110:ボス部屋発見
試練の門を出たところでここまでの戦闘データを送り情報戦略チームに連絡すると一度研修センターに戻って欲しいと頼まれた。その理由は研修センターに必要機材が到着したので、それを運搬して欲しいとのこと。3人の力があれば車で職員が運ぶよりも極めて迅速に機材を運搬して設置できるからだ。3人とも了承して研修センターに戻った。メロンは冷蔵庫にいれてブドウは全部職員に提供した、大きなブドウの粒がまだ9粒残っている。
そして高性能の大型カメラ3台とガッシリした三脚を3台、さらに音響測定、振動測定、熱源測定装置を3人で分けて持ち運んだ。再度試練の門に入り、まっくろスライム、ぱぁぷるスライム、しるばぁスライムがいた場所から10メートル程離れた場所に高性能カメラを設置。メロンスライムがいた最後の場所の近くには音響測定、振動測定、熱源測定装置を設置した。この時スライムには一度も遭遇しなかった。
どうにかして試練の門の内と外の通信回線を開けないか考えて冴内も美衣も壁や地面に向かってチョップしてケーブルを通す溝のようなものを作れないか試したが壁も地面もまったく傷一つ付けられなかった。これ以上やると疲労困憊して倒れるのでやめた。そうしていったん今日の試練の門チャレンジは終了した。
研修センターの食堂で夕食をとった後に冷やしたメロンを食べたところ、あまりのうまさに3人ともそのまま突っ伏してしまった。周りにいた職員達は毒にやられたのではないかと一斉に近寄ってきたが3人の幸せそうな笑顔を見たのと身体には異変がないように見えたのでそのまま見守っていたが5分程してようやく目が覚めて「死ぬほど美味しかった」「死ぬかと思った。今回は乙先輩とかぐや二人から、まだ来るなと言われた」などと口々にした。その様子を見て、ブドウを食べようとしていた職員達はすぐに食べるのをやめた。危うく死ぬところだった。
ブドウは当初鑑定結果が不明と表示されていたのだが、ブドウのエキスを100倍に薄めたところようやく解毒作用(超強力)と鑑定出来た。そこで100倍に薄めたブドウジュースを試しに研究職員が一口飲んだところ昏倒してしまった。結局1000倍に薄めたブドウジュースが解毒薬として使用されることになったのだが、この解毒薬は地球上で世界最高の解毒薬になり、ブドウ一粒から50万本作れた。トータルで約450万本が製造されて数百億円近い価値になった。
次の日の朝、再び試練の門に入ってみるとまっくろスライムが2匹いた。昨日の方法でまず1匹を撃破すると今度は優がうまいこと踏みとどまってまっくろスライムを前方に跳ね返したので、冴内と美衣はそのまま移動することなく2発目を放って撃破した。二人とも両ひざに手を当てて息をしたが力尽きて倒れることはなかった。そしてまっくろスライムは黒豆モチを2個落としてくれた。
とりあえずカメラに外部記憶装置を接続して録画データを吸い出し始めた。さすがに超高画質映像のデータなのでデータの吸出しには10分以上かかると表示されたので、今度はぱぁぷるスライムのところに行こうと話し合い、その前に黒豆モチを食べた。ぱぁぷるスライムの場所に着くと案の定今回も2匹いたので同じ戦術で挑んだ。同じようにやっつけたのだが優が跳ね返すときに少し肌に触れたのか毒におかされたので冴内は手当をした。ただ最初に毒にやられたときよりもかなり軽微だったようだ。とりあえずこのカメラにも外部記憶装置を接続してデータの吸出しを開始する。
また黒豆モチを食べてさらに先に進みしるばぁスライムのいた場所にいくとしるばぁスライムは1匹だったので冴内と美衣のダブル全力チョップ一撃で消滅してサイダーをドロップした。同じように外部記憶装置を接続してデータの吸出しを開始。いったん黒豆モチを食べて1匹目のまっくろスライムからゲットしたモチは全部食べ尽したので戻ることにした。まっくろスライムのところに戻るとデータの吸出しが終わっていたので外部記憶装置を外して試練の門を出てゲート村まで戻り情報戦略チームへデータ送信する。その間ゲート村のパソコンで録画データを見ていたが12時間近くあるので動画再生アプリの再生スライダーを動かして一気に変化があるところまで再生時間を先延ばすと、昨日まっくろスライムを倒したと思われる時間にまっくろスライムが発生したことが判明した。他のスライムも同様でスライムを倒した24時間後と思われる時刻付近で発生したことが分かった。
その後冴内達の姿が出てきて二人のチョップで撃破するところが映し出された。同時に優に体当たりをしているスライムも映し出された。ゲート村にあるコンピュータでの再生アプリではまっくろスライムの体当たりは一瞬すぎて何も分からなかったが、機関本部にある大型専用機器で画像解析した結果、やはりスライムは後ろ側の部分を弛緩させて溜めを作った後爆発的な瞬発力で体当たりをしていることが分かった。スライムは7メートル付近まで近づいたときに対象物を感知し感知から体当たりまでの時間は0.01秒以下という恐らくマッハ2程度のスピードであることが判明した。
「なんだ音速をこえればいいのか!ようしだったらアタイは光のはやさだ!」と、美衣が言ったがそれが出来る生命体など宇宙にいるのだろうか。ともあれ美衣と冴内二人でならなんとか倒せるし、優も卵で作った胴当てがあればスライムの攻撃にも耐えられるし、スライムの出現も恐らく1日に1回とみて良いだろうということが分かった。
翌日早速これまでの情報分析結果を活かして試練の門に挑んでいったところ、初日に比べてかなり危なげなく進むことが出来た。また一度倒したスライムは次の日にならないと出現しないので大胆に進むことも出来た。そうして進んで行ったところとうとう通路は行き止まりになった。しかしそこには扉がありその横にはやはり台座があった。美衣が手を乗せると例の音声が聞こえてきた。
『この先にはこの階で最も強い者がいます。十分に備えてからの挑戦をお勧めします』
『挑戦しますか?』
『はい/いいえ』
「・・・なんか、今のアタイ達じゃかてない気がする・・・」
珍しく美衣の発言が消極的だったが、冴内は美衣の言う通りだと思った。
「うん美衣の言う通りだね、二人の全力で1匹しか倒せないようじゃとてもじゃないけどこの階のボスには歯が立たないと思う」
「黒豆モチもブドウもサイダーもメロンもまだいっぱい食べたいから、もっとここで戦って力をつけよう!」
美衣の目的は別の方向にあったようだ。