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15:研修センター

 約束の時間前にプレハブ小屋に到着し、最終日にまたしてもレベルアップしたことを告げると、おばさんは大いに驚き、時間通り到着した鈴森さんも驚いていた。何か倒したのかと聞かれて、素振りしていたらレベルが上がったといったら、なお一層驚かれた。


 ともあれゲート退出前の説明と手続きを行い、リュックと結局使わなかった回復ドリンク、そしてプロテクター一式を返却し、携帯端末と着替え以外は全て持っていないことを確認して、鈴森さんの後に続いてゲートを通過して元の世界に戻り、すぐ目の前にある研修センターへと入っていった。


 正式名称「世界ゲート機関日本支部 富士山麓ゲート研修センター」に入ると、鈴森さんから簡単な館内案内をしてもらい、各施設について説明してもらった。


 ギフトを授かった人なら大抵の施設を利用できるが、正式なゲートシーカーになれば全ての施設を利用でき、閲覧可能な資料もほぼ制限がなくなるそうだ。資料室には80年に渡る膨大な資料が保管されており様々な研究実験室や各種トレーニングルームも完備されていた。


 一通り館内を案内してもらいつつ、鈴森さんと一緒に食堂に向かって昼食をとることになった。


 入り口の2か所に券売機が置いてあり、メニューを見ると日替わり定食600円とか、他にも生姜焼き定食とか野菜炒め定食など、いかにも定番の定食メニューが書かれていたが、そんな中一番に目に飛び込んできてすごく興味深かったのが、サラマンダーステーキ3千円と書かれたメニューでその文字だけ手書きだった。


「ホウ! サラマンダーステーキですか! これは僥倖! どうです? 冴内君、いってみますか?」と笑顔で鈴森さんが言ってきたので

「いきます! いきます!」と二つ返事で返したところ、止める間もなく鈴森さんは自分の分まで食券を買ってくれた。


 鈴森さんが食堂の注文カウンターで券を渡しているときにコックハットを被った料理長っぽい人と話していた。自分は自分と鈴森さんの分のお茶をセルフサービスマシンでコップに入れて、富士山が良く見える窓際の席を見つけて着席した。


 鈴森さんが戻ってくると、どうやらサラマンダーは力堂さんが狩りでゲットしたもののようで、換金所で換金せず、野外食堂にも渡さず、今日のために研修センターに持ってきてくれたらしい。夜の会食でもサラマンダーを使った料理が出るらしいが、今夜の会食は15人程度の会食なので、余った分の肉を食堂でも提供することになったとのこと。


 力堂さんと良野さんは既に研修センターに来ており、別の会議室で色々と探索結果の報告を行っているそうだ。


 その話しを終えたところでちょうど良いタイミングで料理が出来上がったので二人で料理を取りに行く。味付けはコショウとゲート内でとれた岩塩のみでお好みでわさびをつけて食べるとのこと。鉄板にはオニオンスライスが敷き詰められておりジュウジュウと焼きがついて良い塩梅に飴色になっていた。その匂いだけでも口内に唾液がどんどん溜まっていく。付き添いはライスではなくパンでちょっと行儀は悪いが肉汁につけてオニオンをのせて食べるのが絶品だそうだ。またサラマンダーの切り落としをダシにしたスープがついてきて、これもまたコクがあってすこぶる旨いらしい。


 そんな料理を前にしては二人とも会話をするどころではなく黙々と料理を口に運ぶのであった。まず前菜の野菜サラダで気を静めスープを一口すする。このスープを一口すすった段階ですら、こめかみがキューンとなる程の旨みで、これだけでいくらでもパンが食べられるんじゃないかという程だ。


 目の前を見ると鈴森さんはステーキを大きめに切り取り豪快にガブリとかぶりついてた。それを見て自分も我慢出来ず同じように大きく切ろうとしたのだが、ナイフを入れるとこれがまたすごく柔らかくて簡単に切れた。最初サラマンダーなんていうから堅い肉なのかと想像したのだが、全くそんな想像は覆されて何なら箸でも切れるんじゃないかという柔らかさだ。そしてそのまま自分もガブリとかぶりつく。その瞬間肉の旨みがジュワ~・・・と口いっぱいに広がり、塩コショウの味の奥にほんのり甘味も感じることが出来た。


 これはいけない、こんな旨い肉を食べてしまったらもうチェーン店のステーキハウスとか行けなくなってしまう。そんなことを思っていると、鈴森さんは満面の笑顔で「いかんなぁいかんなぁ」と言っていた。まさに思うことは一緒なんだろう


 自分はまだ20歳だし家も普通の一般中流家庭に生まれ育ったので、高級ステーキハウスとか鉄板焼きの店なんか入ったことはないが、このステーキはとてもじゃないけど3千円どころか3万円でも食べれないんじゃないかと思った。


 イノシシ肉や熊肉ですら周りのシーカーさん達も大喜びする程の肉だったのにそれを軽く超えられてしまった。さすが力堂さんだ、やっぱりベテラン凄腕シーカーは格が違う


 そんなことを思っていると周りのセンター職員と思われる人達が声に出して「うまいうまい!」と言っているので、あぁここも野外食堂のようだなぁという気分になった。


 食後は喫茶ラウンジに移動してコーヒーをご馳走になり、この後のスケジュールの説明をしてもらった後二人で中会議室へと向かうことにした。


 中会議室には既に機関の方が3名いて、お互いの挨拶の後着席してこれまでのゲートでの活動報告を行った。


 報告が進むにつれて鈴森さんもだが、機関の方々は一様に驚いていた。基本的に本人の自己申告証言のみの報告なのだが、イノシシや熊の物的証拠とその場に居合わせた人達の客観的第三者証言もあるので、虚偽報告でないことは確かだ。そして問題のステータスである。


 初日からいきなりイノシシ狩りに成功し、例の武器屋での騒動の一件、3日目の岩割りとその後の熊退治、そして今日の午前中の瞑想素振り後のレベルアップなど、言うこと全てに対してただただ唖然という表情をされた。


 最後に小川を割りました、とはさすがに言えなかった・・・


 その後の進路相談ガイダンスで正式にゲートシーカーになる旨を告げると様々な説明を受けた。内容としては税金関連や社会保障、シーカー機関や連合組合による福利厚生などや一般社会での行動制限等だ。一度にすべては覚えきれないので追加説明や相談窓口なども当センターで行っているので、いつでも気軽に利用して下さいと丁寧に教わった。


 その後いったん個室部屋に戻り、午後6時からの会食前に大浴場で汗を流し、ついでに洗濯乾燥機が設置されていたので下着を洗濯乾燥した。

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