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107:この世の地獄

 冴内の過去最大最強のフルパワーチョップを食らってもまっくろスライムは消滅しなかった。だが先ほどまでの余裕はなくなり、なんとなくベチャっとつぶれた感じの鏡餅状態になっていた。息も絶え絶えのようにも見える。


 冴内も肩で息をして、腕も上がらないくらいの状態でフラフラだったが、なんとかまっくろスライムに近づき、さっきのチョップとは別の手でまっくろスライムに貫手(ぬきて)をくらわした。しかしムニョンと弾力があってはじかれた。何度かそれを繰り返すと何か硬いものが指先に触れたので、そこにめがけて余力を全て注ぎ込む勢いで貫手をくらわした。


 すると恐らくまっくろスライムの核と思われるものが砕ける感触があって、そうしたらまっくろスライムは消滅した。消滅したところには大きな黒豆モチが落ちていた。


 フラフラになりながらも振り返って美衣と優の元へと戻る。二人とも気絶しており返事がない。とにかく美衣を優の横に寝かせてチョップヒール!と口に出して強く念じる。二人とも宇宙がぶっ壊れる程じゃないと死なないと言っていたので大丈夫だと信じたい。冴内の両手が緑色に光って恐らくヒールが効いているのだろうと思った。


 やがて二人がまぶたをピクピクさえて、口からもウーンという声が聞こえてきたあたりで冴内もバッタリ倒れた。だがまだかろうじて意識はある。


「あ・・・ありがとうお父ちゃん・・・死ぬかと思った」

「有難う洋・・・危なかったわ・・・乙先輩がまだ早い、こっちに来るなって言ってくれたよ・・・」

「二人とも無事で・・・良かった・・・」

「すまんお父ちゃん、ほんとうにこのよのじごくだった・・・」

「ところで、父ちゃんあのまっくろスライムは倒せたのか?」

「うん、なんとか倒せたよ、ありったけのチョップでも一撃じゃ倒せなかった」

「お父ちゃんのふるぱぅわぁーチョップでもダメだったのか・・・さすがこのよのじごくだ・・・」

「うん、これはヤバイ、引き返そう・・・」

「そうね、これは予想外だったわ・・・」

「すまんかった、戻ってお父ちゃんの言う通り普通からやりなおそう・・・あれ、お父ちゃんレベルアップしてるぞ」


-------------------

冴内さえない よう

20歳男性

★スキル:チョップLv30⇒真・チョップLv1

スキル:水平チョップLv1

スキル:ポイズンチョップLv1

★スキル:チョップヒールLv5⇒真・チョップヒ-ルLv1

スキル:チョップキュアLv5

★称号:神のチョップ⇒試練のチョップ

-------------------


「あっホントだ、ここのところ全然レベルアップしてなかったから気が付かなかった」


 なんかスキルも称号もレベルが下がってるような気がするけど、もともとあまり気にしてなかったからいいか・・・


 とりあえず黒豆モチを拾って戻ることにした。


「父ちゃんそのおモチ、すごく旨そうだな、それってまっくろスライムの落とし物か?」

「うんそうだよ、黒豆モチみたいだね」

「旨そうだ、食べよう!」

「食べたいの?」

「うん!おくれ!」といって美衣は一握りつかんでちぎって口にほうった。


 黒豆モチを食べた美衣は一瞬光り輝いた。


「ウマーーイ!!すごくウマーーイ!!あっ!アタイ元気になった!すごく元気になったぞ!お父ちゃんもお母ちゃんも食べろ!すごいぞこのモチ!」

 美衣に言われたので二人とも食べた。そうするとやはり二人とも光り輝き「ウマァーーイ!!すごくウマァーーイ!!」と合唱した。そして食べたら一気に元気が回復した。それどころかすごく力がみなぎってきた。

「このモチはいいモチだ!アタイもっと沢山食べたいな!」美衣がそう言ったのと、3人とも以前よりも力がみなぎっているのがハッキリ感じ取ることが出来たので、引き返すのをやめてもう1匹だけ今度は油断せず全員で全力で挑むことにした。


 少しづつ慎重に進んで行くとやはり地面に鏡餅のようなものがいた。だが今度は色が真っ黒ではなく紫色だった・・・


「あれ?まっくろスライムじゃない!ぱぁぷるスライムだ!どうするお父ちゃ・・・!?」

「グエッ!!」

「えっ!?」


 美衣も冴内もちゃんと身構えていつでもチョップを撃てるようにしていたのだが、目の前のスライムは消えて今度は優がやられた声が聞こえた。すかさず優の方に振り返るが今度は入れ違いにミイがやられた。


「ギャッ!」

「美衣ッ!」

「でも一発入れた!お父ちゃん!!」

「コノヤローーーーッ!!」


 冴内は今度もありったけの全身全霊フルパワーチョップをぶっ放した。やはり前回同様に手は金色に光り輝き黄金の光残像粒子がきらめいた。ぱぁぷるスライムはべちゃりと横たわっていたがブルブルと震えもだえた後に消滅した。後には巨大なブドウが落ちていた。


 冴内はすぐに振り返ってみると・・・

「父ちゃん・・・すまん・・・こんどは毒だ・・・毒にやられた」と美衣が言ったのでまたしても美衣を優の横に並べて、今度はチョップキュア!と強く念じた。今度は冴内の両手が紫色に輝いた。冴内が力尽きてバッタリその場に倒れると、二人とも顔色が良くなっていき、美衣は「スマンお父ちゃん」と言って起き上がった。

「今度はかぐやが現われて、こっちに来るな、まだ早いって言ってくれた」と優は言った。


 とりあえず皆でもう一度黒豆モチを食べると、やはり3人とも光り輝き元気いっぱいに回復した。またしても有り余るほど力がみなぎってきて、よし!もう一度やってやる!っていう気持ちになったが、今のでモチを食べ尽したのでなんとかその気持を抑えて今度こそ引き返そうとした。


「お父ちゃんまたレベルアップしてるぞ」


-------------------

冴内さえない よう

20歳男性

スキル:真・チョップLv1

スキル:水平チョップLv1

スキル:ポイズンチョップLv1

スキル:真・チョップヒ-ルLv1

★スキル:チョップキュアLv5⇒真・チョップキュアLv1

称号:神のチョップ⇒試練のチョップ

-------------------

 今度はチョップキュアがレベルアップしていた。


「父ちゃん、ぱぁぷるスライムは何か落とした?」

「あっそういえばブドウを落としてくれたよ、もってこよう」とブドウを持ってくると

「すごくいい匂いがする、それ食べたら多分この世の天国のような気がする」と美衣がヨダレを垂らしながら言った。


 ブドウは巨大な実が6個ついてて1個はちょっと大きいリンゴくらいの大きさだった。とりあえず皮ごと食べた、種は入ってなくてまるごと全部食べることが出来た。


 今度も家族全員で「ウメェェェェェーーー!!」「死ぬほどウメェェェーーーー!!」と絶叫した。もしもブドウの粒が3個しかなかったら命と引き換えにしてでももう一度挑んでいたかもしれない。とりあえず今はいったん引き返そうということで引き返すことにした・・・


 これまさか一度入ったらクリアするまで出られないとかいう仕組みだったらどうしよう?その時はここで暮らすか、全力で扉をぶっ壊すか、最後までクリアするかだろうか、まぁ最悪宇宙をぶっ壊してりゅう君のオジサン達に叱られるか・・・その場合800年氷漬けになることになるが、死ぬよりましだし親子3人で氷漬けなら寂しくないかもしれない。退屈だとは思うが・・・と、冴内は心の中で反省部屋行きを半分覚悟しつつ戻った。先生、頼むから宇宙はぶっ壊さないで下さい。


 試練の門の反対側の扉に戻ってみると、行きには気づかなかったが反対方向にも台座があった。今度は冴内が手を乗せると・・・


『お疲れ様でした、今日は終了しますか?』

『はい/いいえ』


 というアナウンスが聞こえたので、当然はいを選択して3人ともいったん外に出た。


 外に出て螺旋階段を駆け足(常人から見るともの凄いスピード)で上がりそのままの速度でゲート村まで戻ってきた。ゲート村にも宿泊所や簡易的な風呂はあるが、大浴場に入りたかったのと3人部屋で家族全員仲良く寝たかったので、車で30分程の距離にある十津川村近くの奈良ゲート研修センターに「駆け足」で走って15分程で到着した。途中何台か自動車とバイクを追い抜かしてしまった。さぞや驚かせてしまったことだろう。下手したら心霊スポットにされてしまうかもしれない・・・


 ともあれ研修センターに戻り、食堂にて山の幸を使った暖かい料理をたらふく食べて、大浴場でそれぞれ汗を流し、あらかじめ冷蔵庫で冷やしておいたぱぁぷるスライムが落としたブドウを食べて「ウメェェェェーーーー!!死ぬほどウメェェェェーーーー!!また食べてェェェェーーーー!」と絶叫した後で3人並んで親子仲良く川の字になって寝た。本当は寝る前に今日の大反省会をするつもりだったが、この世の地獄のような酷い目にあったり天国のようなご馳走を食べたりして心身共に疲れ切ったので、その日はすぐに寝ることにした。

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