゥ】人たちは果物の方が喜ぶから私は果物かな、ミャアちゃん達はお魚が好きそうな気がするわね」
「わかった!アタイはお魚いっぱいとってきて、明日ミャアちゃん達におすしをいっぱい作ってあげようと思う!」
「よし!じゃあ皆!それで!」
「ゴー!!!」
またしても冴内達は一瞬でいなくなった。本当に一瞬だった。
「えーと・・・俺達はどうすりゃいいんだ?」と、矢吹が言った。
「私達は明日は料理を手伝うわよ」と吉田と良野。
「ならば、俺達は明日のパーティ会場の準備でもするか」と、力堂が言うと・・・
「私でよければ手伝おう」と、さいごのひとが言うと、ホールケーキセンターのエントランス前の広場に立派で大きな机や椅子がズラリと出現した。
「恐らく【グワァーオーゥゥ】人には椅子は必要ないだろう」
「うわ、これ自分達大工が要らないッスね」
「いや、君達の自らの手で生産加工するものは、その行為自体がとても貴重で価値ある物だと私は考える。なんというか・・・君達の言葉でいうところの【味】があるというものだ」
「なるほど。確かにそれ分かるッス!工場で設計図通りに生産されたものと、年季の入った家具職人が作った家具はもう全く違う別物ッス!」
「我々は自らの手を動かし何かを作りだすということをはるか昔に放棄してしまったから、君が自らの手で作り出す物にはとても感銘を受けた」
「そんな・・・恐縮ッス!」
そうこうしているうちに、新たなゲートが出現して、そこから冴内と良子と数人の農作業シーカーがキョロキョロしながら入ってきた。
「ここがみんなのほしです!」
「はー・・・ここが・・・ここが別の宇宙の最果ての星ですか・・・」
「ほえー・・・なんだかどこもかしこも真っ白で、豆腐みたいな建物がたくさんありますね・・・」
「ですよね!僕等もそう思って豆腐ハウスって呼んでます!」
「えーと・・・冴内君、こちらの方々は・・・」
「あっ、皆さんは富士山麓ゲートの北北西にある畑や田んぼがあるところに住んでる皆さんです」
「あっもしかして第3農業地の方々ですか?」と、手代木。
「はいそうです、我々は第3農業地から来ました」
「なるほどそうでしたか!皆さんの作るお米は本当に美味しいです!」
「あっ!あなたは力堂さんですか!お会い出来て光栄です!」
挨拶をしていたところに美衣と優が戻ってきて、明日の準備は着々と進められていった。明日は大量に寿司を作ると美衣が言ったので、第3農業地の人達は明日はとれたての新米を沢山炊いてゲートをまたいだバケツリレーならぬお米リレーでそちらに運ぶと言ってくれた。
ちなみに今日の夜は美衣はそっちに泊まって、夕食には精米したての米を食べたいと強く希望した。良子も第3農業地が気に入ったようで自分もそっちで泊まりたいと言ったので、冴内達は今晩は久しぶりに第3農業地のごやっかいになることにした。
良子がさいごのひとに独りぼっちにしてごめんねと言うと、さいごのひとはむしろ是非行ってきて欲しいと言った。良子の目を通して素朴な人々の暮らしぶりを是非見たいと言ったのだ。
そうして明日の準備をしつつ、各々はそれぞれ解散していった。