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117:ペロペロキャンディ

 それは大祝勝会の後、皆で風呂に入り、各自解散して部屋に戻った後のことだった。美衣がジュースでも飲もうと冷蔵庫を開けてみると、まだまったく手つかずで放置されていたペロペロキャンディが目に入った。特に何の考えもなくなんとなく手に取ってひと舐めしたところ・・・




「ギャーーーーッ!!」




「美衣ッ!」

「どうしたの!美衣!」

 見るとうちわ程の大きさのペロペロキャンディをしっかり握ったまま仰向けで倒れ目を白黒させている美衣がいたが、その後口元がほころび、いや、ほころびきってヨダレが垂れるほどニマァ~とした顔になっていった。良くないクスリというかアレを摂取した中毒患者のように見えなくもない程ウットリと虚ろな表情だった。

「アマァ~イ・・・オイチィ~イ・・・」といって目はウットリしたままペロペロキャンディをペロペロ舐めまくった。それはもう数日間会えなかった大好きな飼い主に会って大喜びして飼い主をベロベロ舐めまくる大興奮の犬の様にベロンベロンに舐めまくった。その様子を見ていた冴内と優は、第三者が見たら非常に危険に感じていたであろう吸引力に目がトロ~ンとなり二人とも冷蔵庫の中のペロペロキャンディを手に取って舐め始めてしまった。恐らく美衣がペロペロキャンディをベロンベロンに舐めていた時にペロペロキャンディの表面が溶けて、何かの吸引作用というか誘引作用というか、要するにヤバイクスリのような強烈な誘惑幻惑成分が二人を襲ったのだ。そして冴内一家は一心不乱にペロペロキャンディをベロンベロンに舐めたりしゃぶったりした。それはもうなんとも凄まじい、他人にはおよそ見せられない姿だった。しかも恐ろしいことに舐めている間は全く自意識が働かずまさに何も考えずにただひたすら本能剥き出しでペロペロキャンディを舐め続けていたのである。そうして冴内ファミリーは一心不乱無我夢中にペロペロキャンディを舐め続け、舐め終わると同時に気絶していた・・・




 明けて翌朝、冴内ファミリーは全員赤ちゃんになってしまった。




グウウウウ・・・

「うーん・・・おなかすいた」と、大きな腹時計の音と共に一番最初に目が覚めたのは美衣であった。

「あれ?ここどこだ?あれ?うちのれいぞうここんなに大きかったっけ?うん?アタイ裸だぞ?あれ?なんか手が小さいぞ?あれ?あれ?あれれ???」




「ギャーーーーーッ!!」




「美衣ッ!」

「どうしたの!美衣!」

「えっ?」

「えっ?」

「・・・」

「・・・」

「・・・」




「ギャーーーーーッ!!」×3




「なんじゃこりゃーーーー!!」

「全員赤ちゃんになってるわ!洋!」

「皆赤ちゃんだ!お父ちゃんもお母ちゃんも赤ちゃんだ!お父ちゃんめちゃめちゃ可愛いな!お母ちゃん私とそっくりだな!」

「ウフフフ美衣が私にそっくりなのよ」

「あっそうか!アハハハハ!」


 いや、笑ってる場合じゃないっスよ皆さんと冴内は思いつつも確かに二人ともそっくりだしすごく可愛いなぁとついニヤけてしまった。ともあれ、このまま全員赤ちゃんのまますっ裸でいるのもマズイのでとりあえずタオルを巻いて職員達に連絡した。


 インターフォンなど何もかもが高い位置にそびえたっているので苦労したが、冴内は赤ん坊にはあるまじきジャンプ力や身体能力でなんとか外部と連絡することが出来た。やはり研修センター内にいたことが功を奏して職員達はすぐに全員すっ飛んでやってきた。とりあえず普通の大人の食事を食堂でとってから急遽緊急会議が開かれた。中会議室には二人の局長に職員達、そしていつものメンバー全員が勢揃いしていた。


「まずは現状判明していることを改めて整理いたします。第一の試練のボス、虹色スライムを倒したときに取得したペロペロキャンディを舐めて一夜明けたら皆さまのお姿が赤ちゃんになってしまったということですわね?」と道明寺局長。


「はい、そう思います。ただ僕ら全員、ペロペロキャンディを舐め始めてからの記憶がないんです。美衣が絶叫して、すぐに駆けつけて美衣を見て、そしたら美衣が美味しそうにペロペロキャンディを舐めているのを見たところまではかろうじて覚えているのですが、そこから先が全く覚えていないんです」と、真顔で話す赤ちゃん冴内だった。


 その場の全員が内心そんな冴内を見て「すごく可愛い」と思っていたがそっと心にしまいこみ口には出さずにいた。冴内達が食堂で食事をとっている間にペロペロキャンディのスティックの成分分析をしていた結果が届き、非常に誘因効果のある成分が検出されたと研究者が報告してきた。他にも麻薬に似た成分が多く検出されたが後遺症や中毒を引き起こす成分がないので非常に驚いたと言っていた。他にも滋養強壮作用の成分量がこれまで見たことがない桁外れの成分だったと言ってきた。しかもそれらはペロペロキャンディのスティックに残されたごくわずかな微量な残留成分から検出されたのである。一体ペロペロキャンディ本来の成分濃度がどれほどのものだったのか想像するだけでも極めて強烈な成分だったに違いなく、仮に通常の人間が摂取したらどんなことになるのか・・・恐らくひと舐めでも即死していたかもしれないと言った。


 この異常事態にどう対処すればいいのか誰一人として答えを持ち合わせていなかったが、優も美衣も「別に誰も死ぬわけじゃないし、3人とも元気な赤ちゃんなので何も問題ない、ほっといてもそのうち大きくなるだろう」と、全く気にもしていなければ問題視もしていない程平静だった。さすが【ンーンンーンンンン】人、メンタルも強い。いや、地球人とは時間に対する認識が違うのか・・・


「えっ?でもまさかずっとこのまま赤ちゃんだったらどうするの?」

「多分それはないと思うわよ」

「赤ちゃんのままじゃダメなのか?あっこのよのじごくにちゃれんじ出来なくなるのか・・・いや、でもすごく強い赤ちゃんになればいいか」


 論点がずれてる人物が約一名いるが、優の直観によればずっと赤ちゃんのままではないようだが、ではいつになったら元の大人に戻れるのかが次の悩みどころになった。


「うーん・・・この様子だと・・・多分数日中ってところだと思うわよ」と、どんな様子なのか冴内には分からない優の直感に頼って無理矢理安心させることにしたが、美衣も「アタイもみっか後くらいにはもとどおりになると思う」と言ったので信じることにした。地球上の科学力では全く何一つ分からないので優と美衣二人の【ンーンンーンンンン】人の感覚に頼るほかなかったのである。


 数日後には戻るということで皆安心することにして、そこから先は冴内ファミリー全員の身体検査を行った。当然貴重な記録なので冴内達の了承を得てそれらの様子は全て録画配信された。それらがひと段落した頃、冴内の両親と姉夫婦が埼玉からすっ飛んでやってきた。


 二人の姉は夫のボーナス全てをつぎ込んでゲットした高級一眼レフカメラを持参してきたが、冴内の父親も同様にプロ仕様の最高級ビデオカメラをもってやってきた。冴内の母親は冴えない冴内とは思えない程可愛い赤ん坊状態の冴内を見てそのまま食べてしまうんじゃないかというくらい全身全霊で赤ちゃん冴内を抱きしめた。二人の姉も頭から湯気が出ているんじゃないかという位優と美衣の写真をバシバシ撮りまくっては時折強く抱きしめた。冴内の父親は涙どころか口からヨダレが出る程プロ仕様ビデオカメラのファインダー越しに夢のような天国のような、天使たちを撮り続けた。当然鼻水もベロンベロンだった。


 冴内の両親と姉夫婦は当然冴内達の部屋に寝泊まりしたのだが、冴内の両親はもう思い残すことはない、もういつ死んでもいい、今日死んでもいい、何なら今死んだっていいとまで言い出す始末だった。恐らく帰りの新幹線では赤ちゃん状態だった冴内ファミリーロスで魂の抜け殻になって、またしても他の乗客や新幹線の職員を大いに不安がらせることだろう。それでも強烈に可愛い3人の天使を挟んで眠ることが出来て死ぬほど幸せだった。スヤスヤ眠る赤ちゃん冴内ファミリーの横で一晩中寝ずに隣で添い寝する順番を入れ替えていた冴内の両親と姉であった。


 明けて翌日、冴内達は3歳児ほどに成長していた。その姿は冴内も含めてありえない程可愛らしく、全員美衣のおさがりを着て過ごした。当然冴内も仕方なく美衣のおさがりを着ていた。瓜二つの優と美衣の可愛さがハンパなく強烈で研修センター館内をうろつく度に全職員から激写されまくった。職員たちの中にもそれ一体幾らするんだという見た目の凄まじいカメラを持っていた職員もいた。いつものメンバー達も全員メロメロで力堂も宮も、自分達も早く子供が欲しい!と強く思い、矢吹も「くそっ!可愛い過ぎるじゃねぇか!こりゃオレもいよいよ年貢を収めるか」と言い、良野に至っては「ちょっと手代木!もうこの際アンタでもいいから私と結婚しなさいよ!」とまで言いはじめたのだが、またしても手代木は「いや、自分今年結婚しますよ、ずっと付き合ってた同級生と・・・」といってまたしても絶句し、木下に頭を優しくなでられた。


 さらに明けて翌日、冴内達は全員13歳程に成長した。美衣は見た目上はこれで元に戻った。またしても優と美衣は瓜二つでありえない程この世のものとは思えない程美しい少女が二人お揃いで出てきたものだから冴内の両親と姉二人はその姿と仕草にメロメロになって悶絶した。さすがに冴内の方は残念ながら冴えないいつもの冴内に戻っていった感じだ。


 優が明日には元通りになると思うと言ったので全員安心したが、実は多くの人間がしばらくの間このままでいて欲しいと心の中で思っていた。今日がこの二人の天使を見られる最後だということで、多くの人達がその姿を目に焼き付けようとし、また高性能カメラで録画しようと訪れた。とりあえず美味しいものを渡せば渡した方がとろけそうになる程の最高の二人の笑顔を見せてくれるのでひっきりなしに餌付けの人達がやってきて行列が出来た。


 ちなみに例外的な人物としては良野と木下が若干寂しそうにしている13歳の冴内にガツンとヤられたらしく、優と美衣の餌付け用に買ってきた極上のクリームパンとメロンパンを冴内に渡すと二人にとってはザクッと心に突き刺さるすごく可愛らしい笑顔で「ありがとう!お姉ちゃん達!」といってムシャムシャ食べるもんだから二人は完全に別の何かが目覚めてしまいひたすら冴内の頭をなでたり、手を握ったり携帯で激写し続けていた。二人とも、それ以上はやめとけよ。この小説はR15指定だぞ。


 明日には冴内と優も元に戻るということで、夕方に冴内の両親と二人の姉、そしていつものメンバー全員と職員一同でまたしても盛大なパーティーを開き大いに飲食して盛り上がった後で冴内の両親と二人の姉、そしていつものメンバー全員は各々の帰るべき場所へと戻っていった。恐らくしばらくは幼い状態の冴内ファミリーロスが続くことだろう。


 こうして3日間に渡るペロペロキャンディ事件は無事に解決することになった。ちなみに幼い状態の冴内ファミリーに関連するグッズが飛ぶように売れ、とりわけ3人が着ていたのと同じ服は世界中で品薄や売り切れになる程だった。もちろんかなり長い期間この幼く愛らしい天使のような状態の冴内達が携帯の待ち受け画像や職員達のPCの背景画像になったのは言うまでもない。

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