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121:力堂達の試練

 この作者にしては珍しく長めの9千文字を超える激闘ではあったが、実際のところ冴内達は昼過ぎに研修センターに帰ってきた。もちろん今回も夜は大祝勝会を行うことになっている。料理長にカエル肉のほんの一部のごくひとかけらを味見してもらったところあまりの旨さととんでもない滋養成分の濃度で鼻血を出して卒倒してしまいこれは一般人にはとても出せるような代物ではないということで、今晩の祝勝会の場ではこの肉を使った料理は出さず、後日個別に調理してもらうことにした。その際は優が調理方法を教えて欲しいと申し出た。さすが試練の新妻である。冴内達はひとまず大浴場で汗を流した後で遅めの昼食を軽く済ませて中会議室に向かった。


 中会議室に入ると目と鼻を真っ赤にした矢吹が冴内の手を握り「人生最高のいや、人類最高のベストバウトだった、あんなバケモノ相手によく戦った!チョップじゃなければお前こそ人類最強世界最高のボクサーだ!」と、冴内の健闘を讃えた。美衣や優のトレーナー達も同様に目と鼻を真っ赤にしてそれぞれ褒め称えた。通常映像では普通の人には何が映っているのか良く分からないので、映像の下に【10倍以上のスロー再生で見て下さい】というテロップを追加して動画配信したところ、絶叫に近いコメントが次から次へと投稿された。


 夕方になり、またしても十津川河川敷で打ち上げ花火が盛大にあげられ、大祝勝会が開かれた。今回もいつものメンバーがわざわざお祝いにやってきてくれた。祝勝会の途中、巨大スクリーンにて各団体戦の模様が10倍スローで映し出された時は全員食い入るように見入っていたが、最後の冴内のカエルチャンピオンタイトルマッチの最後の方になるとあちこちですすり泣く音が聞こえてきて、木下が「もうやめて・・・」と号泣し、旧姓早乙女は「わああーん!」と声をあげてボロ泣きした。美衣もつられて大泣きした。神代もオイオイと声をあげて号泣していた。他のメンバーの目からも涙が溢れ出て止まらなかった。しかし最後に冴内の虹色に輝くアッパーチョップ、オーバーザレインボウでチャンピオンカエルを撃破して場内が虹色に輝き、冴内ファミリーが互いに強く抱きしめ合って冴内の顔もすっかり元通りになった時はその場で雄たけびや絶叫が響き渡り大歓声に包まれた。男性陣が冴内に駆け寄ってきて高らかに胴上げをした。美衣も一緒になって垂直飛びした。その時一際大きな打ち上げ花火が夜空に大輪の花を咲かせた。


 この時の冴内の闘いは当然世界中に配信され、世界ボクシング協会からも大絶賛されて特別枠で永久殿堂入りすることになり、後日特別なチャンピオンベルトが届けられることになった。名だたる世界チャンピオン達の肖像写真と共に冴えない冴内の顔がこれからずっと掲げられるのである。この年は世界中でボクシング入門者数の記録的な数字を叩き出した。そしてまたしても映画化のオファーが殺到し契約金も莫大な金額が提示された。ちなみにちびっこ達の間では空手ブームが、若い女性の間では美容柔道などという良く分からないジャンルのエクササイズが流行した。


 明けて翌日のお昼時間に食堂にてカエルの霜降り肉とヒレ肉を使ったコース料理がふるまわれて冴内達は一口食べるごとに気を失いかけながらも食べ続けるという、幸せなのか地獄なのか一見するだけではなかなかに判別が難しい食事をした。それでも食べ続ける執念だけは見上げた根性というか食い意地である。食後優は厨房に入っていきカエル肉を使った料理を教えてもらいに行った。


 そしてとうとうこの日から新たに試練の門へ挑むメンバーが登場した。といってもいつものメンバーになるのだが、力堂、矢吹、良野、早乙女の師匠の吉田、手代木の5人が通常の難易度で挑むことになったのだ。彼らはいつも冴内達の大祝賀会のためにわざわざ富士山麓ゲートからほぼ1~2週間程度置きに来てくれたのだが、冴内達の健闘ぶりに大いに触発されたのと、やはりシーカーとしての挑戦する魂が揺さぶられたので、是非試練の門に挑んでみたいと結構前から神代に相談して打ち合わせていたのだ。入念に装備品などの準備も整えて、彼らは試練の門に向かっていった。冴内と美衣もお見送りということで試練の門の前まで付き添った。ゲートから試練の門まで50キロ程の距離があるが力堂達も駆け足で進み1時間程で到着。これでも本来ならばおよそ普通の人間のなせる技ではないのだが人知を超えた存在の冴内ファミリーよりは時間がかかった。冴内達にはお馴染みの試練の門の横にある台座に力堂が手を乗せるといつものホログラムと音声ガイドが聞こえてきた。


『ここは試練の門です、この先を進む者には・・・って、あら?冴内 洋と冴内 美衣がおりますね、あなた達も入るのですか?』

「アタイ達はみおくりにきただけだ!今日は入らないぞ!」

『そうでしたか・・・安心しました。では改めて、ここは試練の門です、この先を進む者に試練を与え試練を乗り越えたものには試練に応じた報酬を授けます。試練の門はあなたの命と精神を失う程危険な場所です。それでも構わないというのならその意思を示しなさい』


『試練の門に挑みますか?』

『はい/いいえ』


「その前に教えて欲しいことがある。ここにいる冴内一家を除いた我々の力量はどれほどだろうか?果たして試練の門に挑める程のレベルに達しているだろうか?」と、力堂はたずねた。


『そうですね・・・本来はこうした問い合わせには一切応えないのですが、そこにいる冴内家族を除いたあなた方ならば難しいレベルでも5階層目ぐらいならば問題なく進めることでしょう』


「有難い、返答感謝する!」

『いいえ、そこにいるおかしな存在と違ってようやく本来こちらが想定したレベルの方々が来てくれたので、こちらも安心しました。そこの困った存在のような者達ばかりがやってきたらどうしようかと酷く不安になっていたので、今回あなた方が来てくれたことは喜ばしいことです。ですので特別にお答えすることにしました』


「試練の門は何階層まであるのでしょうか?」と、手代木の発言。

『これも本来は決して教えることはないのですが、特別にお教えしましょう。試練の門は100階層で終了します』


「「「ひゃ・・・百ッ!!」」」

 冴内と美衣はその場に崩れ落ちてOTLの恰好になった。


『この世の地獄は例外です。そんなにネタが・・・ゴホン、そこまでの階層はありません。というよりもあなた方はもう来ないでください』


『さて、話が大きく逸れてしまいました。改めて試練の門に挑みますか?』

「ああ!難しいで頼む!」

『分かりました、試練の門、難易度難しいで承りました。皆さまの健闘を祈ります』


「なんだ!アタイ達とぜんぜんちがうたいどだ!」


ゴゴゴゴゴゴ・・・


「では行ってくる!」(力堂)

「行ってくるぜ!」(矢吹)

「行ってくるわね!」(良野)

「行くわよ!」(吉田)

「はい・・・はい・・・では今から突入します」(携帯で神代と話しているらしい手代木)

「いってらっしゃぁぁい!おみやげにお肉たくさんもってきてねぇー!!」

「いっぱいもってくるわよ!お姉ちゃんにまかせとき!2トン分くらいは持ってきてあげるから!」

「わぁーーーい!わぁーーーい!」


 そうして力堂達は難易度難しいで試練の門に入っていった・・・

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