表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/460

114:最強の絹糸

 結局あまりにもウマすぎてソーセージはすぐに食べ尽してしまった3人は次はどうやれば土の中に潜られる前にワームを倒せるかあれこれ話しながら10分程進んだところ次のワームらしい姿を捉えた。今度のワームは白い色で、姿形もさっきのものより細長くて見た目が結構違っていた。


「あれはあんまり旨そうじゃない」と、美衣は言ったが冴内からすると先ほどのワームだってとてもじゃないが美味しそうな見た目ではない。


 ともあれやはり直接手で触れたくないのでその場で美衣とダブル全力チョップを放ったが、今回も二人のダブルチョップでは倒し切れなかった。攻撃力はまだ未知数だが生命力の点ではやはりスライムを上回っているようだ。とはいえさすがに大分弱っているようだ。


「お父ちゃんにも苦手なものがあって安心した。アタイがとどめを刺してくる」と言う美衣に対してなんと父親思いの良い子なんだと感謝感激する冴内。美衣はとどめを刺そうと少し白いワームに近づいて行ったところ、白いワームの口からシュワワワーっと白い糸が勢いよく吐き出され美衣はあっという間に白い繭のようになってしまった。


「ムガムガ!オモウマン!マムメメムメ!」と、恐らく「お父ちゃん助けてくれ」と言っていると思われる美衣。「うわ!美衣!!」すかさず冴内は苦手だなんだと言っていられず白いワームにめがけて全力チョップを食らわして倒し、白い繭状態の美衣に手加減チョップで糸を引きちぎろうとした。しかしこれがやたら頑丈で全然千切れる気配がない。


「美衣!中から全力で貫手をやってみて!」

「ママッマ!オモウマン!モイメ!」恐らく「分かったお父ちゃんどいて」と言ったと思われる美衣。繭から美衣の貫手と思われるものがビヨンビヨンと出てくるがなかなか突き破る事が出来ない。はたから見たらかなり愉快な状況なのだが美衣の方の消耗はなかなか激しく繭の隙間からフーフーという荒い息遣いと湯気が出てきた。


「マメマ、オモウマン、ムマメマ・・・」恐らく「だめだお父ちゃん疲れた」と言ってる美衣。優が少し危険だが冴内に全力チョップを提案したので、冴内はまだ残ってる黒豆モチを一口食べて全力チョップを繭状態の美衣に食らわした。しかし繭はビクともしなかったのでもう一度全力チョップをぶっ放した。少しだけ表面の繊維が千切れた。再度黒豆モチを食べて全力チョップ。黒豆モチを食べつつ5回程繰り返してようやく美衣が自力で中から貫手で突き破って出てきた。「あ・・・危なかった・・・さすがこのよのじごくだ・・・」と、美衣は疲労困憊の様子なので黒豆モチを食べさえて回復させた。


 ともあれ白いワームを倒したので早速何を落としてくれたのか見てみたところ白い糸が落ちていた。

「なんだ、たべものじゃないぞ」と美衣。

「いや、これはかなり便利よ、これで私達の服を作れば、もう服だけズタボロになることもなくなるかもしれない」

「なるほど!さすが優!早速これで服が作れるか持ち帰って聞いてみよう!」


 こうしていったん冴内達は研修センターに戻って白いワームが落とした糸を職員達に見せた。すると奈良ゲート局長の道明寺が自ら直々にやってきて糸を鑑定し始めた。ちなみに道明寺は鈴森の師匠にあたる人物であり、鑑定スキルだけでなく素材に関する知識も膨大で素材関連の第一人者でもある。そしてその道明寺の師匠はなんと英国シーカーの伝説の5人のうちの一人、鑑定士のマリアンヌであった。道明寺はその糸を手に取り様々な角度や光に当てたりなどして非常に集中した様子で観察をし続け、時にじっと動かず考え事をしていたところ、なんと左手が光始めてレベルアップし、鑑定士スキルが現在最高レベルの鈴森のレベル11を塗り替えてレベル13にまでなった。鑑定し終えた道明寺は目を押さえて深く息をついてイスに腰かけた。


「これは大変すばらしい素材です。この糸で防護服を作ることが出来ればとんでもない防御力の服が出来るでしょう。いえ、防御だけでなく、耐熱性、耐火性、防寒性など、あらゆる面で想像を絶する能力と性能をもつ防護服が出来ると思います、それでいてまるで高級シルクのような手触りと美しい質感を合わせ持つというまさに夢のような究極の繊維素材ですわ」と、道明寺はこの絹糸を絶賛した。

「それはいいわね!是非とも私達の服を作っていただけるかしら!」

「アタイも可愛いお洋服が欲しい!おばちゃんお願い!」と美衣が実に反則極まりない殺人的可愛さで道明寺に抱き着いてお願いする。道明寺はデレデレのデレで「おばちゃんにまかせて!美衣ちゃんにうんと可愛いお洋服を作ってあげる!」と即答したところ「ありがとう!おばちゃん大好き!」と、またしてもマダム殺しの必殺文句を言うのであった。恐るべし美衣。しかしさすがに3人分の服を作るには絹糸が足りないので次の日からソーセージと最強の絹糸集めに励むことになった。


 当然この一報は神代の耳にも届き、服のデザインについては是非ともこちらにお任せいただきたいと懇願し、神代の人脈と今や局長という権限をフルに総動員して世界でも活躍する一流日本人ファッションデザイナーに依頼した。動きやすくそれでいて神にも等しい美しさを誇る存在が着用するのに相応しいものになるよう注文し、デザイナーの方もまさに一世一代の栄誉ある大仕事ということで人生をかけて最高のものを作ると意気込んだ。


 とはいえ、このためだけに試練の門への挑戦を停滞させるわけにもいかないので、3人分の服を作るのに十分な量の絹糸が確保出来るまでの間の期限ということになった。期限の短さをデザイナーは悔やんだが、もしもこの期限がなければ納得いくまで不眠不休で根を詰めて描き続けてぶっ倒れていたことだろう。ともあれ1週間程通い続けて十分な量の最強の絹糸を確保し、同時にデザインも完成したので早速道明寺自らが指揮して裁縫にとりかかった。また最強の絹糸には十分余裕があったので、余った絹糸で下着も作ることにした。


 服が完成するまでの間冴内達は第二の試練の探索を続けたのだが、かいこワームの次に出てきた3種類目のワームには冴内は全く太刀打ち出来なかった。冴内の神のチョップですら歯が立たなかったわけではなく、冴内の戦闘意識が完全にゼロだったのである。それはどういうことかというと、冴内の生理的に全く受け付けられない最悪の見た目だったのである。




 そのワームとは巨大な黒い毛虫だったのだ・・・




 冴内は両手で顔を覆い背中を向けて、酷い時はうずくまってしまった。「お父ちゃんにもじゃくてんがあるんだな、なんか安心した、こいつはアタイ達にまかせて!」と、この時ばかりは本当に本気で神様美衣様仏様にすがりまくっていた冴内であった。その気持は今回だけは激しく作者も同意する。それくらい毒々しくてグロテスクなワームだった。ちなみにそのワームからは黒いソーセージが・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ