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140:りゅう君のオジサン達の名誉会長vs美衣

 昨日と同じくらいすぐに試合が終了してしまったのでお昼まで大分時間が余ってしまった。明日の対戦相手を場内アナウンスに尋ねると明日は龍族の最強戦士が登場すると教えてくれた。龍と聞いてりゅう君を思い出し、美衣はすごくハッスルした。


 オープン居住スペースに戻ってくつろいでいると突然備え付けの机の辺りから声が聞こえてきた。


「冴内殿!冴内殿はおられるか!拙者りゅうでござる!冴内殿!冴内殿!」

「あっ!りゅう君だ!りゅう君のこえがする!もしもしアタイは美衣だよ!りゅう君!」


 すると机の上に立体映像でりゅう君の姿が現われた。


「おお美衣殿!お久しぶりでござる!達者でおられるようで安心いたしましたぞ!」

「うん!りゅう君もげんきそうでよかった!」

「ところで冴内殿はおられるだろうか?」

「あっりゅう君久しぶり!」と、冴内は美衣の横に並んでりゅう君が映る立体映像と対峙した。


「おお!冴内殿!お久しゅうござる!」

「うん、いやびっくりしたよ。まさかこの机にこんな機能がついていたなんて思わなかった」

「おっとこれはご無礼つかまつった!切にご容赦願いたい!」

「いや気にしないで。これはこれで便利だね。って使い方はまったく分からないけど・・・」

「それは話したい相手を念じて、話しかけるだけでよいのですぞ」

「へー!そうなんだ!」

「話したい相手側に受信装置があれば、呼び出しが届くのでござる。呼び出された側は話す意思を思い浮かべるだけでお互いに話すことが出来るのでござる」

「なるほど、さっきは美衣がりゅう君と話す意思を示したから繋がったんだね!」

「左様でござる」

「なるほど、便利だなぁ。ところでどうしたの?」


「ははっ、それがしも毎日冴内殿の大闘技大会の試合を拝見させていただいておりまして、大変感銘を受けております。それがしの叔父も業務命令で勤め先の立体巨大スクリーンにて冴内殿の試合を観戦しております」

「そうなんだ、なんだか恥ずかしいな・・・」

「いえ決してそんなことはありませぬぞ!冴内殿の見事な闘いぶり、いや!昨日と今日の試合はもはや闘いなどという次元の低いものではなく、大宇宙そのものの創造と愛を我々に示してくれたのです!これほど素晴らしいことがありましょうか!」


「しかしてなんと、明日の対戦は我らが先祖、叔父の勤め先の初代にして唯一の名誉会長と闘われると聞いたのでこうして連絡した次第でござる」

「えっ!そうなの!?」

「わっ!アタイあしたはりゅう君のオジサンのじょうしと闘うのか!」

「なんと!!明日のお相手は美衣殿でござるか?」

「うん!あしたはアタイがたたかうばんなんだ!」

「あい分かりもうした、拙者美衣殿を応援するでござる!」

「りゅう君ありがと!」

「いえいえ、礼にはおよびませぬ。伝説によりますれば名誉会長殿の得意技は全身を発光させた目くらましからの一兆度のブレスでござる、背中のヒレが青く光り始めたら警戒が必要でござる」

「わかった!せなかのビカビカにちゅういする!」

「有難う、でもいいのかい?りゅう君」

「ははぁっ、名誉会長も尊敬すべき相手ではありますが、拙者にとっての主君は冴内殿ただ一人と心に固く誓っておりますので、家臣としてこれは当然の義務と心得ております」


 いつの間にか冴内が主君でりゅう君が家臣になっていることも驚きだが、さらりと名誉会長は一兆度のブレスを吐くと言ったことについても冴内はもう少し驚いた方がいいのではないだろうか・・・


「それと、叔父からは次の試合が終わったら冴内殿と話がしたいと申しておりました」

「うん、分かったよ」

「有難う御座います!それでは美衣殿明日の健闘をお祈り申し上げます!」

「うん!がんばる!りゅう君ありがと!」

「それではこれにて失礼いたしまする!」


 通話を終えた美衣は明日が楽しみだと大いにハッスルし明日に備えて今日は沢山ご飯を食べるぞとフードファイトの方もやる気満々だった。これは食事の準備も大変ね!と優は微笑み、じゃあ今から沢山ご飯をたかなくちゃ!と冴内も腕をまくった。


 誰一人として大事なことに気付いていなかった。さすが冴えない冴内ファミリーだった・・・


 明けて翌朝、しっかり朝食をとりいつも通り瞑想を行い軽く練習試合も行って準備万端整ったので大闘技場へと向かっていった。


『皆さま毎日お越し下さり有難う御座います!いつも変わらぬ満員御礼真に有難う御座います!さ~いよいよ後半戦突入となりました!本日の第六試合はとうとう龍族最強の伝説の戦士!【グワァーオーゥゥ】選手の登場です!』


「あれ?【グワァーオーゥゥ】人ってりゅう君達の種族名だったような・・・」


「あら洋様【グワァーオーゥゥ】人をご存知なのですね!そうですのよ!【グワァーオーゥゥ】人は伝説の戦士【グワァーオーゥゥ】に由来していますのよ!」と、宙に浮かぶクリスタル鉱石宇宙人の貴婦人が教えてくれた。


「へー!そうだったんですね!」


「ミイちゃんそんなスゴイ人と闘うの?大丈夫かなぁ・・・」とはミャアちゃんのセリフ。


「大丈夫よ!もし負けちゃっても洋がいるから平気よ!」


 どことなく観点がズレてる優だったが、【ンーンンーンンンン】人は個人の勝敗よりも結果としてこちら側が勝利すれば良いという、こと戦闘という点においては極めて合理的な考えをするのであった。乙姫やかぐや姫もそうだったのであろうか・・・


『対するは言わずと知れた冴内ファミリーのとっても可愛らしい御息女!その可愛らしい外見からは信じられない程の戦闘力を誇る冴内 美衣選手の登場です!』


「「「ワーーーーッ!!!」」」

「美衣ーーーッ!」×2

「ミイちゃぁーーーん!」


 ここでようやく冴えない冴内ファミリーは大事なことに気が付いた。


「あれ!?そういえばりゅう君って何十メートルあったっけ!?」

「あっ!そういば・・・30メートルくらいはあったわね」

「だよね!この闘技場じゃ狭いんじゃない?」


 冴内先生、大事なのはそこでしょうか・・・


 果たして選手登場ゲートの豪華な門が開くとそこから現れてきたのは1メートルくらいの大きさの立派な龍だった。


「「「ワーーーーッ!!!」」」


『いつもながら何という神々しい出で立ちでしょうか!さすが伝説の龍族戦士【グワァーオーゥゥ】選手!浮遊する姿も実に立派なものです!』


「あれ!?なんか小さくない!?」

「そうね!とても小さいわね!」


「あれ?りゅう君のオジサンの上司のエライひと、すごく小さいな!」


 と、美衣が言いはじめた途端、美衣はどんどん小さくなっていった。


「???・・・と思ったらどんどん大きくなっていくぞ!あれ?お父ちゃん達もみんな大きくなっていく!あっ!アタイが小さくなってるんだ!」


『もしかしたらこの光景を見るのは初めての方も多いのではないでしょうか?これは【ЮБЖЭー】人の縮小技術を利用しております!』


『本来【グワァーオーゥゥ】選手は体長100メートルを超える大きさのため100分の1のサイズになっております!そのため美衣選手も100分の1まで縮小しております!』


『現在闘技場内は100分の1サイズダウン状態になっておりますのでくれぐれも観客の皆様におかれましては近づかないようにお願いします!』


『なお、試合内容は上空の大型立体映像でお楽しみください!また3Dゴーグルや特殊双眼鏡も用意しておりますのでご希望の方はお近くの係員にお知らせください!』


「うわー・・・美衣がもう見えないくらい小さくなっちゃったよ!」

「ほんとね!1センチくらいかしら!」


「オジチャン!アタイに3Dゴーグル貸して!」

「あっ!僕も借りよう!」

「私は双眼鏡を借りようかしら」


 美衣は自分の100倍程ある大きさのりゅう君のオジサンの上司の名誉会長と対峙していた。


「エライ人おっきいな!かっこいいな!」

「うむ、貴殿はあの冴内殿の娘殿であるな」


「うん!アタイは冴内 美衣!よろしくおねがいします!」

「ほう・・・そなたはとても若くて可愛らしいのに相当強いもののふのようであるな」

「えへへ・・・ありがとうございます」


「うんうん、どうやら我が末裔とも仲良くしてくれてるようでこちらも感謝するぞ」

「うん!りゅう君もりゅう君のオジサンも大好きだよ!」

「そうかそうか、それはありがとう」龍は目を細めて嬉しそうだった。


「それでは闘おうとしようかの」

「うん!よろしくおねがいします!」


『それでは第六試合!【グワァーオーゥゥ】選手対冴内 美衣選手の試合開始!!』


「へんしんしてもいいですか?」

「いいとも」


「へんーーーしん!そしてがおーっ!」と、美衣は仮面バイカー戦闘獣モードに入った。なんとなく仮面バイカーシリーズのアマゾネスのように見えなくもない。そして、美衣が変身する間龍族の戦士は黙って見守っていた。


 変身が完了すると美衣はペコリとお辞儀をしてからその場から消えた。するとあちこちでギィン!とかギャイン!とかいう凄まじい甲高い音が鳴り響いた。龍の戦士は体をくねらせていたが、そのうち耐えきれずムハハハ!こそばゆい!と笑いはじめた。


「えっ・・・あの攻撃がくすぐったいって?」

「さすがね、りゅう君のオジサンの名誉会長さん」

「あれは龍様のウロコだからかも!」

「えっ?ミャアちゃん知ってるの?」

「うん!龍様のウロコはすごく硬いんだよ!」

「なるほど、そうなんだ」


 消えていた美衣が姿を現わせると、フゥフゥ息をしていた。ここ最近はそんな姿を見せたことがなかったが、さすが龍族最強の伝説の戦士である。全てにおいて人型種族とは桁違いだった。


「なんか、おうごんワームの時とおなじきがする」


「りゅう君のオジサンのじょうしのエライひと!」

「うむ?なにかね?」

「アタイのこうげきがきかないから、あなたの中にはいってこうげきします!」


「な・・・なぬ!?いや、それは困る!死ぬ前のわしは年と共に胃も衰えて、肉料理が苦手になってたからのう・・・」


「しんぱんのひと!」

『は・・はい!私ですか?』


「おなかの中にとつにゅうしてこうげきするのははんそくですか!?」

『いえ・・・特にそういったルールはありませんが・・・』

「やった!るーるいはんじゃないのか!あいてのじゃくてんをこうげきするのはたたかいのきほんなのだ!」


「うぅーむむむ・・・確かにそなたの言う通りじゃが・・・、しかしわしとてそう簡単にそなたを腹の中になど入れさせぬぞ!それ!」


 100メートル近い身体そのものが凶器、というよりも破壊兵器と言った方が適切だった。しかもその巨体がありえない程速く、直径30メートルはゆうにありそうな巨大な丸太が美衣を薙ぎ払った。それは龍戦士の胴体から尻尾にかけての巨大なムチだった。そんなものが音速に近い速度で振り回されるものだからいよいよ大量破壊兵器のような様相を呈してきた。しかしながら両者とも100分の1に縮小されているために何やら大きな蛇がハエを振り払っているかのような光景だった。ただほぼ全ての観客は3Dゴーグルや空間に投影されている大型立体映像を見ているので、観客達は怪獣映画か巨大なスペクタクルショーを見ているかのように没入していた。


 30メートル超の直径のムチが音速で襲い掛かるなど、どう考えても1メートル数十センチの身長の美衣には避けることなど不可能なのだが、全て完全に避け切っていた。何故ならば龍族の戦士の頭は動いていないからである。どういうことかというと、第四の試練の最初の頃のツタのトゲムチや巨花の茎との闘いで既にそういった攻撃対象の対処法は習得済みであり、それらよりも遥かに大きい龍族戦士の方が次の動作予測という点で遥かに容易かったのだ。巨大な頭部と目線、それが上半身部位から胴体中央に伝わり後半の部位に伝達している様子がツタ相手のときよりも遥かに分かりやすいのだ。しかも相手は植物ではなく思考する生物なので余計に攻撃の意図を察知することが出来たのだ。唯一厄介なのはその大きさだけである。


 美衣は渾身の会心の一撃を常に叩き込んでいるのだが強固なウロコで守られた龍族戦士には全くダメージを与えられず防戦一方に見えてこのままでは勝機などないかのように思われた。だが、別の意味で龍族の戦士には効いているようで、うははは!とかうへへへ!など、くすぐったくて仕方がない様子だった。


 そして会場内に響き渡る程の大音響でグキリ!という音がして、龍族の戦士はアダダダダ!と悲鳴をあげた。どうやらくすぐったくて身体を変な風に捩ってしまい、ギックリ腰のようになってしまったようだった。


 ヒィーと涙目の龍族の戦士。りゅう君のオジサンの上司の名誉会長であり、種族名にもなっている偉大な伝説上の龍の戦士が涙目で口元からヨダレが出ていた。美衣が口の中に突入してきそうだったので慌てて口を閉じたところ、美衣はポカポカと本来ならばそれだけで試合終了になる程のチョップを何度も名誉会長の頭に叩き込んでいた。


 すると、名誉会長の背びれがピカピカと明滅し始めた。色は青色だ。場内に突然透明バリヤーが何重にも重なって出現し始めた。名誉会長の目が細められ鋭い牙の間から光が漏れ始めた。


 美衣はまだ名誉会長の口の目の前にいる!


「ミイちゃん!危ない!」




ンバァァァァァァーーー!!!!




 一兆度のブレスが勢いよく放たれた。美衣は完全にブレスの中央で直撃を受けた。ブレスの眩い光の中に完全に消失した。




「いやーーーっ!ミイちゃーーーん!!」




 ブレスの直撃を受けた透明バリヤーは何層か消失しており、その凄まじさを物語っていた。


「うん、いまくいったみたいだね!」

「そうね、さすがね美衣!」


「えっ!?ミイちゃんのお父ちゃん!お母ちゃん!それどういうこと!?ミイちゃん大丈夫なの!?」


「うん、大丈夫。多分これで美衣の勝ちは決まったかな?」


「えっ!そうなの!?」


 ブレスの閃光が完全に消えると、やはり美衣の姿はどこにもなく、観客達は全員美衣がブレスに焼かれて消失したと思い込み、あちこちで悲鳴やすすり泣く声が聞こえてきたが、数秒程でそれらの観客達の音はかき消された。




 龍の戦士の悲鳴によって。




「イダダダダ!グヘー!ウヘハーッ!グワッ!ギャァー!ギャオスッ!ギャオスッ!グワギャー!」


『これは一体どうしたことでしょうーッ!【グワァーオーゥゥ】選手がのたうち回っております!これまで聞いたことも見たこともない程に苦しく痛そうです!!果たして何が起きているのでしょうか!』


「イダダ!マイッタ!マイッタ!頼む!降参!降参するから出てきてくれ!」


「・・・ァァッァ・・・ィァァァ、ェェィゥ」


※多分「分かった今から出ていく」と言った美衣


 ボロ泣きして口から涎というか胃液が出ていて、鼻からも鼻水がベロンベロン出ていた散々な姿の名誉会長が大きく口を開けると、無免許仮面バイカー戦闘獣状態の美衣が勢いよく飛び出してきた。


『あーーーっと!美衣選手!美衣選手です!美衣選手が【グワァーオーゥゥ】選手の口から飛び出してきました!』


「しんぱんのおっちゃん!りゅう君のオジサンのじょうしのエライひとにおくすりとってきてあげたいからバリヤーかいじょしておくれ!がおーっ!」


『えっ?おくすり・・・ですか?』


「うん、アタイのチョップでおなかの中ズタボロにしたからたぶんすごくいたいと思う・・・」


 美衣先生、書いてるだけで自分も胃が痛くなってきたんですが・・・


「わしからも頼む!試合はわしの負けじゃ!早くクスリをくれ!」


『わわわ!分かりました!バリヤー解除!美衣さんおくすりをどうか早くお願いします!』


「わかった!がおーっ!」


 美衣はすっ飛んでオープン居住スペースに戻ってみらくるみっくちゅじゅーちゅを手に取り、すぐにまた大闘技場に戻ってきた。


「りゅう君のオジサンのじょうしのエライひと、お口あけて上をむいておくれ!おくすりをのませてあげる!」

「分かった!頼む!」


 龍族の戦士は涙ながらに口をあんぐり開けて天を仰ぐと、美衣はジャンプして口の中にみらくるみっくちゅじゅーちゅの原液を全て龍族の戦士の口の中に入れた。


 龍族の戦士がゴクンと、大闘技場に響き渡る程の音でみらくるみっくちゅじゅーちゅを飲み込むと口や鼻や目や恐らく肛門と思われるところからも虹色の光のビームが飛び出し、大闘技場内のあちこちが光照らされた。大きく身体をくねらせビクンビクンと跳ねまわり暴れまくる名誉会長。もしも100分の1サイズに縮小されていなければこの会場は果たして無事で済まされていたかどうか・・・


 やがて、パタリと尾っぽの先端が地面に着くと、身体全身が虹色の粒子になって消滅した。観客全員が手遅れだったのか、はたまた実はおくすりではなく猛毒だったのかと少しだけ疑ったところ、虹色の粒子が再び現れ始めて、徐々に龍の形を形成していった。やがてそれは元の龍族の戦士になっていったがなんとなく存在感が試合前と異なる感じを見る者全てに与えた。どことなく生々しいというか生命力を感じる雰囲気なのである。


「あ・・・あれ?わし・・・あれ?わしはコピー体じゃよな・・・なんか・・・生きてるっていう実感があるのじゃが・・・」


『・・・ハ?・・・ハイ?・・・ハイィィィィーーーーッ!!??』


「「「ザワザワ・・・ザワザワ・・・」」」


 突然どこからかサーチライトが龍族の戦士を照らし出し、その身体をスキャンし始めると、何やら空間上に色んな数値のようなものや、心電図のような曲線カーブが描かれた。


『なんとォーーーッ!そこにいるのはコピー体ではなくオリジナルの【グワァーオーゥゥ】選手です!とんでもないことが起きてしまいました!!150万年程前に天に召された【グワァーオーゥゥ】選手が生き返っております!信じられません!これは現実でしょうかーーーッ!!』


「「「ウワァーーーッ!!!」」」


「えっ・・・マジ?わし、生き返ってるの?」


「お父ちゃんがはつめいした、みらくるみっくちゅじゅーちゅのおかげだ!みらくるみっくちゅじゅーちゅはすごいおくすりなんだ!しんでもなおるすごいおくすりなのだ!」


『なんですとーーーッ!!150万年程前の死人が生き返るって、そんなスゴイものがこの世にあっていいのでしょうかーーーッ!』


「「「ウワァーーーッ!!!」」」


「えっ?ミラクルミックスジュースってそんなにすごいの?」とは、作った本人の言である。


『これは大変なことになりました!もう試合どころの騒ぎではありません!いや!試合も大事ではありますが、果たしてこんなことがあってもいいのでしょうか!!大闘技大会の歴史の中でも始まって以来の大事件です!』


『と・・・とりあえず勝者は冴内 美衣選手!美衣選手の勝利ィーーーーッ!!!』


「「「ウワァーーーッ!!!」」」


「ありがとうございました!」


「やったぞ美衣ーーーッ!」

「美衣ーーーッ!今夜はご馳走よーーーッ!」


「なんということだ・・・まさか、生き返ってしまうとは・・・いや、感謝するのはこちらの方だ、冴内 美衣殿、誠に感謝する」


「いや!アタイじゃなくお父ちゃんのおかげだ!そのおくすりはお父ちゃんが考えてつくったんだ!」


「なんと!冴内 洋殿が!冴内 洋殿!誠に感謝致しまする!後程改めてお礼申し上げまするが、この場はこれにてご容赦願いたい!」


「いえいえ、どうかお気になさらずに!」


 会場内はこれまでにない程騒然と、いや騒然をとうに通り越して大騒動で大混乱の嵐に近かった。会場内の宇宙人達がこぞって冴内に群がり、ミラクルミックスジュースを売ってくれ!何なら惑星の1ダース程も差し上げるとか、私の娘100人全て差し上げる(←宙に浮かぶ宝石状の宇宙人)など、訳の分からない交換条件を投げかけていた。


『会場の皆さま!どうかご静粛に!落ち着いて!現在みらくるみっくちゅじゅーちゅ、いや、ミラクルミックスジュースの成分解析が終了しましたが、そのクスリは全ての生命に効果があるわけではないことが判明しました!』


「えっ!?もうそんなことが分かるの!?ここの宇宙人さんってどれほどすごいの!?」


『美衣様から水筒をお借りして残っていた水滴から成分を解析いたしましたが、これは普通の方にとってはむしろ劇薬、猛毒です!生き返るどころか即死して消滅する程の恐ろしい飲み物です!』


「げぇっ!そんなに恐ろしい物だったの!」と、久しぶりに冴内のげぇっ!が出た。


『今回は龍族最強の戦士【グワァーオーゥゥ】選手の驚異的な生命力と、瀕死の状況によって引き起こされた奇跡と言っても過言ではありません!』


『我々も残留成分からさらに詳しく調査いたしますので観客の皆様!どうかお気をお静め下さい!冷静に願います!』


「「「ザワザワザワ・・・」」」


 ようやく冴内に群がっていた宇宙人達は元に戻っていった。


『と・・・とにかく!本日の第六試合【グワァーオーゥゥ】選手対冴内 美衣選手の試合は、冴内 美衣選手の勝利ィーーーッ!』


 龍族最強の戦士は、この後の再開を美衣に言付けて登場ゲートへと戻っていった。


 しばらく騒然とした状況が続いたが、このチャンネル回線にて判明したことは全てすぐに公開するという場内アナウンスの説明が流れるとそれぞれ納得した様子でパラパラとフェードアウトしていった。


 そうしていつも通り冴内ファミリーだけが残って辺りは静寂に包まれた。


 やがて、再度100分の1サイズに縮小された龍族最強の名誉会長戦士が現われ、場内アナウンスも話し始めた。


「冴内 洋殿、此度の件、誠にもって有難く存じ上げまする」

「いやいや!頭をお上げください!こちらこそ無理矢理生き返らせてしまってすいません!」

「いや、これも天の采配、いや、大宇宙の思し召しだったのかもしれません、今、こうして我があるのは全て必然だったのかもしれませんぞ」


 いや、どうみても偶然だと思うのですが・・・


『冴内 洋様、私もこれまでの試合、そして失礼ながらあなた様のこれまでの経緯を試練の門の思考生命体から全てお聞きいたしました。こんにち、ここまでの道筋、全てが必然であるかのように思えてなりません。おそらく【げんしょのひと】の思惑に限りなく近付いているのだと私は確信します』


「げんしょのひと?」


『はい、こちらの大宇宙が誕生して、一番最初に現れた原初の知的生命体を我々は【げんしょのひと】と呼んでおります』


「なるほど!げんしょのひとなれば理解も出来ようというものだ!そして冴内殿がかの者達の想いに合致したというのも実に納得のいく話しだ!」


「え・・・えーと・・・」


 当然ながら冴えない頭脳の冴内には理解が全く追いつかず、やはりこういう時は思考停止するというていたらくなのであった。

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