137:宇宙最強ケモミミ少女vs英雄勇者少女美衣
お昼にはまだ早い時間ということで、優が美衣に美味しそうな魚、前回のように一種類の大きな魚じゃなく、色んな種類の魚を獲ってきてと頼んだ。お寿司を作るから色んな魚を食べたいでしょ?と美衣に言うと美衣は嬉しさのあまりその場で空中10回転というおよそ重力と人体を無視した動きをして喜びと肯定を身体いっぱいに表現した。
そうなるとこりゃ沢山米がいるなということで冴内と優は手分けして大量の米を研ぎ始めた。美衣はまず泉や川を凄まじい眼力でサーチして美味そうな魚を徹底的にマークした。突然美衣が消えたかと思うと冴内の分身の術をも超える程に一気に10人くらいの美衣があちこちに現われて30~60センチくらいの魚を貫手で貫いていた。魚達は消滅すると切り身になり、どんどん美味しそうな切り身が積まれていった。中にはカニやエビ、タコやイカに似たものもあったがすぐに切り身になった。淡水の川や泉なのにタコやイカに似た水生生物がいるのはご愛敬。
美衣が採取した切り身を運搬する際も、往復運動でやはり10人位の美衣が分身しているように見えるくらい凄まじい速度で空間に残像を残していた。
ご飯と汁物の見張りを冴内と美衣にまかせて優は早速寿司職人の腕前を披露し始めた。ここでも宇宙最強の【ンーンンーンンンン】人は凄まじい学習能力と再現能力を見せつけた。一体いつの間に、というよりも一体幾つの料理を食堂の料理長から学んでいるのだろうか。ともかく優の腕前はその道何十年という熟練の技のごとく美しく見事だった。そうしてどんどん美衣が持ってきた魚などの切り身を見事な包丁捌きで小さく切り揃えていった。
可愛いことに美衣は一生懸命優の方を見ないように頑張っていた。見てしまうとお腹の虫が大合唱して我慢出来なくなってしまうからだ。しかしそれでも身体は正直でやはりグゥグゥと可愛いお腹の鳴き声がひっきりなしに鳴っていた。
美衣が待ちに待って待ち焦がれたご飯が炊きあがると、優はまたしても凄まじい手つきで酢飯を作り始めた。そして美衣も宇宙最強の【ンーンンーンンンン】人の血を引く一人なので優の手際を瞬き一つせずジックリ見て学習すると、すぐに美衣も酢飯を作り始めた。冴内は切り落としで残ったカニやエビに似た切り身や魚の切り身を汁物に入れて、他にもネギなどに似た味の草やその他の野菜を入れて荒汁のような味噌汁を作っていた。
かなりの量の酢飯と荒汁が揃ったので早速優が寿司を握り始めた。凄まじい速さにも関わらずシャリはちゃんと適度な空間があってふっくらしており、ネタの切り方も絶妙だった。じゃんじゃん作ってるのだがじゃんじゃん美衣が食べていく。わんこそばの選手権か、あるいは掃除機で吸い込まれていくような光景だった。まずは美衣の胃袋を満たさないと自分達は食べれないなと悟り、冴内もせっせと酢飯を追加していった。美衣のペースが落ち着いたところでようやく冴内と優が食べ始めたが、なんとその頃になると美衣の腕前もとんでもないことになっており、アタイの握りも食べてみて!というので食べて見ると優の握りにも劣らない程旨かった。冴内はそんな二人の握る極上の寿司を食べることが出来てこの上ない幸せを感じていた。途中で美衣が魚の補充に行くほど沢山美味しく食べたので、久しぶりに家族全員の腹は妊婦の様に膨らんで、皆でそれを見て笑いあった。
とても幸せな食事が終わり、ゆっくりと食休みをして、軽く昼寝をした後、明日の美衣の試合に向けて特訓することになった。
「ミャアちゃんのゴセンゾサマはものすごくつよいらしい。母ちゃんと同じくらいだって言ってた」
「ミャアちゃんって言うの?あの獣人の可愛い子」
「うん、もっとなんか長い名前だったけど、おぼえられないからミャアちゃんでいいって言われた」
「場内アナウンスの人も最強の格闘戦士って言っていたから、これは相当強いんだろうね」
「だから母ちゃん!おけいこしてくれ!」
「わかった!お腹いっぱいお寿司食べたんだからちょっと厳しくても頑張れるわね?美衣!」
「うん!がんばれる!」
そうして優の特訓が始まった。大闘技場の石畳の上に行き、お互いすぐに仮面バイカー状態に変身して試合を開始した。優はまずは片手剣で美衣と対峙したが、美衣も負けじとついてくるのでいよいよライトサーベルを取り出し二刀流になった。そうなるとこれまで聞こえていなかったギャイン!とかガキィン!とかいう音が聞こえてきて美衣の表情は結構厳しくなり少し痛そうだった。っていうか惑星をも切断してしまうライトサーベルや光の刃を刀身にまとったライトレイピアの攻撃を素手のチョップで受け止めてるんですか美衣先生・・・
30分程でいったん美衣がマイッタしたので中止して、美衣がみらくるみっくちゅじゅーちゅが欲しいといったので100倍に薄めて飲ませて、さらに泉で両手を冷やしてあげるとダメージは回復した。冴内は美衣に自分よりも身体の大きい相手に合わせるのではなく、自分の小さい身体を活かして相手を自分に合わせさせるといいんじゃないかと提案してみた。美衣は数秒間ポケーっとした表情をしていたが、何かが閃き落ちてきたようで、目をキラリと輝かせて勢いよく立ち上がった。
果たして練習試合を再開した途端、美衣は優に合わせる動きをせずに自ら変則的に動いて優の死角をついて懐に潜りんではサッと距離を取るヒットアンドアウェイを繰り返すようになった。スラリと長く美しい手足の優が最もやりにくい超至近距離の位置にもぐりこんでは動きを止めることなくそのまま通過したり回転したりしてとにかく相手の虚をつくことに専念した。また手数の方でも完全に優を上回っていった。
これまで美衣は冴内と優の闘いを見て学習していたのでどうしても大人サイズの戦闘技法がインプットされていた。それでも驚異的な肉体能力と戦闘センスでサイズの違いを補っていたが、本来の自分自身の身体サイズに合った戦闘方法こそが美衣の力量を100パーセント引き出せるのだ。それが冴内の提案で今ようやくそれに気付き開花していった。
目まぐるしくアクロバティックに動く美衣、どうしても人型という先入観で自分と同じサイズの人間の動作予測をしてしまう優、そこのズレを巧みに付かれ始めた優は徐々に苦戦していった。しかもその間およそ10分程度である。恐ろしい速度の戦闘学習能力である。恐らく料理の学習能力速度もすべからく戦闘学習の延長上に過ぎないのであろう・・・
「これは・・・さすがに僕でも厳しいなぁ・・・」
そこからさらに5分が経過した頃には優がマイッタをして、さらに冴内と交代して戦闘するも30分経たずに冴内もマイッタをして、とうとう冴内と優の二人がかりで美衣を相手にし、最初の方こそ冴内と優のタッグに歯が立たなかったが、夕方近くになると二人相手でも互角という有様になった。恐らくさらに続けると二人がかりでも勝てなくなるだろう。
「驚いた・・・まさか自分のあの一言でこんなにも強くなるなんて・・・さすが美衣、さすが僕と優の子供、二人合わせた強さを美衣は持ってるんだね」
「すごいわ美衣、私もすごく嬉しいよ」
「うん、僕等二人相手でこんなに強いんだから、明日は間違いなく勝てるよ!」
「そうね!美衣なら全部の相手にも勝てるわよ!」
「父ちゃん・・・母ちゃん・・・ありがと・・・」美衣の瞳から大粒の涙がポロポロ零れ落ちていた。
その後夕食を食べ、3人でお風呂に入り、いつも通り親子川の字になってグッスリと寝た。冴内と優はスヤスヤと眠る美衣をしばらく眺めてから幸せな眠りに包まれていった。
そして翌朝、しっかり食事をとり、座禅を組んで瞑想し、大闘技場の石畳の上で軽く練習試合を行った後、いよいよ第三試合に挑むことになった。いつも通り美衣が石畳の中央に残り、冴内と優は観客席へと移動すると、場内アナウンスが流れ始めた。
『ご来場の皆さん連日のご来場真に有難う御座います!今日も即座に満員御礼!重ねて御礼申し上げます!さぁ今日は皆さんご存知の最強の格闘家!純粋に肉体のみで闘うという点では大宇宙無二の存在!最強獣人族で伝説の英雄!【ギャオウギャウウギャミィー】選手の登場です!』
この【ギャオウギャウウギャミィー】の部分だけは何かの猛獣が吠えるような音が見事に再現されていた。恐らく声帯模写の名人なら再現出来るかもしれない。
『対する挑戦者は初戦と第二戦を見事に勝利した冴内選手のお子さん、冴内 美衣選手です!お目が高い皆さんならばその外見に惑わされず、冴内 美衣選手がどれ程の強さを誇るか、既に感じている方々もいらっしゃるんじゃないでしょうか!既に冴内 美衣選手は両親よりも強くなったと先ほどお父様の冴内 洋選手からお聞きしたところです!』
「「「ワーーーーッ!!」」」
「美衣ーーーッ」×2
「スゴイ! ミイチャン 昨日ヨリモ スゴク 強クナッテル!」
「あっ、君はミャアちゃんだね?」
「ウン、ミイチャンノ オ父チャン アタイハ 【ミギャミャーガミャアミャア】デス ヨロシクオオネガイシマス!」
「みぎゃみゃーがみゃあみゃあちゃんだね!よろしく!」
「ミイチャンノ オ父チャン ウチラノ コトバ ジョウズダネ!」
「ありがとう、でも多分覚えられなくて明日には忘れちゃいそうからボクもミャアちゃんって呼んでいいかい?」
「アハハハ! ウン!イイヨ! アタイモ ソッチノホウガ好キ!」
「ミャアちゃん!私もよろしくね!」
「ウン! ミイチャンノ オ母チャン ヨロシクオネガイシマス! 昨日ノ戦イ トテモスゴカッタヨ!」
「うふふ!ありがと!」
石畳の上には小さな美衣と美衣よりも少しだけ背が高いケモミミ獣人少女がいた。ケモミミ少女の方は見た目こそ少女だが、実際の年齢は数百歳だそうで、乙女に年齢を尋ねるのは万死に値するとのことで数百歳ということまでにしている。そしてめっちゃ可愛かった。モフモフフサフサが好きな人ならば一目でイチコロになる程可愛かった。手作りっぽい素朴な首飾りがとてもキュートで似合っていた。
「コリャ・・・驚イタ・・・オ嬢チャン ソノ歳デ ソコマデ強イッテノカイ・・・」
「アタイは冴内 美衣!冴内 洋と冴内 優のムスメ!よろしくおねがいします!」
「マイッタネコリャ勝テルカナァ・・・ヨッシャ!コイ!!」
『それでは第三試合!開始!』
最初から全く二人の姿が見えないので、開始早々場内アナウンスが千倍スローを宣言した。しかし千倍スローでも二人の動きは速かった。初戦の冴内と仮面バイカーの時はスローモーションのような光景だったのだが、今の二人は通常の速度だった。若干ジャンプしているときにスロー映像だと分かる程度でそれ以外の格闘動作は速かった。とはいえ千倍スローなので目にも止まらぬ動きではなかった。しかしそれがかえって生々しく、しかもどれほど殺人的でエゲツない攻防かを一際引き立たせて見せた。
『なんという恐ろしい攻防でしょうか!皆さんこれで千倍スローですよ!信じられますか!?正直大闘技大会が始まって以来こんな光景はこれまでなかったと思われます!』
「「「ワーーーーッ!!」」」
「美衣・・・すごいな・・・」
「美衣、こんなにも強くなったのね」
「ミイチャン スゴク カッコイイ! ゴセンゾサマモ ソンケイスルケド ミイチャン オウエンシタイ!」「ありがとうミャアちゃん!」
「ウン!」
冴内から見てケモミミ獣人少女は恐らく時間の問題だろうと冷静に捉えていたが、ケモミミ獣人少女はガァァーッ!と一吠えしたので、いったん美衣はケモミミ獣人少女から距離をとった。するとケモミミ獣人少女は全身の毛が逆立ち目が赤く光始めた。そして牙が伸び、両手両足のツメが凶悪なまでに大きく鋭利になった。額や頬に胸や尻尾の一部分が美しく赤く色づき、ケモミミ獣人少女は四つん這いになって構えた。千倍スローのおかげでハッキリとその姿の変化を捉えることが出来た。
『おーーーと!【ギャオウギャウウギャミィー】選手!ここで戦闘獣モードに変化しました!この姿になるのは大闘技大会では初めてです!皆さんご存知でしょうか!この戦闘獣モードは第37次宇宙危機戦闘の際に第6文明惑星を救ったと言われる伝説の戦闘形態です!まさか闘技試合の場でこの姿を拝見出来るとは思いませんでした!これはいよいよ試合決着も間近でしょうか!』
「スゴイ! ゴセンゾサマノ アノスガタハ 伝説ノ絵デシカミタコトナイ! ソレダケ美衣チャンガ スゴイッテコトダネ!」
「美衣頑張れェーッ!」
「美衣、私達との特訓を思い出してーッ!」
「よぉーし!アタイもへんーーー・・・しんっ!」
ヴゥォォォン!!ブゥゥゥン!
大闘技場内に異様な共鳴音が鳴り響いた。それはケモミミ少女の四肢から放たれる凄まじいまでの格闘攻撃の音で、凶悪な爪が空気を切り裂く音が千倍スローによって異様な音に変化していたのである。しかしその格闘攻撃を異常なまでに貪欲に、恐ろしい程の速度で学習し習得しかけていたのが美衣だった。そしてケモミミ少女の格闘術を上回るチョップによりさらに異様な共鳴共振音を奏でたのだ。
「クッ!オ嬢チャン!・・・アンタ一体!?」
仮面バイカー状態の美衣はその形状その形態が変化し始めていた。マスクはまだ仮面バイカーのままだったがヘルメットに該当する部分がいつしかなくなっており髪の毛が露出していたのだが、その髪の毛が全て戦闘獣状態のケモミミ少女のように逆立っていた。そして元々赤い色だった仮面バイカーの目も同様に赤く残光を残す程強く光り輝いていた。
ケモミミ少女はどんどん防戦一方になっていき、とうとう美衣のチョップを受けてひるんだ。美衣はその小ささを活かして縦横無尽にトリッキーな動きを繰り返し常に死角となるところからヒットアンドアウェイを繰り返していたため被弾回数が多くなりいよいよ滅多打ち状態に近くなっていった。そしてついに背後からのクロスチョップアタックをまともに食らってしまい、そのまま場外まで吹き飛ばされてしまった。
『おーっと!【ギャオウギャウウギャミィー】選手場外ィーッ!勝者!冴内 美衣選手ーーーッ!!』
「「「「ワーーーーッ!!!」」」」
「やったーーーッ!美衣ぃーーーッ!」×2
「ミイチャン! ヤッタァー!」
「がおーっ!がおーっ!」と、獣人のように吠える美衣だった。
「マイッタヨ、オ嬢チャン。 イヤ、美衣。アンタハ立派ナ戦士ダ。私ノ戦士ノ証ノ首飾リ ヲ 受ケ取ッテクレルカイ?」
「がおーっ!いただきます!がおーっ!」
ケモミミ獣人少女は美衣の首に自分の首飾りをかけてあげて、美衣の手を高らかに持ち上げて勝者を称えると場内は割れんばかりの大喝采に包まれた。
観客達はいつまでもこの二人の小さくてとても可愛い少女たちを見続けたかったが、試合終了のアナウンスで惜しまれつつも三々五々フェードアウトしていった。なお、近日中に今回試合に登場した二人の選手に関連するグッズを発売しますと場内アナウンスはちゃっかり宣伝していた。
その後無観客試合にて冴内と優もケモミミ獣人少女に挑んだのだが、優は30分、冴内は45分かかってようやく勝利した。無観客試合なので通常スピードにも関わらずである。二人とも身体のあちこちが赤く腫れあがっていた程だった。ただ出血はなかったのでやはり二人とも尋常じゃない強さだった。二人ともケモミミ獣人少女から首飾りをもらったが、さらにお願いして、冴内は土下座してお願いして、ケモミミ獣人少女をモフモフさせてもらった。
これだけの試合をしたにも関わらずお昼前には全て終了した。昨日は寿司パーティーだったので、今日は肉パーティーにした。何かの肉を別の何かの肉で挟む肉サンドなどとにかく肉尽くしだった。美衣は今日の戦いで獣人のようになったから肉を欲していたのかもしれない。食後のデザートを食べながらの家族会議にて、この先も美衣が闘えば完勝圧勝全勝優勝しそうだと話したがそれでも一応ローテーションで闘っていこうということになり、次は一巡したので冴名の番になった。冴内は大闘技場の石畳の上に立って場内アナウンスに明日の対戦相手はどんな相手かと尋ねた。
『明日の第四試合の相手は宇宙人類最強のスーパーヒーロー、スーパーヒューマンが登場します!本日の最強獣人族で伝説の英雄【ギャオウギャウウギャミィー】選手に匹敵する強さを誇るスーパーヒーローです、現実宇宙世界では【ギャオウギャウウギャミィー】選手が天寿を全うして亡くなってから数百年後に彼が誕生し、次世代の英雄になったのです!彼は攻撃力こそ【ギャオウギャウウギャミィー】選手にはわずかに及びませんが、タフネスさにおいては宇宙随一といってもいいでしょう!』
「うへぇ・・・そんな相手なんだ・・・」
「なんだか黄金ワームを思い出すわね」
「アタイ、あれとたたかうのおなかすくからヤだ」
「こりゃ、別の特訓を考えないとダメだ・・・」
こうして午後は新たな特訓内容について頭を悩ます冴内であった。内心の本心としては以後の闘いは全部女性陣にまかせたいのが正直な心境であった。




