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136:光の剣

 明けて翌朝、冴内達は朝4時半には起床して昨日あれだけ食べたにも関わらずご飯をタップリ焚いて美衣は納豆を山盛りかけて爆食した。


 朝6時から優の試合前の練習ということで冴内と美衣の二人を相手に優は剣技を磨いていった。優が剣で戦うようになってからこれまで何もしていなかったわけではなく、当然情報戦略チームやAIに相談して様々な剣技についての情報を得ており、時折時間の合い間を見つけては冴内の携帯端末で様々な剣術映像を見て学習していた。


 いくら強さを美衣に引き継がせたとはいえ、元が宇宙最強の【ンーンンーンンンン】人なのでそんな相手に武器など持たせたものだから正直なところ優は手が付けられない程に強くなっていた。もはや冴内も美衣も仮面バイカー状態で、全身虹色に輝いているのだが優はそんな全力の二人相手に全くひるむことなく互角に戦っていた。例のPCがバグった時のような空間残像状態が続き、残った残像での冴内と美衣の顔は真剣な表情なのに優の方は楽し気に微笑んでいた。最後にパキィィーン!という音で静止した時は右腕の剣で冴内の虹色チョップを、左腕の籠手で美衣の虹色チョップを完全に受け止めてトレーニングは終了した。練習後は果物を食べて一休みしてその後座禅を組んで瞑想を行った。


 午前9時になりもうこれ以上はやることがないという程に優が仕上がったのでいよいよ大闘技場へと向かっていった。


『皆さんおはようございます!早速次の試合に挑まれますか?優さん!』

「ええ!望むところよ!」

『おお!素晴らしい覇気を感じます!了解いたしました!それでは大闘技大会第二試合、光の剣士対冴内 優選手の試合を開始いたしますので、優さん以外は観客席の方へ移動お願いします!』


 優は石畳の中央部に進んで行き、冴内と美衣は観客席へと移動した。すると昨日同様様々な宇宙人達が出現し始めて昨日とは違ってあっという間に観客席は宇宙人達で埋め尽くされた。


「キノウノ 貴方ノシアイ サイコウダッタ!」と、冴内の隣に座る全身メタリックなサイボーグというか、かつて日本で放映された特撮ヒーローの宇宙刑事シリーズに出てくるような宇宙人が冴内に握手を求めてきたので冴内も礼を言って握手した。


 美衣は昨日同様売り子の宇宙人にポップコーンに似た食べ物とジュースを注文した。最初から美衣と冴内に5個ずつくれた。美衣の隣に座るケモミミ少女の獣人に「あれアタイの母ちゃんなんだ!まえはアタイの方が強かったけど、剣をもったらアタイよりも強くなった!ひゃくおくさんびゃくえんくらい強くなった!」美衣さん、相変らずその数字と単位でケモミミ少女相手に伝わるのでしょうか・・・


「スゴイナ! アンタノ母チャン ウチノ母チャンノゴセンゾサマ ト オナジクライ ツヨイゾ!」

「なに!?アンタの母ちゃんのごぜんぞさまはそんなに強いのか!?」

「アア! ツヨイゾ! コノツギニデル センシュガ ウチノ ゴセンゾサマダゾ!」

「何!それは楽しみだ!次はアタイが戦いたい!」

「父ちゃん聞いたか!次はアタイが戦うぞ!」

「えっ?良く聞いてなかったけど・・・分かった、次は美衣が戦うんだね!」

「ありがとう父ちゃん!」

「そしたら美衣一人で優に勝てるようにならないとダメだよ!」

「ぐっ・・・そっちの方がむずかしいきがする」


 そんなやりとりをしているうちに上空からファンファーレが鳴り響いてきて、優と優の目の前奥にある扉にスポットライトの光があてられた。


『ご来場の皆さん本日もお越し頂き有難う御座います!しかもあっという間に満員御礼!重ねて御礼申し上げます!さぁ今日はなんと!かつて宇宙最強の名を欲しいままにしたあの【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】人、しかもやはり大変お美しい方の登場です!』


『昨日ガ■▼▲ッ★▲ザ■選手を正々堂々実に清々しい戦いで見事に打ち倒した冴内 洋選手の妻!冴内 優選手です!』


「「「ワーーーーッ!!」」」

「母ちゃんがんばれぇーーーッ!」

「優ーーーッ!!」


『対するは第二の戦士!その剣で切れぬものなし!なんなら惑星ごと断ち切ってやろうかの名セリフで悪をバッサバッサ切り倒してきた大宇宙一の剣豪!スー▼▲リィー◆◆ギャ▼選手の登場です!』


 やはりスー▼▲リィー◆◆ギャ▼のところどころは地球言語にはない何かを切り裂いた時のような聞き取りにくい音だった。


「「「ウォーーーッ!」」」と、今回は子供のような宇宙人達よりもちょっと強面風の宇宙人達からの歓声が大きく上がった。


 そうして静かにゆっくりと現れたのは小柄で細身の宇宙人だった。肌の色は薄い緑色で髪の毛と髭の色は白く皺もあり、遠目から見ても結構年老いて見えた。そして動きやすそうなローブを着ていた。どことなく着流しを着ている昔の日本の剣豪のような雰囲気だった。しかし彼が手にしている剣がそれとは全く別のものであることを有言に語っていた。


「アノ オジチャンモ スゴク ツヨイゾ!」

「うん!アタイもそう思う!」

「あれが剣なのか?あれってどう見ても・・・」


 と、その剣豪が握っていたのは金属製の筒のようなもので、優に近付くと柄の先が光り輝き光の剣が現れた。地球人なら誰が見ても大ヒットSF大作映画の「コスモウォーズ」に出てくるライトサーベルを思い起こしたことだろう。


「うわー!カッコイイ!いいなぁーアレ!」

「かっこいいな!アタイもほしい!!」


 剣豪がライトサーベルを身体の真ん中に立てると優も同じようにレイピアを身体の真ん中に立てて、互いに礼をした。実に清々しい光景だった。


『それでは第二試合!開始!』


 剣豪はわざとらしく派手で見栄えの良いポーズを取り、何かの型のような動きをした。優も同じようにエレガントで美しいポーズを取って演舞の舞いを行った。静かにゆっくり互いに近づいて行って交互に剣をゆっくり打ち込んでは躱し、互いに攻撃を交代していった。それがゆっくりと続いていった。


 次第に少しづつスピードアップしていき、二人の動きの難易度も複雑なものになっていき、相当な腕前じゃないと不可能な技のレベルになっていった。観客はひたすらその美しくも極めて残酷な動きを片時も目をそらさず真剣に見ていた。そうしてどんどんスピードは速くなっていき、風を切る音も激しく大きくなっていった。


 どんどんどんどん加速していく二人、音の方も一層甲高く激しくなっていく。さらにさらに加速していく二人、目で追いかけるのは困難になっていく。それでもまだ加速し続ける二人、非常に美しく非情に残酷で異常に複雑な動きを凄まじい速度で1ミリも変えずに動き続ける二人。まるで同じ映像をただ早送りしているかのような異様な光景だった。


 いよいよ観客達も総立ちで拍手喝采をおくった。観客達の拍手がピークに達したあたりで二人はピタッと止まり、互いに礼をして、観客達の方にも礼をした。観客達は大興奮で大歓声をあげた。観客達が落ち着き着席し始めると、再度剣豪と優は構えを取って礼をして、今度は普通に自然に力を抜いた実戦の構えをとって静止した。観客達も察して、これから本当の真剣勝負が始まるぞとしっかり目を見開いた。


 しかし両者とも静止したまま動かない。遠くから見ると全く微動だにしない、そんな時間が3分程続いた。


「すごいな母ちゃん!」

「うん、凄すぎる、一体何手打ち込んでるんだ?」


『さすがに一部の方を除いてお二人が何をやっているのか分からないことでしょう!ではやはりここで恒例のアレを実施します!二人の頭の中では何を

やっているのか!』


『それでは皆さん準備はいいですか!?それではご一緒に!!』




「「「「「脳内サーーーチ!!!」」」」」




 突如空間に巨大映像が投影されて、石畳の上に立っている二人が映し出された。すると優が剣豪の足元に下段切りをしかけたが剣豪は前足を下げつつ後ろ足を前にスイッチして優の首元に光の剣を叩き込んだが優は光の剣の動きに合わせてグルリと片足を軸に回転しそのまま回転を利用して剣豪の胴体を下から上に逆袈裟に切り上げようとしたのだが剣豪はその動きに合わせて後方宙返りをした。全ての動きが紙一重だった。その間本物の二人は石畳の上で静止したままだった。


 さらに別の映像が映し出され、二人の目、肩、手の先、口元がアップで表示され、実は互いにフェイントをかけあったり動こうとしてやめたりを繰り返して、互いに何を狙っているのかが冴内にも分かる文字や記号で観客達に分かりやすく伝えていた。


「すごい!本当にここはすごい!これを作った宇宙人達はなんて素晴らしいんだ!」

「母ちゃんすごい!あのおっちゃんもすごい!」

「ミイチャンノ 母チャンスゴイナ!」

「うん!ありがと!」


 そこで突然動きがあった。なんと優は自ら籠手を外したのだ。そしてさらに・・・




「へんーーー・・・しん!とうっ!」




 なんとここで優は仮面バイカーに変身した。そして変身と同時に優は消えた。と、同時に剣豪が懐からもう一本のライトサーベルを取り出して背後に突然出現した優の剣をはじき返し、もう一本のライトサーベルで切りかけたがそこでまたしても優は消えた。剣豪はその場から動かず二本のライトサーベルを目まぐるしく動かした。両肩から先は全く目で追えない程速いが、光の剣のためその光の軌跡は空間に残り、まさに空間に描かれた光のアートとも言える光景は見る者全員にその美しさと凄まじさをまざまざと見せつけた。


 しかし徐々に剣豪の方が押され始めてきた。激しい動きで髪は乱れ着流しのローブが崩れてきて防戦一方になってきた。次に片方のライトサーベルが手からはじけ飛び、もう一本のライトサーベルを両手でしっかり握って優の見えない攻撃を受け止めていたのだが、とうとう力強い剣激に耐えきれず片膝をついた。そして最後の一本のライトサーベルを弾き飛ばし、眼前にレイピアを突きつけている優がようやく現れた。


『勝者!冴内 優選手ーーーーッ!!』


「「「「ワーーーーッ!!!」」」」


「洋ーーーッ!美衣ーーーッ!勝ったよー!」


「わーーーッ!母ちゃーーーん!!」

「優ーーーッ!愛してるーーーッ!」


 互いに礼を行った後、剣豪は二本のライトサーベルを拾い、そのうち一本を優に渡した。そして優に話しかけて優のレイピアを受け取るとじっくりと丁寧にレイピアを見つめ、やがて手先からまばゆい光が放出されレイピアの刃にあてがっていった。するとレイピアのブレードが光り輝き始め、優のレイピアは刀身はそのままだが刃の部分が光り輝くまさに光の剣になった。慎重に優にレイピアを返すと剣豪は石畳の地面を指さした。優が軽く石畳の地面に対して一振りすると場内アナウンスからは小規模の惑星爆発にも耐え得るほど頑丈だと説明された石畳がいとも簡単にパックリ割れた。


『おーーーっと!優選手の剣が大宇宙一の刀匠でもあるスー▼▲リィー◆◆ギャ▼選手の手により光の剣になりました!しかもなんという切れ味でしょうか!優選手頼みますから本気で試し切りしないで下さいよ!この星ごと真っ二つになりかねません!』


「「「「ワーーーーッ!!!」」」」


「すごいぞー!母ちゃーーーん!」

「すごいな!本当に凄い!なんと素晴らしい宇宙人達なんだ!」


 優と剣豪は互いに礼をして握手をしてそれぞれ別れて行った。会場内は割れんばかりの拍手喝采に包まれた。大興奮が徐々に冷まされていったところで本日の試合は終了の場内アナウンスが流れ各宇宙人達もフェードアウトしていった。


「ミイチャン! 明日ハ ウチノゴセンゾサマト ショウブダネ!」

「うん!せいせいどうどう全力でたたかうぞ!」

「楽シミニシテル! ジャアマタ明日ネ!」

「うん!またあした!」いつの間にかケモミミ少女と仲良しになっていた美衣は明日の健闘を誓い獣人のケモミミ宇宙人少女と別れた。


『お疲れ様でした、次の対戦は20時間以降からになります、明日の対戦相手は獣人族最強の戦士で宇宙一といってよい程強靭な肉体を持ち、格闘戦で敵う者なしと言ってよい程の強者です』


「明日はアタイがたたかうぞ!」


『分かりました!明日は冴内 美衣さんが出場ですね!ところでスー▼▲リィー◆◆ギャ▼選手との再戦はどうしますか?』


「やる!アタイも光の剣欲しい!」

「僕も欲しいけど、持てないんだろうなぁ・・・」


『分かりました!それでは無観客試合になりますがスー▼▲リィー◆◆ギャ▼選手との再戦を開始します!』


 こうして美衣と冴内の順に剣豪との再戦が開始された。二人とも最初から仮面バイカーに変身し、さらに最初から全力の虹色状態になり、例のPCがバグってモニター上に奇妙な残像映像を上書きしていく状態になった。剣豪の方も最初から二刀流で挑んだがあまりの凄まじさに身体が浮くほどだった。それでもまともに攻撃を受けないところが達人だった。とはいえそれも長くは続かず美衣のときも冴内のときも剣豪は最後には吹き飛ばされて場外に飛んでいき負けとなった。


 勝利した後、二人ともライトサーベルを受け取ったのだが、美衣は英雄剣の時と同様に口をアーンと大きく開けてライトサーベルをゴクリと飲み込み、冴内の方はやはりライトサーベルを持つことが出来ずに手からすり抜けてしまうので、なんと剣豪がライトサーベルを冴内の体内に押し付けてそのまま体内に埋め込んでしまった。美衣も冴内もライトサーベルを体内に取り込むと両方の手が光り輝き、軽く素振りしただけで石畳がパックリ割れるという有様だった。場内アナウンスがこれは■□■□■星人に頼んでもっと石畳を強化してもらわないといけませんねと言った。二人とも剣豪に頭を下げてお礼を述べて握手をして再戦は終了した。


 まだお昼には早い時間で、優はこのままブラックと対決するといってブラックが待つ血の色で囲まれた部屋へ向かった。優が部屋の中に入るとやはり部屋の中央部に赤い鮮血のような霧がぐるぐると渦巻いていていき、それが徐々に形になっていくとヒトのような形になっていき、さらにそのシルエットが徐々により細かいディティールを作り始めていき、ブラック優が現れた。


 優が籠手を冴内に渡し最初から二刀流で構えた。ブラック優はレイピアと籠手だったが、そんな二刀流の優の姿を見て剣を下げ、こう言った。


「ワタシノ オヨブトコロデハ ナイナ ツヨクナッタナ モウヒトリノ ワタシ」

「ええ!もう守ってもらうだけの私じゃないわ!」

「ワカッタ・・・サラバダ・・・」


 そうしてブラック優はオリジナル優と戦う前に消滅して優の中に帰っていった。最後にブラック優は悲しくも嬉しそうな笑顔を見せたような気がした。


 ブラック優が消滅した後、血の色で囲まれた部屋が温かい光で覆いつくされ、全てが真っ白に漂白されたかのように光り輝いた。光がおさまると血の色で囲まれた部屋は消失し普通の通路になっていた。


 どこからともなくファンファーレが響き渡り、冴内達の身体が光り輝いた。すると3人の腕が光り輝き久しぶりにステータス画面が表示され、次の様に更新されていた。


-------------------

冴内(さえない) (よう)

21歳男性

★スキル:大宇宙のチョップLV3+⇒大宇宙のチョップLV4+

★称号:試練のチョップ⇒愛の使者

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冴内(さえない) (ゆう)

21歳女性

★スキル:真・頑丈Lv4⇒真・頑丈Lv4+

★称号:試練の新妻⇒剣豪

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冴内(さえない) 美衣(みい)

永遠の13歳:可憐な乙女

★スキル:真・万能チョップLv4⇒真・万能チョップLv4+

★称号:試練の英雄⇒英雄勇者

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「あっ!試練の文字が外れた!・・・ってあれ?称号が・・・愛の使者?全然違うものになったぞ?」

「私は新妻の方が気に入ってたかもー」

「なんか文字がふえとる、えいゆう、ゆう・・・もの?」

「えーと、えいゆうゆうしゃだね、凄いな美衣、英雄で勇者なんだ。なんだか世界でも救うようだね」


 冴内は何気なく軽い気持ちで言っただけだったのだが、将来この言葉は現実になる。


「あっ!でもまたすうじがけちんぼだ!+のマークしかついてない!」

「うーん・・・でも、以前に比べたら圧倒的に今の方が強いから、あまりこの数字にはこだわらなくていいかもしれないね」

「うーむむむ・・・わかった・・・」


「とにかくこれで試練としては一応クリアしたみたいだしちょっと早いけど戻ってお昼ご飯にしよう」

「さんせい!そうしよう!」


 こうして冴内ファミリーはこの世の地獄の試練を乗り越えた。残るは大闘技大会と「良くないもの」との対峙という状況であった。

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