113:第二の試練
第一の試練を乗り越え、大祝勝会で盛大にお祝いされた翌日は休養日にして冴内一家は十分ゆっくりして英気を養った。そして改めて次の日にもう一度試練の門の前にきた。美衣が早速台座に手を乗せるといつもの音声がながれてきた。
『第一の試練を乗り越えた者よ。次なる試練に挑みますか?』
『はい/いいえ』
「いや、もう一度、だいいちのしれんに行きたい!もっとモチが欲しいんだ!」と美衣。
『一度克服した試練は受けれられません。次なる試練に挑みますか?』
『はい/いいえ』
「なんだと!?もう黒豆モチもサイダーもブドウもメロンももらえないのか!?」
「おい!お父ちゃん大変だ!どうしよう!モチとかあとどのくらい残ってる?」
「まだ結構残ってるよ」
「やい!そんなこといわずにもう一度だいいちのしれんをうけさせろ!」
『一度克服した試練は受けれられません。次なる試練に挑みますか?』
『はい/いいえ』
「グヌヌーーー!!またしてもコピペか!まったくゆうづうのきかないしれんだ!」
いや、そもそも融通のきく試練ってなんだよ。
「仕方がない第二の試練に行こう美衣」
「グヌヌ・・・分かった、そうする・・・」
『それでは第二の試練。ゲートオープンします』
『貴方達のご冥福を心よりお祈り申し上げます』
いつもながら実に失礼な音声ガイドであった。
ともあれ冴内一家は第二の試練の門の中に入っていった。第一の試練同様に中は通路になっており幅3メートルで高さは4メートル程という大きさも分岐点がなく一直線という構造も前回と変わらないが、今度は周り一面が岩肌というよりも土の壁と地面という感じだった。
警戒しながら進むことおよそ10分。いよいよ新たな敵と思われる存在が目の前に現れた。
「なんだあれ!なんかおる!お父ちゃん!」
「うわぁ・・・」
「どうした?父ちゃん」
冴内達の前に現れたのは巨大なワームだった。
ミミズというか芋虫というか、海釣りが好きな人が見ればどことなくイソメやゴカイをイメージする外見で、口の部分は丸く一般的な動物の口というよりは肛門のように収縮して開閉するような口で、口をあけたときに見えた内部には鋭い歯がビッシリと何列かに渡って生えていた。一言で言うと見た目最悪だった。ほとんどの人にとっては生理的に絶対ムリなビジュアルなのだが美衣と優は全く平気な様子で冴内の方は完全にアウトだった。
「うへぇキモイ、ひどくキモイ、生理的にムリ」
「大丈夫か父ちゃん、どうする?」
「あれ、触りたくないなぁ・・・」
「じゃあまずは全力チョップでいくか?」
「そうだねそうしよう。優、間合いを知りたいので頼む」
「オーケー!」
前回スライム相手のときも直に触れた攻撃は核を貫手で貫いた時ぐらいだったので、距離を取っての斬撃ならばいいかと冴内は思うことにした。そうして冴内と美衣は油断せずににじり寄っていった。
「ストップ!」と優。
「よし行くか!せーのぉ!」
「どりゃぁー!」
ドゴォォーーーン!!
「おっ!消えた!やったぞ!父ちゃん」
「さーて何かウマイもの落ちてるかな~」
「あっ!美衣!待って!」と優が言うが早いか美衣はその場にズボッと埋まってしまった。
「イダダダダ!イタイイタイ!何かにかじられた!父ちゃん!助けてくれ!」慌てて冴内と優は美衣を引っ張って引っこ抜いた。
するとまるで人魚のような美衣が出てきた。
と思ったらよく見ると下半身を見事にワームに飲み込まれていた美衣だった・・・
「うわわわ!美衣!!」と冴内はワームの頭部と思われるところにチョップを食らわした。
「イテテテ!このやろうこのやろう!」と美衣も脳天めがけてチョップを食らわした。ワームはたまらずベェッ!と美衣を吐き出したので、冴内と美衣は二人でダブル全力脳天チョップをお見舞いした。そこでようやくワームは消滅した。
ワームは巨大なソーセージを落としていった。
「美衣!」と美衣の足を確認するとふとももに4列くらいの歯型がついていたが少し赤く色づいている程度で血は出ておらず骨も折れていないようだった。
「美衣!大丈夫かい!?」
「うん大丈夫・・・強くつねられたみたいな痛みだった。って強くつねられたことないけど・・・」
とりあえず全力チョップ2発当てれば倒せそうだが地面に潜られたのは盲点だった。
「あっ!すごくうまそうなソーセージだ!ひと口食べてみよう!」と、まったく止める間もなく美衣はガブリと一口かじりつきモシャモシャと食べてゴクリと飲み込んだ。と、同時にその場に仰向けに大の字になって倒れ込んだ。
「美衣!!」
「ウ・・・」(美衣)
「ウ?」(冴内)
「ウ・・・」(美衣)
「ウ?」(冴内)
「ウメェェェェェーーーー!!」
「なんだこれ!めちゃめちゃウマイぞ!痛みも疲れも何もかも全部吹っ飛んだ!すごくいい気分だ!こんなうまい肉をくれるなんてアイツいいヤツだ!」と美衣は大喜びしたが、冴内の方はすごく微妙な表情だった。いくら旨いとはいえこれを口にするのはすごく嫌だった。
「あら、そんなに美味しいの?じゃあ私も!」と、優がありえない程この世のものとは思えない程美しいその口をアーンと開けて大きな太いソーセージを咥えてガブリとひと口かじりついた。ゴクリと飲み込んだ後優はその場にへたり込んで頬っぺたを両手で挟み込み「ウンマァーーーイ!!」と叫んだ。
「お父ちゃんも食べろ!こんなにウマイソーセージはこの世にないぞ!」
「え・・・いや・・・だけど・・・」
「洋、コレ本当に美味しいわよ、洋にもこの感動を味わって欲しいな!」
「ぐっ・・・うう・・・分かった、食べてみるよ」
冴内は目を強くつぶって鼻をつまんで一気にかじりついた。そのまま一気に咀嚼してすぐにゴクリと飲み込んだ。果たして・・・
「!!!ウマーーーーッ!!!」
冴内はその場で力強くガッツポーズをとった。その味は実に芳醇な味わいで、噛むとジュワーっと肉汁が溢れ出て、より一層芳醇な肉の旨みが口いっぱいに広がった。生のままでもこの美味しさなのに焼いたり茹でたりなんかしたら、いったいどれ程の美味しさになるのか、想像するだけでヨダレが溢れ出てきた程だった。